第九話 ダンジョン挑戦 その4
俺たちは第三層へ向かうルートを歩いている。
ちなみにここまで他の冒険者には会っていない。
まだ浅いからだろうか?
でも帰ってくる冒険者に出会っても良いのに……と思ってロイに聞いてみた。
「なあ、ロイ。ダンジョンに入ってここまで誰にも会わないってどぅなんだろうな?」
「ん? あぁ、まぁダンジョンで出会うかもって言ったけど、実際ダンジョンはCランクの冒険者が生存率30%って言われていてCランクの冒険者はそれほどいないってのとリスクが高いからな。それ以上の冒険者はもっと奥に行っているんじゃないか?」
なるほど。
……あれ?
改めて考えるとCランクの冒険者がみんながみんな挑んでいるみたいに思ってたけど躊躇するんだ!?
俺たちそんなところに腕試しに来てたの!?
「お、おい! 俺たちそんなところに来て大丈夫なのか!?」
「たぶんな。俺が見た事あるCランクの冒険者よりハルはだいぶ上だと思うし全属性の魔法が使えるだろ? 普通は一種類しか使えないから物理攻撃が効きにくい敵とかで属性の相性が悪いと苦戦する。それも生存率を下げる要因なんだ」
あぁ、そうか。
自分を基準で考えてはいけないな。
洞窟で火が使えないとなると火属性の魔法使いはほぼ戦力にならない。
他の属性で魔法の火力を上げるとなると上位魔法までいかないと生物系の魔物には厳しいワケか。
火属性は魔法の威力では一番だからな。
俺みたいにアレンジしたり出来ない以上、ダンジョンに入れる魔法使いは限定される。
かと言って戦士系ばかりだと遠距離から仕掛けてくる敵や物理攻撃が効きにくい敵だと相性が悪い。
ダンジョンっての奥が深い。
……決して階層が深いってのとかけたワケじゃない。
しばらく進むと、俺たちの前に蟻の魔物が三匹現れた。
大きさ俺たちの背より高い。
道を塞ぐように立ちはだかる。
例の如く、目が赤く光っている。
魔物は俺たちに気づくと、見た目からは想像もつかないスピードで一斉に迫ってきた。
ヤバイ!
俺は反射的に危険を感じ、自分とロイに身体強化魔法をかけた。
魔物は三匹ともスピードに乗ったまま俺たちに食いつこうとして来た。
俺とロイは後ろへ飛びかわす。
俺は続けてオリジナル魔法の土属性と風属性で開発した魔法を唱えた。
バン!
岩の弾丸は魔物の体に当たったが逆に岩が砕けてしまった。
「マジで!?」
この魔法は威力もそこそこ高いハズだっただけにショックを受けた。
『自分の攻撃が通じない』
敵と戦う時にこれほど恐ろしい事はない。
攻撃が通じない以上、勝ち目はなくいずれは負ける。
出来る事は……逃げるしかないのか?
俺は少しパニックに陥りかけ動く事が出来なかった。
「ハル! しっかりしろ!」
ふと見るとロイは魔物に接近していた。
「ロイ! 危険だ!」
俺の言葉を流しロイは接近する。
あの魔法を弾く殻に斬撃が効くはずがない。
こんなところでロイが死んでしまったら……。
一匹の魔物がロイに標準を絞り向きを変え突進した。
ロイはそれをジャンプでかわし魔物の上に乗った。
「くらえぇ!!」
ロイは魔物頭と首の境目の関節に斬りかかった。
すると、関節はそれほど硬くないのか頭が斬り落とされた。
「ロイ! やるな!」
「気を抜くな! まだ二匹いる!」
そうだ。
あの二匹も倒さないといけない。
俺はロイにとどめを任し自分は魔物の気を引く事にした。
岩の弾丸を撃ちまくり注意をこちらに引きつける。
その間にロイが回り込み関節に斬りかかる。
こうした役割り分担で残り二匹は倒せた。
「ふぅ〜……魔物にもいろんなのがいるんだな」
「そうだな。魔法が有効な魔物、物理攻撃が有効な魔物、ダンジョンの難しさだな」
俺たちは魔物から魔石を取った後、俺が持ってきた水筒で水分補給し休んでいた。
「ハル、どうする? そろそろ帰るか?」
「んー、でもここまで来たし三層の様子をちょっと見てから帰らないか?」
「そうだな。せっかくだしそうするか」
かくして俺たちは第三層へ向かった。




