第百三話 コルト都市国家での出来事 その18
戦闘狼はダグマルの命令に従い、俺を襲ってくる。
その数十頭。
「ガァ!」
一頭の戦闘狼が正面から突っ込んで来た。
「!?」
俺は横に飛びかわす。
体ギリギリを通って行った戦闘狼により、生み出された風圧が俺の髪を揺らす。
そのスピードは予想していたものより遥かに速く、身体強化の魔法をかけているにもかかわらず、避けるのにギリギリだった。
俺達はみんな身体強化の魔法を使えるけど、世間のみんながみんな使えるかというとそうでもない。
一般的に、身体強化の魔法は難しい部類に入っていて、戦士系のタイプは魔法使いにかけてもらうのが一般的のようだ。
それにしても、俺が使う身体強化は一般的な魔法使いとかが使うより効率、効果ともに高いはずなのにそれでもギリギリとは……。
ウィルやソニンが昔に倒したという戦闘狼とは何かが違うのかもしれない。
聞いている話では
このスピードなら他の冒険者が遅れを取ったのも仕方ないかもしれない。
「ほう。このスピードを避けるとは……さすが魔人を倒しただけはあるか。力だけでなくスピードもあるという事か」
ダグマルは俺の様子を見ている。
やはり、この戦闘狼は奴が何かしたのか?
普通、魔物なら人の命令を聞くはずがない。
なのに、この戦闘狼はダグマルの指示に従っている。
いったい何が……?
「ガァ!」
そんな事を考えていると、戦闘狼は俺めがけて次々に襲いかかってくる。
それを俺は左右にかわす。
すると、戦闘狼は単独で襲いかかっても無理だと思ったのか俺の周りグルグル周り出した。
「いつまで続くかな?」
「それは全部倒すまでだよ!」
俺はダグマルの言葉に強気で返したけど、正直分が悪い。
分が悪いというと少し違うかもしれないけど。
まずスピードが速い分、魔法は当てずらい。
相手が一体でない分、反撃する間がない。
重力魔法とかを駆使すればなんともないけど……あのダグマルという奴は戦いの様子を見ると言ってたし、奴の前であまり力を出し過ぎたくない。
知を司るって言ってたから、あまり手の内を見せるのが気掛かりだ。
魔力操作についても、一人で全部倒すには相当の力を見せる事になる。
まぁ、ダビドから聞いているかもしれないけど、あいつも途中でいなくなったし全部が全部見ている訳ではない。
だから、極力全力を見せるのは避けたい。
でも、このままではジリ損だ。
どうする? 全力でやるか……?
その時だった。




