第九十五話 コルト都市国家での出来事 その10
「まずは、基本的な話をする」
そう言ってダリウスさんは今までに、見た事がないようなら真面目な表情で話始める。
「俺たちの今の状況を考えると、俺を合わせた男連中が前衛、女連中が後衛となるだろう」
確かにロイ、ウィルは魔法より接近戦タイプ。
俺はどっちでもいけるけどこの場合バランスを考えると前衛がいいだろう。
そして、ダリウスさんは……決まってるな。
あの人が、後衛にいる姿なんか想像できない。
むしろ、突っ込んでいきそうなタイプだ。
「……おい、ドラゴンキラー? 何考えてる?」
ダリウスさんは俺の心を読むかのように問い詰めてくる。
まさか……!?
ロイがダリウスさんに秘術を教えたのか!?
「いや、違う。 ハルは顔に出過ぎた」
あっ、はい。
すいません。
というかロイにはいつも読まれ過ぎてる。
対策を考えなくては……。
でも、いくら考えても出てこないんだよな。
「い、いや、違うんです! まぁ悪気があった訳じゃなくて……というよりドラゴンキラーはやめてください! ちゃんとハルって名前があるんですから!」
俺は強引に押し切り、さらに自分の呼び名を正そうとした。
人間、追い込まれれば頭が回るものだ。
「ったく、……まぁいい。今回のようなどこから襲われるか分からない時は前衛、後衛って分け方ではダメだ。それはなぜか、ハル、分かるか?」
よし!
やっと名前で呼んでくれた!
ってそこはまぁ置いておいて。
普通、相手が正面にいる場合、前衛と後衛で配置すれば問題ない。
戦争とかはよほどの事がないと後ろからの奇襲はないのでこう言った形を取る。
しかし……
「どこから襲われるか分からないという事は後衛の後ろにも気をつけなければいけない……そういう事ですか?」
「正解だ。よく初心者の冒険者が陥るミスがそこだ。敵は前からだけではない。後ろからの襲撃にも気を配っておかないと、後衛が一瞬で全滅する恐れがある。よく分かったな、ドラ……ハル」
今絶対ドラゴンキラーって言おうとしたな。
まぁいい。
でも、こう考えると状況によって戦闘隊形って大事になってくるんだな。
「じゃぁ、どんな感じで戦闘隊形を組む?」
沈黙を守っていたロイが口を開く。
「そうだな。実力はおまえさん達の方が上だろうが、経験は俺が一番あるだろう。俺が先頭で警戒する。それでド……ハルはしんがりであとの男二人で左右の警戒ってのはどうだ?初めて会ったやつに後ろを取られるのも嫌だろうしド……ハルなら、接近戦でも遠距離でも対応できるだろ?」
また、ドラゴンキラーって言おうとしたな。
でも、まぁそれが一番バランスが取れてそうか。
「ふむ、確かにそれが一番バランスが良さそうだ」
ウィルも納得してるしこれでいくか。
「じゃぁ私はロイの隣! ソニンちゃんはウィルの隣で、シャーリーはハル君の前ね! 決まり!」
「了解です!」
「あっ、う、うん」
なんだか後衛三人はアリィの鶴の一声で決まってしまった。
「ったく、おまえさん達にとったら遠足気分か?」
ダリウスさんは肩をすくめながら首を左右に振っている。
とにかく、俺たちの戦闘隊形は決まった。




