20.Pday 5日目
今回も1話呑みの投稿です
PM14:00 八王子市 八高線 北八王子駅付近 旭工機八王子流通センター
俺達は昼食を終え、荷物の確認をしてから出発の準備を整えた。
田嶋工務店組は、取付け時の注意やコツ、困った時の質問用無線周波数を聞いていた。
「では高田隊長、そろそろお暇するよ、首相にはユニットの配布に関して、聞いておくので後でメールします。
他に何か有ったら、同じくメールで連絡して下さい、あと3~4日で東京を立ち、福島へ船で向かいますので。
明日は多分[ひよく寮]で、対C国海軍海戦を観戦して居ると思うので、直ぐに返信は出来ないと思います」
「解りました、何か質問が有りましたなら、メールしますので、気付けてお戻り下さい。
帰途で何か有りましたら、ライトプレーンで航空支援をしますので、無線を直ぐ下さい」
「解りました、もしもの時は連絡入れますので、その時は宜しくお願いします」
俺達は高田隊長に送られて、配送センターを後にした。
事が起きたのは、平山橋を渡り北野街道に左折して、入り川崎街道と交差する、高幡橋交差点に差掛った時だった。
最初に気付いたのは田所君だった。
「え? あれは・・・・『各車両停止! 指示あるまでその場で待機』
代表、前方で2つの集団が戦闘中の模様! 銃器を使用している様で、ゾンビがかなりの数集まっています。
どちらがどちらに攻撃を仕掛けているのか不明。
取り合えあえず観察を提言します」
「解った、蒔田君・田辺君天井のハッチを、銃座の形に展開し[バイパー]をセットして待機して欲しい。
『各車両に通達、前方の交差点で、戦闘を行なっている、二つの勢力があり。
装甲トラックは、銃座を展開し現状で待機。
私はどの様な集団が、戦闘を行なっているかを観察する』」
『『『了解』』』
「田所君私は後の荷台に行って、セントリーガンの情報集収機器で、偵察を行うので操縦は頼んだ」
「了解しました、気付けて下さい」
俺はウニモグの荷台に入り、武器制御卓に座り、通常は天井に収納された荷台天井の基台に、[アナコンダ]と一体化した遠隔操作の、多機能TVカメラと集音マイク・小型レーダーが、セットされた情報集収・自動半自動照準機器銃を、機動してジョイスティックで狙った集団の、指揮者らしき存在の映像と声を拾った。
マイクとTVカメラで、画像と声を拾って居ると、右側の武装が充実して居る、乗用車4台の集団は、ヤクザの集団の様で、左側の乗用車3台と、バン3台に2tパネルトラック2台・マイクロバス1台の集団は、避難民の車列の様で、ヤクザに襲われて居るようだった。
多機能TVシステムの、サーモグラフィでスキャンして見ると、どうも左側の車列のバスには、子供が数人乗って居る様で、かなり危機的な状況の様だ。
俺は皆に無線で状況を伝え、自分は向後の憂いを立つ為に、右側の襲撃者を順滅したいが皆の意見を聞いた。
『以上が現在偵察した状況だが、突破しても奴らは見逃すはずはなく、必ず追って来て我が方に被害が及ぶと思う。
それに此方は既に奴らに、気が付着かれている様で、方向転換して逃げても、後を着けられるのは目に見えている。
私としては、今の内に奴らを順滅しておいた方が、後腐れ無く帰還出来るので、今の状況だと順滅が、ベストな選択だと思うがどうだろう』
『此方C-1、我々はA-1の作戦に賛成だ、盗賊をトレインして町内に引き込みたくないからね』
田嶋社長がまず賛成して来た。
『コチラD-1、私達も賛成です』
『コチラB-1、殺っちゃいましょう』
『A-2以下も同じく賛成です、A-1作戦はどうします?』
『A-1より了解した、作戦はトラック2台を500m後方へ退避。
A-1とB-1は車両から離脱し、通りを挟んだ右側マンションをβ(ベータ)、左側マンションをα(アルファ)と呼ぶが、それぞれ屋上か上方階に昇り其処から狙撃をする。
αはA-1(甘莉)が、βはB-1(鬼山)が占拠するが、敵は今の所マンションには拠点が、無いが注意して侵入してくれ。
ウニモグは道を迂回して、奴らの後方を断ち其処から、[アナコンダ]と[バイパー]で攻撃し、装甲トックはウニモグの攻撃が始まったら、同じく攻撃を[アナコンダ]と[バイパー]で、行い奴らを順滅する。
ヤクザの人数は総勢9名であり、武装はAK-47二丁と、M-16系二丁に散弾銃5丁だ。
サイドアームは不明なので充分注意して掛ってくれ。
避難民側は散弾銃が3丁にライフルが2丁だ。
我々二人が配置に着いたら、連絡するので同時に攻撃に移る。
トラック組はエンジンを切って、暴徒とゾンビが近寄らないか注意をしてくれ。
B-1はウニモグに乗り変えて、マンション近くまで移動して、配置に着いてくれ。
以上此れより作戦に入る』
俺は鬼山君がウニモグに、乗り込む為近づいて来た時、彼にサイドアームである、H&K MARK 23 サプレッサー付きと、予備マガジン5個にガンケースを付けて渡した。
「マンション内は銃が有った方が安心だろう」
「有難う御座います、助かります」
「気を付けてな」
「了解! 代表も御気付けて」
俺はウニモグを降りると、右側の路地に入り体に、身体強化の魔法を発動させて、正に風の様に路地を駆け抜けた。
今の状態は往年のマンガの、サイボーグが加速状態になったのと、近い状態だと思う。
脳の処理速度が上り、例え至近距離で12.7mm銃を発射されても、飛来する弾丸もゆっくりした、速度にしか感じられないので、弾を素手で受け止める事も出来るだろう。
なにせ身体を強化されているので、素手で弾を受けても傷一つ付かないからね。
まもなく三階建てマンションの、非常階段に到着し、足音も無く3階の目当ての角部屋に着いた。
気配察知の魔法を発動して、室内を探査したが生者も、ゾンビも居ない留守部屋だったため、念動で開錠し室内に侵入し、そっとカーテンと窓を開けていく。
外の戦闘の様子を見ると、避難民側が押されて居り、二人が負傷して戦線を離脱し、一人は既に死亡して居る様だ。
鬼山君の位置を探ってみると、まだ、迂回途中らしく後5分程掛るだろう。
このままだと避難民が押されて、戦線が瓦解してしまう恐れが出て来たので、介入する事にした。
『こちらA-1、避難民側の戦線が瓦解しそうなので介入する。
なるべくサイレントキルで、数を減らす様にするが、私が先攻するだけで車両はB-1が、攻撃に参加した時点で攻撃を開始してくれ、以上』
『『『了解!』』』
俺は窓から2m奥に、ダイニングテーブルを置き、その上に机の上に有った、平置きの本棚を本ごとセットし、銃架にして一番遠くに居るヤクザの、頭らしき奴に狙いを付けて引き金を絞った。
ダットサイトの望遠機能は、機械式の部分とデジカメと同じ、デジタルズームの機能も有り、最大80倍までズームが効くので、80m離れた標的も目と鼻の、先位にしか感じない。
相手は他の避難民を、狙撃しようとM4を構え集中していたので、1発で仕留めた後、銃自体も機関部に1発お見舞いして、使用不能にしておいた。
これで後八つ。
次にもう一人は、スコープ付きのM-16A2らしき銃を構えて、同じく狙撃中で隙だらけだった。
狙撃中は自分も狙われ易いので、隠蔽はお忘れ無くだ。
そいつもヘットショットで沈め、やはり銃も破壊しておいた。
後七つ。
[バイパー]はエアーライフルなので、静粛性に優れているが、サプレッサーを付けて、更に静粛性が増した御蔭で、5m離れると殆ど発射音が聞こえないため、ゾンビ戦やサイレントキルには、持って来いのテロリストが、喉から手が出る程欲しがる一品に仕上がって居る。
そんな銃に狙撃されたら、素人が狙点を特定出来る訳がない、恐ろしい武器である。
俺は鬼山君が定位置に着くまで、後二人のAK-47の二人の、計4人を仕留めて置いた。
後五つ。
他の散弾銃を撃っているチンピラは、トリガーハッピー状態になっており、味方のライフル組が皆射殺されて居る事に、気が付いて居ない様だ。
最も俺が後方から順に片付けたのが大きいが。
『こちらB-1、狙点βに着いたので車両組の攻撃を開始して下さい』
鬼山君が残りの5人を狙撃し始めると、二方向から装甲トラックが現れ、残り3人程になったヤクザを、[アナコンダ]で遮蔽物ごと文字通り粉砕した。
驚いたらしい避難民側も、銃撃は止めて様子を覗って居る様子だった。
その時ウニモグから田所君が、外部スピーカーで呼びかけた。
『こちらは水原町会所属の自警団だが、そちらは避難民らしいが大丈夫か?
我が方に交戦の意志はないので、話合いに応じて欲しい。
医療品の提供も出来るが必要か?』
暫く相談していた避難民グループは、代表らしい人物ともう一人の2人が散弾銃を肩に掛けて、ウニモグの方に歩いて来た。
「私達は高井戸の小学校の避難所から、脱出して来た者達のグループだが、そちらは水原町会の自警団との事だが、どう言う町会なのか説明して欲しい。
町内会の自警団にしては、武器や装備が整い過ぎているようだが・・・」
「その事か、水原町の町内会には、旭グループの寮があってな。
ご存知かどうか知らないが、旭グループには警備会社の[ライジングサン]があり、この武器と装備は[ライジングサン]からの供出品だよ。
因みに私は[ライジングサン]の所属の、警備部門の幹部だ」
と田所君が説明をして居る所へ、俺がマンションから姿を現した。
鬼山君へは回りの見張りを無線で頼んで置いた。
「[ライジングサン]と言ったら新興の警備会社だと思ったが・・・。
確か非殺傷型のゴム銃を開発して、現金輸送や貴重品の警護とかに特化した、新手の警備会社とか、優秀な防弾服を作り拳銃位なら、弾いてしまう装備を開発しているとか、TVの番組で取り上げていた会社かね。
しかし今貴方がたが装備しているのは、軍隊が相手でも打ち破れる程の武器見たいだが、国内では少し物騒な武器だな」
「この銃器類は、海外の武装が認められている、地域用に開発された、対テロ組織や対麻薬カルテル用の装備だ。
このパンデミックが起きた時点で、我社の代表が対ゾンビ用に国内に持ち込んだ、装備の一つだがね。
無論日本では御禁制品なのは、解って居るが国内が、この様な状態に成るのが解って居たので、まあ超法規的な意味合で、持ち込んだのだと理解して欲しい。
それより負傷者が居る様だが、医療品や手当はしなくていいのかな」
「ああそうだ、銃撃戦で男性が二人と女性が一人に子供が一人負傷した、出来れば手当と薬をお願いしたい」
話が一段落した様なので、俺が話を引き受ける事にした。
「田所君! ご苦労様後は私が引き受けるよ。
始めまして私は、この一団の責任者の甘莉と申します。
負傷者の件は了解しました、直ぐに診察しますので、負傷者の所へ案内して下さい」
「あんたは医術の心得は有るのかい、だったら来てくれ大人達よりも子供の方が重傷なんだ。
足を撃たれたが出血が酷くてな」
「分かりました、案内して下さい」
俺は近くのマイクロバスまで連れて行かれ、車内に入り負傷者の子供を診た。
負傷した子供は4年生位の男の子で、右太腿の貫通銃創だが、大動脈を傷つけたらしく、かなりの出血をしているようだった。
俺は傷口の様子を見る振りをしながら、ヒールの魔法をピンポイントで動脈に掛けながら、持って来た[ライジングサン]の救急セットから、ゴム手袋を嵌め手袋と傷口に、イソジンをかけて消毒し、旭製薬謹製の傷口の再生を加速する、止血帯で傷口を押さえる様に巻きつけて、出血性ショックに掛らない様に、状態異常解消の魔法を全身に掛けた。
男性二人は右前腕と左上腕に、それぞれ貫通銃創を負っていたので、傷口への異物混入が無いかを確認して、縫合をするホッチキス状の器具で縫合し、傷口の再生を加速する止血帯で、傷口を覆い包帯を巻き抗生剤を5日分処方した。
女性の方は右脇腹の過檫傷で、傷口を消毒して抗生軟膏を塗り、傷口の再生を加速する止血帯で押さえ、抗生剤を5日分処方した。
一通り手当が終わると、この避難民のリーダーに話し掛けた。
「一応負傷者の手当は済みましたが、男の子の血管の具合が心配ですね。
親御さんに話して置きたいのですが居られますか」
「・・・・・あの子の親は残念ながらな・・・」
「そうなんですか・・・一応貴方に伝えて置きますが、2~3日はあまり動かさない方が良いと思います。
血管の傷は手当を完了していますが、撃たれた場所が微妙な位置なので、振動等の衝撃が長時間加わると神経が損傷して、後遺症が起きる場合が有ると思います」
俺の魔法で完全に治療すれば、後遺症も起きないし直ぐに活動しても問題は無いが、まさか魔法で直しました、もう大丈夫ですと言うわけにはいかないので、不完全な治癒魔法を使った為に起きた事態だ。
もっとも通常の治療の場合、1月位入院して加療を行う必要があるのだが、実際今長時間車に乗せて移動した場合、傷が治る段階で傷口の変形や加減速のGによる、無意識の力のかけ方によって神経に、負荷が掛かり麻痺等の後遺症が、起きる確率が大変大きいのは事実だ。
「う~~んどうすれば良いんだ? 子供一人の為にその他全員を、危険に晒せないしな。
此処まで来るのに既に、車1台分4人の犠牲者が出ているんだ、君もリーダーの様だから解かるだろう、今の御時世では全てを助ける訳には行かないんだ」
「3日程安静にしていれば、先程貼った新素材の細胞活性化素材を使った、薬を塗布してあるパットなので、動かせる状態になるんですがね。
何処かのマンション等のビルや、商業施設に3日程休みに入ったらどうでしょうか」
「いや! 先程の襲撃で他の避難民が不安に思って居るんだ、一刻も早く此処を移動して山間部の、安全そうな過疎村落に落ち着きたいと、思っている者が殆どだと思う。
このままだとあの子は、コッソリ始末されかねんのだ・・・」
「そこまで追い詰められて居るのですか・・・・解りました、少々待ってもらえますか」
俺は皆に彼らの現状を告げ、子共をこちらで保護するのに、無線で賛否を問うた。
『・・・・その様な状況で、このまま放置すれば負傷した子供に、後遺症害が残る可能性がかなりの確率で起こります。
又、それが原因で此の子は同じ避難民から、命を狙われる危険も出るでしょう。
そこで相談なのですが、此の子を私が保護しようと思うのですが、そうすると子供の傷の為帰りの時間が、少し長くなってしまうのですが、皆さんの忌憚の無い意見を、伺いたいと思うのです』
『甘莉さん、どの位のスピードで移動するのですか』
田嶋社長が聞いて来た。
『そうですね・・・最高速度は大体緊急事態での、急制動を加味して30km以下での走行になります』
『すると後大体20km位だから、1時間から1時間半位か・・・・・なら私は賛成です、その位のロスはどうせ折込済みですからね。
何より子供を見捨てて帰ったら、内の上さんに家に上げて貰えなくなりますからね~~~』
『出た恐妻家社長の決め台詞!』
『あ~~~俺も社長婦人を敵に回すのヤダ! だから社長に1票』
『桑原、クワバラ~~~奥さんの雷怖い!俺も賛成』
『兵糧攻めはキツイ、俺も社長に1票』
余程田嶋建設社長婦人の、御意向は強いらしく田嶋建設組は、次々と賛成に回った。
どう言う訳かソーテック組の二人も、社長婦人の名が出ると無条件で賛成に回ったのが、少々腑に落ちないのだが?
『では子供は私が引き取ると言う事で、話を進めますが良いですね』
『『『『了解!』』』』
俺は避難民の代表に子供の、安全の為に引き取る旨を伝えると、ホットした顔をして二つ返事で了承した。
子供の両親は避難途中で犠牲になり、天涯孤独になってしまったらしい。
俺は避難民達に不足していた、医薬品と食料と弾薬(12ゲージのOOバックショット400発とスラック弾200発)600発を与えた。
ヤクザの持っていた、御禁制品の弾が7発+1入るモスバーグM500を3丁と、ベネリM4を2丁渡すと非常に喜ばれた。
彼らと別れると子供を、トラックの後部ベッドに毛布で覆い、ベルトで固定して移動を開始した。
男の子は10才になる日田 勇太君と言って、結講確りした子の様だ。
先程治療が済んで直ぐに意識が戻り、現在の状況と無理をすると怪我が悪化して、最悪片足麻痺になる可能性が有るので、安静が必要な事を伝え、我々に着いて町会に身を寄せるかどうかを問うと、我々に同行する事を選んだ。
身内は北海道の旭川に、父方の叔父が居るが疎遠であり、母方の親類は静岡市の街中に、祖父・祖母・伯母が住んで居るが、連絡が付かないと言っていた。
彼は今無線で連絡を取った、瀬川看護師に処方してもらった、鎮痛剤が効いたのか眠りに着いて居る。
『ではこれから出発するが、あまり速度は出せないので、注意して欲しい。
又後で物資の調達の役に立ちそうな店や、会社の倉庫が有ったら地図にマッピングして置いてくれ、では出発!』
「しかし甘莉代表、大変な世の中になりましたね。
全体の為とは言え、子供を犠牲にしても、目的地に行かなければ成らない時代が来るとは、1週間前では想像も付きませんでした」
「そうですね蒔田君、しかし私があの集団のリーダーだったとしても、同じ選択をしたと思います。
酷い話ですが、状況がこうなってしまった場合、リーダーは常に全責任を一人で負うしか無いのです。
他への責任に転嫁するなら、始めから指導者など成らない方が、良いのですよ。
そうすれば重い責任も辛い決断もせず、他人の決定に従い文句を言って居るだけで済ますから。
先のリーダーは涙を呑んで、この決断をしたのがヒシヒシと伝わって来たので、私もこの子を救う決断をしました。
どうか彼の事を酷い奴だとは思わず、自分が彼の立場ならどう行動し、その結果どうなるかを予想して、結論を出して欲しいのです・・・」
「ええ代表、私もある程度仕様が無い事であるのは解るのですが、どうにも切なくなってしまって・・・・。
早くこんな決断をしなくて、良い世の中にしたいと思いますよ」
「全くだね、一番応えるのは子供が犠牲になる時だな・・・・。
今回の行動も、偽善と言えば偽善だしね、しかししない偽善よりする偽善とも言うからね。
それとあのリーダーの目を見た時に、つい行動してしまった」
「良いんじゃないですか偽善でも、助けられる機会が有り助ける力が有れば、後で後悔せずに済むなら問題は無いですよ」
「そうですね、大が死なないのであれば小も助けます。
しかし大に影響が出そうなら、躊躇せず小を切り捨てる覚悟は、常に持って行動します。
これは自悔でもあるのですが、大勢の命を背負う立場になったなら、最低限の覚悟と言うか、責任ですからね」
「ええその覚悟が無いと、その集団全てが滅ぶ世の中になってしまったのですね。
少し前までは多少の失敗も、社会全体でフォローしていたので、甘い考えがまかり通って居たのでしょうが、この様な厳しい社会が到来した場合、まず優先されるのは生存する事が一番で、その他の権利は優先順位が、どんどん下においやられますからね」
「でも逆にそれが原因で、不平不満が溜まり組織を破壊する原因にもなるのですよ。
それを極力無くす為に、私は旭グループを作ったのです。
人が自由と解放を求めるのも人の性ですし、規律と隷属を求めるのも性なのです。
人は相反する願望を持って生まれて来た、矛盾する存在です。
どうすればこの様な矛盾を解消出来るか、私なりに色々な人に訪ね歴史を紐解いていくと、ある時代が浮かんで来ました。
それは江戸時代と言われる、徳川家康が基礎を築いた時代です」
「江戸時代ですか? 武家社会の身分制度が回答なのですか?」
「いえ、身分制度は関係なく、その社会としての安定度と、庶民の満足度、そして当時の政府に対して、民衆は何故反乱や革命の様な、暴力を振るわなかったかですよ。
いくら幕府が武力を持ち、身分制度で民衆を圧迫したとしても、人は押さえれば押さえる程、反抗するのが持って生まれた性ですから、今の学者が言う説は、私には信じられない事象です。
悪代官には敢然と立ち向かい、一揆を起す気概がある農民が居るのに、幕府が悪政を引き民衆を弾圧すれば、又戦国の世に逆戻りですよ。
其れが何故起きなかったのかが、問題解決のヒントになりました」
「そうですね、今の歴史学者の定説である身分制度による、圧政を引いていたら大爆発を起して、日本全国が内乱状態の戦国時代に逆戻りをしてしまうでしょうからね・・・・。
別に日本人は戦国時代を見るに、反乱を起こさない去勢された民族ではないですから、火が付けば即座に燃え上がるはずです。
特に理不尽な行為は、嫌う傾向に有るのが我が国の民ですし、当時の民の教養は世界一の識字率の高さを誇り、確か明治期に調べた全国平均が6割を超えていて、都市部では9割以上で農村部でも4~5割が、平均の識字率だったはずですね。
もっと面白いのは都市部で、女子の識字率が男子よりも、高い結果が出ている。
教養に於いて江戸期男性は、女性の足元にも及ばない結果が出ているのだよ。
原因は大名家や大身旗本の、行儀見習いの奉公の制度なのだ。
女性の大名家への行儀見習奉公は、今で言う女子大学に匹敵する、高等教育の場だったそうだ。
だから良く勘違いされるのだが、給料を貰う性格の制度では無く、授業料として年2回盆暮れに、付け届けをするのが当前で食費も自前だったらしいのさ。
落語で長屋の大家の女将さんが、歌舞音曲や詩歌・歴史に精通し、旦那よりも教養が高く語られて居るだろう?
あれは大名家や大店への、奉公教育の結果だし良くある、事例なんだ実はね」
「何だか身分制度で、雁字搦めの時代の様な扱いをして居る、江戸期の定説が真逆の嘘で塗り固めてあるみたいですね」
「確かに身分の高い女性は、男性程自由では無かったが、庶民は意外と勝手気まま生活を送っていたようだな。
武士以外の庶民は、寺社に手形を書いて貰えれば、お伊勢参りの八部衆に直ぐに出かけられたし、経を収める回国の旅にも、自由に行けた位だからね。
大体進歩的な科学国家の、ソビエト時代のロシアじゃあるまいし、一々国が国民を一人ひとり監視なんてする、金も人も無い江戸期の幕府が、そんな無駄をする余裕などありはしないよ。
又、今で言う人権など、そもそもその権利と言う意識自体が、社会全体に無いのだから主張仕様がない。
権利と言う単語は、明治期に外国語を翻訳する上で、出来た今迄の日本語の概念に無い新造語だからね。
今の学者が今の常識で、当時を検証する事自体私に言わせれば、この学者はお花畑の住民かね? と頭の中身を疑うよ。
今の常識を例えば200年後異星人と、交流のある星間文明の洗礼を受けた時代の、地球文明の常識で検証されるのは、何を基準として検証して相対化するのかと聞きたいよ」
「ええ、パンデミック前までWW2の、従軍慰安婦問題でも今の常識で当時の性問題を、断罪して居る国や政治家、一般人がいましたが、まるで彼らはK国の裁判官並に、お花畑頭なのではと思いましたね。
当時の世界常識では、性風俗に関して今と常識が違うのに、70年も前の常識を今の常識で検証して、断罪している彼らは一体何をしたいのか、私にはまるで解りませんよ」
「そうだね、あの論法で、攻撃して良いのならこちらも、幾らでも攻撃出来る諸刃の剣だから、まともな国や人は決して取らない戦法だよ。
まああの手の理論で、攻撃して良いのなら、C国もK国も幾らでも叩き様が有るのだが、それが解らん連中を相手に戦うのだから、頭がお花畑は始末に負えないのだよ
この間元O阪府知事が、当時の従軍慰安婦は世界中が断罪されるベキだと、コメントしていたが、弁護士出の政治家とは思えない発言だね。
当時は合法であり、何処からも問題提起をされなかった、慣習を今の常識で糾弾するのなら、今すぐ弁護士資格を返上する事を進めるよ」
「本当に理不尽や筋が通らない破綻した、理論が横行して居るのが世界政治の現状なのかと、タメ息がでますね」
「まあ中世の世界を笑えない現状が、いまの世界だからね。
世界中を見回すと、未だ18世紀の常識が罷り通ると思って居る、自称先進国が増えて来たから。
まあ江戸時代か、ら私が何を学んだかと言う話しだったか!
何故江戸時代の町民や農民は、幕府の意に従ったのかと言う事だがね、
ある小説を読んだのが切っ掛けでした」
「どんな本だったのですか?」
「SF?だと思うが石○英輔氏の、「大江戸神○伝」と言う小説だ。
内容は現代人が時間と、次元を跳ぶ能力を得て、江戸と東京を往復して生活する内容だった。
しかし今迄のタイムスリップ物の小説とは、一線を凌駕して居る本だったよ。
通常だと現代人の、圧倒的な知識や道具で俺チートな内容にしがちだが、この本は冷静に現代日本と江戸の文化の違いや、現代の学者やTVが、わざと江戸を犯罪都市の様に思い込む、誘導をしてきたかを自覚させ、自然と本来の江戸時代とは、どの様な文化を持ち、とても規律正しくつましい世界だったと、当時の思い違い歴史を正す内容なので、思わず引き込まれた作品だな」
「へー面白そうですね、読んで見たいな、まだ続刊が続いている本の様ですね」
「ああこの状況だと、次巻が何時発行されるか分からないがね。
その本に寄ると、作者曰く江戸時代が三百年近く続いたのは、武力による恫喝で民を支配した為では無く、「武士は食わねど高楊枝」に代表される、武士の有り様の基本である、「家と誇り」を基本にした精神性を、堅持していたからこそだそうだ。
つまり武士以外は、貨幣経済の中に居て基本が「利」の価値観に因って生きて居る訳だが、武士は己の家系と武士で有る、「誇」が基本の価値観で生きて居る者達だった。
だから商人が幾ら経済力を持ち、武士より良い生活をしようが、価値観の違いで端から商人は、武士の「誇」に敵わず、武士を敬い経済力が上でも、清貧を貫き安い俸禄で粛々と国を治める、武士の方を身分が上の方達と敬ったのだ。
そして江戸時代が潰えたのは、「誇」が基本的価値観から外れた為に起こった、事変だった為だと言う論だった」
「武士と言う「誇」が廃れた時が、武士の世が終わったのですね。
だとすると「誇」が廃れなければ、武士が徳川幕府以降も政権の中枢に、有り続ける可能性も有ったのか」
「そうだこの本を読んだ時私は、気が付いたのだよ、キリスト教では人はパン呑みにて生きるに能わずであり、左官の左甚五郎は千金を積まれても気に入らない仕事は蹴ってしまい、気に入った仕事は手弁当でも喜々として行ったそうだ。
では災害等で避難所は、何故人が居づらくなるのか。
始めは精神的ショックや、肉体的な疲れが原因で動けないだろうが、半月もすれば体は癒える。
しかし心が折れて居る人は、目に見えないだけにケアが大変だ。
その一助として「労働」を、取り入れて行こうと思い立ったのだよ」
「労働ですか? つまり働く事で生き甲斐を見つけると言う事ですか?」
「その通り、下は小学1年生から上は働く気が有り、病気や怪我で無い人で年齢制限は無い様にしたんだ。
そしてその人が得意な仕事や、趣味を生かした仕事を出来うる限り希望に沿う様にした。
つまり自分が社会から、必要とされていると思う『誇』を持ってその集団に参加する、意義を持って貰うよう誘導したのさ。
早い工場だと、1月前から集まれる希望者を工場に住まわして、実験を始めているが、かなり良い結果が出ている」
「へー其れは素晴らしい方法だと思いますね、私の母方の婆さんも働き詰めで、70才まで頑張ったので、皆んなが楽隠居を進めて仕事をやめさせたのです。
ですが途端にボケが始まって、慌てた家族が再度閉めた店を開けて、看板婆ちゃんに戻したら、ボケが解消してしまったのには驚きましたよ。
因みに店は、駄菓子屋と簡単なお好み焼きと、焼きそばの店だったんですが」
「本当にその話を聞くと凄いと思うよ、人間の帰属意識と言うのは
だから老人を殺すには刃物は要らないのだよ。
彼らが所属して居る、コミュニティから外して、独居老人にすれば簡単にボケ老人や、寝たきり老人が出来上がるからね。
更に残酷なのは、イジメに寄る自殺だと私は思う。
子供達も社会と言う、コミュニティに所属して居るのだから、その居場所を奪う行為は、殺人と変らない。
イヤ自分を殺すまで追い込むのだから、更に罪は二重三重に重い行為だと私は思うよ」
「私も同じだと思います、彼らイジメっ子は昔なら誰か止める子や、大人が居ましたが、今は怒られた子の親が、モンスターペアレントになって、逆ギレを起し其れが認められてしまう、世の中ですからね」
「だから私は現行法では、もっと同害原理を取り入れた方が、犯罪の抑止と言う意味においては、正しいのでは無いかとおもう。
殺す者は殺される、奪う者は奪われるのはある意味、正論だしシンプルで分かり易いだろう。
でも現行法では、飲酒に依る轢き逃げ殺人も、横断歩道の無い道での、車の間からの飛び出し事故に依る事故死も、同程度の罪なのでとても納得出来る法体系では無いよ。
何処か異常な思想で凝り固まった、集団が法を決めたらまともな運用が出来ないのは、誰でも解る事なのだが、イズムに犯された法曹関係者には、当然が当然ではないようだ」
「そうですね、でもこのパンデミックを機に、何処かズレてしまった世の中の常識が、もっとシンプルに変わると良いのですが」
「そうだね、でないとこのバイオハザードで、亡くなった人達は浮かばれないからね。
そして世の中の評価の数が、もっと多い世の中に成ると、もっと余裕のある文化が到来するのだが、その為に労働や技術の評価を上、げないと金儲けだけが、評価の基準では何のために、私が動いて居るのか分からなくなるからね」
その様な事を話しながら、俺達は家路を急いだ。
Pday 5日目
PM15:30 調布市 富士見町三丁目 交差点付近
俺達コンボイは朝とは違い、事故箇所が増えた道を迂回しながら、漸く中央高速調布インターの近くの、陸橋を過ぎた交差点までたどり着いた。
パンデミックが発生してから早5日目で、そろそろ管理の甘い避難所が、決壊する事例が増え始めて居るのか、避難の為の自動車に依る移動が増えてしまい、それに因って発生した交通事故が増えている様だ。
事故慣れしていないドライバーが、調子に乗ってゾンビを車やトラックで、轢き殺していけば、思ったより柔な現代の自動車は、直ぐに故障や走行不能のダメージを受けて、事故に直結してしまう。
其れが原因で、道路の走行不可能な箇所が増えてしまい、移動を阻害しそこをゾンビに襲われ、車列が壊滅と言うパターンが増えて居るようだ。
武装をしてそれなりに手練のいるチームなら、問題無くゾンビを始末する事が可能だが、一般人が普通に避難すれば、ゾンビはかなりの脅威になる。
10体位で囲まれて、リミッターが外れた馬鹿力で襲われたなら、何の強化もしていない普通車では、圧力に負けてサイドの窓が破られて、一巻の終わりに成るだろう。
まだ小回りが聞き、速度が出るオフロードバイクの方が、正面衝突をしない限り避難の有力な手段になる。
どうしても車が頑丈だと言う勘違いで、素人はすぐに轢きたがるからな。
この富士見町三丁目の交差点を、左折すれば後は一直線で帰れるが、そこはパンデミック初日に有った、航宙センター分室前の事故現場に繋がっている為通れない。
神代植物公園前を通るルートが良いか、国立天文台図書室経由で向かうのが良いか迷うところだ。
神代植物公園経由は、2日前には問題無く通行出来たので、取り敢えず植物公園に向かって走ることにした。
「全く道の状況が読めなくなっているね、朝7時位に偵察した時とまるで状況が変ってしまうのだから大変だよ」
「やはり時間的に代表が言って居られた、避難所の決壊しか考えられないですね。
まともな避難所なら、まだ食料も水もあるし、ゾンビが押し寄せてバリケードが破られるにしては、まだゾンビの数が少ないですしね」
「今朝の関戸橋北交差点の状況を思い出すと、やはりそれ以外考えられないな。
後2~5日はこの状況が続き、その後で都心部のゾンビが、スタンビートを始めるだろうから、2週間後までに町会の防壁を、整えておかないと不味いな。
うちの町会は結講面積が広いから、マンションや学校の様にコンテナーで囲う訳には行かないからね。
一番丈夫で手早く作れるのは、建設現場で使っている3m近い鉄板の壁を作るしか無いか。
幸い近くに大手建設会社の、資材置き場が多いので資材や、重機には困らないから助かるがね」
「しかし代表、ゾンビのスタンビートと言われますが、そう言う事例が有るのですか」
「C国の情報に有るのだよ、ゾンビの発生したK林省の幾つかの、街で有った事例だが。
20万人程の中都市が、ゾンビに因って汚染後飽和した為、感染させるキャリアーが居ない状態になったそうだ。
そして奴らはどうやって探知したか判らないが、50km離れた一番近い隣町に一斉に移動を始めたのだよ。
この生態はC国の情報をハッキングして解った事で、あの国が情報を発信した訳では無いよ。
本来なら此の手の感染情報を、隠蔽するのは国際条約違反なのだが、あの国は平気で重要疾病情報を出さない、何を考えているか判らない異常国家だな」
「何でそう云う事をするのでしょうね? 返って自国の威信を落とす行為でしょうに」
「私にもはっきりは判らないがどうも面子の問題らしいな。
何をするにも面子を重んじるのが,あの国の為政者の悪癖だが、大事なのは自分の面子だけで、対する相手も面子がある事を忘れて、行動するのがあの国の遣り方だ。
しかし国際政治と言うのは、同害原理を基準に動いて居るから、此方の面子を平気で潰す相手の面子を、認めるはずが無いのを彼の国は理解していない節があるね。
原因はC華思想と、それを補完する儒教ではないかと思って居るが、今だ中世の世界観で今の国際政治を行えば、要らぬ軋轢を生むに決まっているのが、分からないらしいので頭が痛いよ」
「中世の世界観がC華思想ですか納得ですね。
今だ、朝貢外交の延長で21世紀の、国際外交をしていたのかあの国は。
C国四千年の歴史とか、大言壮語するT民族は、歴史を調べれば300年平均の寿命しかない、王朝のツギハギ歴史でしょう。
その王朝ですら、T民族以外の異民族王朝が7割以上を占めているのに、良くC国四千年の歴史と言えるなと、余りにも厚顔無恥な捏造歴史を語るので、うんざりしますよ」
「だから彼の国は日本を目の敵にするのさ。
日本の天皇家からすれば、偉ぶっているC国歴代王朝も、所詮ポット出のニワカ国家にすぎない。
どんなに偉そうな事をほざいても、天皇家からすれば鼻で嘲笑われる、俄か王朝に過ぎないから、これ程自分らの権威を犯す、国は世界中には日本以外居ないからね。
だから日本が開国をして、西洋列強からアジアの解放を行おうとした時に、彼の国が悉く日本の邪魔をしたのは、日本にアジアの盟主の座を奪われる恐怖から、日本の邪魔を無意識にしていたのが、奴らの本音だよ。
結局は自分さえ良ければ、自分の子分扱いしていた国々が、塗炭の苦しみを味わっても、関係ないのがC華思想の原点だからね」
「身勝手な思想を押し付けるな、と言いたいですね。
勝手に自己完結していれば、他所に迷惑が掛らないのが、判らないのですかね?
・・・・・ん? あれは?」
前方にゾンビの集団が蠢いている、場所は都立調布北東高の辺りだ。
300m手前で我々は停車し様子を見ている。
『どうやら高校の避難所が、決壊したみたいだな、ざっと見ても100体以上のゾンビがいるぞ。
このままこの道を、進むことは出来ないな、少々戻って神代植物公園北のT字路を通って、三鷹通りを経由して・・・この状態なら、人見街道を通った方が確実か・・・、人見街道を通って町会に行く。
町会までの距離は3km以内だが油断は禁物だ、締まって行こう!』
『『『おう!』』』
俺達は慎重に方向転換をして、神代植物公園北の交差点を曲がり、三鷹通りを左折し人見街道に向かった。
『前方50mに事故車両発見、されど片側は通行可能だ。
暴徒に注意して通行してくれ』
『『『了解』』』
しかしパンデミック5日目であるせいか、事故や避難所の決壊が目立って来た。
避難所も避難民を受け入れて、丁度一段落着いた所なのだろう。
その隙を突く形で避難所内から、ゾンビが発生して不意を突かれると、人の大勢居る避難所は容易くパニックになり、それが原因で立て直す間も無く壊滅する事になる。
仕様が無いのは解って居ても、遣る瀬無い気持ちには変わりがない。
本来なら平和で、勤勉に過ごして来ただろう人達だし、殺される様な事も殆どの人達はしていない。
国包みで世界征服や、迷惑を掛けて居た訳でもない、人達が虫けらの様に死んで行く。
それを仕方の無い事と、割り切る事は出来ないな俺には。
その原因を作った集団に、それ相応の始末を付けて貰う、確実に・・・・・。
俺は明日朝に起こるであろう、決戦に対して徹底敵な順滅作戦で、望む決意を新たに家路に着いた。
Pday 5日目
PM16:40 調布飛行場側 調布[ひよく寮] リビング
俺達は30分程前に漸く水原町に帰って来た。
時間が掛かったのは子供のせいでは無く、道が朝には無かった事故の為所々で、通行出来なかったのが大きかった為だ。
怪我をした子供は、小児科勤務の看護師、瀬川さんに頼んで看病して貰っている。
彼女の見立てだと、銃創はバイオパットの御影で、順調に回復に向かっているし、神経の損傷も無い様なので、3日程安静にしていれば、移動には問題なくなるだろうとの事だ。
やはり2年も勤務していると、看護師さんも逞しくなるのだと熟思う。
この寮にはかなり設備の整った治療室があり、簡単な手術位は行える設備と器具に医薬品は揃っている。
俺自身も神様の御蔭で、全ての技術を行える能力を持っている為、治療や投薬手術等医療全般の技術は、取得済みなので其の辺の医者より余程腕は良いのだ。
だからナース達と、専門分野の話もある程度する事は出来るが、専門分野の隠語は残念ながら、取得していないから話を合わせられないがね。
そして今田中君相手に、今日の報告をお互い話している所だ。
「で、横山提督からは何か連絡はあったかな?」
「提督からは多分明日の払暁に、攻撃があるだろうと連絡がありました。
予定通りの動きで興ざめだそうですよ。
今日の1330に軍港を出港したのを、海自の潜水艦により探知されて居ますし、出港と同時に外海へ出て30ノットで、振り切った積もりでしょうが、しっかりと跡をつけられているのですがね」
「A国から情報は入っているかな」
「1時間遅れで首相宛に情報が来た様です、微妙なタイムラグですね」
「やはり共倒れを狙っているか・・・・。
この付けは後で、キッチリ取立てさせて貰うから良いとして、あの国もパンダハガーを良い加減、なんとかしないと国政を誤つよ全く。
戦後の漁夫の利を、狙っているのだろうが、この儘放って置くつもりは無いのにな。
何時までも人のいい日本人を相手、にチョロい外交が出来るとおもっているのかね」
「パンデミックが終わった後、偉大な帝国でも築く野望でも、夢見て居るのかも知れないですね。
まあ夢を見るのは勝手ですが、実世界に害がある夢は、やめて欲しいのですがね」
「C国はC華思想、A国は偉大なるローマ帝国よ再びだし、R国は旧S連邦を蘇らせるのが其々の夢だからね。
しかしどの夢も、他の民族に負担を押し付ける、盗賊の身勝手な夢ばかりだし、モスレムの夢も己の神だけが、繁栄すればいいだけの、収奪者の夢しか無いからね。
やはりシオニズムを基幹にした、文明は泥棒の文明だと思うよ」
「聖書に出て来る神の言う事を、冷静になって読んで見るとトンデモない存在だとおもいますわ。
自分の云う事を聞かない民族は、根絶やしにするとか、自分以外の神を認めずその神を、信仰するのは許さないだとかばかりでしょう。
日本ではあの様な事を主張する神は、禍津神でお祀りはするけど、人気は無い神様で廃れる上津方No.1ですね」
「その通り、だから日本では昔から一神教は、流行らない宗教No.1なんだが、一神教徒からすると何故日本では、ゴットの人気が出ないのか謎なんだよ。
だから彼らは日本人が、一神教に染まらないのは、原始的宗教を信じて居るからに違い無いと、優越感に浸ろうと貶めて来たのさ。
しかし実際神界では、唯一絶対神と会った事は無いし、色々な上津方に聞いても、そんな存在は居ないと言って居られたしね。
自称唯一絶対神と宣う方は居るが、他の方々は面白い事言ってるな~位にしか捉えていないからね。
それより明日は、世紀のメインイベントだから、私は夕食後に仮眠を取っておくよ」
「私もそうしますわ。
0100時に起床で宜しいでしょうか?」
「ああそうしてくれ、しかし今日は結講疲れたよ、まさかこれだけ事故が多発するとは予想外だった。
まあ時期的に迂闊な避難所が、決壊する時期と重なってしまったのが原因だけれども。
そこまで読めなかった、私の責任でもあるのだがね。
では私は風呂に入って来るよ」
「私も代表の後に入りますので」
「解った今夜の為に濃い目のコーヒーを用意して置くよ」
「宜しくお願いします、光恵さんには夜食のサンドイッチを頼んでおきます」
俺は風呂に入り為にへやを出た。
20話目でまだ調布を出立出来ないですね
調布編が終わると福島工場編が始まりますのでお楽しみに
誤字脱字の御指摘宜しくお願いします




