第百六話 コルト都市国家での出来事 その21
「どういう事だ!?」
ウィルが俺に問いかける。
ウィルは自分の父親が魔人化された事を思い出したのだろう。
命を弄び、命を愚弄する行い。
ゴルゴーラ教のやっている事は許せない。
「……おそらく、何らかの方法で戦闘狼の心を操り、心を完全に闇に染めたんだと思う」
「そんなバカな事が……!?」
ウィルは驚愕した顔している。
女性三人は驚いて声も出ないようだ。
でも、実際『エターナル・ログ』の知識に精神を誘導する魔法はある。
しかし、禁術の為他の者が知り得るはずがない。
やっぱりゴルゴーラ教には何かがある。
そして、きっと俺も無関係ではない。
「ハル……やっぱりおまえは大司教様が言ってる通り危険な奴だな。どうやってその知識があるか分からないが大司教様と同等、もしくは超える知識……おまえは危ない存在だ」
ダグマルはそう言って俺を見据える。
そして戦闘狼に命令を出す。
戦闘狼はダグマルの指示に従い、四方に散り、俺たちの周りを回り出した。
「お、おい! どうなってるだ!? ……とりあえずこいつらなんとかしないとやべぇーぞ!」
ダリウスさんが言う事はもっともだ。
この戦闘狼達をなんとかしないと、どうする事もできない。
できる事ならあのダグマルって奴を捕まえていろいろ聞きたいところだけど、その前にこの状況をなんとかしないと……。
普通の戦闘狼でない以上、気は抜けないしさっきのスピードを見る限り、なかなかやっかいだ。
「ハル! とりあえずこいつらを何とかするぞ!」
ロイの言葉に頷き、俺たちは戦闘隊形を立て直し、戦闘狼の攻撃に備えた。
一部、変わって俺が正面、右にロイ、左がウィル、そして後ろにダリウスさん、真ん中に女性三人という布陣だ。
「ふん、おまえ達にこいつらを倒せるかな?」
「倒してみせるさ! そして……おまえを捕まえる!」
「面白い。おまえ達の力を見せてみろ!」
ダグマルがそう言うと戦闘狼は四方から襲ってきた。




