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神はケモノに×される  作者: あおうま
第一章 ながすぎるアバン
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第三十五話 神は登校する

 

◆◆◆

 

 そりゃそうだよね? そりゃそうだよね!

 辰峯(たつみね)さんからしたらさ、私なんて可哀想だからちょっと介護してあげたボッチの子、くらいにしか思っていないだろうしさ。

 よかったよ、調子乗って『はい! 親友です!』とかほざき散らかさないでさ。へへ、へへへ……グスン。

 そんなこと言ってたらきっとさ、これからペア決めの時に辰峯さんも組んでくれず、未来永劫一人でオロオロと惨め晒すハメになってただろうし。

 私ごときが誰かとペアを組めている今の幸運を、ひたすら謙虚に大事にすべきなんだよね。わかってるよそんなの。

 でもあんな、目の前で普通にキッパリと否定することないじゃん……。

 たぶん辰峯さんは私のことを良く思ってないのかもしれない。それどころか、あんま考えたくはないけど、もしかしたら普通に嫌われているのかもしれない。

 誰かから嫌われてるかもって考えんの、メッチャ落ち込むなぁ……。

 『クラス委員長だから仕方なく私と組んでくれてるのかなぁ』とか、『本当は嫌がってたのかなぁ』とか、ついつい考えてしまって。

 ショボンと落ち込みながら歩いていると、私の視界に辰峯さんの足が入ってきた。たぶん食堂前で立ち止まって待っていてくれてたみたい。

 んじゃなんでそんな期待させるようなことすんの!

 嫌いなら私を置いて先に行っちゃえばいいし! さっきだって私なんか無視して別の席で食べればよかったじゃん!

 私が食べ終わるのわざわざ待ってくれてたり、期待させるだけさせといてさぁ! そんで私のことが実は大嫌いだなんてひどいよ! いじめっ子だよ! 委員長なのによくないよ!

 今度はどんな酷いことを言われるんだろうと恐れ慄きながら、辰峯さんの顔を見れずに俯いていると……。

「ねぇ神さん。もしよかったらなんだけど、このあと一緒に学校まで行っても……良いかな?」

「……うんっ!」

 はぁ〜あ、まったく。この子さてはツンデレだな?

 私のこと好きだろ絶対。

 やれやれ、困った子猫ちゃんだよ。私もしゅき!

 

◇◇◇

 

 人生初めての登校デートである。緊張しすぎて心臓が爆発したっぽい。

 いや、デートではないか。すいません調子乗りました。

 心臓もドクドク鳴ってるから無事っぽい。それか元々心臓ふたつあったのかも。

 ありがとうお母さん、いっぱい心臓を用意して生んでくれて。お母さんのお陰で生き延びれた。でももう一個も爆発しそうなぐらい緊張している。お母さん私もうダメかも……。

 私はいま、辰峯さんと二人並んで学校までの通学路を歩いている。なにこれ幸せ過ぎん?

「神さんは部活もう決めた?」

「い、いえ……まだです」

「そうなんだ。早く決まると良いね」

「あい……」

 しかもなんか普通に話しかけてくれてるし。

 一緒に登校しながらおしゃべりしちゃってる。クラスメイトと私が。すごい。なにこれ。

「……神さんってさ、中学の時とかなんかやってた? スポーツとか、習い事とか。もしくは小学生のときでもいいんだけど」 

 なんかすごいイッパイ質問してくれてる。辰峯さんたら私に興味深々みたい。そんな人ウチのお母さん以外で初めてなんだけど。

 好きなのかな? 私のこと。

 お母さんも私のこと好きらしいし、辰峯さんもなのかな?

 いや期待しすぎちゃいけない。自覚しろ自覚しろ。今丑さんの前で調子乗って、あとで後悔したこと思い出せ。よし!

 でもなんか話はすごい弾んでるよぉ……いやいや弾んではないか。主に私が弾ませてあげられてないわ。ごめんちゃい……。

 でも会話が途切れず続いてるのは確かだし、これも辰峯さんのトークスキルとコミュ力ゆえの賜物だろう。

 ただ、その話題……もしかしたらいつか出るかと思っていた中学時代トークが、とうとうやってきてしまったか……。

 どうしよう。中学校にはまったく行ってませんとか言ったらどんな反応されるのかな? 『不登校でした』は対応に困る回答だよね? 気を使わせちゃうかもだし。

 でも嘘つくのもよくないから、やっぱり正直に言うしかないんだけど。ちょっと怖いなぁ……。

「……あの、じつは私……中学行ってなくて」

「えっ?」

「行ってないというか、通ってなかったというか……一日も出席せずに卒業しました……」

「へ、あぁそうなんだ……へぇー。あ、なんかごめんね! 話しずらい話題を振っちゃって!」

 やっぱり気はつかわせちゃったみたいではあるけれど、なんか思ったより落ち込むような反応ではなかったのでちょっと安心。

 最近では不登校っていってもそんな珍しくはないのかもしれない。

 多様性を認めてくれる社会って最高! 理解あるって素晴らしいね!

「いえ、大丈夫です。辰峯さんはなんかやってたんですか? 部活とか」

「あぁうん。吹部だったよ。吹奏楽部ね。ここでも吹部入ったし」

「ほぇー……すごい」

 うわっ、リアル吹奏楽部女子やん! 実在したんだ……。

 てか楽器できるなんてすごいなぁ。私リコーダーすらできないもん。

 小学生の時ですら、リコーダーのテストをクリアするためにお母さんに泣きながらしごかれたし。『もう楽器なんて一生やんね!』って思った記憶あるし。

 私が憧れの視線を向けていると、辰峯さんは気恥ずかしそうに首を掻いていた。照れてるのかなぁ? 可愛いねぇ?

「別にそんなすごくはないけどね! 上手くないし、好きだからやってるだけ! 神さんは? 好きなこととか得意なことある?」

 可愛い女の子が好きとか言っても、きっとドン引かれるだけだろう。そんくらいの分別は持ってますとも。

 んじゃ得意なことはというと……たくさんあり過ぎて困っちゃうなぁ。

 例えば、うんーと、えーと、うん。アレとかね? あの器用さが求められる……あの、出来たら結構すごいやつとかね?

 あと……あのー、うん。なんかいっぱいあるヤツを丁寧に、なんとかするヤツとかね?

 あと、うん……そだね……。

 ないが? 得意なことなんざ別にないけど!

 でもそんかわり苦手なこともないから! オールマイティだから!

 可もなく不可もないけど、ソレだってスゴイと思うけど!?

 ……別にすごいことなんてないですね。はい。私はつまらない人間です……はい。

 けどそんなこと素直に言うことはできない。

 だって、ともだちになりたい子の条件って何か惹かれるものがあったり、面白かったりする人なんでしょ。

 何もない私みたいな子とは仲良くしたいと思わないかもしれないし!

「……あの、いろいろ? いろいろありますけど……あの、いろいろ……」

 だから嘘もつかず、真実も言わずのちょうど良い答えで切り抜けようと思ったのに……。

「い、いろいろ? そうなんだ! たくさん得意なことがあるのってスゴイね!」

「ぅえっ!? いえ……はい……」

 いや違うの! お茶を濁しただけなの! たくさんあるって意味じゃないの!

 やめて……褒めないでぇ。

 なんか答えをミスって辰峯さんの中で得意なことがたくさんある子、みたいな捉え方をされてしまった。違う違う。おかしいおかしい。

 なんとかかんとか誤解を解かないと。でも正直に言い訳しても、それはそれで嘘つきアンポンタンのレッテルを貼られてしまうかもしれないし……。

 『どうすっぺ……どうすっぺ……』と悩みながら校門をとおり抜け、すぐそこに昇降口が見えてきたそんなとき。

 隣を歩いていた辰峯さんが、急に私の前に歩き出て立ち止まった。

「……うん! やっぱり……あの、神さん!」

「ふぇ!? は、はい?」

 目の前に立たれたものだから私も合わせて立ち止まり、状況を飲み込めないままで辰峯さんと視線を合わせた。

 始業もそこそこ近い時間帯。

 そのせいか、映る視界には他の生徒の姿は見えず、偶然にもいまこの場所には、私たち二人しか存在しておらず。

 まるで私と辰峯さんだけがこの学校に取り残されたような、そんな静かなその場所で。

 目の前には、真剣な眼差しで私を見つめるクラスメイトが立っていて。

 このロケーションは……なんだろう。まるで漫画やドラマの告白シーンみたいだな、なんて思ったりして。

 もしかしたらとドキドキしながら続く言葉を待っていた私の耳に……。

「……今度から、別の子とペア組んでくれない?」

 そんな無慈悲な、私を拒絶する言葉が突き刺さったのだった。

 

◆◆◆

 

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