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感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 一 章 調 布 編
25/72

25.Pday 7日目

今回は少々早く投稿出来ました、今だ調布[ひよく寮]編です。


後3~4話で福島工場編に移る予定ですが、脱出時に時間が掛からなければいいのですが。

PM14:20 調布長谷病院 側 三鷹都営団地 25号館前


 俺達はヒッキーの吉岡君宅を辞すると、他の小隊へ連絡を入れた。


 掃討はほぼ終わり、後は管理棟の最上階を残すのみで、間も無く制圧は終わる予定だそうだ。


 此方の状況も話し、後で誰かに警戒用の監視カメラとセンサーの無線ラン用モニタリングシステムを一式、26号館の310号室の吉岡宅へセットする様頼んだ。


 その他に昨日ダンキーで我々が取得して来た、最新パソコンと30型G4TVに、メモリー256G、外付けHD5Tb、小型A3レーザープリンタと予備トナー、小型衛星通信ランシステムとアンテナを、[ひよく寮]に取りに行き、同室に届ける様頼んだ。


「後は田嶋工務店にこのアパートの屋上にソーラーユニット・マンションL型2機と戸建用1機設置して、裏山の井戸からアパートの揚水ポンプの手前水道配管に水を供給する、配管とタンクを設置しておけば良いのか。


 温水器と調理器は、幸い電気式の物が着いて居たので、付け替える手間が無くて良かったな」


「イヤー、しかし見事なヲタヒッキーでしたね!


 ある意味典型的なアキバ系住民なので、驚きましたよ。


 ああいう人を、マンガ以外で見たのは始めてなので、本当に居たんだ感がハンパじゃ無いです」


「彼の様なタイプは、意外と繊細で気に病む人が多いので、注意して付き合って下さい。


 結講一芸に秀でた技能者が多いのですが、過去過剰に傷付けられた所為で、疑心暗鬼に成っている人が多いのです。


 だから相手が自分を侮蔑したり、侮ったりすると途端に態度が硬化して、此方の発した態度をそのまま返した態度を取って来ますよ。


 ちゃんと能力を認め、人としてキチンとした態度を取れば、彼ら自身も同じくキチンとした態度で返して来る、所謂職人気質の強い頼りになる人も多く、彼もそのタイプなのです。


 中には他人とのコミュニケーションが、まるで取れない根っからのコミュ症の人も居ますがね」


「ああ、職人気質が強い人なんだ! だから侮るとヘソを曲げて手が付けられなくなるのですね」


「そうです、オタクと呼ばれる人は大抵優秀な1芸に秀でた、才ある人が多いのです。


 それを弁えず侮った態度を取ると、彼も同じベクトルで貴方を侮るでしょう。


 どちらの行動が、理に叶っているかは一目瞭然で、私としては相手を尊重出来ない所謂世渡り上手な、口先だけの人間より余程使える能力者として、高給を払っている人はあの手の人が多いですからね」


「だから技術系にオタクが多いのですね、専門分野に特化した技能者に多いタイプだ。


 だから学校時代、イジメをする陰湿な連中の的になり易いのですね、目立つし子供時代は頭が良いので、昔なら秀才と思われて一目置かれたのでしょうが、いまではイジメ気質の異常者から、イジメの的にされますからね。


 一芸に秀出て居るのでつい話し方も尊大になり易いので、妬み僻みが強いイジメを集団でする、クズに狙われ易いのですよね」


「おや、蒔田君は彼の様な人をご存知ですか?」


「ええ吉岡氏程酷くは無いですが、幼馴染にミリオタクタイプの奴が居ました。


 中学1年まで一緒でしたが、2年の時奴の親が転勤で隣の県に越してしまい、別れわかれに成ってしまいましたが、引越し先の学校で陰湿なイジメに合い、引篭りになったのです。


 片道電車で3時間以上掛る場所でしたので、学生の俺達では合って話を聞く事は出来なかったのですが、高校2年の時に自殺して・・・・」


「そうですか、それはさぞ無念だった事でしょうね。


 ・・・・・しかし彼を自殺に追い込んだ者達も、今ただでは済ませんよ?


 5人首謀者がいますが、1人はゾンビに喰い荒らされてゾンビにも成れず、残骸に成って死にましたね。


 もう一人は1年前事故で半身不随になり、今自宅で篭りっきりに成り、世話をしてくれていた両親はゾンビになり、兄妹は彼を見捨てて別な場所で避難生活を送って居ます。


 持って後3日位で餓死するでしょうね、最も正に日頃の行いが悪かったので今の境遇になったのですが」


「友人が祟ったのですか?」


「直接は関係無いですが、間接的にはそれはあるでしょうね。


 彼らは日頃の行いが酷かったので、こう言う非常時に得てして、償いをしなければ成らない事態になるのです。


 他の三人も2人は避難先の集団から追い出され、ゾンビに捕食されて今頃何処かを彷徨って居ますね。


 もう一人は所謂悪霊化人間に成って、何れ高級霊に討伐されるか悪霊の燃料になるかの未来しかない存在です」


「ある意味納得の結果ですが、その他いじめに加担した連中はどうなるのでしょう?」


「嫌々加担してもそれなりの清算をしないと、バランスが取れないですからね。


 所でお二人は神様の神力、具体的に最大の力とは何かご存知ですか?」


「ええと・・・奇跡を起こす力ですか? 


 具体的に言うと・・・・不治の病を治す力ですか?」


「う~ん、無から有を作る力ですか?」


「確率論を研究して居る学者が、面白い実験をしているのです。


 電子サイコロで色々な場所で、どの目が出るのか計測する実験ですが、不思議なことに有名な祭りなどで計測すると、祭り前は1から3までの目と、4から6までの目が出る確立が、5:5です。


 しかし祭りが始まって同一地点で計測したら、高い数字が出る割合が明らかにふえて居るそうです。


 しかし祭りが終わったらまた5:5に戻るそうですよ」


「へえ、不思議ですね? どんな力が作用するのでしょう」


「その実験の話を聞いて、私は日頃感じていたのですが、神様の力の最大の効用は、本来動かせないはずの確率の力を神と呼ばれる存在は操作出来るのではないか?と言う事です。


 奇跡と言うのは1億回に一回起る現象を、100%起こす事が可能な力でしょう?


 そうは簡単に起こらない偶然を、高確率で起こさせる事が可能ではないのかと言う事ですね!


 交通事故に合いそうに成った子供が、偶々飛んできたゴミ袋に驚いて、立ち止まったら数センチの距離を、居眠り運転の暴走車が掠めたとか、偶々飲んだ薬の飲み合わせが良くて、難病が完治したとか言う奇跡が操作出来るのが、神の力の真骨頂では無いかと思います。


 前にある高級霊が受肉した方とお会いした事が有りますが、そう言う方が現れる場所には、″掃除″がされるのです。


 どう言う現象かと言うと、その日・その時・その場所に現れる予定の地獄霊や下級霊は全て"掃除″されるそうです。


 ある者は、前の晩風呂で足を滑らせ頭を打ってあの世行きなり、ある者は酔って階段から足を踏み外し入院し、ある性犯罪者は顧問弁護士一家を惨殺し逮捕される事が"偶々"起るそうです」


「え、そうなら高級霊様には、どんどん受肉されて生まれて頂いた方が、世の中良くなりますよね」


「その為には、世の中ある程度良くしておかないと、高級霊は転生しては来ないですよ、じゃないと死因の一番原因が、高級霊と言う本末転倒の事態になりますから」


「確かにそうですね、では霊性の低い国や集団には高級霊は、あまり転生して来ないのではないですか。


 そう言えばK国など、もし高級霊が受肉した場合、国が滅んでしまうのでは?」


「ええあの国に近年、幾柱か下生されたのですが、その都度戦争や大虐殺が起こってしまい、今ではあまりあの国には、関わらない様にしている様ですね。


 我が国もこのパンデミックを契機に、第二次大戦後に身に付いた"穢れ"の禊をして、もっと高級霊が下生してくれる環境を、整えて行きたいですよ」




Pday 7日目

PM14:30 調布長谷病院 駐車場側 みずとり保育園


 俺達がみずとり保育園に帰って来ると、丁度他の小隊も掃討を終えて、保育園に帰って来ていた。


「おや? 鬼山君、生存者が居たのか?」


 俺は園内のホールで、白衣を着た一団を見て聞いた。


「あ、代表そうなんです、管理棟の最上階に逃げ遅れた医師と職員と、看護師達が全部で11人居ました。


 食料は尽きてしまっていたのですが、幸い水と電気が止まって居なかったので、生命には異常有りません。


 今うちの看護師達が、キッチンで病院の調理室で見つけた、レトルトのお粥とさんまの缶詰を温めて、食べさせて居ます」


「それは良かった、感染は大丈夫だろうね?」


「ええ、充分調べましたので、最も備品庫に5日間立てこもって居たので、ゾンビと接触した人は居なかったみたいですね」


「それは良い判断だったね、他所では途中で入った避難民が感染していて、2次感染でやられた場所が多かったから。


 皆さんご苦労様でした、私達は此処から北へ300m程野川の上流へ行った、対岸にある水原町6丁目町会の自警団の物です。


 私は今回の、長谷病院奪回作戦の指揮を取って居る甘莉と申します。


 本作戦は長谷病院とその周辺のアパートを接収し、近辺の医療施設の確保と、今後起る都心部のゾンビスタンビート時に、防備を破られた自治体の受け入れ地域を確保する為に行いました。


 幸い今作戦は事故もなく、無事終了いたしましたので、この地域はゾンビから隔離され、取り敢えず安全は確保されました。


 何か質問は有りますか?」


 白衣を着た女医らしき中年の女性が質問して来た。


「あのう、私院内で外科を担当していた殿山と言います。


 今朝ほど部屋の窓から見ていたのですが、貴方がたの持って居る武器はとても一般人が持つ物ではなく、軍隊が持って居る様な装備ですが・・・・?」


「我々の持って居る装備は、実は私の会社の装備を貸与しているのです。


 私は旭グループの代表で甘莉と申します。


 この装備は旭グループの一つである、警備会社[ライジングサン]からの供出品です。


 皆さん医療関係者には旭グループと言うより、旭製薬の母体が旭グループと言った方が分かり易いと思いますが」


「ああ、旭製薬さんの親会社の方なのですね!


 でも何故警備会社が一緒の企業何ですか? 平和な医療機器や薬を作っている会社のグループ企業としては、違和感がありますが」


「それはですね、我社がバイオ系の技術を活かして、新たな製品を作り出している会社だからです。


 日本以外の他国では、自国で開発された新製品を保護する法律が完備されて居ますが、日本ではスパイ天国と言われる程、新製品や新技術を盗まれても、国が自国民を守る法律が無いのが最大の原因です。


 その法律を作ろうとすると我が国では、左翼系の野党が直ぐ政治弾圧だと難癖を付けて、泥棒の片棒を担ぎ私達国民がした発明や新製品の技術が、どんどん盗まれて行く始末です。


 ではどうすれば良いのか? 私は自己防衛をする手をとりました。


 その為[ライジングサン]と言う、警備会社を設立して最新の防諜システムで会社の資産を守る手を取ったのです。」


「それと武装とどんな関係があるのですか? 可笑しいじゃないですか?」


「相手は手段を選ばないし、最悪国の破壊工作要員を送り込み、社員の家族や関係者へ脅しをかける、所謂テロリスト国家ですよ?


 我社の製品は、それほど魅力的な発明品が多いのです、正規の契約を行い、使用料を払わず済ます為なら、どんな汚い手を使っても盗もうとする泥棒に、私は加担するつもりは有りません。


 テロリストに屈し利益を与えれば、奴らは味を占め何篇でも私の会社の社員を食い物にして、同じ手法で会社を強請るでしょう。


 そうなれば、目先の一人を身代金を出して助けたために、100人の社員、いや家族もいますので、400人以上の人間を危険に晒す事になります。


 組織の長としてその様な軽率な行動は、間違っても取れませんし取りません。


 だから強力な防諜組織を我社は持ち、その様な違法行為をした組織は、2度と我社の社員に犯罪行為を行ったら、相応の反撃をする力と実力があることを示し、2度と手を出させない覚悟と行動を持って示します」


「そんな事詭弁じゃ無いですか!


 私達、医療関係者がどれだけ苦労して、人の命を繋いでいるかご存知なんですか?


 人殺しの道具を作って置きながら、そんな詭弁が通ると思って居るんですか?」


 机を叩きながら持論を曲げず、理も非も無く己の主張だけをヒステリックに喚くオバさんを、俺は強い視線で睨みながら、冷静に言い募った。


「察する所、貴方は医療関係者に多い共産党員ですね!


 私は極右も極左も大嫌いな、中道主義者です。


 貴方の信望する共産党国家は、過去何億丁の自動小銃や対人地雷を紛争地域にばら撒いたかご存知ですか?


 極右の牙城A国を代表とする自由主義国家群は?


 貴方の言う人殺しの道具は、場所に因っては野生動物の侵入から、村を守る武器にもなるし、第二次大戦時に国に雇われた医療関係者が何れ程、人体実験を行なって人殺しをして来たかご存知ですか?


 左右どちらの主義を標榜する国家も、その犯罪に手を染めたのを知らないとは言わせませんよ!


 知らないと答えたなら、貴方は嘘つきと言うレッテルを貼らせて貰います。


 今はネット社会です、私の言った事を調べようと思うなら、簡単に検索出来る時代になったのですがね?


 仮に人殺しの道具と言う銃を否定するなら、貴方を又ゾンビが徘徊する地域の一室にお送りして差し上げますよ。


 何故なら貴方を助けたのは、彼方が嫌う人殺しの道具ですからね!」


「そ、そんな事認められないわ! 人権蹂躙だし、パワハラだわ!」


「残念ながら今は非常事態です、我々水原町議会は絶対多数でサバイバル優先路線を取っており、集団の生存の為には集団の利益を侵害する人物は、追放処分とする処置を認めて居ますし、その様な人物は必要としません。


 これは2日前に決まった、非常事態臨時立法で決まった、国の方針ですので充分根拠のある法です。


 非常事態の場合、生存権が第一に優先され、それを犯そうとする人物や集団から、武力行使による護身を許す法律です。


 尚、集団の生存権を一方的な主義主張を持って混乱させる人物、団体も同じ扱いを受け、アジテーションによる反乱の防止と予防も認められているのです。」


「何よそれ! 憲法違反じゃないの!! そんな法律は認められないわ!」


「だから言ったでしょう? 今は非常事態だと? 全てに優先されるのはまず生存権の確保だと!


 その為避難民から食料を奪う行為に、死刑が適用されるのです、


 場合に因っては、飢えた子供が老人夫婦の食料を盗み、それが発覚した場合、殴り殺されても合法と言う事なのですよ!」


「そ、そんな事認められないわ! たかが食料を飢えた子供が盗んだ位で、殴り殺しても罪には成らないなんて」


「ハッキリ言って私も納得は行きません!


 しかし趣旨は良く分かります、何故なら老人はおいそれとは外部へ食料を確保に行けない、その老人から食料を取る行為は、一番残酷な餓死を盗まれた老人夫婦に招く重大犯罪です。


 ではその場で貴方は、子供がした行為だと相手を諌め、同量の食料を貴方が身を削って老人に差し出しますか?


 それが出来たなら貴方は幾らでも、偽善を行えば良いのです。


 だが食料も出せず只同情の為に、その子を庇う行為は貴方が子供を唆し、犯罪幇助した者として共に死刑判決が出て、執行されても仕様がない事態なのです。


 そして私は、貴方が我々の町会に居る為に思想の害悪を自覚なしに撒き散らし、無用の軋轢を齎らす存在である事が解っていますので、貴方を追放処分に致します」


「な、なにを言っているの! そんな勝手な事が認められるはずが無いじゃない、誰か言ってやってよ、そんな権利はないんだと・・・何、何するの?・・・・放しなさいよ、やめて、ヤメテ~~=*>・×・・・・・・」


 俺は鬼山君に目で合図して、彼女を拘束させ、猿轡を嵌めさせた。


「皆さん私は強権を持って思想統制をする気は本来有りません。


 しかし悪質なアジテーターを野放しにし、組織を内部崩壊させる病原体を放置する気も有りません。


 もし自分達と思想が違い、着いて行けないと思う方は、早い段階でこの自治体から離れて下さい。


 我々の自治体は来る者は選別しますが、去者は追いません。


 自分の信望する主義主張が有っても、一社会人として秩序ある行動を取れる方には誠意を持って対応します。


 つまりこの町会は、〝自立″と〝自律"を持った大人が主導する場であり、宗教やイデオロギーに汚染された、万年書生が立ち入る余地は有りません。


 しかしそこに居る殿山氏の様な、自立をしていない自身の現状を理解せず、他の住民を巻き込み反乱を起こして、組織の瓦解を目指し最終的にコミュニティを破壊し、生存場所を奪うテロリストを放置する程、我々は甘くは有りません。


 重ねて言いますが今は非常時であり、まず生存する事が最大の目標であり、他の権利はその順位以下に成ります。


 今迄の平和な日常と違い、犯罪に対しての罰則は極刑である死刑が適応され易いのです。


 何故なら今、犯罪者を無駄飯を与えて飼う余裕が有ると思いますか?


 生死を掛けて生き抜こうとする人達の、努力の上に胡座を掻いてタダ飯を犯罪者に食わす余裕が無いのが実情ですよ?」


 俺はそう言って医療関係者を見ていた。


 そこへ昭和大学病院の、看護師組である咲山看護師が発言した。


「皆さん、私は昭和大学病院で看護師をしていた、咲山と申します。


 私と他の3人は4日前に、調布駅でこの方達に暴徒に襲われている時に、助けられました。


 そして4日間ですが、この町会組織で色々な活動をして来ました。


 私達はこの町会の利害とは間系無い第三者ですが、公平に見ておかしな組織では無く、極めて真当な人達が生き残りを掛けて、努力をして居る人達の集まりです。


 筋が通るなら、若輩者の私達の意見も通りますし、間違った意見であったらどこが抜けていたか、ちゃんと説明してくれる大人達の集団です。


 疑問に思った事は、手が空いた時にちゃんと説明してくれますし、大人の強権で議論を潰す人は居ない、とても居心地の良い組織です。


 私の勤めていた大学病院は、教授や婦長が言う事は絶対で、疑問や悩みに答えてくれる上司は殆んど居ませんでした。


 しかしこの自治会は、会長や甘莉代表の人柄のせいなのか、学校や職場などの集団で過ごして来た内で、一番風通しの良い場所ですし、皆自分の得意な仕事に着いて堂々と働いている人ばかりです。


 お爺ちゃんやお婆ちゃんは、農業の知恵や保存食の作り方、炭の焼き方等を皆に教えてくれるし、4・50代の男性はどうすれば水や電気を町に供給するか若い人達と議論しているし、お姉さん達は料理や裁縫・趣味のクラフトや子育ての知恵を教えてくれるし、建築間系の技術者は簡単で丈夫な擁壁で、どう町を守るか毎日夜遅くまで計画を建てています。


 今回の病院奪回作戦も、私達看護師組の意見を取り入れて発案された計画です。


 だから殿山さんが言っている様な、人殺しの武器をかざして他人を従わせる、独裁者の統治する息の詰まりそうな人達ではありません」


「やはりそうですか! 


 私は長谷病院の医局で働いている、由依と言います。


 確かに旭製薬の噂で、他社で良くある派閥争いや、社内のイジメの噂は聞いたことはありません。


 能力不足の上司が部下の手柄を取った場合、左遷か降格の処分を即座にするある意味とても厳しく、公明正大な会社であると有名です。


 だからこの看護師さんが言って居る事は、他の噂を補完する情報だと思います。


 何せ医局に居ると他所の病院や、製薬会社の情報は嫌という程入って来ますのでね」


「私は第二外科に務める谷田ですが、確かに殿山先生の共産党贔屓は異常の域にありますからね、ハッキリ言ってイデオロギーで、病気は治ると思って居らっしゃるのかと思っていますよ。


 まるで狂信者見たいな方ですから」


「そうですね、幾ら党の幹部候補だと言って、医療の現場に政治を持ち込むのは、如何な物かと疑問に思っていましたから」


「私も幾ら外科の看護師をして居るからと言って、信じても居ない共産党大会や、メーデーに勝手に駆り出すのは止めて欲しいです。


 因みに私は外科勤務の看護師横田です」


「おや殿山さん、貴方は先程私にパワハラだと言いましたが、自身が明らかに外科の看護師さん達に行なっている行為は、パワハラ以外の何者でも無いですね?


 自分が他人にされると大騒ぎをして、自分がすると正当な行為ですか?


 常にその様な行動を取る人間は、いざと言う時貴方を見放すのですよ? 最も共産党と言う組織は、一党独裁のファシズムを信望する、ファシストの集団ですから思想統一を是とし自由な思想は許さない、ナチズムと通ずる体制ですからね。


 人間、信用を作るのは何十年も掛かり、落とすのは一瞬です!


 今此処に貴方を擁護する人は居ない様です。


 人を責めるより自分の生き方をまず、振り返った方が良いですよ。


 では鬼山君彼女を外の安全そうな場所に、お送りして来て下さい」


「了解!」


 ジタバタ暴れる殿山医師を抱えて、町会から離れた場所に追放する為に鬼山君が部屋から出ていくと、俺は改めて長谷病院の生き残りスタッフに挨拶をした。


「皆さん改めてご挨拶をさせて頂きます、わたくしは今、水原町6丁目町会を補佐しています、旭グループ代表の甘莉丈太郎と申します。


 先程も触れましたが、此処を占拠したのは、この地域の医療状態の改善と慢性病患者の薬の確保が1つです。


 もう1つはゾンビの生態に関わる事例なのですが、日本政府の諜報活動に因って、C国が発表していないゾンビの生態が判明したのです。


 それは、ある一定地域の生存者の割合が、ゾンビの数の1割程に減少すると、生存者が多く居る地域に移動する事が、確認されていたのです。


 そして日本国政府は偵察機等の情報で、東京都心部のゾンビ数がその数に間も無く達すると発表しました。


 私は製薬会社代表と言う立場の為、政府にコネクションが有るので、パンデミック直後にこの情報を入手し、この町会で備えをしていたのです。


 少なくとも後12日後に発生するだろうとの予測がなされています」


「え~そんな事態が起るのですか、下手をすると気づかずに飲まれる可能性も有ったのですね」


「その通りです、だから我々も急いで対策を取っています。


 今回の作戦は病院の他に、T大の寮と都営住宅を同時に接収したのもその為です。


 その訳は、仮に町会の壁が破られたり、他の協力自治体の壁が破られた場合の、避難場所として使用する予定が有ったからです」


「だからこの地域一帯を接収したんですね、何故こんな大きな面積を確保したのかと思っていたのです」


「此処にいる、残り10名の医療スタッフの皆さんは、町会内のアパートの空き部屋や、戸建住宅のでシェアして貰いますが、我が町会は当社の太陽光ユニットが、必要量以上の電気の発充電を行なっている為、エネルギーは充分確保しています。


 水も飲料可能な湧出量も多い井戸が町内に3箇所、病院周辺に2箇所確認されて居ますので、飲料以外に風呂にも入れます。


 また町会の物資調達隊が定期的に、周辺の食料倉庫やスーパー等で食料や日常品等の物資を、調達して居るので1年程の生活物資は確保していますので、ゾンビのスタンビートは擁壁さえ完成し、破られなければ生き延びられるでしょう。


 後、昭和大学の看護師さん達は、仲間が北海道に移動したので、3日程したら私達も福島の研究施設に移動しますので、その時一緒に移動しますので、後の診療体制を皆さんに任せて行きたいと思います」


「え? 甘莉さんは福島に行ってしまうのですか?」


「ええ、対ゾンビウィルスワクチン開発の、陣頭指揮を取らなければ成らないので、福島の研究・製造工場に移動し無ければ成らないのですよ。


 薬や武器・設備で不足が出たら、自衛隊のバートル大型ヘリで空輸しますし、此方には衛星を使った、インターネットのシステムを用意して行きます。


 使い方が分からなくなったら隣の都営住宅に居る、26号棟310号に居る吉岡君に聞けば、大抵のトラブルを解決してくれるでしょう。


 彼は所謂ヲタクで技能者なので、辞を低くして聞けばなんでも教えてくれる頼りに成る人ですが、侮ると相手をしてくれなく成りますから、注意して付き合って下さい」


「まあ私は医局に居て、其の辺のトラブル対処の、ネゴばかりしていますから慣れて居ます」


 医局勤めの由依氏は、オッタッキー系の医師と、通常人の間に入って交渉ばかりして居るため、吉岡君タイプの扱いには慣れているようで安心した。


 そんなこんなで、漸く長谷病院及び周辺地区の制圧が一段落ついたのだった。



Pday 7日目

PM15:20 調布飛行場側 水原町公民館


 俺達は見張りの3人とジムニー改を残して、公民館に戻って来た所だ。


 此方は今、隣の水原公園に周りのコンテナ倉庫から持って来た、コンテナを積み上げ、一時的なコンテナーヤード状態になっている。


 コンテナの擁壁も、町会の1/3の周囲に設置され、今日中に1/2の工事が終わり、明日中に全部が終わるだろう。


 川沿いの鉄板防壁は、明日か明後日には敷設が終わり、病院の擁壁も4日中には完成して、防備は格段に強化される予定だ。


「甘莉さんご苦労様、病院の方は予定より早く終わった様だね」


「ええ佐々木会長、やはりゾンビは人口密集地に移動して、数が激減していたお陰です」


「と言う事は、スタンビートの縮小版が起こったのだね」


「そうです、これでスタンビートの発生は、ほぼ確定と言う嫌な実証になりました。


 しかし、これだけ備えておけば慌てる事は無いでしょう、後は病院までの回廊を作ればいざと言う時、安心ですからね」


「[跳橋]と対岸の川沿いの道を結ぶルートか、沢2丁目辺は住民が大分移動して、古い住民ばかりが残った状態のようだね。


 あそこも長谷病院が決壊した時に、住民が8割程逃げ出してしまい、ほぼゴーストタウン状態だったな」


「なにせあの場所は、移動用の道路が少ないですし、物資の確保が難しい立地ですから。


 水原町に人が居なければ、出入りも楽なのでしょうが、此方は徹底抗戦の構えで城砦都市化してしまいましたから、自ずとあの辺は過疎化してしまったようですね」


「あの辺は新しい住民が多いので、一致団結して事に当たろうとはせず、個々に対処したので可惜あたら守りやすく攻めにくい、良い条件の土地を活かし切れなんだ」


「いくら戦略的に、守るに安く責めるに難い土地でも、それを利用する〝人"が居なければ宝の持ち腐れに成る良い例ですね。


 今後はスタンビートが終わったら、暴徒の圧を跳ね返す為に、あの辺に避難民を住まわせて、防備を固めるのが良策でしょう」


「まあ貴方のお陰で、パンデミック中の生き残る算段がつきました事は幸運でしたな。


 ワクチンも最長9ヶ月位で完成し、量産に2ヶ月で約1年の期間頑張ればなんとか目処は立つと、解って居るだけでも希望はありますからの」


「出来るだけ期間を約める努力をしますが、相手も生き物なので都合良く行けば良いですけれど、何とか早まる様努力します。


 後、都営団地26310号に住んでいる、吉岡と言う青年は中々コンピュータや無線の事に詳しい人物なので、衛星通信に問題が起こった場合彼に相談して下さい、多分お役に立つ技能者ですよ」


「ほう、甘莉さんが褒めるなら中々の腕を持って居る青年なのでしょう。


 いざとなれば相談に乗って貰いますよ」


「ええ、癖は強いですが腕は確かな人物ですので、素直にお願いすれば快く引き受けてくれる人です。


 只、彼は昔酷くイジメられたため、心が傷ついてしまい引き篭った人物ですので、侮りや侮蔑の感情を持った人間に対して、敏感ですので其処を弁えた人物が、対応した方が良いでしょう」


「うん、そういうのが得意なのがわししか居らんが、誰か他に適任者がおるかな?」


「今日病院に居ました医局勤務の由依氏は、その手の人物と付き合うのが得意のようですので、会長以外が依頼する場合は由依氏に頼むのが良いと思います。


 あと吉岡君には、彼の住むアパートの部屋に別系統の、戸建用S型の発電ユニットを着ける事と、早めに井戸水を供給する約束をしてしまったので、田嶋社長にお願いして良いですか。


 その他に、インターネット衛星用アンテナを着ける事と、昨日ダンキーで手に入れた最新PCと、無線RUNシステムとレーザープリンタを設置し、食料を配給する約束をしたので宜しくお願いします」


「ハハハ、どうせその手の坊主なら、飯などロクに作らいないで趣味に没頭するだろうから、健康維持の為に内の婆さんに弁当や、食物の差し入れでもしてもらうかの? なあ婆さん大丈夫かね?」


「まあまあ、若い人が私の料理を食べてくれるのかねえ?


 煮物や魚が多いから肉料理なんかは、婦人会の若手に頼んでおきますよ、それで宜しければ作りましょう」


「済ません、お手数かけますがきっと彼は、町会の皆さんの為にお役に立つだろうと思います」


 俺は吉岡君の事を佐々木老夫婦に任せた。


 何とは無くだが彼が今後の町会のサバイバルに、かなり重要な役割を担っていく一人に、成りそうな予感がしたからだ。


「それと甘莉さん、貸しコンテナの中にトンデモない物が入っていたのですよ、見てもらえませんかね」


「解りました、ひょっとして武器間系ですか? そんな予感がしていたので」


「大当たり、どうもヤクザの武器庫として、使われていたみたいです」


 俺は佐々木会長と武器弾薬が保管してある、製造工場の倉庫に確認しに行った。


「おお、これはかなりの量と質ですね。


 大隊規模の歩兵が2回戦か3回戦、戦える量と質はあります。


 田所君どんな感じだね」


「ええ代表、種類は自動小銃が旧7.62mm弾仕様のAKMが70丁、AKMSが30丁、各30連マガジンが5本ずつ、PKM軽機関銃3丁と75連ドラム弾倉が12個、45連マガジンが12本、弾薬が6万発。


 SVDM狙撃銃5丁とPOSPスコープ5個ですが、このSVDMにはピカニティー・レールが後付改造されていますので、うちの[バイパー]に付けられている予備のRSM-05ダットサイト・望遠スコープを付けた方が性能は上りますね。


 弾は3000発有りますが、このSVDMは輸出用の308ウィンチェスター弾を使用するタイプなので、国内の銃砲店で弾は入手可能ですし、64式を使って居る自衛隊でも入手可能ですので便利です。


 後はお馴染みRPG-7のランチャー10機と破片榴弾が60発に、対車両用ノイマン効果弾が20発です。


 RGD-5手榴弾が60個に、後銃はグロック17Cの3~4世代タイプが50丁に各16連マガジンが5個ずつ有りますね。


 SMGはUZI・C華コピーの85式が20丁にマガジン32発入が各5本ずつです。


 弾は9mパラが30000発有りました。


 後、散弾銃は12ゲージのイズマッシュ・サイガ12が10丁、ベネリM-4 スーベル90が15丁に12ゲージの弾が2000発あります。


 その他、C-4爆薬が50kgとフューズ各種に起爆装置が20セット、小型対人地雷が50個に、アメリカ軍のクレイモヤ50セット、起爆リモコンセットが50セット、自決用かな?青酸カリの錠剤らしき物が100錠あります。


 これらが大型コンテナの倉庫4つに、偽装されて入って居ました。


 いったい何と戦う予定だったのですかね?」


「在日系工作員の武器庫に使っていたのでは無いかな? 武器の種類と量を見ても、それ系の品揃えだね。


 もし総理が工作員対策を取らないで、海戦に突入していたらこれらの武器が、日本国民に無差別に向けられた可能性が大だよ。」


「しかしトラップが無くて良かったですよ、この量の弾薬が一気にふきとんだと考えるとゾッとしますね。」


「緊急事態用の倉庫だった為じゃないかい? 構成員がプロばかりでは無い為、下手に仕掛けをすると味方が吹き飛ぶからね。


 今度から大型コンテナを開ける場合、変に複雑なカギが掛っている物は見送ったほうが良いかもしれないな」


「その旨徹底しておきます」


「佐々木さん、これらの武器を使って拠点防護の訓練をしておいた方が、良いですね。


 折角強力な武器が手に入ったのですから、要塞化した擁壁の各所に警戒用の塔を建て、防弾の見張り台を置いて、ゾンビと暴徒の襲撃に備えて、実弾訓練を行ったほうが良いです。


 後、[ライジングサン]から赤外線受像型の対人カメラや、各種対人センサーとレーザー警報システムに、対人レーダーの監視システムを供出します。


 しかし、銃と弾の管理は徹底して行なって下さい、万一と言う事も考えて常に行動するのが大事ですから」


「わかりました、万が一を常に考えて行動しますよ。


 あんな武器を自分や、家族に向けられる事を考えると、ぞっとしますからね」


「そうして下さい、後都営団地にPCを届けてもらうので、2人程人員を借りますが良いですか」


「構いません、電気間系は明日になると思いますが、中型のクレーンが手に入ったので、3階建ての屋上位直ぐに荷物を運べる様になりました」


「蓄電ユニットは三階の一部屋を潰して、そこへ設置すればいいですから、田嶋建設組の人を二人借りて、大体の下見をして貰います。」


「ついでに病院の設置場所も見ておいて貰えば、手間は無いからね。


 ああそう言えば、病院の隣にある牧場はどうしますかな?


 10頭程牛が飼育されて居るのだが、そこの牧場主一家はゾンビにやられて全滅だが、牧童の雇人は全員無事なので、いっそ草でも食わせて牛乳を確保しますか」


「良いんじゃ無いですか? 川沿いや崖沿いの草を食べさせて、乳をとって行けばいいのですし、最悪食用にすれば大分助かるでしょう。


 牧場の人から相談が有ったのですか?」


「そこの牧場主とは茶飲み友達だったからの、一昨日雇われ人から連絡が有ったよ」


「それはご愁傷様でした、嫌ですね知合いの訃報は。


 ではコンテナで病院側に壁を作る時は、牧場まで覆いますか?


 後、後ろの崖から20m位まで木を伐採して、崖際から10m位内側に鉄板の擁壁を作らないと、上からゾンビが落て来て侵入する可能性が有ります」


「そうじゃな、牧場の裏手も30mの幅で木を切って、真ん中で鉄板の擁壁を作った方がいいの。


 あの辺は人気がないので、暴徒供が擁壁の下に穴を掘る可能性も有るから、2m程掘ってコンクリで固めた方が良いかもしれん。


 若しくはコンテナの壁にした方が早いか」


「その辺は、田嶋社長と相談した方が良いでしょうね、流石に伐採はプロに任せて居ましたので」


「そうじゃな、しかし囲みを破ろうとする者は、必ず弱い部分を突いて来るからの。


 昔この辺がまだまだ森深い頃は、猪が出おってあの崖から畑を荒しに降りて来たものだ。


 まして欲に駆られた人間相手だからな、いっそ崖から壁まで罠を張って置こうかのう?」


「罠は良い考えかも知れませんね、鬼山君や田所君は散々ゲリラに罠で悩まされた経験者ですから、かなりエゲツナイ罠を仕掛けさせたら得意ですよ。


 仕掛けた罠を更に改造して、仕掛けた本人が確認しに来たら、逆に引っかかるカウンターの罠とか、生け捕りにするのから、あの世行きにするトラップはお手の物です」


「わしの親父も中国戦線では、罠に悩まされたそうだが、相手が暴徒なら遠慮は要らないので、エゲツナイ手を色々伝授して貰おうかい! ハァハハハハ」


 さすが佐々木老、糞ジジイ全開だな。


 ここに来る暴徒もご愁傷様だな、精々佐々木爺さんの酒の肴になってくれる様に、鬼山君や田所君にタップリレクチャーして来る様に、頼んでおくか。




Pday 7日目

PM14:40 調布飛行場側 [ひよく寮] リビング


 俺は都営住宅の吉岡君に、最新型PCとメモリー256Gと予備のHD5Tbに、BRDVDと無線RUNシステム、衛星インターネットのルーターに、4K32インチモニター、レーザー小型A3プリンターを届けた。


 そして明日のソーラーユニット工事と、揚水ポンプの手前にタンクと井戸の揚水スイッチの工事を告げ、少々煩くなるが明日は衛星通信用アンテナも設置するので、ラグ調整を手伝って貰うようたのんだ。


 やはりオタク君だけあって、アンテナの設置や新型ソーラーユニットに関心しきりで、結講話し込んだ。


 俺も技術系だし元々ヲタク気質が有るので、気が合いついつい話し込んでしまった。


 ついでに俺が福島に移動した後、衛星通信間系の面倒を見て貰う様頼み、食事は町会長婦人が作ってくれる旨伝えると、結講恐縮していて、町会の衛星通信間系や長距離ハム無線のお守りをしてくれる事になった。


「これで懸案はほぼ解消したので、安心して福島工場に移動出来るな」


「後は残る方の自助努力だけですもの」


「そうだね、しかしやはりスタンビートは起るのだな。


 長谷病院のケースが良いテストケースになったよ」


「お陰でスタンビート後の状況も、予想が立ちますからね。


 ゾンビがドーナッツ状に拡散した後は、生存者はかなり楽が出来る事が解りましたから。


 土地も、残存食料も生存者の数が一挙に減るので、生存率が逆にスタンビートが通り過ぎた後はあがりますからね」


「正にゾンビの津波だね、津波と違うのは資源や食料には関わらないで、人の命だけを奪う津波と言う事が出来るからね」


「ある意味本物の津波より、インフラを残してくれるだけましですが、津波より到達点が際限なく深く執拗で、終わりが無い所でしょうか」


「どちらも御免だね、しかしまだスタンビート時に、変異種が発生していないだけマシだよ。


 もし変異種のスタンビートだったら、どの位の人間が生き残れるのか、絶望的な数字が出そうだね」


「ワクチンが出来ればもし襲われて、死亡してもゾンビ化しなくなるので、ゾンビ自体は増えなく成りますが、相変わらず命を狙って襲って来る害獣が居る事に、変わりは無いですから根本的な解決には、成らないのでしょうが、人類絶滅だけは回避できそうですね」


「他の猛獣と変らない事に成るし、変異種も数は増えないで、どんどん数が減って行く絶滅危惧種になるだろうね」


「確か蹈鞴博士はワクチンの他に、投与すればゾンビウィルスを殺す薬も開発しているのですよね、どんな薬なのでしょうか」


「ゾンビ自身ある種の代謝を行なっているのは、研究で判明しているらしいのだが、表面の皮膚や脂肪組織はあまり代謝は行われず、筋肉組織が活発に代謝を行なっているらしい。


 だからゾンビの表面に殺ウィルス薬を散布しても、効果は出ないか、出ても時間が掛るそうだ。


 そこでウィルス薬を打ち込む弾を製造して、筋肉内に撃ち込めば即効性のある武器に早変わりだそうだ。


 候補として22口径LR弾を使い、100連発のキャリコカービンか、アメリカン180の275連発でゾンビ無双をするそうだよ」


「日本では[バイパー]を使えばいいでしょう? まあ22口径LRならもっと安く銃本体も作れるから、そちらが普及するでしょうが。」


「そうだね[バイパー]は本体価格が高いから、海外では色んな22口径LR弾か22口径ショートマグナムで多連装の銃が安く開発されるだろうね。


 日本でも[バイパー]なら、パチンコ玉に0.5mmの溝を螺旋状に刻印して、そこに薬剤を充填して置けば、後はゾンビに当てるだけで倒せるから、素人でも簡単にゾンビへ対処出来る様になるので、ワクチンと抗ゾンビ薬が出来ると、直ぐにゾンビ退治が終わるだろうね」


「エアーガンであれば、市販のエアーライフルでも対処出来るので、エアーライフルの所持は免許制度から、外すと良いのですけれど、其の辺は代表が総理に提案すれば、直ぐに法案が出来て対処出来ると思いますわ」


「ええ抗ゾンビ薬の目処が立ったら、総理に提案する事にしますよ」


「済ません甘莉さん! お話の途中で。


 今夜は冷凍物ですが金目鯛の煮付けにしますが、大丈夫でしょうか?」


 佐田婦人が聞いて来た。


「大丈夫も何も、大好物ですよ金目鯛の煮付けは! 是非食べたいですね」


「それは良かったですわ、後高野豆腐と絹莢の卵綴じと、里芋と根野菜の鶏肉入煮付けに、豚汁を予定しています」


「わ~言う事無しの、鉄板メニューですね! 看護師共が熱燗を要求しそうなある種、ヤバイメニューでもありますね」


 そう言えば佐田婦人の美味しい料理を、ゆっくり味わえるのもあと2日か・・・・・・


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