第九十六話 コルト都市国家での出来事 その11
「みんな集まってくれ!」
俺たちが戦闘隊形を決め終わると同時にギルド職員の男性が姿を現し、みんなを集めた。
「では、今から出発する! 各パーティー毎に馬車を用意した! 各パーティーそれに乗って現地へ向かってもらう!」
俺たちは割り当てられた馬車に乗り込んだ。
四人座れる椅子が左右に二つ並んでいる。
右の椅子には奥からシャーリー、俺、ダリウスさん。
反対の左の椅子には奥からアリィ、ロイ、ウィル、ソニンという順に座っている。
ちなみに、俺たちが乗ってきた馬車はギルドに預けてある。
本来なら預かってもらえないけど、今回はギルドからの依頼であるという事でその間、特別に預かってもらえるようだ。
馬車に乗り込んだ俺たちは他愛のない世間話をしながら過ごす。
この前、最初に出会った酒場で飲んだ話とかまぁそんな他愛のない話をしていた。
外を見ると、コルト都市国家は後方へ小さくなり、前方にはラーク大森林が大きく見えてきた。
「なんかドキドキするね」
そんな中、隣にいるシャーリーが声をかけてくる。
シャーリーにとっては初めての実践だし、緊張するのも無理はない。
イストニア帝国との戦争の時は、救護班で後方支援だったし、戦闘の現場には出ていない。
ドラゴンの時は現場にはいたけど戦闘には参加してるとは言えないし、どちらかというと巻き込まれた形だ。
「大丈夫、何があっても俺がそばにいるから」
俺はシャーリーの手を取る。
シャーリーは少し驚いた様子を見せたけど、黙って手を握り返してくれた。
「……ここまで来ていちゃつくとはな」
マズイ!
ロイに聞かれ、見られていたようだ。
しかし、俺はもう何も恐れるものはない。
「イチャついてるんじゃない、シャーリーを安心させてるだけだ。それが男の勤めだろ?」
「むっ、言うようになったな」
ふふふ。
なんか初めてロイに口で勝った気がする。
というか、でもこれは本音だ。
何があってもシャーリーを守る。
「ハルは男として一皮向けた気がするな」
「ハルのくせに……でもシャーリーお姉様嬉しそう」
「あぁ、愛される乙女は罪が多いわ!」
「ははは! 若くていいな!」
なんか、討伐に向かってる雰囲気ではなくなってしまった。
横ではシャーリーが俯いて顔を赤くしている。
「……ハル君、ありがとう。頼りにしています」
シャーリーが俯きながら、聞こえるか聞こえない大きさの声で俺に言った。
よし、俄然やる気が出てきた!
「着いたぞ!」
そんな話をしている間にラーク大森林に着いた。




