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第百二話 コルト都市国家での出来事 その17

 段々と黒い影の姿がはっきりしてくる。

 黒い体毛に俺と同じ高さくらいの背丈、そして赤く光った瞳……間違いなく聞いていた通りの戦闘狼(ウォーウルフ)の姿だった。

 でも、戦闘狼(ウォーウルフ)相手なら何故みんな遅れをとったのか……。

 そんな事を考えていると戦闘狼(ウォーウルフ)とは別に人らしい影がある。

 しかも、黒いローブ……まさか……?


 「おまえは誰だ!!」


 俺は戦闘狼(ウォーウルフ)の集団と黒いローブの人物の手前20メートルくらいのところで立ち止まり、叫んだ。

 すると、黒いローブの人物がゆっくりと振り返る。

 背は俺よりも少し高い。

 しかし、その他の顔や髪、外見的特徴は黒いローブやフードが邪魔して伺い知る事ができない。

 そして、その奥には冒険者らしき人物が何人か横たわっている。

 遅かったか……。


 「黒髪……おまえがハルか」


 ダビドと違い、低く落ち着いた声。

 そして、黒いローブの男は俺の事を知っているようだ。

 やはりこいつは……。


 「……おまえはゴルゾーラ教の者か?」

 「左様。私はゴルゾーラ教の知を司る司教、ダグマル。先日は精神を司る司教、ダビドが世話になったようだな」


 目の前の男はゴルゾーラ教の知を司る司教ダグマルと言うらしい。

 そしてこの前のイストニア帝国との戦争で姿を見せたのは精神を司る司教ダビド。

 二人ともゴルゾーラ教の幹部という訳か。

 という事は裏で暗躍しているのは幹部だけ?

 なら、表向きの信者を増やす意味はあるのだろうか?


 「……おまえ達の目的はなんだ?」


 ゴルゾーラ教の目的はなんだろうか。

 世界を混乱に陥し入れ、何を考えているのだろう?


 「すべては大司教様の意向のままに。そして、それはおまえ達が知る必要はない」


 ダグマルはそう言うと話は終わりだという感じで、振り返り歩き出した。


 「待て!」


 俺はダグマルを呼び止める。

 

 「言われなくとも、おまえ達の戦闘能力を見届けるまではいるつもりだ。少々予定が狂ったが……まぁいい。……かかれ!」

 「ウォォォーン!!」


 ダグマルが命令を出すと戦闘狼(ウォーウルフ)は雄叫びを上げ、襲いかかってきた。


 


 

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