表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 一 章 調 布 編
17/72

17.Pday 3日目

1話分を長くしたせいか更新速度が遅めに成ってすいません


PM14:00 東八道路沿い セイヨーM2 府中栄光町店前


「コチラA-1これより駐車場に侵入する、向かって右出入口を塞ぐ様に止めるのでB-1も習って左側を頼む。


 障害物が多いので、完全でなくても良いので、ある程度ふさげれば可とする。


 尚後部ドアの開閉も念頭に塞いでくれ」


『了解コチラB-1、A-1に習い左側入口を可能な限りふさぎます以上』


 幸いパンデミックが起きたのは、開店直後だったせいか車も自転車も止まってなく入口を塞ぐのは楽だった。


「C-1はA・Bの間を塞ぐ形で止めてくれ、P-1はトラックの脱出を邪魔しない位置に駐車してくれ、あまり離し過ぎない場所が良い」


『P-1了解』


 全車が所定の位置に駐車が完了すると、ルーキー組は各トラックのパネルルームの中で待機する事になった。


「ルーキー諸君はゾンビが、ドアの前に迫った時点で特殊警棒[クラッシャー]でゾンビの頭を砕いて下さい。


 下手に[バイパー]を使うと、玄関のガラスを流れ弾で破壊して、ゾンビの出入りがコントロール出来なくなるので、極力使用しない事。


 使用する場合はゾンビが、大挙して襲来した場合と暴徒がいきなり、武器で襲撃して来た場合のみに限定する」


『『『了解』』』


「では店内の掃討作戦を行う、アルファーは鬼山と田所、ベーターは田嶋と逆髪、ベースを甘莉で行う。


 なおベースはC号車の荷台で指揮を取る」


『『『『了解』』』』


「作戦としては


1、場内のゾンビ掃討と出入り口の閉鎖

2、必要機材と工作機械の集収・・・責任者田所

3、集収後再度場内をゾンビに解放する


 以上質問は」


『あの~何故又ゾンビを場内に入れるのですか、せっかく解放したのに』


 ルーキー組の一人が聞いて来た。


「いい質問だ、それは再度ゾンビを放てば他のグループに、この場所が荒らされないからだ。


 不味いのは、ゾンビに占拠されるのではなく、他の人間に占拠されると2度と此処は、利用出来なくなりせっかく掃除をしても、草臥れ損の銭失いになる。


 その点ゾンビなら、又掃討すれば何度でも使用出来るし、居ない間は番犬替わりに奴らを利用する為だ、理解出来たかな?では状況開始」


『『『『『『『了解』』』』』』』


 結講広い館内だったが、ベテラン組は効率良くゾンビを駆逐していき、1時間後には館内とバックヤードとも、完全制圧が済んだ。


 相手は本能だけで襲って来る、単純な思考しかない存在だし、両サイドを塞ぎ正面からしか襲えない、1本道を作ればあとは単純作業で、頭を打ち抜いていけば勝手に自滅してくれる奴らなど、狡猾な人間の敵では無かった。


 資材と工具を調達後、館内の売り場には入れるが、バックヤードには入れない様に細工をして、トラックやバンの強化資材と、工具以外に町内を囲う壁用の鉄パイプとジョイントをあるだけ仕入れた。


 その他に防災用の非常食や水、グッズ、作業着や長靴、安全靴に保安ベルト、ヘルメットに防塵メガネにマスク、工具ポウチに工具箱が有ったのでそれらも積めるだけ回収して来た。


「よーしこれで本日の剥ぎ取りは終わった、又調達が必要になったらまた同じ作業をするので、その時はルーキー達も戦闘に参加出来るように頑張って欲しい。


 なお帰宅時に私と鬼山君に田嶋君は、パチンコ屋に寄り弾丸を調達して来るので、パジェロで別行動をするので宜しく。


 では帰宅始め」


 皆はそれぞれのトラックに分乗して帰宅していった。


 我々は又ゾンビが店内に徘徊する様に、今回倒した26体の死体を駐車場の隅にブルーシートで覆い、ドアを開け放ち入口から10m入った所に防犯ブザーを起動させて店を後にした。


「で、田嶋社長いつも行っているパチンコ屋さんで、大きい店は何処なんですか」


「うーんこの辺で大きい店と言ったら、府中駅前のコトブキチェーンだと思いますよ。


 換金率も良いし、景品も結講面白い物があるので人気店ですね」


「取敢えず行ってみますか、しかしこの辺は街道沿いにパチンコ店が少ないですね」


「そうなんですよね、不思議と郊外型の店がないんですよ。


 多分自治体との取決めで、遊戯場やゲームセンターは決められた場所でしか、営業出来ない決まりがあるとか」


「ああそう言う条例がある市が有るのは、聞いた事がありますね」


「だから駐車場が駅前だと、余計に駐車料が掛って馬鹿らしいんで、自転車で来ますよ」


「成程結講大変なんだ、だからラブホテルもないんですね、大抵これだけ土地があるとあっちこっちにあるんですがね」


 そんな事を話しながら駅前に着き、目的のコトブキ会館の前に駐車して内部の様子をみると、店内に5~7体のゾンビを確認した。


「何だか開店して直ぐ襲われて、今までその儘と言う感じですね」


「兎も角さっさとパチンコ弾と、景品の缶詰やお菓子類を頂いてかえりましょうか」


「今回は蓋付きのプラコンテナを、5個ほど持って来たのでソレに弾をいれて、セイヨーM2で手に入れた厚手のレジ袋に、缶詰とお菓子類を分けて持って行きましょう。


 後、台車も持って来たので、先に弾を集め次に缶詰、最後に菓子類の順番で行きましょう」


「「了解」」


 俺達は車のエンジンを止め、施錠しないでパチンコ屋に押し入った。


 前衛が鬼山君、中衛が田嶋君後衛が俺の順で侵入し、一番奥の左列からゾンビを順に掃討していった。


 偶に右からゾンビが、別の列から出て来るので私は絶えず右に注意を払い、田嶋君が列全体を警戒し、鬼山君が目前のゾンビを倒して行くシフトだ。


 10分強で一階のゾンビを掃討し終え、俺達はカウンターに行き、鬼山君と田嶋君が弾をコンテナに詰めると蓋をして、ロックを掛け台車に乗せて行った。


 その間俺は、掃討漏れしたゾンビを警戒して、周りに注意を向けていた。


 結局7千~1万個の玉を集め、一度三人で車に戻り車に乗せると、レジ袋を10枚程取り出して再度店内に入り、景品のコーナーにある缶詰や、レトルト食品を次々に袋に詰めて行った。


 先ほど田嶋氏が言った様に、この店の景品の缶詰は海外制の物ばかりで、通常あまりお目に掛らない、変わったものが多かった。


 牡蠣の燻製のオイル漬けや、豚のボイルの缶詰、レバーペーストの缶詰にソーセージの缶詰、オイルサーディンにアンチョビの缶詰、フィリピンのイカの缶詰、ポパイでお馴染みホウレン草の缶詰(米)、ロシア産イクラの缶詰に同じくロシア産ポトフの缶詰、極めつけはスウェーデン産シュールストレミングまで有った。


 その他世界各国の珍しい缶詰が目白押しだ。


 思わず感心しながら、こっそりシュールストレミングを、袋に入れた俺は悪くない!


 台車が一杯になり、菓子類も2袋ほど手に入れて、我々は店を後にした。


 外に出て、そろそろ日が赤くなり始めた店の前で、今日の収穫を車に積み込んで居ると、左の角から複数の足音が聞こえて来た。


 銃を構えて警戒していると、10代後半から20代前半の女の子が二人、角から駆け出して来て俺達に気がつくと、助けを求めながらこちらに走って来た。


「タ・・・・タ、助けて、助けて下さい」


「ハアハア・・・・ヤ、ヤ、奴らに監禁されそうになって・・ハアハア」


 見ると普通のお嬢さんと言う感じで、嫌な印象は受けなかったので助ける事にした。


「大丈夫かね、どんな奴らなんだ?」


 そう質問して居ると、角から男達が6人程駆け出してきた。


 一見マトモそうだけれども、俺の感にはまるで口の中に、金臭い水を含んだ様な感覚を覚えた。


 最悪なタイプの種類の人間を前にすると、いつも感じる感覚だ。


 俺の顔色が変わったのを見た鬼山君は、臨戦体制に入りそれを感じた田嶋君も、只ならぬ気配を感じ[バイパー]のセーフティを外した。


 俺は女の子達を背後に隠し、奴らを睨みながら声を掛けた。


「どうしたね君達」


「おいおっさん、その女をコッチに渡せヤ、コラ~!」


 そう言うと、一斉に金属バットや鉄パイプ、釘バットに模造刀等を出して構えて来た。


 そして最初に凄んだ男が、腰の後からトカレフらしい自動拳銃を取り出した。


 女の子達はそれを見て、悲鳴を上げて後で縮こまった。


「判ってんのかよ、おっさんヨ~、コレはお前らの持ってるチンケなけーび会社のゴム鉄砲と訳が違う、モノホンのチャカだぜ。


 体に穴開けられたく無きゃあ、くるまとゴム鉄砲を置いてトットトいっちめ~!」


「お~怖い怖い、私は自分の体に穴を開けられるのは、御免こうむりたい。


 だから・・・・・・」


 パスパスパスパス・パパパパパパパパパス・パパ・パパ


「グワ~~~・・・・」


「ぎへ・イダだだだ・・・」


「ごへ・ギヤーーーーーー」


「グ!・・・」


「ガボ、ゲハ~~~」


「ヒギ!・・・」


「君らの体に穴を開けて上げました」


 俺は銃を持った、リーダー格の男の四肢を丁寧に打ち抜き、その他の連中は大まかに武器を使えない様に、手足に弾をプレゼントした。


 何人かは体幹部に被弾したが、気にしない気にしない、どうせ悪霊化人間だしな。


「君たちは大丈夫かい? 何かされなかったかね」


 俺は女の子達に聞いたが、いきなりの銃撃にかなりビビッタ様だ。


「ヒッ、ェへ平気です! でも奴らの仲間に友達が後二人、捕まっていて何をされるのか解りません」


「ヒック、ヒック智ちゃんと美沙子が! ・・・・どうしよう」


「友達は何処にいて、奴らの仲間は何人位居るか解る?」


「とと、ともだちはその角を曲がった、5軒先の4階建てのビルの3階にいます、奴らの仲間は後5人男がいて、2人は拳銃を持っています」


「何て云うビルだい」


「た、たしか第一府中ビルと書いてありました、後3階は1部屋しかありません」


「他の部屋は使っていなかったかな?」


「はい、解っているだけでは3階だけです」


「解った、君達は車の中で待っていてくれるかな。


 この車は装甲車で、拳銃や軍用ライフルじゃ傷も付かない装甲が付いているんで、ゾンビやこいつらの仲間が来ても、カギさえ開けなければ安全だから。


 私たちはチョットビルへ行って、君たちの友達を助けて来るからね」


「あ、有難う御座います、なんとお礼を言ったら良いか」


「いや、こう言う非常事態に、犯罪をする馬鹿は嫌いでね、見つけたら駆除する事にしているんで気にしなくても良いよ。


 その前に車からあれを出して行くか」


 俺は車内から、対人装備を取り出して各人に渡した。


 そして手足を打ち抜いた、悪霊化人間に近寄ると質問した。


「お前らの残りの仲間の人数と、ビルの何処に潜んでいるかを言って下さい」


「クソヤロー、だれがテメエラに教えるか! 仲間に殺されちめ~」


「人質は何処に監禁されているんだ?」


「へ言う訳ねーだろう、バカが」


「いや~有難うもう君らには用事は無いよ」


 そう言うと俺は、メシュのチョッキから、ビニールに入れた白紙の符を2枚取り出すと、筆ペンで其々に“鳥”と“蛛”と書き、呪を唱えて空に放つと雀と蛛に変化した。


 そして雀は蛛を足で掴むと飛び立った。


「オイいまテメーは何をした、きさまは手品師か」


「ああ、冥土の土産に教えといて上げよう、私は陰陽師でな先程の雀と蜘蛛は所謂(いわゆる)式だよ。


 先程聞いた時に、お前の心を読んだが、人数と配置が変って無いか、確認のため行かせたんだ。


 後、君らは此処に放置する、今までやった行いを悔やみながら奴らの仲間に入るんだな、丁度良い末路だよ。


 後私に恨みを抱いて、化けて出ても意味がないよ、何故なら既にお前らの霊体には俺の呪が掛って居るから、化けて出ても奴霊(どれい)になって、先程の雀や蜘蛛の様に、すり減るまで使役してやるからなククククク!」


「ナ、ナンダトこの腐れ外道が! テメエな『だまれ』・・・・・」


「お前煩いよ? 死ぬまで黙って苦しめ」


 声が出ず口をパクパクしながら、何か喚こうとして居るDQNを俺は無視した。


「代表、そいつは悪霊化人間ですか」


「その通り! 良く分かりましたね鬼山君」


「いやー、代表がその手の言動をする場合、悪霊か悪霊化した人間相手のみですから分かりますよ」


「あの、悪霊化人間て何ですか?」


 田嶋氏が聞いて来た。


「悪霊化人間とは、生きている内に既に御霊が電気の消えた電球みたいになっている、化物状態になった人間ですよ。


 普通こんな状態になったら、とうの昔に病死とか事故死して居るはずですが、後ろに憑いている地獄霊のせいで、しぶとく生きている霊的なゾンビですね。


 こうなったら何をしても手遅れで、殺して封印した方が世の為人の為に成る存在で、見る人が見れば直ぐ分かるし、天界の者に見つかると即座に消滅刑になる極悪人ですね」


「へーそんなのが居るんですか、怖いですね」


「田嶋さん、昨日から言っている、こう言う事態になった時に、暴徒化するサイコパスと呼ばれる犯罪者は、この手の悪霊化人間ですよ。


 こう言う奴らが、お人好しをだましてその場を切り抜け、後になったらそのお人好しに対して、逆ギレをし恩を仇で返す、言掛りの復讐をするのですよ。


 まるで何処かの国の方々と同じ、人で無しの人モドキなんです」


「あ!そう言えば、あの国の奴らと同じ論法だ!!


 と言う事は、奴らも地獄霊なのですか、納得ですね」


「人や物事の本質は変わらないし、変えようがないんです。


 いくら言葉でごまかしても、本質を見る訓練をした人にとっては、隠しようが無い事に彼等地獄霊は気がつかないのですよ。


 だから同じ地獄霊同士が集まって、高級霊を穢し己のレベルに引き落とそうとするのが、俗に言う悪魔と呼ばれる存在の、存在理由なんですよ。


 悪魔に取って高級霊というのは、とても煙たい存在で彼らが居るだけで、自分の惨めさ悲惨さを見せ付けられるので、何とかして自分と同じ低いレベルに落とそうと、ある意味無駄な努力を賽の河原の石積みの様に、際限無く繰り返す哀れな存在ですからね。


 そんな下らない努力をするより、まず自己省察して自分自身を変える努力をすれば良いのに、この手の妬み嫉みの固まりの様な低級霊は、絶対悪い事は他人のせいにして、進歩しないんですよ。


 良く階級闘争だと騒ぐ奴らの、9割以上がこの手の地獄霊なんですね。


 だから私は、共産主義者を好きに成れないんですよ、どんなに気取ってもその本性は地獄霊で、彼らに関わると気がつくと地獄の貧民窟に落ちていた何て、洒落にならない事態が起こりますからね」


「じゃあこいつ等も、同じ生きながら地獄霊になった、生きた悪霊なんですか」


「そうです、だから悪霊化人間と言っているのですよ。


 訳の解らない者達からすると、ヘイトをして居る様に見えるのですが、本質が解る人ならヘイトでは無く、事実を開示して居るに過ぎないのですが、経験の少ない偏狭な考えの人は、差別と取るからややこしくなるのですがね。


 ん? ・・・・式から連絡がありました、捕まった女性はやはり3階に監禁されていますね。


 しかし奴らの仲間は1階にも4人居て、外を見張っているそうです。


 全部で人数は他に10人いて、逃げた彼女らは其の内の5人しか見ていなかった様です。


 だからここにいる人数と合わせると、16人いるのでやつが考えた数と一致しますね」


「さーて、どうやって攻略するかですね、1階の見張りが厄介だよな、どうやって1階の連中を無力化するかだな」


「1階の連中は私が何とかしますから、3階はスタングレネイドで片付けますか」


「解りました、1階はどうするんですか?」


「音を使った呪を掛けて寝かします、監視任務は結講精神的に疲れるので、此の手の呪は良く効きますよ・・・・はい眠った。


 鬼山君、たしかタイラップが有りましたよね、指錠にするんで貸してください、私のは先程工具を纏めるので使ってしまったので」


 俺達は壁に沿って問題のビルに着き、1階の部屋に入ると4人共気持ち良さげに眠っていたので、親指同士をタイラップで纏めておき、口をタオルで縛り猿轡とした。


「ああ扉は閉めないで良いですよ、彼らも最早手遅れですので、後はゾンビに任せましょう」


「「了解」」


 俺達は3階に上り、鍵が掛っていないのを確認し、スタングレネイドの安全ピンを外して、手を起爆レバーから離して部屋の中央に投げ入れた。


 落下音がして、2拍子してから扉から爆発音と、強烈な光が漏れたと同時に部屋に突入した。


 部屋の中には蹲る裸の男6人と、最後の一枚で辛うじてアソコを隠した、呆然と目を廻した女の子二人を確認し、彼女たちを手早く確保して置き、男達の手足を容赦無く撃ち抜いていった。


 何故なら部屋の奥には、事切れた見るも無残な、2人の女の子達が横たわっていたからだ。


 いきなり撃たれて泣き喚く奴らの口に、容赦無く[クラッシャー]を浴びせて黙らし、机の上に置かれていたコルトガバメントM19112丁とマガジン4本を奪い、ケース入の予備弾丸を200発入手し、暫らくして耳が聞こえる様になった彼等へ話しかけた。


「やあ諸君、随分好き勝手な真似をしてくれたな。


 所で知って居るかね? 今回の様な災害時や非常事態宣言が成された時に、婦女暴行殺人や食料を強奪して殺人を犯した場合、民間での刑の執行が出来る法律が出来たのを?


 貴様らどうせニュースなど、聞いては居ないだろうから教えておくぞ。


 法の執行機関が災害等で、一月以上復旧の目処が立たない場合、婦女暴行殺人や強盗殺人等の凶悪事件の場合、一定数以上の市民の合意があった場合に、死刑を含む罰則を適用しても良いと言う法律が、政府から昨日発表されたんだよ。


 で、今回の事例はそれに明らかに該当する事案であり、私は水原町6丁目町内会の、128人の仮代表としてここに居り、刑を執行する立場にある者なので、君らに判決を宣言し刑を執行する権限を行使する。


 西暦201×年10月08日、ここにいる君らを婦女暴行殺人の現行犯として判決を言い渡す。


 全員死刑に処す、以上だ!


 尚、少年法は立法府の機能が再開するまで、凍結されるから未成年だろうが、減刑等は一切認め無いからな!


 刑はゾンビ君に執行して貰うのでお楽しみに」


 俺達は何やら大声で喚く、悪霊化人間を無視して、DIY店で今日手に入れた小型ラジオを、最大音量で玄関横の釘に掛け、扉を閉まらない様に服を詰めてつっかえ棒がわりにしておいた。


 一階に居た奴らは、表に叩き出し足を撃って歩けない様にして放置した。


 二人に抱えられた女性を、ガードしながら車に行くと10体程のゾンビが、車を叩きながら唸って居るので、全員頭に弾をプレゼントした。


 そう言えば6人はゾンビに腹を喰われた姿で、地面を這いずっていたので往生させておいた。


 往生と言っても行くべき場所は、暗くて寒く、何より臭い場所なのだが。


 しかし参ったね、パジェロは7人乗りだが、荷室に荷物がある場合、5人乗りになってしまうのだ。


 仕様が無いので、近場に止まっていたジープに鍵が付いていたので、鬼山君と田嶋君はそちらに乗り、俺は女の園になったパジェロで家路を往く事になった。


 女性陣はアパートや寮が、結講離れているため取敢えず[ひよく寮]にいく事になった。






Pday 3日目

PM17:35 調布飛行場側 調布[ひよく寮] リビング


 保護した女の子4人は、取敢えずうちで面倒を見る事になった。


 皆と引き合わせた時、服を引き裂かれた2人の女の子は、パジェロ改に積んで有った、ホームセンターで手に入れた作業着を着せて置いた。


 結講似合ったので、褒めたら顔を赤らめていた、おお初々しいね。


 田中君と佐田婦人に経緯を話し、暖かいお茶とお菓子を用意してもらって、漸く人心地が着いた所で、未だ自己紹介をして無いのを思い出した。


「そう言えば、君達に自己紹介をしてなかったね、私は旭グループ代表の甘莉丈太郎と申します、宜しく」


「わたくしは、甘莉代表の秘書を務めさせて頂いている、田中涼子と申します」


「私は甘莉代表の、身辺警護を担当している、[ライジングサン]警備部要人警護1課隊長の鬼山京太郎です」


「同じく[ライジングサン]警備部副隊長の、田所慎也」


「私は貴女方と同じく、甘莉代表に命を助けて頂いた、佐田光恵と申します、そしてこの子は娘の愛美と申します」


「愛美です、おねいちゃんたちよろしくね」


 彼女達の最初に助けを求めて来た、ショートボブの活発そうな女の子が最初に挨拶をした。


「あ、あの助けて頂いて有難う御座います、私達は昭和大学病院で看護師をしている仲間です。


 わたしは内科の担当の咲山 みゆきです、20才になります」


 活発な印象の、元気はつらつのムードメーカーだな、戦闘力は84万と見た。


「私は外科勤務の大川 美咲と言います、19才です」


 セミロングの黒髪が印象的で、キリッと出来る系だな、戦闘力は86万かなかなかだ。


「わたしは小児科勤務の瀬川 智美です、19才です」


 栗色のポニテの癒し系おねいさん、と言う印象の子だ、戦闘力も90万と見た。


「うちは眼科勤務の坂田 美沙子言います、20(ハタチ)です」


 茶髪を後頭部にお団子に纏めた、如何にも関西のネーチャン系ですね、戦闘力は83万かな。


「看護師さん達なんだ、でもどうしてあんな場所に皆さん居たんですか?


 確かパンデミックが始まったせいで、医療関係者は病院で寝泊りしていたはずですが」


「う~ん、こんな事言って良いのかな・・・・・でも今更か?


 実は内の大学の医療科は、政府の移転と一緒に北海道に拠点を移す予定でした。


 それで私達も移動する事になって居たんですが、寮へ荷物を纏めにいってそれをバスに乗せて、港からチャーターしたフェリーで苫小牧の医療施設へ移動する途中で、パンデミックの感染者達に襲われて、府中駅の近くでバラバラに逃げ出して、あちこち移動している内に私達だけになってしまったんです。


 そして皆で難儀して居る時に、奴らに声を掛けられて、安全な避難所があるので案内してやる、と言われて着いて行ったら、奴らが突然豹変して・・・・」


「イヤー本当にギリギリで間に合ったんだね、もう少し遅かったら本当に命の危険もあったろうね、あそこで亡くなっていた子達みたいにね・・・」


「本当に危ない所を助けて頂いて、感謝してもし足りないです」


「・・・グス・・・ひく・・・、怖かったです、でも有難う御座いました・・・・ウェ・・・」


「さあ怖いことは忘れて、兎も角甘い物でも食べて元気を出そう。


 空元気でも良いから、そうゆう風に振る舞えば、心も着いてくる物さ!


 このブルーベリーパイは、帝国ホテルのパンとスイーツの店ガルガンチ○の特製パイなんだ、私のお気に入りのケーキの一つで特別な日に食べる事にしているんだ。


 今日は皆んなが無事生き延びた記念日だからね、特別に急速冷凍してあった物を、佐田婦人に解氷してもらったんだ、美味しいよ、さあ食べてご覧」


 彼女達は、最初恐る恐る手を出したが一口食べると、後は一気呵成に食べ始めた。


 そして気がつくと、自分らの分を食べてしまい轟然としていた。


「わ、わ、わたしこんな美味しいブルーベリーパイを食べたのは初めてです、でも夢中で食べたらもう無くなってしまった~~~~!」


「しまった~~~~、もっと味わっとけば良かった・・・・」


「・・・・・もう無い! ・・・・グス・・」


「無念やわ~~~~! どうしてもっと味わえへぇんかったんや! 私のばか」


「くくく、やはり女性には美味しいスイーツが、何よりのトランキライザーみたいだね。


 皆さん安心してください、夕飯が終わった後でもう1ホール提供しますので、ゆっくりご賞味下さいな。


 着替えは田中君に聞いて下さい、在庫の中に各種サイズが揃っているので、着替えを受け取ってお風呂に入ったら夕飯にしますので」


「じゃあ皆さん各自この紙に、サイズを書いて下さい、下着や寝巻きと着替えを用意しますから」


 女性たちは田中君の周りに集まり、着替えの事や部屋割りをしにリビングをでていった。


「佐田さん済みませんね、いきなり4人も人が増えてしまって、夕食の量は足りますか? 足りなければ私が1品か2品作り足しますよ」


「大丈夫ですよ代表、何だか今日は人が増えそうな予感がして、多めにオカズもご飯も炊いて置きましたから。


 今日は中華料理の酢豚に麻婆豆腐、蒸し鳥にクラゲのサラダに手羽の素揚げ、後トマ玉ですから若い方にも十分足りると思いますわ」


「え、トマ玉ですか? そりゃ嬉しいですね、私の大好物の料理ですから非常に嬉しいですね」


「でも甘莉代表、溶き卵の冷凍品なんて面白い発想ですね。


 卵を溶いた物を冷凍する発想は、今までありませんでしたから以外に盲点でしたわ。


 今後これを商品化すれば、主婦もプロも結講買うと思います、何より便利だし」


「ああ、やはりそれに目を付けましたか、別に特別な加工を施して居る訳では無いし、化学添加剤を入れる訳ではないので100%卵ですが、売れるかどうかは解りません。


 今回の様に正規の卵の流通が止まったり、鳥インフルエンザで卵の値段が高騰した場合には、良いかもしれないですね」


「本当に流通が止まった場合で、エネルギーはあるけど食材が流通しない場合に、冷凍保存は本当に助かります。


 でなければ食のレパートリーが、1週間を待たず短調な物になりますね」


 やはり毎日の食を、任されている人としては卵一つ、牛乳1Lの有無で負担がモロに掛ってくるのだから、「たかが××」では済まない問題なんだろう。







Pday 3日目

PM19:20 調布飛行場側 調布[ひよく寮] ダイニング


 看護師組が風呂に入り、ようやく落ち着いて来た時に夕食が始まった。


 彼女達も入浴した事で、落ち着き食欲も出始めた様で、俺もほっとした。


「では皆さん頂きます」


 俺が夕食の音頭を取り、「頂きます」を言い皆が和すと、夕食が始まった。


「そう言えば咲山さん、確か皆さんは苫小牧の医療施設に身を寄せると言っていましたが、差し支え無ければ場所を教えてくれますか」


「モグモグ・・・ゴク・・はい、えっと確か薬品会社の工場でお世話になるとか、婦長が言っていましたが会社名は聞いていません。


 ただあの辺の山一つを造成して作ったかなり広い工場で、医療施設も大学病院並みにある場所らしいです」


「あ、わたしその会社知っています、確か旭製薬の苫小牧工場ですよ」


 小児科勤務の瀬川看護師がそう答えた。


「ぶっ!・・・ゴホゴホ・・ゲホゲホ」


 思わず吹いた弾みに喉に引っ掛けた。


「あ、代表大丈夫ですか?」


 慌てて田中君が、俺の背中を叩いてくれた。


 看護師達は、怪訝そうな顔をしてこちらを観ているし、他の連中は愛美ちゃん以外生暖かい目でみられた。


「あ、あのう大丈夫ですか甘莉さん、何かわたし不味い事を言いましたでしょうか」


 瀬川看護師が、不安そうに俺を見たので説明した。


「え~と、実は私は旭グループの代表をしていますが、旭グループ内には旭製薬も一部門として統率していたので、思わず今回の偶然に驚いただけですよ」


「え~甘莉さん、旭薬品の代表の方だったんですか? うわーセレブなんだ」


「お若いのにすごいんですね、確かまだ20代でっしゃろ?」


「え、旭グループと言ったら医薬、製造、物流、建築、セキュリティの5部門のある総合グループで、全ての部門で株を上場したら即日完売のストップ高になると言われているんでしょう。


 すごいなー」


「ひえ~トンデモない人に助けて貰ったんだ」


「しかし変な偶然もあるものですね、偶々向かうはずの会社の、責任者の方に助けて頂いたなんて」

 

 《神》の悪戯だろう、そうあって欲しいが前に陰陽道のお師匠様に、お前は変な縁を結び易いと言われたな。


 凶と出るか吉と出るか、俺の持って行き方一つで変わるといわれたが。


「そう言えば皆さんはこれから、どうされるか希望は有りますか」


「え~と、今までゾンビから逃げたり、変な男達から逃げたりと逃げてばかりで、考える余裕がまるで無い生活をこの所していたので、今まで特に考えていなかったですね」


「そうそう、まるで急流に流される様に、ここまで来たので目の前の事に対処するので精一杯でした」


 他の二人もコクコクと頷きながら、ご飯をパクついていた。


「そうですか・・・・、我々の予定をお話しておきますと、私達は後4日位経ったら此の寮から、福島工場に移動する予定を立てているんですよ。


 経路として今の所考えているのは、玉川の河川敷を高機動装甲車で下り、最後の堤の下にある丸子緑地へ向かい、其処から大型の発動機着きゴムボートに乗って東京湾に出ます。


 そして我社の商船と合流して、海路で福島工場の最寄りの港へ行き、其処から工場へ向かいます。


 福島第一工場は、苫小牧第二工場と同じ位設備が整った要塞工場ですので、ゾンビや暴徒が襲って来る位では、簡単に撃退出来ますからね」


「凄い設備なんですね・・・・、仮にもし私達が同行したいと言ったらそれは可能ですか?」


「事態が事態ですので、ある程度のリスクは覚悟で同行してもらいます。


 決して安全では無いし、ゾンビが飽和している都心部に近い場所に、行くのですからね」


「そうですか、でも此処も安全とは限らないんでしょう? 


 事態はパンデミックだし、ここも下手をすると都心のゾンビが移動して、来て呑まれてしまう危険もあるのでしょう?


 何せ相手は移動のための、手足の着いたウィルス見たいな物ですから」


「確かに今のご時世では、何時何がどうなるか何て判らないですからね。


 まあ後我々が移動するまで、4日位は有るのでそれまでに今後の決断をして下さい。


 残るのであればこの寮は、残念ながらセキュリティの間系で、使用出来ませんので町内会で、空いているアパートか戸建を紹介してもらえる様話しは通して置きます」


「あ、この建物は使用出来なくなるんですか」


「ええこの建物内には、あまり社外に出したくない情報や機器が色々あって、会社でも特別な権限が有る者が一緒でないと、使用出来ない仕組みになっているのです。


 今回は認証第一位である、最高責任者の私が居るので、何の問題も制限も無く過ごせるのですが、通常は色々と使用するには制限が掛るんです。


 何故なら我社は、色々最新設備や先鋭的な新商品を開発するので、各国の諜報機関や産業スパイに絶えず狙われて居るので、どうしてもセキュリティが厳しくなるのも、止む終え無い事実なんです」


「うわーテレビドラマか小説みたいですね、じゃあ後1日か2日で答えを出して置きます」


「そうして下さい、今では希少な医療関係者ですから、保護するのに吝か(やぶさか)ではありませんから」


「しかしコレからどうなるんでしょうか、パンデミックは優秀なウィルス研究者達と環境の整った、研究所が無いと抗ウィルス剤など作れないし、作れたとしても量産する施設がないとどうにも手が打てないし。


 作れたら輸送して全国に・・・、いえ全世界に配布しないとどう仕様もないんだろうなあ・・・・・、結局地球全体でどの位の人が最後に生き残るんだろう・・・・・・?」


「内のシンクタンクで最新の数式を使い、シュミュレーションした結果、6ヶ月でワクチンを開発し、実証実験で2ヶ月掛かり、生産して最初のロットが出荷出来るのは11ヶ月掛ると想定して、大体地球全体で生き残るのは4割以下、最悪7割以上被害に合うと試算されたのです。


 それも先進国より、後進国や発展途上国に被害が多く出るようです。


 原因は住環境の劣悪さと、社会自体に保存食が多く出回っていない為に、助かって避難しても飢えに襲われ、結局移動するしか無く、又途上国は人口の密集状態が酷いせいで、ゾンビが街に飽和して被害を相乗させてしまう。


 それに途上国は、武器が意外と野放し状態なので、暴徒がギャング化して更に生き残った人達を襲い、被害を広げてしまうし何より日本と違い飲み水の確保が難しく、水溜りの水や死体の浮いた川の水をのまなければならなくなり、そうなると衛生状態が悪くなってゾンビウィルス以外にコレラやチフス等の病気で、どんどん人が死んで行きますからね」


「そうですか、事態はかなり深刻なんですね、でもある意味私達は幸運ですよね。


 少なくとも日本は途上国ではないですし、あちこちのスーパーや商店にも缶詰や保存の効くレトルト食品が山の様にあるし、街中でも現役の井戸も探せば結講ありますしね、ああペットボトルの水も自販機を探せば結講手にはいるんだな」


「ある意味ゾンビが増える事は、逆を言えば残された食料や物資の配分が増える事を意味しますから、皮肉と言えば皮肉ですね」


「あ~あ早く日常が戻って来ないかな~」


「まあ我社には、優秀な研究者が結講居ますし、工場は東日本大震災以降に作られた、対震・対波設計を成された下手な要塞より侵入が難しい作りに成っていますんで、ゾンビや暴徒の襲撃にも耐えられる様にしてあります。


 ワクチンの開発に成功したなら、製造は問題有りませんよ」


「そうですか、やっぱこんな時こそ明るく考えないと、やってられませんからね本当に」


「そうですよ、こんな時は美味しいものをお腹一杯食べて、ゆっくり寝れば又物事明るく考えられる様になりますから、ドンドン食べて下さいね」


 佐田婦人がそう言ってご飯を進めると、彼女達も又食べ始めた。


 食後には気を落ち着ける為に、酒をナイトキャップ替わりに処方しておこう。


誤字・脱字が有りましたなら一言の欄で指摘して下さい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ