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間話 一日の終わり

 私はハル君と手を繋いで歩いている。

 本当、夢みたい。

 この間まで物凄く遠くに感じていた距離が近く感じる。

 手を繋いで歩いて、お昼ご飯を二人っきりで食べて……ついこの間までは想像でしかなかった事が現実に起きている。

 私はこれだけで幸せ。

 二人で一緒に歩いて、一緒の景色を見て、一緒の時間を過ごす。

 好きな人と一緒なら何をしてても楽しい。

 時間もあっという間にたち、太陽が夕日になりかけ陽が落ちようとしている。


 「あっ!」


 私はハル君と歩いてる途中で、アクセサリー屋さんに飾られてるネックレスを見つけた。

 ハル君がしてるのと同じようなネックレス。


 「どうした? シャーリー?」

 「ぅぅん! なんでもない!」


 お昼ご飯奢ってもらってプレゼントまでしてもらう訳にはいかない。

 今のハル君だったら何か私が見てたら買ってきてしまいそうだから。

 でも、そんなにハル君に迷惑はかけられない。

 だってハル君にお金の大切さを教えてもらったから。


 「ハル君、あっち行こう!」


 私はハル君の手を引いてコルト都市国家の高台に向かった。


 「キレイ!」


 コルト都市国家の北に位置する高台からは全方向が見渡せる。

 南には遠くに海が見え、東には私達が歩いてきたシーリスト街道、西には道が続いて見え、北には明日向かうラーク大森林が見える。

 景色が夕日に染まり、何とも言えない景色が広がっている。

 こうして見ると、何か世界の広さを改めて感じる。

 こんな広い世界でハル君と出会えたのは奇跡。

 神様に感謝しなきゃね!


 「……シャーリー?」

 「ん? どうしたの?」


 私はハル君の呼び掛けに振り向いて答える。


 「これ……」


 ハル君が差し出した手に持ってるのはハル君とおそろいのネックレスだ。

 どうして?

 なんで?

 私は思考がついていかなくなった。


 「それ……どうしたの?」

 「実はこの前ちょっと作って……ほら! シーレント祭で離れかけただろ? あの時はぐれそうになったからはぐれても居場所が分かるようにと思って……ネックレスに魔力探知の仕掛けをして……ね? ほら! なんて言うかせっかく付き合ったしなんかプレゼントしたいなって思って……」


 ハル君はあたふたしながら説明してくれている。

 きっとハル君は私の為に作ってくれたんだと思う。 その気持ちだけで私は……。


 「ハル君……あ、ありが……とう」


 また、涙が溢れだす。

 本当に自分が嫌になるくらい。

 嬉しいのにハル君の前で泣いてばかり。

 目の前ではハル君がさっきよりあたふたしている。


 「……ゴメンね? ありがとう。……もし、私がはぐれてもすぐに見つけてくれる?」


 私は涙を抑え言葉を口にする。


 「もちろん。はぐれたらすぐにこの魔力を辿って魔法で駆けつける。だからこれ……良かったらつけていて欲しい」


 そう言ってハル君はネックレスを私に渡そうとしてくれる。


 「……ハル君がつけて? ハル君がつけてくれたらもう外さない……」

 「……分かった」


 ハル君はそう言うと私に近づき首に手を回し、ネックレスを止めてくれる。

 ハル君の顔が、物凄く近く感じる。

 私は自分でお願いしたのに、恥ずかしさで顔が赤くなるのが分かった。


 「……ありがとう」

 「うん……」


 ハル君と私は見つめ合う。

 どうしよう。

 心臓のドキドキが止まらない……。


 「アリィ静かに」

 「だって、こんな場面見てたら!」

 「そうです! だってこんな場面、興奮しない方が!」

 「うむ、これが愛の形か」


 声のする方を向くとアリィ達四人がいました。

 まさか……。


 「……おい、お前達、いつからいたんだ?」


 ハル君が四人を見つけました。


 「いや、手を繋いでここへ向かうところからなんて事は……なぁ、アリィ?」

 「え、えぇ、幸せそうに歩いてるところなんて……ねぇ? ソニンちゃん?」

 「え、あっ、はいです! ねぇ? お兄様?」

 「ふむ、正確には昼過ぎくらいからだな」

 「ダメだ! 誰かウィルの口を抑えろ!」


 ロイ君が叫ぶより先にハル君が動きました。


 「おまえらなぁぁぁ!! いつもいつも!!」

 「ヤバイ! 逃げろ!」


 ロイ君達とハル君の追いかけっこが始まりました。

 みんなに見られてたのは恥ずかしいけど、ハル君と過ごせた時間は幸せでした。

 それにみんなも大切な仲間。

 ゴルゾーラ教の事が落ち着いたら、こんな幸せな日々を過ごしていきたい。

 私はそう願いました。

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