第130話 悪霊狩り、新たなる法則
とある作品がコミカライズされたので、嬉しくなり久々に更新。時間が空いたのであらすじはついてますが、この作品はノリで読んでもらえたら多分大丈夫です。
前回までのあらすじ
ペペロンチーノ、スピアちゃん(ランスくん)、聖女、アニエス(魔王ハイリスの娘)の四人はなんかよく分からん場所に飛ばされた。
そこにはかつて魔族と呼ばれていた耳の長い種族が住んでいた……。
それはさておき、悪霊祓いを頼まれたシルバって魔族のおっさんについていったペペロンチーノ。依頼人の家に出向き、悪霊に取り憑かれたと言う妹さんと対面したその時……ッ!
悪霊に操られた依頼人に裏切られて絶体絶命のピンチになった……! ペペロンチーノもシルバはボコボコにされた……!
*
ボコボコにされたものの悪霊と悪霊が操る奴らからなんとか逃げおおせた俺とシルバは優雅にお茶をしながら作戦会議をしていた。
シルバは、中年のおっさんだが耳の長さとしっとりした癖毛はどこか色気がある。顔もまぁ渋さもあって悪くはない。というか、耳長族の連中はどいつも顔面偏差値は人間に比べて高めである。やっぱこれテンプレ的なエルフだな。モモカさん連れてきたら喜びそう。
「依頼人がああなったんだし、依頼は無効では?」
シルバはシレッとした顔でそんなことを言い出した。俺は机を叩き、怒りに声を震わせる。
お前なぁ、いいのか? あんな奴らに舐められたままでよぉ。長い耳を引きちぎってやろうかと思いっきり引っ張るが、やはり俺はここでも軟弱なプレイヤー、まるでびくともしない。こんな情けない奴にも勝てないのか俺は……。
「まぁ確かに、このゴーストハンターシルバがあの程度の悪霊に恐れをなして逃げた、などと風評被害が広まっては商売上がったりだからな」
恐れをなして逃げたけどな?
囲まれた後は散々だった。シルバは地面に蹲り頭を抱えてボコスカ殴られ、俺も壁に叩きつけられ血反吐を吐いた後腹パン連打である。
そこで俺は自身の身に偶然仕込んでいた魔法陣を起動して自爆、そして少し移動したところで再生して何とか逃げた。レベル消費による自己爆散及び血煙の目眩しである。
プレイヤーの誇る年齢制限不可避のグロ絶対回避だ。尚めっちゃ強い人には面攻撃で肉片残さずぶっ殺されるので意味がない。
シルバもそのどさくさに紛れて逃げていて、外で合流した俺達は屋敷の外に出れないらしい悪霊に向け中指を立てて罵声を浴びせた後に退散した。
「逃げた……? なんだ、それは。知らない言葉だな」
……ほんとにすぐイキるなこいつ。情けねぇと思わねぇのか? 俺は許せないぜ、何もしてないのに無駄にボコられてレベルを無駄に消費したからな。このままやられたままでいいのかよ? 復讐したいとは思わんのか。
「ふっ。どうしてもと言うのなら、ついて行ってやらんこともないが?」
ギラリと眼光と強めてシルバがそうほざいてくるがもはや怒りを通り越した俺は無表情に冷たい視線を返した。
元々てめぇの仕事だろ。
「あれ? ぺぺじゃん。どうしたよ?」
俺とシルバの元へ一人の少女がやってきた。青い髪のスピアちゃんだ。すっかり魔族達と馴染んで来た俺達は寝込んでいるアニエスの回復を待つ間に各々が思い思いに過ごしているのだが、彼女は最近魔族の舎弟を何人か連れて近所で魔物狩りをしているらしい。
聖女はというと、怪我人が運ばれる病院のようなところで回復魔法を用いて医者紛いのことをしている。
教会、もあったのだが……祀っている神様が違うので流石に……とのことである。
そして俺は、ネズミ講のようなものをやろうとして捕まった。
「何してんの? そのおっさん誰?」
「おっさんか……確かに私の渋さから溢れる大人の魅力のせいでそう見えるのも仕方ないな」
「?」
あぁ、コイツはゴーストハンター・シルバだ。なんか自称有名らしい。
「へぇ。舎弟から聞いたことあるかも。マジで有名だよ、悪霊に関しては一番の専門家らしい」
こ、コイツが……? 俺は自分の耳を疑った。
気分を良くしたシルバは、突然懐からペンを取り出す。
「サインをやろう」
「いらない」
ピシャッと言い切るスピアちゃん。しかしシルバはテーブルに置いてあった紙ナプキンを取りサラサラ〜とサインを書いてスピアちゃんに手渡す。
てか製紙技術発展してんだ。俺はそこに驚いた。なんか森の中で原始的な生活をしている感じに見せかけて、木造建築もすごい立派だし、そもそもしばらく生活してみて龍華や迷宮都市と比べても不便すぎるということはない。
スピアちゃんは、サインの書かれたナプキンを受け取ると流れる様な手つきで破り捨てた。流石である。
「やれやれ、手厳しいな」
とか言いながら全く気後れすることなくウィンクしてくるシルバを見て、スピアちゃんは俺を見て困った様な顔をする。
「おいぺぺ。またやべぇやつ連れてくるんじゃねぇよ」
また、とはいうが俺と交流のあるやべぇ奴リストにはお前も載ってるからな。
「比較的マシだろ」
比較的ダメな方なんですよね。
と言うわけで、スピアちゃんに頼み込んで悪霊狩りを手伝ってもらうことにした。件の屋敷の前に再び立った俺とシルバは、窓から覗き込んでニヤニヤしている悪霊を門越しに見て中指を立て罵倒しておく。
おい! 見とけよボケ共! ぶっ殺してやるからな! 首洗って待っとけ! 冥府に送り返してやるよ!
「スピアさん、どうぞ」
「水です」
「あつくないですか?」
悠々とした態度で立つスピアちゃんに、舎弟の一人が槍を手渡し、もう一人がストローで水を飲ませて、さらにもう一人が団扇で下の方から彼女を涼ませている。
舎弟達はそこそこ若くて見た目が良く、スピアちゃんの逆ハーレムがここに完成していた。
スピアちゃんは舎弟を一瞥もせずに槍を受け取ると、肩の調子を確かめるようにグルングルンと回して腰溜めに構えた。
ん? まさか……。
「爆閃突・礫!!」
ランスくん時代と比べて、スピアちゃんは筋力に劣る。しかし柔軟性は男時代よりも増したと彼女は言う。あと魔力もなんか質が変わったらしい。
それはつまり、肉体の変容と運動能力の変化の為に戦い方を変える必要があった。
ランスくんの攻撃は、大体近距離から中距離を想定した射程だった。爆閃突は槍先に凝縮した魔力を刺突に合わせて解放すると言うシンプルな技だが、スピアちゃんとなった事で近距離で戦うことによるリスクが増した。しかしスピアちゃんには男時代にはない関節や筋肉の柔軟性がある。
その結果、どういう原理でそうなるのかは物理法則に支配された世界で生きてきた俺達には理解が出来ないのだが、スピアちゃんの変化した魔力と柔軟性は、爆閃突の射程を大幅に拡張した。
門の外から連続で爆閃突を放ったスピアちゃんの槍先から、輝く魔力の槍が複数放たれる。まるで散弾銃だ。門を破壊し、そのままの勢いで屋敷に激突する。
ガッ! とシルバが、突然の凶行を行ったスピアちゃんの肩を力強く掴む。
「やってしまったな……!? 悪霊にとって『家』は『領域』であり、『結界』でもある……!」
「ハァ? うるせぇな。知るか」
シルバの忠告なんのその、スピアちゃんはまた同じ技で屋敷を破壊する。やがて屋敷だったものは見る影もなくなってしまった。
「うーん。いい試し撃ちになったな。ようやっとこの身体での戦い方が馴染んできたぜ」
ランスくんはゴミクズのような性格をしているが、それを支える武力においては地味に努力の人だった。
スピアちゃんになってからも、変わってしまった身体に適応した戦い方をずっと模索していたらしく、その一つが今回の遠距離攻撃だと思われる。
「よし、帰るぞ。用は済んだし」
スタスタと、スピアちゃんが槍を舎弟に放り渡して背を向け歩き出す。するとすぐに、目に見えない壁のようなものに顔をぶつけて鼻を抑えて首を傾げた。
「なんだ?」
「まずい……! 『領域』だ……!」
俺も追いかけてスピアちゃんの前にある透明な壁を触る。不思議な感覚だ。壁、というよりは、『意識』に押し込まれる『出ては行けない』という、『法則』。
俺として、経験値が大きく入る事を知覚する。この感覚は、全くの未知との遭遇だ。
つまりこれは、『新たなる法則』。最も新しい法則は『魔法』だったが、今それが更新された。
「悪霊は招かれた家にしか入ることはできない。しかし、一度入ればそこはもう『領域』だ。だがそれは『檻』とも言える」
神妙な顔で、シルバがそう言った。
「外へ招かれない限り、悪霊は外へ出ることができない。しかし一度広い外に出れば……その悪霊の強さに応じた『領域』が形成され……! 内にいる者は、逆に悪霊の許可なく出ることが叶わない……!」
……!? なんだと……!? つまり、スピアちゃんによる屋敷の破壊……すなわち『檻』であり『結界』の破壊は、俺達が悪霊を外へ『招いた』ということになるのか……!?
「正解!!」
突きつけられたシルバの指、俺は諸手を上げて歓喜した。
やったーーッ! 景品は何だーーッ!
「シルバポイントを一ポイント進呈だ……ッ!」
要らない。
「ふざけてる場合かよっ!? 私達はどうすれば出られるんだよっ!」
はしゃぐ俺たちに吠えるスピアちゃんだが、元はお前が話を聞かずにぶっ放したからなんだが?
突然、シルバがベルトに挟んでいた小剣を二本抜き放ち構えた。俺達が驚いて彼の視線の先を追うと同時、スピアちゃんの舎弟の一人がぶっ飛んで『壁』に叩きつけられる。
「グアアアアァァァ!」
「舎弟A!」
槍を持たされている通称舎弟Aである。スピアちゃんの槍ごと、不可視の斥力によって壁に押し付けられ、苦しそう呻き叫んでいる。
その結果、スピアちゃんは槍を手にすることができない。
「来るぞッ!」
次はスピアちゃん狙いだ。僅かに彼女の前の空気が揺れた瞬間、舎弟Bがその身で斥力を受け止めた。スピアちゃんを背に、地面にまるで相撲取りの電車道みたいなのを作りながら頑張って耐えている。
今のうちに逃げろスピアちゃん!
「う、動けない……」
すでに彼女の背には『壁』があるらしく、何とか押し潰されないよう舎弟Bが耐えているようだが、抜け出す隙間はないらしい。舎弟Bの背中にスピアちゃんの前面がギュッと押し付けられていた。
……! スピアちゃん、そいつお前の胸の感触というか身体の感触味わってねぇか?
「そんなことはないで……! あアアアァ!」
「ぎゃああああ! 耐えろボケェ!」
取り乱した舎弟Bが僅かに押し込まれ、スピアちゃんはちょっとサンドイッチされた。横から舎弟Cが助けに入って、何とかスピアちゃんが潰されるのを防ぐ。
というわけで、フリーなのは俺とシルバだけとなった。
「まずいな、凄まじい力だ……このままでは三人とも、潰されて死んでしまうかもしれない」
「くくく。そうだ、今はお前と戦う為に余力を残しているが、全てを注げばそこの三人なんぞ一瞬でぺちゃんこよ」
崩れた屋敷の跡から、悪霊の取り憑いた依頼人の妹が余裕の表情で歩いてくる。いつまでも依頼人の妹呼びは長いのでそろそろ固有名詞を用意したいが、あいつの名前知らないので困っている。悪霊と呼んでおくか。
「ほぅ? 果たしてそうかな?」
含み笑いをしている悪霊に対して、シルバも不敵な笑みを返してそんなことを言い出した。
「何がだ?」
その態度に少しイラッとしたのか眉を顰めつつ悪霊が聞くと、シルバはさらにその顔をニヒルに笑っているつもりなんだろうなって腹立つ表情に変える。
「本気を出せば? 果たして、本当にそうかな? と言っているのさ」
「「ギャァァァァ!!」
スピアちゃんと舎弟の叫び声が大きくなる。本当に手を抜いていたらしい。そして悪霊がスピアちゃん達を潰すために力を割いた瞬間、ギラリと眼光を鋭くさせたシルバは懐から小剣を取り出して悪霊に襲い掛かる……っ!
ヒョイっと、不可視の力でシルバの剣が抜き取られその辺に投げ捨てられた。シルバがポケーッとしている内に身体を宙に浮かせて、悪霊はシルバもその辺に投げ捨てる。
「グァァァッ!」
弱すぎる。
いや、もしかしたらこの悪霊が特別強いのか? シルバみてぇな雑魚が悪霊ハンターとして有名らしいし。
「あとはお前だな」
そう言って悪霊は俺を見る。
くくく。俺も含み笑いを返す。いいのか? シルバのやつがその程度で本当にやれたと?
「なに?」
ちらりと、悪霊が倒れたシルバを見る。すると彼はぶっ倒れたまま目をガン開いてじっと悪霊のことを見つめていた。キショっ……。
「……何のつもりだ」
「いや、私のことは気にせずその少女を攻撃するといい。その時がお前の最後だ」
しれっと俺を囮にすんじゃねぇよ。
まぁそういうわけだ。そう俺は言って背を向けた。
俺は帰らせてもらう。
「てめぇぺぺ! にげんじゃねぇ!」
スピアちゃんからの怒声が耳に入るが鼓膜を自在に消すことのできる俺たちプレイヤーに聞く耳はない。
「待つんだ」
とはいえ聞こえていても無視すればいいだけなので別に鼓膜は消していなかった、そのためシルバの俺を呼び止める声はしっかり聞こえた。
「お前はそれでいいのか? まるで抵抗もできずされるがまま嬲られ、尊厳を魂から汚されたと思わないか?」
別にボコボコにされたくらいで傷つくような尊厳だったらとうの昔に汚されきってるわな。あばよ。俺は手を挙げて再び立ち去ろうとする。
「待て。まずは私を見ろ」
うざいので見る。地面に寝そべってる。早く立てよとしか思えない。言った。
「先程投げ捨てられた時に、足をグネったと聞いたら……どうする?」
どうもしない。
お前今さっき俺のこと囮にして悪霊さんに最後だなんだの脅してたじゃねぇか。動けるんだろ?
「動けないと言ったら……どうする?」
どうもしない。
悪霊さーん! こいつしぶといんで先やっちゃってくださーい!
「ちっ、お前らさっきから緊張感のない奴らだ」
「ちょっ! ぺぺ! 本気でやばいんだって! 潰れる! ギャっ! 腕折れた! 舎弟の!」
悪霊さんはシルバにムカついてるし、スピアちゃんの盾になってる舎弟二人は腕が折れてしまった。スピアちゃんはその隙に悪霊さんパワーから滑るように抜けて、キョトンとしながら壁と悪霊さんパワーに挟まれて死にそうな舎弟を眺める。
「逃げるか」
悪霊がスピアちゃんも攻撃範囲に入れ直そうとするも間に合わず、槍を拾って全力の爆閃突。領域に穴が空きその隙間から脱兎の如く全力で逃げたスピアちゃんは一瞬でその背中すら見えなくなった……。領域に穴開くんだ。まぁこの世界はどんな法則もゴリ押しでなんとかなるところあるしな、界力の高低が全てだから。
「ふん、見下げた根性だ。仲間を見捨てて逃げるとはな」
シルバがスピアちゃんの見せていった情けなくも躊躇のない逃げっぷりをバカにする。しかし懐から取り出したメモにその逃げ方を書き込んでいた。テメェ余裕じゃねぇか。
「逃したか、もういい。シルバ、貴様から殺す」
舎弟達はもはや全滅だ。彼らに割いていた力を抜き、悪霊は俺とシルバを見た。
「待て」
しかしシルバは毅然とした態度でそう言った。悪霊が言葉を待つ。本当に待つんだ。俺は驚いた。口を挟む。
多分こいつ命乞いとかし始めますよ。
「私が? ありえんな。しかし、どうしてもというなら……見逃させてやらんこともないが?」
「死ねぇぇ!」
ドォン! と派手にシルバの居たあたり一帯が吹っ飛んだ。凄まじいパワーだ。これが、悪霊の本気……!?
土煙がシルバの姿を覆い隠し、遅れて衝撃波が俺の顔を叩く。場を沈黙が支配して……土煙が晴れた時、そこには髪を逆立たせて銀の輝きを放つシルバの姿があった。
「なにっ!?」
なにっ。俺と悪霊が同時に驚く。輝くシルバから放たれる威圧感は、さまざまな強者と出会ってきた俺をして……異質な強さだと感じさせた。
シルバが握り込んでいた拳を開くと、手の内からパラパラと何かの破片が地面に落ちる。それを震えながらシルバは見つめて、全てが散った時、怒りによるものか更に威圧感を増した。
「これは飲み屋のポイントカードで、看板娘マチルダちゃんとのデート権まであと一杯だったんだ……ッ!」
俺と悪霊は唖然とした。今奴がその身に宿している力は、ゴーストハンターシルバ(だっけ?)という二つ名を付けられるに相応しい。
それなら最初からそれくらいの気合いで来いよ。と俺は思った。
「食らえ……ッ! 大銀光悪霊滅殺最終滅尽波動砲《シルバーデストロイアンドラブアンドピースミラクルバーストスーパーシルバーキャノン》!!!」
「グァァァァァァァ!!」
シルバの手から放たれる銀の光線は、一瞬で悪霊を飲み込みその悪しき魂だけを浄化した。その場に残されたのは、元の体の持ち主。キョロキョロと辺りを見渡して、自分の手を見つめてキョトンとする。
「私は一体……」
「どうやら正気に戻ったようだな」
先程までの逆立った髪や立ち昇るオーラはどこにいったのか、いつも通りの姿に戻ったシルバはニヒルに笑いながら少女にそう言った。
「ここ、私の家……? 何故、こんなことに?」
「悪霊さ、君に取り憑いた悪霊がこんな酷いことをした」
ガラガラと、崩れた家の瓦礫の中から依頼人である少女の兄やその他家族が這い出てきた。ボロボロの姿だが、命に別状はないらしい。
「ミヌカ(※妹の名前)っ!」
正気に戻った妹の姿を見て、目を潤ませ抱き合った……! 感動の瞬間だ……! 解決……ッ!
俺はシルバの肩を掴む。
よしきたシルバっ! 報酬をもらうぞ!
「ふっ、まかせろ。搾り取ってやる」
ニッ、と。歯を剥き出しに獰猛に笑ったシルバは依頼人の元へ向かった……。その後、妹ちゃん以外は普通に操られている間も記憶があったので、家ごとぶっ殺そうとした(主犯は青い髪の女だが)下手人である俺達は警察的な組織に拿捕されることとなり、牢にぶち込まれた。
濡れ衣である。家屋損壊は依頼遂行のために仕方のないことであったという主張は通ったが、とはいえ完全なる潔白は証明できなかった。
次の日、青い髪の女ことスピアちゃんも同じ牢にぶち込まれた。確かに悪霊祓いにおいて多少の損害は仕方がないものだが、流石にやりすぎ。とのことである。
俺はこの二人とは違う! そう主張したが、一緒にいたので同罪的な感じで聞き入れてもらえなかった。所詮こいつらは魔族。耳が長いだけの人間かと思いきや、性根は魔に相応しい腐りっぷりだ。人間の国に帰りたい。
「お前はあっちでもしょっちゅう捕まってるだろ」
確かに。人間ってクソだわ。こんな可憐な少女を捕まえて犯罪者だとかよぉ。
「だが三食屋根付きだと思えばそう悪くないのでは?!」
シルバは牢の質素な飯を食いながらそんなことを言い出した。こいつ三食食えない生活してそうだもんな……。
その後数日間は拘束されたが、くつろぎ始めたシルバに嫌気が差したのか急に放り出された。
久しぶりに吸ったシャバの空気はあまりにも美味く、見上げた青い空はささくれだった心に染み渡る。
とりあえず報復のために復興中の元依頼人の家に出入りする業者に粗悪な建材を掴ませようとしていた俺は再び勾留された。
やっぱ魔族ってクソだわ。
TIPS
とある作品がコミカライズされたことにより記念にメタな短編を書こうとした作者だが、勝手にファンが自作で意味わからん記念話書くのわけわかんねぇなと思ってやめたらしいぞ!




