33.Pday 10日目
又遅れて申し訳有りません、どうも押せ押せに成り、遅れてしまいました
AM10:30 神奈川県川崎市高津区北見方 第三京浜道多摩川橋前
北見方少年サッカー場
そこにはカオスな世界が広がっていた。
完全装備で死屍累々と横たわる、日本陸軍偵察小隊と陸軍航空隊。
中には航空ヘルメットとジャケットを着た、機長とコパイらしき姿もある。
その一角では士官だろうか? ウェーブらしき戦闘服に身を包んだ、20代中盤の女性兵が20前後の、腰に両手を当てた女性に滾滾と説教されて居る姿だ。
その横には仁王立ちに成った、都市迷彩の戦闘服を着た鬼気を纏った、一匹の戦鬼の姿が有った。
何の事は無い田所副隊長の逆鱗に触れた、元教え子への尉官に対する彼なりの、愛情表現(大変迷惑な)による発露の結果である。
(十数人の迸りによる犠牲者が八割五分は居るが)
もうひと組のカオスは、妹に依る姉への、愛の鞭(HPを削る制裁とも言う)である。
それを眺めるその他のギャラリーの視線は、生暖かい目や酷く怯えた目、達観した目に面白くて仕様が無いと言う目と、これ又カオス状態だった。
仕様が無いので、俺は女性組に依頼した。
「済まんが田中君、女性陣で可哀想な兵隊諸氏に、飲料水の補給をしてやってくれ。
男が渡すより有り難味が有るだろう? このまま脱水症状で部隊が壊滅したら、巖田大将(統合幕僚長)にどう言い訳するか後が面倒だ。
そこにあるペットボトルの水を、渡すだけで良いから頼むよ」
「解りましたわ、後先程の動画は交渉用に未だ、上層部へは送信していませんので」
「そりゃ助かった、咲山看護師のお姉さんと、田所君の教え子だから、まあ厳重注意で済ますがね」
「其の辺が落し所でしょうね、看護師さん達にも情が湧いてきた所ですし、結果は実害が無かったですから」
田中君がギャラリー化して居る女性陣に、水の補給を頼みに行っている間に、俺は未だ田所君に捕まっている、原少尉と話に行った。
「良いか原よ! 軍人たる者は一般人に「済まんが田所君、いいかな?」みd・・・あ、代表構いませんが」
「田所君話の途中で済まん。 原少尉、まず水でも飲んで落ち着いてくれ」
俺は500mlのペットボトルの水を原少尉に渡すと、彼はホットして水を一気に半分程煽った。
「は~あ、甘莉代表有難う御座いました! お陰で息が付けましたよ」
「早速なんだが、下流域のゾンビの状況は情報があるかね」
「ゾンビ自体のスタンビートは、情報が有りませんので未だ起こってないです、しかし今日午後より多摩川の橋梁は、東京湾の首都高とその他東名・中央道以外の橋は多摩川水道橋以下を、通行止めの措置が取られる予定です。
しかし爆破する訳ではなく、コンテナ等でゲートを作り、交通を制限するので不審車両以外なら、通行は可能ですよ」
「え? と言う事は橋の上下2箇所を止めるんだよね、まさか1箇所だったらゾンビに挟み討ちだもの」
「ええ、だから橋梁上は我々の拠点になる予定です」
「レベリング用の脱出ロープと、船外機着きの脱出用ボートが有れば、いざ撤退と言う時最後の命綱になるからな。
じゃあ車を元の町会に戻す時、帰りの者達に副総理の著名入の、通行証が有れば問題ないだろうな」
「帰りの車両はこの編成ですよね、でしたら我々から今回の作戦本部に、車両情報を通達して置きますから、帰りは楽だとおもいますよ。
後丸子橋と東横線・横須賀線を封鎖する班に、皆さんの事は話を通して置きますので、問題は無いと思います。
まさか内の中尉見たいなのは、他所の部隊にそう居ないでしょうから」
そう言うと、原少尉は未だ正座のまま妹に、コンコンと説教されている、自分の上司を見て苦笑いをした。
「しかし電車橋も閉鎖するのかな」
「ええ、どの様にゾンビが紛れるか解りませんから、高速もゾンビのスタンビートが始まったら、即座に閉鎖措置が取られますので注意して下さい」
「君らも注意してくれよ、避難民の中にはゾンビに噛まれたり、引っ掻かれても自己申告せず、避難所に入りそれが原因で壊滅したケースを、多く見て来たから充分注意してくれ」
「はい、上からもその点は充分注意する様、通達が出ていますので必ず部隊には、ウェーブが同行し身体検査を、徹底的にする様に配慮されています」
「流石は巖田閣下だ、行動が早いな。
しかし武器は89式がメインだと辛いな、その内UZIの国内ライセンス品が出回るはずだ、量産するには都合が良いし、MP-5より調達コストが安いからその内、サプレッサーと一緒に支給されると思うよ」
「サプレッサー(減音器)付きは嬉しいですね、序でにレーザーポインタかダットサイト付きだと、尚嬉しいですがそれは無理かな」
「どうやらピカティニー・レールを始めから着けて有るから、サバゲー用の市販品のレーザーやLEDポインタ等も、装着出来るとか言っていたね。
あれらは玩具と言って馬鹿に出来ない作りだから、充分実用に耐える物だから使わない手は無いよ。
何より道内の中小企業でも、簡単に作成出来る事を主眼に置いた、武器選定だった様だから、従来の様に紙面上の性能に拘らない、性能は程々で量産性が良く、故障の少ない武器を量産した方が良いからね」
「珍しいですね、カタログデーターより実質で選ぶ何て、上層部は軍に昇格して少しは、真面になったかな」
「遊んで居られる程資源に余裕は無いからね、簡単で少ない資源で最大効率を求めれば、そうなると言ういい例さ。
弾も9mパラベラムで統一するし、ピストルもSIG P220を止めてP226を採用して、装弾数と火力を充実する予定だよ」
「装弾数も7発より倍以上の16発の方が良いのに、どうして7発入のデチューンモデルにしたのか、未だに解らなかったのですが漸く真面な判断で、選定したみたいですね上も」
「まあ自衛隊ではA軍の御用聞きだったから、そんなお遊びも許されたのが、国軍となればそうは言ってられないからね。
A国はこのパンデミックを理由に、日A安保を反故にする予定だから、自分の国の事は自分で守れと言う事だ。
しかし総理は安保を反故にする事を条件に、UNの敵国条項を破棄させる事にA国・R国・E国・F国の同意を取り付けたからね」
「C国はどうなったのですか? 拒否権を行使したでしょう」
「今回のパンデミックで大味噌を付けたからね、UNに出てこないので他の常任理事国がパンデミックを理由に、C国を一時的に常任理事国から外して決済したのだ。
何せ今現在先進国で最も抗ゾンビウィルス剤を、早急に開発出来る技術力を持って居るのが内の社であり、即ち日本が最有力候補なので、下手に怒らせられないのさ」
「かと言ってA国は日本を守る程、今では予算が無いし国内の安定が急務であるので、海戦で勝利した日本から在日A軍を、本国に戻せられれば大統領の議会での発言力は増す。
そして今後C国は、100年以上は経済発展は望めないので、切り捨てて日本を煽てて使った方が得だ、と言う事ですね」
「まあそんな所だね」
「他国ではワクチンをどの位の期間で、開発出来るとお考えですか代表は」
「最短で開発出来て後2年は掛かるね。
そして量産を見越して2年6ヶ月後に、量産の初ロットが出荷出来るだろうね、端折っても2年3ヶ月で最大だね」
「甘莉さんの所でどの位でしょうか?」
「内か? 内でなら1年位短縮出来るかな」
「道理で皆甘莉さんをVIP扱いするはずだ」
「生存数で言えば、10億は違うと思うよ」
「解りました、丸子橋の連中には厳命しておきます!
命懸けでお守りしろと。
後、我々の方でもLAVを一台お付けしますので、何でもお命じ下さい」
「そんなに丁寧にしなくても、自衛力は充分足りているよ。
[マルヒト]も6機程巖田閣下から、運用を任せてもらっているからね」
「エ゛! [マルヒト]装備していたんですか?」
「ああ、ウニモグ改のセントリーガンシステムに付いて居る、筒が2本見えるだろう? あれがそうだよ」
「アハハハ・・・、良く見りゃありゃ間違いなく[マルヒト]の砲口ですネ~。
あのまま咲山中尉が無茶してたら、今頃我々全滅か~~」
「まあ、運が良かったと思ってくれ。
序でに言えば一緒にセットしてある重機は、13mm 超高圧銃[アナコンダ]で、キャリパー50と性能は遜色ないから。
後全車両全て内の最新技術で、105mm砲位なら耐えられる装甲がしてあるよ、無論ノイマン効果弾対策もしてあるし」
「咲山にキツく言って聞かせます! 喧嘩売るんなら相手を見ろと」
原少尉は心底ゲッソリとした顔色で、思わず語気を強めて言い切った。
俺達は今だ妹に説教を喰っている、哀れな姉ちゃんを生温かい目で見ながら、思わず米神を二人同時で揉んでいた。
「咲山さんそんな物でもう許して上げなさい、お姉さんも充分反省しただろうからね。
でしょう? 咲山中尉」
「ha、ハイ! 申し訳ありませんでした甘莉代表!
妹の命の恩人に銃を向けて脅してしまい、お詫びの仕様も有りません。
この上はいっそ自分の頭を撃ち抜いておw「ちょっと待て!!」し・・・」
「君はアホかね? そんな事したら私が妹さんから恨まれるだろうが!
ちっとは状況を弁えて行動してくれよ」
「済ません甘莉代表、姉は昔から思い込むと後先考えず行動するので、直ぐ過激な行動を取ろうとするんです。
大人に成って少しは抑えが利く様に成ったのですが、事態が大事に成って頭が飽和すると、また振り返す癖がまだ残っている見たいです」
「それで振られた事と、大事な妹が避難途中で行方不明に成った心労で、先程振った男に感じの似た私を見た途端、ブチ切れたと言う所かな?」
「流石代表、良くお分かりで、正にその通りの展開です、済ませんでした」
「やはりか・・・・、おい咲山姉! ちゃんと反省したか?
したんなら妹の手前許すが、仕事には絶対私情を持ち込まない事を誓いなさい。
私は先程金縛りの〝呪″を掛けたから解ると思うが、陰陽道を修めている。
口先だけの誓いだと思ったなら、大変な目にあうからな」
「ハイ、今後2度と仕事に私情は持ち込みません!」
まー、素直な事だ! この辺がミスをしても上から、決定的な事態に成らないのだろう、部下は堪った物じゃないけど。
まあ言いたい事は、咲山看護師に全て言われてしまったし、こちらも執拗に言い募るのは嫌いだからな。
後伝え残しているのは1つだけなので、それを言ってから出発するか。
「それから後一言君に言っておく事がある、之からの任務で絶対に死ぬなよ?
おいお姉ちゃん、妹がどんなに心配していたか、俺達全員知っているからな!
死にそうになっても、根性で生き残れよ、言い訳は聞かないからな!
妹は私が必ず福島工場に連れていく。あそこは工場自体が侵入不可能で要塞化してあるから、ゾンビが10万来ても問題無く、対処出来る所だから安心しておいてくれ」
「ハイ!妹を宜しくお願い致します」
俺達は今後の予定を伝えると、丸子橋に向かう事にした。
彼らは丸子橋に展開して居る部隊に、俺達の事を伝えてくれたので、これから以降は問題ないはずであった・・・・・。
Pday 10日目
AM10:50 神奈川県川崎市川崎区浅野町付近 貸し倉庫兼住宅の一室
この場に居る者は決まった国とは、一切無関係の人種が集まった集団である。
所謂民間軍事会社(PMC)とも違う国際問題の暗部を棲家とする、非合法組織の傭兵版と言った者達である。
仕事内容はありとあらゆる非合法活動、詐欺から果ては政府要人や財界人の暗殺に、政府転覆のクーデターの請負まで色々だ。
今回のミッションのオーダーは、組織の幹部から漏れ聞いた所に因ると、多国籍の諜報機関からのオーダーらしいが、相手が問題である。
あの[ライジングサン]のトップで、この世界では知らない者が居ないビックネーム、二つ名は「魔道士」(ザ・ソーサラー)と呼ばれる自身も凄腕の、生きる伝説と呼ばれる化物の一人ジョウタロウ・アマリだ。
この非合法組織のチームリーダーは、あまりこの手の噂は鵜呑みにしないが、過去「魔道士」を相手に命からがら逃げ帰った、過去を持つ者であり、今でもその時の体験が、夜中油汗をかいて飛び起きる程の、心的外傷に成っている程だ。
しかし組織のトップには、自分では出来ません無理です、配置を変えて下さいとは言えない。
言えば命ごと「配置転換」されるのに決まっているのだから・・・・
それにしても「魔道士」相手にどうやって、生け捕り等と生易しい方法が通用すると思っているのか、そのアホ相手に資料片手に5時間はプレゼンする自信がある。
相手の二つ名は伊達じゃないのを知らない馬鹿が、作戦を立てたのじゃ無いかとすら思える程だ。
しかし待てよと思いつく、俺達は実は囮にされており、本命の部隊は別に居るのでは無いだろうか? そうであれば色々とガテンがゆくのだ。
俺達を当て馬にして、相手の戦力が落ちた所で別チームが人質を取り、相手を屈服させる作戦なのでは無いのか?
でないと「魔道士」相手に今回の24名と言う、2小隊程の数ではあまりにも少な過ぎるのだ。
最低でも後方要員を含めて、中隊規模の人数を動員しなければ、「魔道士」相手に拉致など、死に逝くようなものだからだ。
ハッキリ言って中隊でも危ない位だと思う。
よく言われる戦いは質より量だと、しかし相手の質が量を遥かに凌駕する、化物だったらどうだ?
伝説のドラゴンを相手に、高性能だが所詮手持ちの火器で、傷一つつけられるだろうか?
本来なら空軍や海軍を動員して、戦艦やミサイル艦で徹甲弾や、対艦ミサイルを撃ち、戦闘機にバンカーバスターを積み、飽和攻撃する必要が有るだろう。
それをたった24人の対人相手なら、それなりに自信がある兵隊がかかっても、蟷螂に斧を地で行くような行為をしたら、瞬殺される未来しか見えないのだ。
こうなると本当に自殺覚悟の作戦になり、我々のチームが真っ先にすり潰されてしまう。
それをどう立ち回れば防げるか、先程から頭を振り絞って考えているが、どう考えても「絶望」の二文字しか思いつかない。
そこへ監視して居る部下から連絡があった。
もう少しで奴が多摩川の最後の堰の下へ到着し、ボートを川に浮かべて東京湾に居る、武装商船に乗り換え福島の工場へ、居城を移す予定だということを。
武装商船だと言って甘く見ることは出来ない、船殻自体もダブルに強化され、平均速度も通常の商船の14~5㌩ではなく、23㌩以上は出るだろうし、本気になれば一体何ノット出るのやら見当もつかないし、どんな仕掛けしているか解ったものじゃない。
同クラスのイージス艦を相手にしたほうが、まだ勝率は高いだろうからな。
行き成りレーザー砲や、ビーム砲が出て来て迎撃を始めても、俺は驚か無い自信がある。
水中では日本人お得意の、人型水中機動兵器でも出されたら、お手上げだろう。
あの男なら遣りかねない自信がある。
前回の作戦では水中から忍び寄った、完全武装の精鋭30人に対して、何処から撃ったのかヘッジホックらしき対潜弾3発を、隊形に万篇無く散布してくれて、残ったのは魚の餌に丁度良い肉片のみだったのだ。
未だにどうやって我々の動きを事前に調査し、対潜弾を仕掛けて罠に嵌められたのか、原因が判明して居らず不気味な事である。
やはり噂通り「魔法」を使ってヘッジホックを、召喚したのだと言われた方がスッキリする(事実は無限ストレージボックスの、コピー機能を使って、ヘッジホック3発を散布した魔法なのだが)。
取り敢えず言い訳の為にでも、入手してあるクルーザー5隻を出して、奴を襲撃する振りをしないと、「魔道士」には殺されないが、組織に始末されるだろう。
武器は対戦車ロケットRPG-7ランチャーを5機に、ノイマン効果弾を10発と榴弾5発中心に、ゴムボートを沈める為にパレット82A2を5丁と、メインウエポンにM4カービンとサブアームにSIG226、破砕手榴弾を各自3発ずつを用意した。
これだけの武装を用意しても、全く心許無いのだ。
何時もの様に心踊る感覚がまるで、感じられず只焦燥感だけが心を蝕むだけだ。
アフリカ象の成獣雄相手に、22口径で挑む馬鹿者の様な気がして仕方が無い。
唯一勝機が有るとすれば他に逃げ場のない、水上で高火力・アウトレンジでの殲滅戦だが、今回のオーダーが生け捕りと言う枷がある為、それもままならない。
唯一取れる行動は、乗って居る船を撃沈して人質を取るか、本人を捕獲するしか方法は無いのだ。
取り敢えず成功を信じて行動するしか、自分には手が無いのは解っているが、その自信がどうにも涌かないのが現状である。
彼は一つタメ息を着くと、行動を起こすべく装備を点検して、船に乗船する為に嫌々動き出した。
Pday 10日目
AM10:55 神奈川県川崎市中原区上丸子八幡町側 丸子緑地対岸 ゴルフ練習場近く
俺達はあれから間も無くサッカーグラウンドを立ち、問題無く丸子ゴルフ練習場とサッカーグラウンドの、間の駐車場へ着く事が出来た。
ここは東横線とJR東海道新幹線の鉄橋に、中原街道の丸子橋3本の橋が集中して居る交通の要衝で、軍の部隊が4個小隊とバートル3機にブラックホーク2機で守っていた。
そしてどうやらホバークラフト舟艇で持ち込んだ、82式指揮通信車1両とキャリパー50装備の96式装輪装甲車3両、MINIMI搭載のLAV5台、73式中型トラック5台に73式大型トラック5台の、大所帯で整備師や敷設隊を含めて、70人以上の軍が展開して居るのは、ある意味壮観では有った。
我々が着くと連絡が行って居たのだろう、この作戦の指揮官に当たる、少佐らしき左官が出て来て挨拶をした。
「お初にお目に掛かります、自分は日本陸軍第一師団所属、第34普通科連隊 第三中隊 中隊長 佐々木 正樹 少佐です、お見知り置きを」
「私は株式会社旭グループの代表を務めます、甘莉 丈太郎と申します、宜しくお願い致します」
俺達は名刺を交換しながら、自己紹介を行った。
こう言う所はやはり日本人だなと、つい思ってしまうと笑えるな。
「佐々木少佐、この丸子橋が今回の作戦の中枢ですか」
「ええ、多摩川方面の中枢はここです、荒川方面は四つ木橋に中枢が有りますが、荒川は秋ヶ瀬橋までの区間を塞ぐので、大変だと思いますね」
「結講な本数の橋が有るんじゃないですか、秋ヶ瀬まで塞がないと成らない何て大変だ」
「1個師団規模の作戦ですから、後方も大変ですよ。
ゾンビもどの様な行動を取るか解らないですし、時間との競争でスタンビートが早いか、塞ぐのが早いかでしょうね」
「我々もあまりお手間を取らせては、本来の仕事に触りますから、直ぐに支度をして海に出ますから、お構い無く仕事を進めて下さい」
「ではそうさせて頂きます、代表もワクチンの開発、宜しくお願い致します!
アジア・・・いえ人類を代表してお願い致します!!」
「お互い頑張りましょう!」
俺達は、互の目を見つめ合い、其々の任務へと歩き出した。
川岸では田所君が指揮を取り、ボートの上部構造に充電ポンプから、エアーを入れて膨らませながら、船外機を取り付け最後の調整を行なって居た。
船外機と言っても従来のスクリュータイプではなく、強力ポンプで高圧化した乳化エアーと水の混合気を、高熱で膨張させて推力を得る熱バーストエンジンを使った、新思考のエンジンである。
中低速では通常の高圧ジェット噴流で、燃料消費が少ない省エネモードで最高30㌩で航行し、非常時には熱バーストを使い船体底面に塗布した、整流ジェルの効果で余計な抵抗を逃がしながら、止水面で最高60㌩(約111km/h)の速度で、20分間オーバードライブが出来る機能がある。
「エンジンの調子はどうだい?」
「開発初期から比べると非常に安定して居ます、あの頃のじゃじゃ馬振りからすると、漸く落ち着いたレディに成った所ですね」
「まあ普段は口数の少ない、キビキビした良い子だが、一度火が着くと本当に大変なじゃじゃ馬だからね」
「まあ今日ぐらいの水面なら、50以上出さなければ充分御せますが、それ以上出すとどうなる事やら」
「どうも先程から、背筋がチリチリするんだがね。
ひと波瀾かふた波瀾ありそうだな、用心のために6基ほど9K38 [イグラ]を積んで置いたから、いざとなれば田中君に操縦を任せて、迎撃をしてくれ」
「飛行機かヘリでも来ますか? [イグラ]とは穏やかでは有りませんな」
「下手にRPG-7じゃ誘導が効かないし、高速戦闘になれば同じく対ボートならば、速度も早い[イグラ]なら対空ミサイルだし、着弾も早いから敵を殲滅するのは楽だろう?」
「そうですね、確かに速度の早い小型艦艇に依る戦闘なら、対空ミサイルの方がロックオンから攻撃が早いので、向いているでしょうね」
「まあ後は君も知っての通り、輸送コストが掛って無いので、気楽にブッパナしてくれ」
「全く代表のあれは本当に、ズルですね! まさに"cheat"そのものですな」
「仕様が無いだろう、事実ある能力だから文句の言い様がないさ」
実はストレージBOXの事は、無限増殖の件以外は〝異空間収納″と言うことで、青いタヌキの物と同じ様な権能と言う事で、彼ら3人には知られているのだ。
何せ四六時中一緒に居るし、銃火の中も潜る関係であまり隠し過ぎるのも、イザとなった場合機を逸する場合が有るので、〝提督″と話し合ってある程度知らせてある。
無論陰陽道の権能の一種としてと、説明して有るがかなりの量が収められると、説明してあるので全容は伝えては居ない。
「他にもキャリパー50を屋上に、セットして置いた方が良いかも知れないから、弾を500発と一緒に置いておくので、セットして置いてくれ」
「かなりヤバそうな感じですね、こう言う時の代表の感は大体当たるので、田中君にも充分注意して置きます。
いや始めから操船は任せて、イザとなれば直ぐ反撃が出来る様に注意していますよ」
「それが良いな、今回は複数回の襲撃がありそうなので、初めのが終わっても、次がすぐ来る可能性が高いので、充分注意して欲しい」
「解りました戸締りもキチッとして、隙間から跳弾が入り込まない様、全員に注意しておきます」
「宜しく頼むよ」
俺は此処に着いてから、絶えず感じていた懸念を田所君に伝え、実際武装を強化する事で、懸念を伝えたのだった。
田所君とも既に 3年近く付き合って居るので、大体の懸念を読み取って戦闘の用意を始めた。
「鬼山君、一寸良いかい」
「何ですか代表?」
「ボートの操縦は私がするので」
「襲撃ですか?」
「ああ、いつものだよ、それも1回目より2回目の方が厳しいな」
「2回襲撃がありと・・・・武装は何を使いますか?」
「9K38[イグラ]を6基程用意したが、足りない場合直ぐ補充する。
田所君には9K38を6基と、キャリパーと弾500発を渡しておいた」
「ふ~ん、かなり本気で来ますかね? 殺しですか?拉致ですか?」
「私以外は多分1人か2人だろう、後はお楽しみだろうね」
「では容赦は要りませんね? どんな編成で来そうですか」
「初めは水上から、次は上空からヘリの可能性が高いな」
「へー、立体作戦を取りますか? 随分力を入れて来ましたね。
多分ワクチン絡みでしょうね、代表を拉致しようとするとは命知らずな奴らですが、そんなに簡単に行かないと、思い知らせてやらないとな。
そうだ代表、20mmは有りますか? 対物の単発で良いのですがね。
弾は徹甲を30に焼夷を20程でお願いします」
「解った、ダネル NTW-20で良いかい? 弾は1箱10発だから5箱分になるから、弾倉は3発入だから15個要るか」
「赤いテープは有りますか、焼夷の方に着けて置いて、間違え無い様にしないと」
俺達は武器の用意をしながら、今後の予定を話し合った。
「多分河口付近でボートで襲って来た後、気が緩んだ隙に倉庫辺りの陰から、武装ヘリで襲い船を沈める、算段をして居るだろうね」
「敵さんまさか防弾のインフレータブルボートで、移動しているのは情報が入って居ないでしょう。
GBシリーズは初お目見えだから、データーが無い為に通常のボートと思って作戦を立てるから、最大でも12.7mmで武装して来るでしょうから、そこがつけ目ですね」
「Sラインが知れ渡るまでの、アドバンテージだが有効に利用させて貰おう」
俺達は顔を見合わせると、越後屋と悪代官宜しく悪い笑をたたえて、
ニヤリとしたのだった。
Pday 10日目
AM11:15 神奈川県川崎市中原区上丸子八幡町側 丸子緑地対岸 ゴルフ練習場近く
俺達は回送組と別れを惜しみながら、ゴルフ練習場近くの岸部から離岸した。
相変わらず良い天気でスピードも、20㌩位のエコノミーモードで航行して居り、多分河口付近まではこの調子で行けるだろう。
鬼山君以外の乗員には4点ハーネスの、安全ベルトを着けて貰い、いざと言う場合の為に他に炭酸ガス式の、救命胴衣を装着して貰って、沈没に対処して貰っている。
鬼山君は中央席に移って貰い、屋根の防水ジッパーを開けて、ダネル NTW-20を組み立てて設置していた。
この20mm対物ライフルは、南アフリカ共和国に本社がある、アエロテクCSIR社製の銃だが、輸出をダネル社が請け負ったため、ダネル社製と思われる事もある。
使用弾薬は、20mm x 82(NTW-20)・20mm x 110・14.5mm x 114(NTW-14.5)の3種類を使う銃が其々あり、20mm x 110だけは単発だ。
それ以外は3発+1で有効射程は、1500m(NTW-20)・2300m(NTW-14.5)
と成っており、対物・対空にも使える大口径狙撃銃として有名である。
今回はNTW-20弾使用の機種であり、全長は1795mm・自重26kgもある、人が一人でぎりぎり運用出来る重量がある。
それを船の屋上に回転ターレットに防護板を付け、水平360°・+80°~-12°までの範囲をカバー出来る様にしてある。
田所君の船にはブローニングM2重機関銃に、スコープ用ピカティニー・レールを付け、4~50倍TV102デジタルスコープを装備し、同じ様に屋根にマウントしてカバーを掛けている。
この重機関銃は1933年軍に正式採用されてから、既に80年以上現役の怪物だ。
その設計理念は確りした物で、シンプルかつ堅牢であり無駄が一切無い、正に生まれながらの完成品とはこの銃の事だ。
使用弾薬は12.7×99NATO弾を、毎分1200発で有効射程2000m(最大6000m以上)まで打ち出す怪物である。
この弾丸は1500m先の人体に当たると、腹部なら爆発した様に吹き飛び、二つに別れてしまう程の威力があり、大概のボートなら船体を貫通してしまう。
水上戦では見通しが良く遮蔽物が無い為、有効射程が大きい武装をして居る方が有利になり、キャリバー50を装備して居る事は、相手にとって最大級の脅威である。
その重機関銃にアナログ・デジタル制御の、TV102デジタルスコープがマウントされて居る。
このスコープは10.2インチのバイオ液晶画面に、アナログ4~20倍・20~50倍までがデジタルズームを使った、[ナイトeve]・サーモ機能・レーダー・レーザーセンシング機構を搭載した多用途スコープである。
対戦車ロケット弾発射用の傑作武器、RGP-7の射程が最大1100m(通常は300m~400m)であり、如何に対小型舟艇用武装として、脅威であるかが解るだろう。
その他のメイン武装にはロシア製の、対空携帯ミサイル9K38 [イグラ]を6基ずつ渡してある。
9K38 [イグラ]は 全長1574mm 重量10.8kg 弾体直径72mm 有効射程5200m 最大射高3500m 最大速度マッハ2.3 信管は近接乃至直撃型である。
ハッキリ言ってこんな凶悪な代物で狙われた場合、舟艇ならば乗員は船から水面に飛び込むしか避ける方法は無い。
ロックオンを3000m先で行われ、発射された場合十秒以内でライフル弾より早く、ロケットが鈍足の船に向かって誘導されて、襲い掛る場面を想像すれば解るだろう。
その他の予備武器として、其々ドラクノフ狙撃銃を、予備弾倉20個ずつと一緒に渡してある。
多分俺はかなり臆病なのだと思う。
勝つ自信が無ければ戦闘は極力避けるし、戦う場合は最大限勝てる下準備を行わない場合は、最高速で逃げるか逃げる為の用意を充分してから、外に出かける様に用心している。
臆病者と勇敢な者(厨二病発症者だろう)にいくら言われても、肩を竦めて肯定する事にして居る。
喧嘩をせざるを得ない場合でも、最低限対弾・対刃繊維製の下着を着て、防弾スーツを着用しない場合は、防弾繊維製のマントを羽織、36計を決め込む徹底ぶりだ。
経営者で自身の安全が社員の福利高清に、直結して居る意識が無ければ経営者失格である。
危険に向かって行く様な行動をする時は、最大限自身の安全を確保してから行動しているが、他から見ると平気で危険の中に飛び込む様に見えるだろう。
実際は防具や武器の有無や自身の能力を冷静に分析してから、行動しているのに他からはそう思われず、無謀な行動を取って居る様に見える様なのだが、其の辺が非常に不満である。
俺は皆にこれからの予定と、起こりうる事態を説明する為、無線を皆に繋いだ。
『皆さん後20分程で東京湾に出ますが、場合に因っては後2回程戦闘が起きる可能性があります。
しかしこのゴムボートは戦闘服と同じ素材で出来た、防弾・防炎加工になった素材で出来ていますので、窓さえ開けなければ弾丸で被害を受けることは無いので安心して下さい。
例え対戦車ロケットが当たっても、弾力が有るので弾を弾くか逸らせるので、被害は出にくいので。
昼食は船に着いてからゆっくり楽しむ予定ですが、今は戦闘になれば非常に揺られますので、水分補給位で他の固形物は食べない方が良いでしょう』
俺はそれだけ説明をすると、鬼山君と田所君に無線を繋いで聞いた。
『田所君、マウントの具合はどうだい? ブレとか引っ掛りが出てないかな』
『思ったより確りマウントしていますね、TV102も太陽光の下でもよく見えますし、照準も付け易いので1500m離れた目標でも、簡単に照準出来ます』
『コチラも同じくNTW-20とTV102の相性は良いみたいです。
船体付属のターレットも減速機がちゃんと、効いていますので狙撃にも有効ですね、しかし[イグラ]の置き場所がイマイチ安定しないのが、玉に瑕ですかねー』
『一基は屋根に置いているから何時でも撃てるが、他は一回中に取りに入らないと成らないから面倒だな』
と田所君がいったので、俺は隣に座っている女性に頼む事にした。
『済みませんが、戦闘になった場合鬼山君と田所君の隣に居る方は、頼まれたら筒を取って上げてくれませんか。
その筒は対空ミサイルですが、多少荒く扱っても爆発はしないですので、安心して扱ってください』
『え?ミサイルですか~~』
『ですから大丈夫ですって、安全装置を外さない限り、倒しても爆発しませんよ。
その筒自体も10kg程なので、そんなに重く無いですから、頼まれたら渡してくれれば良いのです』
『解りました~』
『未だ死にたくないですから、頑張ります~』
『こちらB-2、そろそろ大師橋を通過します、警戒を密にした方が良いですわ』
田中君から連絡があったので、田所・鬼山の二人は川岸の両サイドを警戒しながら、銃を構えて襲撃に備えた。
多摩運河を過ぎようとした時、行き成り運河の影から高速クルーザーが2隻、飛び出して此方を追いかけだした。
我々も増速して羽田の新滑走路と、旧滑走路の間に差し掛かると、やはりその間から1隻のクルーザーが、其方へ遣るまいとするように此方に向かって来た。
通常なら右に船首を向けるだろう所、俺は田中君に左へ向けて舵を切る様に命じた。
すると案の定右舷アクワライン・トンネル方向から、船を塞ぐ様に2隻のクルーザーが速度を上げながら、進路を妨害しようとしたが左舷に向きを取っていた分、我々の頭を抑え切れずに、我々は東京湾を千葉方面に脱出出来た。
彼らからすれば我々のボートは全力を出して、逃走して居ると思っている様だが、まだ速度は30㌩強位であり、此方の出力としてはまだ半分しか力を発揮していない。
俺は田中君にわざと相手とスピードを合わせて、航行する様に言って有ったので、この状況は此方の思惑通りである。
俺は先に商船の方に連絡を入れ、戦闘ヘリに改装したヒューズ500MGディフェンダーを3機、川崎のコンテナヤードに駐機して有るので、敵の航空戦力をおびき出す目的で、現在逃げ回っているのである。
その気になれば5隻のクルーザーは、5分以内に沈めるのは容易いが、相手の航空戦力の実力が解らないので、下手に武装商船に向かう訳には行かない為だ。
俺達は付かず離れずをしながら、海上の追いかけっこをしていたが、距離が600m位に縮むと相手側から発砲を始めた。
600mも離れて走行中の船から、的に当てるのは至難の技だが、結講腕が良い射手が居ると見えて、数発は船体に命中すれど全て弾かれてしまい、効果が出なでいる。
Sラインの防護板から観測して居る、鬼山君にどんな武器を使っているか聞くと、50口径の対物狙撃銃、バレットM82A1だろうと言う事だ。
『代表あれじゃあ至近距離から打たれても、穴も開きませんね!
もっと近づけば対戦車ロケットのRPG-7か、M-72A6 LAWが出て来そうですが』
『やはりチェイス中では100m~200m位で、ロケットを撃って来るかね』
『ま~そんなもんでしょうね、300も離れたらまず当たる物じゃ無いです』
『う~ん、このままじゃ埒が明ないから、互に左右180°回頭して敵船の、左右50m以上間を開けてすり抜けるか?
田中君あと10秒カウントダウンするから、そしたら君は右舷に私は左舷に向かってクロスして回頭するから、相手から50m間隔を開けて反航してくれ。
反航して居る間射角を前方30°以内の、敵船に攻撃をお願いする』
俺達はジェットボート特有の、舵の切れを生かした反航作戦に出た。
相手はまさか行き成り舵を切り、両サイドをすり抜けるとは思わず、虚を突かれ射撃も追いつかず、一方的に打ちまくられる結果となり、エンジントラブルと吃水に大穴を開けられた、ボート3隻が脱落してしまう結果になった。
『ワハハハハ! やり~3隻脱落で残りは我々と同じく2隻だぜ~』
『2隻はあの大穴が吃水に空いたら、10㌩以上出せば沈没ですね。
もう一隻はエンジンに20口径をもらったので、場合によっては火災で船を捨てないと成らないでしょうね』
『無事な2隻はどうしているかね』
『2隻とも此方を追跡中ですが、800は離れたため現在射撃をしていませんね』
『指揮官は無事な船に乗っていた様だ、無駄弾は打たない所はかなりのプロだね』
『そうですね、普通なら激高して撃ちまくる所ですが、冷静に対処して来るとは嫌なタイプですね』
『まあ多分相手は海上戦力だけだろうから、これ以上は千日手だろうな、しかし指揮官がプロの様だから、執拗に追って来て何か有ったら即座に襲い掛って来るだろうな』
『やはり別集団に因る空襲を、警戒していらっしゃるのですか』
『感だがね、依頼者が捨て駒として傭兵を雇い、我々が弱った所で美味しい所を頂く算段だと思うよ』
『では彼らはどうしますか? サッサと順滅しておけば憂い無く、もうひとグループを相手に出来ますが』
『いや、彼らは半殺しだな! 生かしておいて後に依頼主とトラブらせてやろう』
『了解しました、オーダーはスーパーレアですね』
『田中君、再度反転し50㌩で奴らの尻を突くので』
『了解です代表、今回はクロスでは無く、そのまま90°後ろに付きますので、お二方エンジンの方は宜しく』
『yes ma'am!』
俺達は10カウントで左右に大回りをし、90°後ろに着くと
50㌩の高速で交差しながら、エンジン部に20mmと12.7mmを喰らわせて離脱したが、敵もさる者で数発船体に被弾したし、至近を1発RPG-7ロケット弾が通過したのは驚いた。
しかしこの攻撃で敵船のエンジンに、12.7mm数発づつと船尾に20mm1発ずつをお見舞いした御蔭で、2隻共行動不能に陥った。
『やあ、まんまと作戦が図に当たったね、後は武装ヘリに気を付けて行けば安心かな』
俺達は最初の襲撃を何とか潜り抜け、ホットしながら羽田空港の新滑走路脇を通り過ぎた時、新たな襲撃者に対面した。
所謂150t位の船体に大馬力エンジンを付け、艦上に20mm機関砲を据えた武装船と言うべき船だ。
それが2隻40㌩程の速度で此方に向かって来たのだ。
『大口径の機関砲を付けた船が来る、直ちに横浜港へ向かって50㌩に増速して振り切れ』
『流石に20mmは洒落に成らないな、仕様が無いA-2・B-1へ構わないから遠慮無く、[イグラ]をご馳走して差し上げなさい』
『B-1了解、私は右を狙う、A-2は左を頼む』
『了解、こちらA-2、10秒後にカウント0で発射する』
『こちらB-1了解した』
『10・9・8・・・・・3・2・1・0 ファイア!』
後方1500m程にいた武装船に向けて、対空ミサイル[イグラ]が忽ちマッハに迫る速度で操縦室に吸い込まれた。
直後、操縦室諸共武装船は、上部構造物を巻き込んで爆発、火災を起こし弾薬だろうか、大きな爆発が起こると忽ち沈み始めた。
『上空を警戒しろA-2・B-1、先程武装ヘリには救援要請をしたが、武装船の仲間のへりが居る可能性が高いので、対空注意せよ』
『A-1西よりベル社製と思われるヘリが、3機向かって来ます。
外付でガンポットらしき装備が見えますので武装へりですね』
『解った、こちらA-1[イグラ]を2発撃ったと同時に、最大戦速で攻撃を回避しつつ、残存機が他方のボートを狙って居る間に、一方はヘリを撃墜せよ』
『『了解』』
俺達は生存を掛けてヘリ3機対ボート2隻の戦いを始めたのだった。




