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決戦間近

0bitの計画によって袋のネズミ状態となった二人。

咄嗟に逃げ込んだ路地裏の先に待つものとは...!!

「本当の...完敗...」


白賭がそう言った後、しばらく黙り込んだ。


路地裏には──騒ぎ立てる群衆の声と、息が切れて響く荒い呼吸音。


白賭は未だに信じられなかった。


(全部が計画通り?...俺達の行動を全て知っていた?...そんな事...)


たった一人の男によって、警察に送り込まれるかもしれない。そう考えると気が気ではなかった。


「...さっ、次は白賭のターンだ。後ろの集団は撒けそう?」


静かな空気に耐えられなくなったクロが口を開く。


「ああ一応。今話してた最中にこの迷路の構造を把握した。」


クロの言葉のおかげで少しずつ心配事を忘れていく。


「おぉ!」


クロは敬服した。なぜならクロは人の話を聞きながら別のことを考えることが少し苦手だったからだ。


「丁度、次を右に曲がればギリギリ登れそうな二階のテラスがある。そこに登って一旦上に避難するつもりだ。」


「おぉ...登るのか...」


クロの目に輝きが消えた。


「じゃあこのまま群衆に押しつぶされて死ぬか?」


白賭が冗談交じりに言う。しかし、その声は力強かった。


「いやそれは、嫌だけど。まぁ、助かるため...気張るかぁ。」


「さぁ、登るぞ。」


白賭が右に曲がる。それと同時にクロの手を離した。


その瞬間、白賭はものすごい速度で駆け上がって行った。 靴底と手すりがぶつかり、鋭い音がクロの耳に刺さる。


「は...!はやっ...!?」


その姿をみたクロも懸命に登り始める。しかし、散々走ったのが裏目に出る。


「くっ...腕の力がっ...」


白賭の耳にその言葉が入り、おもむろに振り向く。そこにはテラスの手すりにぶら下がった状態のクロが。腕は震え、今にも落ちそうだった。


「おい!」


三階テラスに登ろうとしていた白賭が、片手を差し出す。


「あ...ありがとう...!」


「絶対落ちんなよ!」


白賭がクロを引っ張り上げる。その瞬間、白賭の片手に握っていた三階テラスの手すりがズレ始める。


「まずいっ...!!」


白賭がクロを引っ張り上げたことを確認すると、すぐに握る手すりを三つ隣に変えた。


「白賭、大丈夫...?」


クロが曇った表情で上へ声をあげた。


「なんとかな。」


白賭がため息を一つ吐いた。


「クロもこっちに上がってこい。二階のテラスはどうにもバレそうで危なっかしい。」


「えぇ...手すり外れそうだったじゃん。」


「文句言うな、早く。」


白賭が上の階から手を差し伸べる。クロは手を取り、必死に登った。


二人が三階テラスに登ったタイミングで丁度群衆が通りかかる。


「あぶな...後ちょっと遅かったらバレる所だったぜ...」


白賭が自身の手を見つめながら小声でつぶやく。白賭の手は乾燥していた。その所為で手に擦り傷が出来る。


「行ったかな...?それにしても民意ほど怖いものは無いね。」


群衆が通り過ぎたのを確認したクロが白賭と同様小さくつぶやく。


「どうしようか...帰ろうにも、見つかったらさっきの地獄をまた味わうことになるけど。」


クロがそういうも、白賭の返答は無かった。


「あれ、白賭...?」


「なぁ、もういっそのこと──」


プルルル──プルルル──


「はっ...!」


唐突に鳴り響く電話。それも状況を弁えず、まるで赤子のようだ。


その瞬間、空気が変わった───またアイツだ。


「ヤツか?」


白賭が深刻な顔つきで聞く。


「あぁ、間違いない。」


着信名は、相変わらずの『不明』


──しかし、二人は着信先が0bitだということを確信していた。


「出るよ...」




ザザーッ──


「やあ、二人共。調子はどう?」


掠れた声──やはり、声の主は0bitだった。


「あぁ。最悪だ。お前のおかげでな。」


クロが鋭い声色で言葉を放つ。


「そりゃ良かった。ところでなんだけどさ、二人共そんなところに縮こまっててもしょうがないよ?」


「場所がバレてる...!?」


白賭が思わず声を上げる。一方クロは果たして知っていたかのように笑う。


「ははっ、やっぱりボクらがここに来ることを知ってたか。お前なら予測しかねない。」


「褒めてくれてありがとう、クロくん。」


「褒めてなんかない、そもそもお前なんか端から褒めるつもりない。」


今度は一切心の籠もっていない声でクロが0bitを一刀両断する。


「なぁんだ、褒めてないか。まぁいいさ、そんなことより上に上がってきなよ。君たちはもう、僕のゲームに参加する権利を得ているんだから。」


電話越しに0bitが微笑んでいるのが見える。クロの0bitへの嫌悪感は増すばかりだった。


「ゲームだと?笑わせるな、映画の真似事か?」


「でも君は今、笑わずにはいられない状況下に置かれているよね?」


0bitの口角は上がったままだった。


「その、ゲームってのは...一体なんだ...」


白賭が不意に口を開く。その言葉を聞いた0bitは声色を変えてこう囁いた。


「それは屋上に来てからのお楽しみさ。」


そう言い残し、0bitは何の前触れもなく突如、電話を切った。


その時、クロはとあることに気づく。風の音や群衆の騒がしい声すら、消えたのだ。


ひたすらに不気味な時間が進む。


「...もう、後戻りは許されないみたいだな。」


白賭が静かに口を零す。


「ああ、上がろうか。」


クロはそう言ったきり黙り込んで、歩みだした。














「これより、国家公安委員会による新たな組織、『サイバーテロ再審課』の設置についての決定をここに定める。」


内閣総理大臣がそう言い放ち一つの組織の閣議決定が行われた。




『サイバーテロ再審課』


近年の度重なる日本へのサイバー攻撃は深刻化を増していた。


しかし、どの組織もレベルの高いハッカー集団には太刀打ちできなかった。


── EMPKILLERという組織は特に。


そこで、国家の中でもトップクラスの技術者、現場班を集めた組織が作られ、捕まえることが出来なかったハッカー集団ともう一度立ち向かおうと作られた。


それが───サイバーテロ再審課である。




「さぁ、それでは皆さんには早速、例のハッカー集団の調査を行ってもらいます!!」


張り上げた声で仕切り始めたのはこの組織の司令官である『入谷郷(いりたにごう)』だった。


入谷は数秒、沈黙を貫いた。すると突如として、表情を変える。


「その名も───エンプキラーです。」


その名前が課内に響いた瞬間、周囲の人々が唖然とする。


トップクラスの技術を持ってしても、EMPKILLERには敵わない。そうメンバーの全員が知っていた。


すると、ある一人のメンバーが立ち上がった。


「ちょっと待ってください、エンプキラーにどうやって立ち向かうっていうんですかっ──」


「落ち着いてください、私だってエンプキラーの匿名性くらい知っています。でも、このまま放っておくわけにはいけない───既に八件ほど、大企業の攻撃が確認されています。」


入谷がメンバーの声に重ねるようになだめる。その後、現在の惨状を目の前に見せた。


モニターの中で、一際目立っていたのは企業の被害総額だった。


「にっ、二千億!?」


またとある一人のメンバーが立ち上がり大声を上げる。周りのメンバーもまた、どよめきを隠せずに居た。


「ようやく気づきましたか。そうです──二千億円なんて、日本の経済安全保障を揺るがす国家的な巨額なのです。そして、だからこそ、これはあなた方にしか務まらない。」


入谷がメンバーに強く訴えかける。入谷に主張をしたメンバーの一人も、その声色には強く圧倒される。


課内がざわつき始めるも、また一人が声を上げる。


「入谷司令官のおっしゃるとおりだ。それに、この任務を反対するということは、この組織を立ち上げることを提案した総理に歯向かうということになる。」


しっかりと芯の通ったその声からは、過酷な背景が読み取れる。


その言葉を聞いたメンバーは一瞬静まり返るも再びざわつきを始めた。


しかし、直前のざわめきとは一転し、賛成の声がこの場を覆った。


「わかりました。僕、やってみます。」


一人のメンバーはそう言い、任務を始める。それに続くように次々と任務を始める姿勢が見えた。バラバラとなっていた『サイバーテロ再審課』


それがいつの間にか、一つの形を創り上げていた。


「ありがとうございます、騎龍(きりゅう)さん。貴方の一言で、チームがまとまりました。」


入谷が笑みを浮かべ、深くお辞儀をした。騎龍は一歩下がりへりくだった。


「いえいえ。私はただ、国民を脅かすテロリストを捕まえる一心で言ったことですので...」


「確か...騎龍さんは以前、特殊急襲部隊(SAT)に所属していたんでしたっけ?かなりのご活躍を見せていたと聞きましたが...なぜここに?」


騎龍の言葉に思い出したかのように入谷が顎に手を当てる。


「はい。話せば長くなるのですが...」
















カッカッカッカ───


錆びついた階段に靴底が触れる。少し湿った床は今にも抜けそうだった。


「なぁ...クロ。」


白賭が顔色をうかがうも、クロは黙り込んだまま何も返すことは無かった。


(一体どうしちまったんだ...ゼロビットの電話以来、一切口を開かない。)


五階から見渡す外の景色はひどく淀んでいた。


「それにしても...ここの建物、何階建てなんだろうな。」


「...」


白賭は冴えない顔で辺りを見回す。すると枯れきった観葉植物がこちらを睨んでいるのが見えた。


(ゼロビットはクロに相当な怒りを買ったんだろうな...)


そんなことを考えながら歩いていると、白賭の視界からクロが忽然と消える。


(あれ?クロは?)


ピピッ─ピッピピ


機械音の鳴る方へ目を向けるとそこにはクロの姿が。白賭は胸をなでおろした。


「なんだよ、急に居なくなるからびっくりしたぜ...」


白賭がクロの方へ駆け足で歩み寄るも、途端に足を止めた。


(待てよ───こいつ...クロじゃないな。)


根拠はなかったが、どこか雰囲気が違って見えた。白賭は息を呑む。


「クロ......?」


腫れものを触るように、白賭は歩み寄った。


だんだんと、自身の足音が遠のいていく。まるで、意識だけが置き去りにされた様だった。


「...」


ようやくクロの手元が見えると、そこにはパソコンで何かをしている様子が。


その時、白賭の耳に自身の足音が差し込んだ。


「はっ、なんだよ。ただのドアのロック解除か──って...」


白賭の顔が一瞬緩むも、とあることに気がつく。


(このロックセキュリティ、見たことがある。確か完全に外部からの通信を遮断しているはず...ケーブルも接続してないのに何してるんだ...?)


カチャ───


白賭が険しい表情で考え事をしていたが、そんな暇もなくドアのロックは解除された。


「はっ...!?」


クロがノートパソコンを閉じ、立ち上がる。その瞬間を白賭は見逃さなかった。


(今の、クロのパソコンに映っていたのは間違いなく四次方程式...!?それも何のツールも使わずに...数学嫌いのクロがどうやって...?)


固まったままの白賭を置いて、クロはとめどなく先に進む。建物の中は微かな足音が響くだけだった。


「ちょ、ちょっと待てよクロ!」


白賭も遅れてドアの先に進む。そこには折返しの非常用階段があった。


無心で駆け上がる。白賭にとってこの程度の階数、どうということではない。


(クロ...!早くもとに戻ってくれよ!)


階段が残り数回となった時、白賭は強く願った。


カッカッカッカ──


「はぁ。クロって意外と足早いん──」


六階へ着くとそこには表情を曇らせたクロが居た。


その時、白賭は確信した。───本物のクロだ。と


「クロ!!大丈夫か!?何があった!」


白賭が急いで駆け寄るもクロの表情は変わることがなかった。


「わからない...起きたら真っ暗な場所に居て...もう一人の自分に会ったんだ...その後、気づいたらこんなところに...」


「もう一人の自分...?」


クロの表情からして、冗談を言える状況でもないと判断した白賭は一度話を呑み込む。


「ここは...?」


「逃げ込んだ建物の中だ。って、それを聞くってことはほんとに意識がなかったんだな。」


この時、白賭は自身の発言にはっと思い出す。


(やっぱりか、あのときのクロはクロじゃなかった...!てことは、クロが言ってたもう一人の自分...?)


「ここがあの建物の中...」


クロが静かに頭の中を片付けていく。


「そうだ。ここは六階で、恐らくこのでかい扉を開ければすぐ屋上。」


目の前に佇む大きな扉からはおぞましく、それでいて妙な雰囲気を放っていた。


「って事は...!ゼロビットが言っていたゲームは...もう、目の前に...?」


「そういうことになるな...」


二人は固唾を飲む。呼吸の仕方も忘れてしまうほど、妙な雰囲気に押しつぶされていた。


「気を引き締めよう、ゲームって言っても見当はついてる。」


「あぁ。俺もだ。」


───決戦は、もう目の前だ。


「さぁ、行こうか。」


勢い良く扉を開いた。鋭く月の光が二人を刺す。




やけに静かな空間に気味悪さを覚えながらも、二人は辺りを見回す。


「どこだ...!?ゼロビット...!」


白賭がすぐ手すりの方へ走り出し、付近の屋上に目を凝らせた。


すると、突如として謎に気味悪さが増す。


なにか異物が混入したかのような感覚が、喉の奥に(つんざ)いた。


「こっちだよ。」


「はっ...!!」


二人が機敏に後ろを振り向くと、隣の建物に足を組んで座っている男の姿が。


その声は心地が最悪で、聞くに耐えなかった。


「やっと姿を表したか......ゼロビット!!」


クロが鋭く睨みつける。それも人を見るような目ではなかった。


「はははっ、なんでそんな目で見るのさ。僕は君たちとまったり話したいなぁ。」


一切の悪意を感じられない笑み。だからこそ、0bitという存在を二人は気味悪がっていた。


「まったり話す?馬鹿言うな、そもそもボクらを屋上に連れてこさせたのはお前だ。」


「あれ?知りたくないのかい?クロくんのお父さんの事。」


0bitが不敵な笑みを浮かべて、足をばたばたと動かす。


「聞いたって無駄なのは知ってる。なんせお前はいつもボクの動きを先読みするからな。」


クロの声が少し弱まる。目を向けていたのは過去の0bitとの戦いだった。


「それで僕に抵抗したつもりかい?はははっ、面白いね。」


大きく笑う0bitに、クロは怒りを抑えながら話を続けた。


「くっ...そんな事はどうだっていい...!まだお前から聞いてない答えがある。」


「ん?あぁ、僕が『渋谷スクランブルサイバーテロ』の首謀者かって?」


0bitは口元に手を当て、左上の方へ向いた。


「あぁ。」


「聞きたいことはそれだけかい?」


質問を質問で返す0bitにクロは違和感を覚えた。


「もう一つある。お前はエンプキラーの一員か?」


「なるほど質問はその二つってわけね。」


そう言うと、0bitは黙った。その時、ひとしきりの風が、三人の元へ吹き込んだ。


0bitの白衣が靡く。クロは渋谷の異常な静けさは時間が止まっているからではないことを感じた。すると、止まっていた会話が再び動き始めた。


「さてと。それじゃクロくんの質問に答えようか。」


クロは目を見開く。食い気味に一歩前を歩んだときだった。


「クロくんがゲームをクリアできたらね。」


クロが突如我に返る。それと同時に0bitという男を思い出す。


「くっ、またボクを試したな...!?」


クロが0bitの前まで駆け寄る。しかし、0bitの屋上は七階だった。


超えれない壁を目の前にし、様々な感情が溢れ出す。


「はははっ。それじゃ───ルール説明と行こうか!」

0bitに言われるがまま屋上へ向かった二人。

しかし、そこで現れたのは黒とは違う別の者。

再び黒は調子を戻し、蟠りを残しつつ二人は屋上に訪れる。

そして、遂に0bitと対面する...!!

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