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急転直下

遂に始まってしまったゲーム。その内容とは一体...!?

ガチャ──ッキーン...!


忙しく鳴り響くキーボードの拍子を乱すかのように、一つの甲高いノイズが劈く。


「応答せよ...応答せよ...こちら本部。渋谷スクランブルにてプラヴォスが姿を表した。至急、周辺を調査し、見つけ次第確保せよ。」


再審課内に響いたのは、本部からの司令だった。


『Pravos』という名前を聞いた途端、メンバー全員が身構える。


──国防総省をハッキングした危険人物だと。


「現場班、早急に向かってください。現場リーダーは...騎龍さん、良いですね?」


入谷の表情が固くなり、課内に緊張が走る。


「...はい、任せてください...!!」


分析班の手が一瞬止まるも、騎龍の力強い応答に背中を押され、再び分析を始めた。


「行くぞ!」


騎龍が窓を見据え、拳を強く握りしめた。


「──絶対に捕まえてやるッ...待ってろ、クソ野郎...!」
















「んーーー!!!!」


渋谷に響いたのは、甲高い女の声。その声は二人とも聞き馴染みのある声だった。


クロの目に現れたのは、口元をガムテープで縛られ拘束された由香里の姿。


それもひどく怯えており、目の焦点が合わない。


「ゆっ...由香里!!」


白賭が拳を握りしめる。それも、爪の跡が付くほどに。


「どういうつもりだっ...!由香里は何も関係ないだろう!?」


「ははっ、だからだよ。」


0bitがクロを上から見下ろす。まるで、力の差を見せつけられているように、クロは感じた。


「友達を人質にすることで、ゼロビット自身が”ゲーム”を楽しもうとしてるんだ。」


白賭が一歩前に足を出した。逸れることのない真っ直ぐな視線を向けた相手は──0bit。


「なんだよそれ...ただの自己満足じゃねぇかよ!」


(からす)の群れが、不規則に宙を旋回する。0bitはそれに笑みをこぼした。


「それじゃ話を戻そう。」


由香里の肩に手を置いた。


「渋谷のとある場所に二つ、爆弾を仕掛けた。」


「なっ...!!?」


「君たちにはその二つの爆弾のシステムをロックして爆破を防いでもらう。失敗したら由香里ちゃんは...」


0bitは静かに指で銃を作り、由香里に向けた。


「そんな無茶な...!第一、爆弾処理なんてやったことねぇし!」


「まぁまぁ、そう焦るなよ、説明はまだある。爆弾には独自のOSを搭載させてある。爆弾をロックするのも、実行中のプロセスを停止させるだけでいいんだから、僕ってばとっても優しいだろう?」


0bitがクロの声にかぶせて説明した。


「つまり、そのプロセスを止めれば良いんだな?」


「そういうことさ。」


クロは目をつむった。


(勝負に乗らなければ由香里の命が危ない。


でも──爆弾解除なんて出来るのか...?


いや、やらなきゃ死ぬだけか。)


「待て、ならこちらが勝てばお前はどうするつもりだ。」


白い髪が風に靡く。握りしめていた拳は少し弱まっていた。


「僕は、自首するさ。爆弾を仕掛けた人間としてね。」


「ふっ、そうか。ならこちらとしてもやる意味はありそうだな。」


白賭の表情に少し緩みが出来る。しかし、その瞳の奥はいつだって真剣だった。


静まり返った屋上は今、決戦の場となっていた。


鴉の群れが見えなくなった頃、クロの閉じていた目が開く。


「さぁ、準備は整った。いつでも来い。」


足元にはPravosUSBの挿さったパソコンが、堂々と佇んでいた。


「それじゃあ始めようか!制限時間は三十分!」


0bitが片手を上げる。


「──ゲーム、スタートだ。」


勢い良く振り下ろした手の先にあったのはパソコンのエンターキー。


「カチャ」という軽い音を鳴らし、約二十二万人の命を天秤にかけた地獄のゲームが幕を開けた。


クロはおなじみのターミナルを使い、渋谷中の電子機器をスキャンしていく。


やはり手はいつものように上手くは動かず、強ばるばかり。


「くっそ、だめだ...!」


クロの前に現れたのは数多の検出結果。


(なっ...絞ってこれか...!?)


ターミナルに映し出されたその多くのIPアドレスに、クロは圧倒されていた。


「俺も手伝うぞ!」


「ありがとう白賭!」


白賭もPravosを起動させ、クロの近くへと歩み寄る。


「何をすればいい?」


一瞬、白賭の手が止まる。


「とりあえず........いろんなフリーワイファイに接続して爆弾のOSを探してくれ。」


「わかった...!」


白賭も手を動かし始めた。


二人の画面は白の英数字の大海原だった。


「くっそ、もう五つのサーバーはあたったけど見つからない...!」


「俺もだ!それにこの時間帯は接続してる人が多すぎて重い...」


かなりの負荷がかかっているのか、白賭のパソコンのファンがうるさく鳴いている。


キーボードの音が命の天秤を揺るがしていた。


「そんなに闇雲にしたって非効率じゃない?」


0bitが手すりにもたれ掛かり、二人の様子に口を出す。


「何が言いたい?」


「今までの僕の行動を見た辺りから爆弾の場所を察しろってこと。」


0bitが退屈そうにあくびをすると、クロが鋭く睨みつける。


「お前の行動...?」


クロはそう言うと今までの0bitの行動を思い返す。


(通りで...!導かれているような気がしたのは気のせいじゃなかったってことか!)


(なっ...!?あれはゼロビット管理のサイトじゃなかったのか!?)


「...!」


クロは目を見開き、再びパソコンに顔をうずめた。


クロの中で平坦に走り続けていた線が波を作り出す。


「どういうことだ?」


「白賭、チェンジだ。フリーワイファイの方はボクに任せて。」


クロの言葉に困惑する白賭だったが、刻一刻と刻まれていく時間を目に、驚いている暇は無いと考えた。


「わ、わかった...!」


白賭も実行中のコードを強制停止し、新しいターミナルを開く。


「やっぱり...見つけた!」


白賭がキーボードに指を置いたその時、クロがそう叫んだ。


「爆弾を見つけたのか?」


白賭の肩が上がる。


「いや、違う。けど、爆弾の仕掛けられているネットワークを見つけた。」


「なら1つ目は解除できるか!?」


「残念ながらそれは難しい。このネットワークに接続するにはパスワードが必要なんだ...」


「そうか...どうするんだ...?」


白賭の打つ手が止まる。うつむいたクロを横目に、少し心が冷たくなる。


「残り二十五ふーん。早くしないと渋谷に居る人全員死んじゃうよ〜。」


0bitが呑気に指を眺める。おちょくるような声が二人の癪に障る。


「だ、大丈夫だ...まだ時間はある...」


「それはどうかな?」


「なっ...どういうことだ...!」


白賭が0bitを見上げる。強い風が白賭の髪を揺るがせた。


「君たちがやってる方は一つ目の爆弾...数分で解除可能なやつだよ。──本命は、二つ目。」


「二つ目...?」


白賭はゆっくりと眉を上げる。


「そう。二つ目の爆弾は最速でも二十分は掛かる。それも爆撃の威力は一つ目の十倍ほど。さぁ、君たちに止められるかな?ははははっ」


0bitの姿は月の逆光に照らされ気持ちが悪いほど不気味に見えた。


「くっそ、何のためにそんなこと...!」


白賭がふとクロの方へ目を向ける。


するとそこに見えたのは再び───クロとは違う何者かの姿が。


「クロ...?...はっ...!」


クロのモニターはまたもや数式を解いていた。


(素因数分解だ...間違いない!それも、三十桁...!?どうやってそんな桁...)


ガチャン───


「解けた...解けた!?解けたよ白賭...!」


気がつけばクロは元に戻っていて、数式を解き終えていた。


「なっ...ど、どうやって──まぁそんなことはいい!その数値がパスワードなのか!?」


「そう!これでネットワークに接続できる。」


クロの興が乗り始める。白賭がおもむろに0bitの方を見ると、少し目が凍りついている様に見えた。


「なんだ、何が言いたい!」


「いや、なんでも無い。」


白賭がぐっと強く睨みつけると0bitは目を逸らした。


(意図的にネットワークから暗号化されたパスワードを作り出した...そうか、ははっ。)


「──見つけた。」


モニターに映ったのは爆弾のエンドポイント。


CodeBomb(コードボム)...コイツが一つ目の爆弾...!」


「どうやってハッキングするんだ?」


隣に座り調査を続ける白賭が顔を覗き込ませる。


「この爆弾、欠点(セキュリティホール)が見つからない。恐らく、遠回りが必要だ。」


「遠回り...?」


「あぁ。このファイアウォールがIPアドレスを選別してる。だからまずはその選別に通るコンピューターをハッキングしなきゃならない。」


「まじかよ...」


白賭がしばらく頭をひねった後、こう言った。


偽装(なりすまし)は出来ないのか...?」


「出来ない...このフリーワイファイの設定上、偽装すればブロックされて二度と接続できなくなる。」


白賭の顔が少し曇る。しかし、自分の顔色に気づくとすぐに元に戻した。


「じゃあやるしかないな...!」


「あぁ。しかも、もうすぐ目当てのコンピューターのハッキングが完了する。」


「はっ!?速くないか...?」


クロの狂気的なハッキングスキルに味方ながら恐怖を隠せない白賭だった。


「これくらいが普通だよ、ゼロビットのレベルが高すぎて苦戦してただけ。」


「そうか...」


モニターに光る運命のCPUパーセンテージが波を作りながら、こちらを睨んでいた。


キーボードが弾けるたびに刻まれていく時間を横目に、二人は一つ目の爆弾に手を伸ばす。


「ハッキング完了。あとは爆弾をハッキングできれば...!」


「できそうか...?」


「あぁ。パケットの送信が許可されたんだ、絶対にハッキングしてみせる...!」


クロのキーボードの打つ速度が上がった。


「最後にこの”コード”でッ...!」


モニターに打たれていく記号混じりの謎コード。そのコードからは、ただひたすらに希望の光が放たれていた。


カチャン───


「...」


「はっ...!」


白賭は結果を目にし指を震わせた。


「爆弾ハッキング成功。そして...」


再びキーを打ち始めたと思えば再びエンターを強く押したクロ。


「これで、一つ目の爆弾──解除完了だ。」


二人が一度に肩の力を抜く。それを見た0bitが口を開いた。


「おめでとう、一つ目の爆弾は解除されたよ。でも、二つ目の爆弾はそう簡単にはいかない。さぁ残り十五分。健闘を祈るよ。」


解除されたことによって0bitの機嫌が少し上がる。「人が死ぬ」というのにも関わらず、相変わらず楽しそうだった。


「白賭、そっちの調子は?」


「あぁ。かなり調査したが見つからなかった。」


言葉とは相反して白賭の顔は自身に満ちていた。


「あとどれくらい残ってる?」


渋谷駅に止まった電車を横目に淡々と話すクロ。


「ふっ、残るは一つ。『渋谷109』内部のネットワークのみだ。」


「なら二つ目の爆弾はその中ということか。」


「そういうことになるな。」


白賭が誇らしげに鼻をこする。


「白賭、ちょっと耳を貸して...」


(やっぱり...まだまだだね、あの二人は。この調子なら、あっけなく渋谷は爆発しちゃうな〜。)


二人を見下しながら0bitは交差点の方へ向いた。


「109の内部サーバーの構成はわかってるのか?」


「あぁ。前に侵入したことがあるが、確か──はっ...!」


「どうした?」


白賭がモニターに顔を覗き込ませる。


「これ見て、前とはサーバーのロジックがまるっきり変わってる。恐らくゼロビットが変えたんだ...!」


「そんな!じゃあ...」


二人が顔を合わせる。


「あぁ。侵入に時間が掛かる...」


「どれくらいだ...?」


「ゼロビットのセキュリティレベルを考えれば...大体、十分くらいだろう...」


弱々しいクロのつぶやきに白賭は目を見開いた。


「そんなッ...!ハッキングに成功しても、残り五、いや四分で爆弾を見つけて止めないといけないんじゃ...」


「そういうことになる。だから白賭も手伝ってくれ。一緒に手分けしてサーバーの穴を見つけるんだ。」


「お、おう...!」


クロの芯の通ったその目に圧倒された白賭は小さくうなずいた。


クロが立ち上がり反対側の手すりの方へ走る。風に揺られながら109のタワーを静かに眺めた後、座りハッキングを開始した。


それを横目に白賭は109のスキャンを開始していた。


(やっぱりクロは凄いな...一人で爆弾解除しちまって。俺だって、クロを唸らせられるくらいのことをしてみせたい...!)


スキャンの結果を見るも白賭の表情が晴れることは無かった。


「結果なしかっ...!クロの方はどうだ!?」


「だめだ!全然欠点が見つからない!」


少し離れたクロに聞くも、望むものは答えに含まれていなかった。


「七分〜。はははっ!」


0bitが愉快に笑いながら、死へのカウントダウンを刻む。


「くっそ...!どのスキャンも反応なし...!」


(いや、諦めるな。考えろ...このサーバーの構成にあったハッキング方法...!)


モニターに反射して自身の真剣な顔が映る。その時、ふと頭の中の引き出しが開けられたような感覚が走った。












「白賭...ごめんね、お母さん...入院することになって...だから、青賭(あおと)の面倒...お願いできるかな...?」


女が子供の髪を撫でる。その手は少し震えていて、それでいて暖かかった。


「うん...」


子供は喉まで出ていた言葉を押し殺す。


「いかないで」なんて言えられたら、どれだけ幸せだったか。


しかし、言ってしまったら困らせることになる。


だから、言うことが出来なかった。


「ごめんね...お金は毎日私の病室まで取りに来てね。遠いけど、取られたらいけないから...」


再び静かにうなずく子供。しかし、今度は女に顔を隠したままうつむいた。


女は子供の肩が強張っているのを目にし、きゅっと肺が締まる感覚がした。


薄暗い扉の前。


子供の沈黙が響く。


二人はこの時、最悪の選択をしたということに気づくことはなかった──












(自分の存在意義をずっと探してたんだ。


──それを、このパソコンが...この”コード”が教えてくれた。ありがとう。)


カチャン──


ピッピッピッピ──ピピッ──


モニターに映し出されたのは緑色で小さく『Success』。


それを目にした白賭の目には、星のような輝きがあった。


「出来た...内部サーバーに侵入したぞ...クロ!」


白賭の活気に溢れた声にクロの耳が傾く。


「ほんとうか!?はく...!って、白賭...!?」


「ん?どうしたんだ...?」


白賭の目からはひと粒の涙が頬を伝っていた。


「いや...なんでもない!爆弾を探そう...!」


「あぁ。」


白賭が内部ネットワークのスキャンを始める。


モニターに映るパーセンテージが、爆発までのタイムリミットと比例して進む。


三十、四十と進むパーセンテージに二人は目を奪われていた。


「──早く...!」


「──頼む...!」


二人がそう言うと一気に九十パーセントまで駆け抜けた。


「五...六...七...!」


0bitの口角がいつにも増して上がっていることに気がついたクロは喉にガラスの破片が刺さったかのような感覚に走る。


「百パーセントなったぞ...!!」


白賭がそういった瞬間に結果がズラッと映った。


「はっ...!!??」


ひとしきりの風が抜ける。


「そんな...無いだと...?」


そこに爆弾の姿は見えなかった。


「ははははっ、どうしたんだい?あと四分で爆発だよ〜?」


白賭の目の焦点は小さく震え、呼吸は荒くなっていた。


「さぁ、どうする?クロくん!!??」


0bitは再び屋上から足をぶら下げて座り、うるさく微笑んだ。


「ゼロビット...!お前だけは...絶対に許さない!」

一つ目の爆弾を解除に成功した二人。

しかし、二つ目の爆弾に接続していたと思われていた109の内部サーバーにはその姿は無かった。

二つ目の爆弾の在処はどこなのか!?0bitの正体は明かされるのか!?

次回お楽しみに!!

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