第九十七話 コルト都市国家での出来事 その12
ラーク大森林、イストニア帝国とコルト都市国家の間にあるこの大森林は広大な面積を持ち、奥に行けば行くほど魔物がいると言われている。
俺はその大森林を目の前にして、何か嫌な雰囲気を感じ取った。
見た目は普通の森のように木々が生い茂っているだけなんだけど……言葉には出来ないものがある。
「普通の雰囲気ではないな」
「……俺が知っている雰囲気ではない」
「なんなの? この森ってこんな感じだったっけ……?」
「何か嫌な予感がするわ……」
「……」
どうやら普通の雰囲気と違うと感じ取ったのは俺だけではないらしい。
シャーリーは言葉を発する事なく、俺の服の裾を掴んでいる。
よほど、不安なのだろう。
「大丈夫。俺がついてるから……な?」
「……はい。ありがとう、ハル君」
俺はこっそりシャーリーにだけ聞こえる声で言った。
シャーリーも少し落ち着いたのか、体の力が少し抜けたようだ。
「……これは一筋縄では行かないかもしれないな。おまえたち、討伐が始まったら戦闘隊形を崩さず、周囲の警戒を怠るなよ?」
俺たちはダリウスさんの言葉に無言で頷く。
ダリウスさんもいつになく真剣な顔だ。
「みんな聞こえているか? 今から討伐を開始してもらう! 俺たちギルド職員はここで待機しているから各パーティー各々戦闘狼を討伐してくるように! ノルマは各パーティー五体だ! ノルマ達成報酬は1パーティー、金貨一枚だ! 頑張ってくれ!」
ギルド職員が言うと各パーティーはラーク大森林に入って行く。
パーティーは俺たちを入れて6組だ。
ノルマが五体と少ないように見えるけど、Cランクの魔物、そして集団で襲いかかってくるともあれば危険度は増す。
さらに、冒険者にしても、そもそもCランクになるの自体が難しいので、Cランクの魔物の討伐の目安となるCランクの冒険者自体が少ない。
なので、これは難易度が高い依頼のようだ。
「さて、俺たちも行くぞ」
ダリウスさんの言葉に続き、俺たちはラーク大森林に足を踏み入れた。




