15.Pday 2日目
今回は1話のみの投稿です
PM13:50 飛田給2丁目 マンション アルテミス西調布 前
俺達は高校生カップルを乗せ、彼らの家のあるマンション前に到着した。
後には少々煤けた逆髪元一等空挺陸曹と、ツヤツヤした咲島少年に、マンションを見上げるマイペースの真壁美咲ちゃん、ニヤニヤ笑う田嶋元工兵一等陸曹と言う、シュールなカオス感を醸す人達がいた。
「さて君達のマンションに着いたが、此処から部屋は確認出来るかな」
「いいえ東側の棟に俺達住んで居るので、ここからは見えません」
「う~ん、マンション内は車と針金で、上手くバリケードを作って出入りを制限しているな。
少し東に移動して、マンションの東側が目視出来ないか移動してくれ」
「了解」
鬼山君が車を20m程移動したが、となりの建物が邪魔をして確認はできなかった。
「だめか、直接部屋まで行かないとダメかな。
そう言えば咲島君このマンションは、エントランスに内線はないかな?」
「あ、あります、#を押して部屋番号を押せば内線が継ります。
済みません言い忘れて」
「ああ気にしないで良いよ、それじゃあ鬼山君と逆髪君は着いて来てください、後田嶋さんは車で待機ねがいます。
この車は90mm砲位じゃあ、装甲や窓ガラスは抜けませんので、暴徒が来たら連絡の上移動して安全を確保して下さい」
「凄い装甲ですね、ボディの鋼板厚も車重も普通車と変らないみたいですが、例の防弾服に使われている[ライジングサン]の特殊装甲ですか」
「ええフロントグラスやボディは、90mmの直撃を喰らってもキズ位で済みますよ」
「無茶苦茶な頑丈さですね、ダンプと衝突しても車は無事でも中はミンチだな」
「4点ハーネスをしてれば、痣で済みますよエアバックもあるし、じゃ無線で司令塔を宜しくお願いします。
何か有ったら直ぐ呼んで下さい、インカムは骨伝導なのでステレオで音楽を聞いていても、問題ありませんが外の音を聞き逃すかもですね。
サンルーフから頭を出す時は、折畳みのバイザーヘルメットを必ず着用して下さい。
ヘルメットもバイザーも車と同じ装甲ですので、スラック弾の直撃を喰らっても気が遠くなる位ですみますので」
「装備は問題なし、後は私が油断さえせずに居れば問題なしですか・・・。
解りました後は注意点はありますか」
「他にはナビの一番下にある、この機器は外部スピーカー用ですので、誰か近づいて声を掛けて来たら、窓は不用意に開けずスイッチを入れると、インカムの受信機に連動しますので、外部と話す場合それで応対して下さい、暴徒は子供すら囮に使いますんで要注意です。
後、インカムに通信が入ると通信が優先されます、両方と同時に話したい場合は、このmono・dual1・2の方にスイッチをdual1に倒すと同時通話になります。
無論外には通信の音は聞こえず、あなたの話し声しか聞こえませんので。
2の方へスイッチを倒すと、外の相手も我々と同時に話ができます」
「面白い機能ですね、これならドアのロックさえ解除しなければ安心だ。
しかしタイヤをいきなり撃たれたら、どうなりますか」
「タイヤは見たとおり半分は、チタン板に覆われて狙撃を阻害していますが、出ている部分を狙撃されても、優秀なノーパンクタイヤですので、同一箇所でなければキャリパー50の12.7mmで、5発位撃たれても大丈夫です。
ましてや9mmでなら20発撃たれても、貫通すらしないでしょうね」
「まさしく装甲車、それも中戦車並みの装甲ですね。
俺さえドジを踏まなければ、この装甲パジェロは安全ですね」
「まあそう言う訳です、でもディーゼルエンジンでも火には弱いので火炎瓶には要注意です、ガソリン車より増しですがね。
では我々は彼等を送ってきますので、警戒は宜しくお願いします」
「了解」
俺達は車から出ると、子供達を囲んでマンションの、エントランスに向かった。
エントランスは、南通路の方から入った側にあり、入口はワンボックスカー2台で塞がれている為、横の壁をよじ登って南通用道路に入って行った。
正面の自動ドアは、施錠されていて入れない為、裏に廻って中庭の様な場所から、通用口へ向かうとここも施錠されており、しょうがなく鉄戸を咲島少年にノックして声を掛けて貰う。
「すみませ~ん(コンコン)、 済みませ~ん(コンコン)、俺達は312号の咲島と415号の真壁ですが開けてください」
すると中から返事があった。
「ちょっと待て! 確かに君達は312号と415室の住民なんだな」
「ハイ! 312号に住んでいる咲島翔と、415号の真壁美希です」
「ちょっと待て、今君の家族に連絡する。
所で一緒に居る3人の武装した人達は誰かな? 警察官ではないみたいだが」
「我々は調布飛行場の北東部に位置する、水原町6丁目の町会の偵察隊の者です。
私達は周辺部の被害状況を調べる為、車で調査中に彼らと出会い保護しました。
装備は私が警備会社[ライジングサン]の社長をしていますので、その装備を町会に供出して居る関係です」
「解った取敢えず彼らの家族が来てからだ」
「ええ分かりました」
俺達は彼らの家族が降りて来るのを待った。
「しかし代表、このマンションは結講統率が取れた集団ですね。
余程確りしたリーダーが居る証拠ですね」
「ああ、暴徒対策も確りしているし、ゾンビの阻害バリケードも良く考えて居るな。
車を使ったゲートも、いざとなれば直ぐに開けられるしね」
「それなら多分曽根さんの旦那さんが、リーダーだと思います。
曽根さんは去年まで、警視庁の第9機動隊の指揮官だった人ですから、対ゾンビや防衛対策、暴徒対策もあのオジさんが、指揮を取っていると思います」
美希ちゃんもうなずいていた。
「へー鬼の九機の指揮官か、じゃあ叩き上げの警視さんかな?
それじゃあ頼りに成るな、やはり経験者が指揮を取ると違う訳だ」
そこへ扉内から男性の声が聴こえて来た。
「翔、そこに居るのか? 大丈夫か?」
「あ、父さん! 俺、翔だよ! 何処も怪我してないし、美希も一緒だよ」
「真壁さん家の美希ちゃんも無事か? それで一緒にいる人達は誰だ?」
「調布飛行場の傍にある町会の人達だよ、公園でゾンビに追われている時に助けて貰ってここまで送ってくれたんだ」
「始めまして、私は警備会社の[ライジングサン]の代表をしています、甘莉丈太郎と申します。
私は偶々水原町6丁目にある、会社の寮に宿泊中に今回の騒動に巻込まれたんですよ。
今我々が装備して居る武装は、[ライジングサン]の正式装備なんで出処は確りしています。
何分物騒な状況なので、最強の装備で偵察に来たのです」
「解った、では子供達2人をまず中へ入れるので、君たちは10m程下がって待っていてくれ」
「ええ良いですよ、二人共下がるぞ」
俺達は二人を置いて10m位下がった。
するとドアが人1人入れる隙間を開けて、開き二人が中に入った。
「しかし本当に良く統率されていますね、驚いたわ。
素人ながらあっぱれとしか言い様が無いな、曽根さんとやらに会うのが楽みだ」
「ああ普段からこのマンション自治会に、積極的に参加して影響力も確りあり信棒も厚いんだろうね」
「そうですね、やはり我が町の町会の自治会も、こんな修羅場を経験した人が居れば纏まりもいいんですがね。
今は甘莉代表が居るから、結講まとまって居ますが、何時までも居られる方では無いのは承知していますからね」
「まあその為に君らに期待しているんだよ、我々は町会長を盛り立てて上手く町内会の防衛をして貰えれば、我々も調布飛行場を確保する足掛かりになるからね。
まあワクチンが出来たら、関東地区では真っ先に配布出来ると思うよ。
関東奪還の足掛かりの一つになる場所だからね」
話している間に扉が開いて、50代後半の目に力のある引き締まった、170cm位の背筋の延びた存在感のある男性が、他に3人の若い金属バットで武装した男性と現れた。
一礼すると彼は名乗った。
「始めまして、このマンション自治会長の曽根 勇史と申します」
「わざわざご足労申し訳ありません、私は水原町6丁目自治会を代表して参りました、旭グループ代表の甘莉丈太郎と申します」
「貴方が[ライジングサン]の甘莉さんですか、警視庁では色々と部下がお世話に成っていましたな。
しかし調布の寮で、今回の災禍に合われたとは驚きですな」
「いや一昨日、例の懸案で公安に協力していたら、思ったより時間を取られましてね、予定をずらして昨日調布飛行場から、セスナで製薬会社の製造工場へ移動しようとしていた矢先に、飛行場で感染者が溢れたため足止めを食ってしまったのが顛末ですよ」
「ああこんな所で申し訳ありません、中に入って一服してらっしゃらないですか?」
「ええ、外に一人車で待っている者もいるのですが、彼も中へ入れても宜しいですか」
「はい構いません。
佐々木君、門の車をずらして中に入れてあげなさい」
「はい」
おれは田嶋さんに無線を入れて、門の車を移動するので敷地内で待つ様に連絡を入れた。
やはり此処の住人は、かなりの練度で統率が取れた集団だ。
昔から言う、『一頭の虎に率いられた羊の集団は、羊に率いられた100頭の虎の集団に勝る』を地で行っているな。
俺達は彼に案内され、マンションの自治会室に通された。
「本日は家のマンションの子達を、無事送り届けて頂いて有難う御座いました、お礼の言葉も御座いません」
「いえ、我々は当前の事をしたまでです、返ってそこまで礼をされると恐縮してしまいます」
「しかし災難でしたな、今回の飛行場の顛末は、上手の手から水が溢れたとしか言い様がないですな」
「そうでも無いのですがね、普段から結講ミスはする方ですが、部下が優秀なのでフォローが出来ているに過ぎないのですよ。
しかしこのマンションの自治会は、あなたが自治会長で非常に幸運でしたね。
この様な修羅場で生き残るのは、貴方の様なトップが居る集団は、一番生存率が高いですからね」
「あなたの様な方に、そう言って頂ければ重畳ですな。
所で甘莉さん、今後政府はこの首都をどうするつもりでしょうかね」
曽根氏は目に力を入れて俺を観て来た。
黄色く底輝る様な瞳は、虎が人に生れたとしたらこの様に睨むだろう、
そう言う眼だ。
しかし人喰いの瞳ではない、叡智ある古強者の古虎の眼だ。
彼に睨まれて平静でいられる様な人物は、少ないだろう迫力だ。
無論おれは普通に視線を返した。
「貴方が思って居る通りですよ、曽根さん」
曽根氏は大きく息をついて視線を上げた。
「やはり首都移転ですか・・・・、多分北海道方面だろうな・・・」
「ご明察、総理はゾンビで溢れる首都を、一時的に放棄します。
例の五芒計画の一環ですよ、既に一昨日の時点で陛下や殿下・血縁の方々は、無事北海道の御用邸に移られました。
内閣と各方面軍も、海上以外は大部分が移転しましたので、残っているのは残務整理の者と、海上自衛隊の呉方面隊に、空自の福岡・沖縄の梯団と基地防衛の陸自の1個師団だけです。
でないと内閣はまともな指揮を取れず、自衛隊は徒らに兵力をゾンビに各個撃破されて、御終いになって何も出来なくなるでしょう。
製造工場も角菱・西芝・扶桑・常世田・冲電気の、財閥系製造部門が1年程前から、武器・弾薬・兵装・車両・航空・船舶等の各部門と共に、北海道に対C国戦略の一貫で工場を移転しました」
「こうなるのは、随分前から分かって居ただろうに、何故国民救済に手をうたなかったのかと、愚痴を言いたくなるが、しょうが無いのでしょうな、今迄の日本社会の在り方ではね・・・・・」
「そうですね、本当は1年前には判明していたのですが、御推察通り奴ら在日と左翼連合のせいで、手を打てなかったと言うのが本音ですよ」
「苦労されたのだろうな総理は・・・・、だから今回の強制送還とスパイ防止法の可決ですか、相当怒って居るのでしょうなあの方は。
今後どう推移して行くでしょうな?」
「約1年後に、首都奪還作戦及び関東以北の、東北地方の奪還を同時進行で行い、約半年で解放し次の1年で更に力を溜めて、西に登っていく手筈ですね。
しかし総理は奴らを許さんでしょうな、現政権批判は政治家同士当然の事ですがね。
しかし奴らは、国民の生命財産に手を出したと同じ事をしたんです、戦争をする覚悟が無くやる事では無い、やれば殺す者は殺される覚悟で、やったと見做され当然同じ様な反撃を、3倍返しで返されても文句は言えない。
今回のパンデミックが終わったら、国内の特亜系在日外国人テロリストは、処刑されその他は全員国から叩き出し、彼らに組みした日本人達は、当然売国奴として処刑されるでしょうね」
「正しくその覚悟が無ければ、しては行けない事をしたのですから当然です。
そして我々は、1年半分の物資を蓄えないと生き残れないですな、厳しいことだが仕方の無い事でもありますな。
しかし首都圏では、どの程度の人数が生き残ると、予想して居るのですか貴方は」
「およそ2~3割位かと思います、何せ首都圏は人口が多すぎゾンビで街が溢れるでしょうから」
「しかし道路は各所で寸断され、思う様に避難は出来ず支援を宛にしようにも、地球中大災害でそんな余力など、どの国にも無いでしょうからね。
正にサバイバルだろうな、皆も肝に銘じておきなさい、此れからの2年はだれも自分を助けてくれ無い時代が来たのであると」
「その通りです、正に自ら助くる者を助ける時代になったのです」
「そんな訳で、貴方はショッピングモールや、食品会社の倉庫の実情を調査に来たのですな。
・・・・・後は警察署の動向ですかな」
「ええ、暴徒に警察署を抑えられると、証拠品保管所の武器類が、表に出てしまうでしょうから一大事ですよね」
「ええこの辺だとヤクザの大規模な武器庫があり、その倉庫のガサ入れの関係で、魔薬と強力な武器・弾薬が多数保管されて居るから、一旦それが知れてしまうと大変な事になるのでな。
場所に因っては、拳銃所か対戦車ロケットのRGP-7や、AK-47・手榴弾なども多く保管されとるのだよ」
「表に出れば、正に市街戦になりかねないですね、我々も注意しておきますが、貴方方も警察署の動向に注意して、もしゾンビに警察署が制圧されたら、落ち着くのを待って証拠品保管庫の武器類を、貴方達自身で保管しておいて下さい。
我々もそうしますので」
「うん、それしか手はありません、最悪より次悪を選ぶのが大人の知恵でしょうからな。
しかしこの様な状態は早く終わらせたいですな」
「奴らさえ居なければ、と何度思ったか知れませんね。
後はこの建物も、安全とは限らんでしょうから、いざとなればもっと籠城に適した、建物に移る計画も立てた方が良いかも知れませんね。
ゾンビは防げるでしょうが、暴徒には充分では無いかも知れません」
「何処か適当な施設は無いかご存知ですかな?
学校も候補に上げているのだが、この辺は敷地を広く取りすぎている為、返って守りには向いていないですしね。
工場や倉庫を検討していますが、居住環境が悪ければ、長丁場になる避難生活を凌げませんしね」
「どうでしょう、このマンションを要塞化してしまえば」
「マンションを要塞化?」
「ええ、居住スペースは元からありますし、後は防壁とインフラだと思います。
なあ逆髪君、工務店に勤めている君に聞くが、重機と資材さえあればブロックで、高さ3~5mの擁壁をこの建物の周りに作るとしたら大変かな?
若しくはコンテナを使い、正面を塞ぎサイドと裏手を、フェンスで補強するのは大事かね」
「う~ん・・・、重機と資材が有れば、正面をコンテナで塞ぎサイドと裏をフェンスにした後で、フェンスをブロックで補強した方が、ゾンビに邪魔をされ辛くなるので工事が楽かな?
ゾンビを阻止出来て、フェンス用の金網と3mの鉄パイプを、3m毎に1本と速乾セメントと砂砂利を、3t車1杯に生コン用の攪拌機、資材とパワーショベルのドリルビット、それとコンテナ3台にコンテナ用フォークリフトが有れば、2~3日で上がるしそんな難しく無いと思いますよ」
「ああそうか、フェンスを作った後ブロックで補強しとけば、余計な手間は掛らないからね。
そう言えばこのマンションに、建築関係の住民は居るんですか」
「ああ確か9人は技術者が居ると思ったが、副会長どうだね」
そう言っている所に、高校生達の親と本人がやって来た。
「失礼します、会長咲島です子共達を救って下さった方に、お礼を申し上げたくて参上いたしました」
「失礼します真壁です」
「おお、咲島さんに真壁さんか、丁度良い二人共確かビルの建設会社の技術者だったね」
「ええ会長、私はクレーン車のオペレーターですが、何かありましたか?」
「ああ、その前に紹介しておこう、このお二方は調布飛行場そばの、水原公園近くの水原町会の方達で、子供達を救ってくれたお方だよ。
この方はあの旭製薬代表の、甘莉氏と部下の鬼山氏。
こちらの方は、工務店勤務の逆髪氏だ」
「咲島 勲です、息子を助けて頂いて本当に有難う御座います」
「母の瑞江です、一人息子の命を助けて頂いて、本当にお礼の言葉も御座いません」
「真壁 彰二と申します、娘を助けて頂いて誠に有難うございました」
「妻の芳恵と申します娘を助けて頂いて・・・・、グス・・本当に・・・・」
「私は旭グループ代表の、甘莉丈太郎と申します」
「私は甘莉代表の警護をしております、鬼山京太郎です」
「自分は田嶋工務店現場長の、逆髪義樹と申します」
「甘莉さん旭グループと言うと旭建設や旭製薬、セキュリティー会社に旭工機やあさひ運輸の旭グループですか」
「ええそうです、私は今回のパンデミック発生の時、偶々水原町6丁目の寮に滞在していたため、足止めを食ったんですよ」
「それはお気の毒な事です、しかし私達は幸運でした、御蔭で息子や真壁さんの美希ちゃんも、助けて頂いたのですからね」
「まあお二方お礼はそれ位にして、先程聞いた続きですが咲島さんは、クレーンのオペレーターで、真壁さんも建設関係にお勤めだったと覚えて居りますが、どういった関係ですかな」
「私は建設関係と言っても、重機関係の保守点検や修理をする角菱工機のエンジニアです」
と真壁氏は答えた。
「と言うと重機を扱う事も可能なのですか」
「ええまあ一通りの重機は、毎日作業しているプロのオペレーターさん程、上手くは無いですが動かせますよ」
「整備のエンジニアが居るのは心強いですね、あの手の機械は結講繊細で扱いを間違えたり、使用後のメンテをサボルと直ぐ故障する機械もあるから」
逆髪君がこれまでの故障を思い出しながら、しみじみと言った。
「会長何か工事でもするんですか?」
真壁氏が聞くので、今話していたマンションの、要塞化工事の概要を話すと二人は乗って来た。
流石に自分の家族を守る為の、工事だけに熱の入りが違う。
「じゃあ正面の歩道一杯使って、フル2つとハーフ1つのコンテナを使って、大まかに塞ぎサイドは始めの1期工事で、鉄板を2700mm高で作った後、第2期工事で軽量ブロックを3列並べで補強すれば、ゾンビや暴徒に邪魔されにくいな」
「正面のコンテナを門用以外の2つは、物資の貯蔵庫に出来るよな、出来ればフルサイズを2段重ねにして、収納スペースを増やしたら良いんじゃない」
「そうだな、痛まない資材や道具類の倉庫に持って来いだし、上には予備の鉄板やエンジンオイルなんかも収められるしな。
後たしか206号の新井さんは、ソーラーパネルの設置会社の技術者だったはずだな、今年の新年会で飲んだときそう聞いたよ」
「そういや410号の飯田氏も、配管関係の業者だったぞ」
「うん確かマンションで、建築・建設間系の技術者が10人居たはずだよ。
彼らに声を掛ければ、大抵の物は作ってしまうんじゃないかね」
「その他男手を募れば、20~30人位20代か30代の手を借りられるから、采配さえ間違えなければあっと言う間に完成するな」
「どうせ作るんなら、ソーラーパネルの他に天水タンクも作ったら良いじゃないか、それに裏手の公園に昔の井戸が現役であるから、夜間ポンプで汲み上げてタンクに貯めれば、上水としてマンションで利用できるぞ」
「天水水槽は良いな、確かタンクメーカーの倉庫が近くにあって、パネル型の水槽の在庫がかなりあるはずだ」
「天水の水槽はいいですね、うちの町会にも是非設置したいですよ。
後あまり綺麗じゃ無いですが、近くに河があるんで、防火用水の浅底用取水機があるので、活用する施設も作りたいですね」
物作りの技術者が集まると、課題さえ与えれば後は此方が気づかない方面まで、ほっとけばドンドン話が進むので世話がないな。
後は、責任者が交通整理をしてやれば、物事がすすむのは早くて良いな。
「しかし我々には水原町さんと違って、安全な足がないからな、どっかで調達できないかね」
「そう言えば、飛田給の駅向こうに行けば、重機のレンタル会社が有ったな、それに近くにホームセンターの、ビ○ホームが有ったので電気溶接機の100V用が売っていたのをこの間見たよ。
あれと充電用のインパクトドライバーと、金属用ネジが有れば車の窓に金網を溶接したり、やネジ付けした簡易装甲車が作れるよ」
「そうだなハイ○ースやステップ○ルーバンなんかの、ワンボックスをベースにすれば丈夫だし、重機も装甲すればゾンビや暴徒を寄せ付けない、機甲車両の軍団を作れるよな。
パワーシャベルの小型なら、良い打撃武器になるし、細道もラクラクだし、街中は4tダンプに積めば簡単に移動もできるし」
「そういやこの間ビ○ホームで、簡単に取り付けられるソーラー発電機を格安で売っているのを見たぞ。
旭工機で新型ソーラーシステムを作ったせいで、従来品が値崩れ起したそうだ。
店に在庫が結講あったんで、未だあるんじゃないかな、旭工機様々だねハハ」
「従来品より単位面積辺り、3倍近い発電量があるソーラーパネルと、充電容量が20倍ある蓄電池を、セットで簡単に設置出来るんで、一人勝ちに成ってしまったからね。
我社のバッテリーと、新型発電機がセットでこの近くの配送センターに、かなりの数の在庫が有るので、良かったら利用して下さい。
後で場所を教えるんで、足さえ有れば提供しますよ」
「おお流石社長さん太っ腹」
「このマンションは多分、1階20室で5階建てだから、40室用ユニット用発電機を、屋上に3ユニット設置しておけば、室内に置いた充電器内蔵インバータで、交流電気に変換するから基の給電板のメインブレイカーに、電線を直結すればおしまいだな。
発電量はエレベーターを使い、盛夏でも全室エアコンを1日フルで動かして、電気給湯機を使って家族4人でシャワーを使い、IHで3食料理してLED電気を付けても、まだ電気は余るはずだがね。
設置面積としては、この面積だと屋上の2/3あれば大丈夫だし、素早く設置するなら設置金具を付属の、コンクリート用ボンドで着ければ3時間で硬化して、風速30m台の台風でも余裕で耐えられますね」
「・・・・・道理で売れている訳だ、発電会社が電気料金を上げれば上げるだけ、返って自分の首を絞めるだけと言っていた、コメンテーターの言っていた通りだな」
「水原町の町会にも、空き地があったので設置する予定なんですが、在庫は大丈夫ですか代表」
「ああ、パンデミック前に相当数、増産しておいたからその位まるで問題ないよ。
始めから非常事態用に、総理から料金先払いで受けた仕事だから、何とか間に合った。
素人でもセット出来る、仕様にしたのはそのためさ」
「へ~総理大臣自らの依頼ですか、じゃあ儲けは度外視のサービス品ですね。
確かに設置する場所が有れば、誰でも簡単に発電・充電出来るし、インバータもセットだから、組み上げたその場で直ぐコンセントを差し込めば使用出来ますからねあれは。
あれ? でも考えて見ればエネルギー革命が始まったんじゃないのか?
これさえ有れば大規模な原発も、火力水力発電も要らないし、余った電気もストック出来るし、電線も要らない街灯も勝手に発電充電をするしな・・・・・・。
あれぇ~? 何これ怖いわ~~~~」
「だからこの間から片桐指令官が、大忙しで対オイルメジャーや対原発カルテル対策をしていたんだよ。
幸いと言って良いんだか知れないが、パンデミックの御蔭で奴らも我社所では無いのが実情で、もしパンデミックが無かったら今頃、対A国戦のカウントダウンが始まっていたかもね」
「う~ん、代表の事だから今のタイミングに合わせて、BBLSGやBGBを発売したんでしょうが、そうすればパンデミック中に、無駄に亡くなる人が減りますからね少なくとも国内は」
「エネルギーメジャーがなかったら、もっと早く発表し販売していたさ」
「そうすれば海外でも、助かる人が大勢出たでしょうにね」
「私は《神》じゃないからね、出来る事は限られて居るし依怙贔屓もする心の狭い人間でしかないさ。
何の瑕疵も無いのに、我々を犯罪者扱いする連中は滅ぼすし、嵌めたやつはキッチリ貸りは、返すのに何のためらいも持たない存在だよ。
まして地球生命全体の為に成らないとなれば、赤子だろうと妊婦だろうと躊躇わず見捨てるさ!」
「まあ代表が狂ってしまったら、私が介錯をして上げますよ!
代表の場合は、言い訳するワケでも無し、己の行動に目も逸らす訳でも無しなので、何をしても安心して見ていられるんですが、偶に愚痴を言うのも悪くはないですね。
なんせ《神》ならぬ“人間”ですから」
「全くだ、確かに《神》ならぬ“人間”だよな・・・・・・。
出来る事、出来ない事どちらもある“人間”に過ぎないのだから、出来る事を精一杯するしか無いか」
「そうですって、まあ電気が格安で手に入る世の中になれば、空気も綺麗になるし温暖化も、緩やかになって来るでしょう。
そう言えばLEDを使った、水気耕栽培の様な野菜工場ユニットなんかも、研究していましたよね、色々な植物に応用が出来ると、宇宙でスペースコロニーなんかが、稼働し出した時にも使えるんですかね」
「地球の近くだと、太陽光を有害な成分を濾過した状態で、利用するだろうが、太陽から離れた火星や木星の様な、環境ではその手の栽培方法になるだろうね。
タンパク質やデンプンは、植物性や動物性のプランクトンを使った培養になるかもね」
「そう考えると夢が膨らみますね、そういえばここの近所にはまだ農家が多いから、不足しがちな野菜の栽培なんかも知恵を貸して貰える農家なんかも無いですかね曽根さん」
「そうですね、この頃通っている近くの碁会所の知合いに何軒かありましたな、彼らに聞けば相談に乗ってくれるかも知れませんな」
「そうですね、是非その手の技術を持っている方と、手を取り合って行ければ生存率もあがりますね。
我々は彼らにない技術を提供して、お互い生き残る算段をしていかないと、ゾンビに飲まれてしまいますからね」
それから我々は水原町6丁目町会と、このマンションの自治会の間で、互助関係を持ち共に生き残る為の協力を約束した。
又、地域の他の町会などとも、連絡を取り合い相互の生き残りを掛けた、地域的な自治組織を作り、治安の強化や不足物資の互助や、病人や負傷者の看護等の取決めを、今後町会長の会合を開き決めることにした。
Pday 2日目
PM16:10 飛田給2丁目 マンション アルテミス西調布 前
俺達は曽根氏に見送られて、マンション アルテミス西調布を後にした。
そろそろ夕暮れの時刻が迫って来て、陽も夕焼けの気配が濃厚になって来たので、水野町に帰還することにした。
今迄の経緯と、アルテミス西調布の自治会との話合いの経緯を、無線で田中君に報告して、町会長の佐々木の爺さんに伝えて置いて貰う事にした。
詳しい報告は、帰ってからにする事にしたが。
「しかし色々あったな、やはりスーパーは軒並み荒らされて居るが、警察署はまだ当分持ちそうだが、予断は許されない状態だな」
「と言いますと、やはり感染者の内部からの発生ですか」
「その通りですよ田嶋さん、警察署に逃げ込んだ避難民の中に例えばゾンビに噛まれた、幼い我が子がいたとして、正直に親が申告するでしょうか?
10家族居れば3家族は申告しないでしょうし、寝ている間にゾンビ化してしまい親を感染させたら、後は押して知るべしでしょう」
「・・・・・ええ、私も親ですからそうしてしまう可能性を、否定出来ませんね、理屈では分かってもね・・・・」
「それが親だし、親のエゴでもあるが一概に責められないが・・・・。
私が長であれば、集団から追放か子共を処分せざるを得ないでしょうね・・・」
「そうですね、長としてはそうするしか無いでしょう、でなければその集団はゾンビの餌食になりますから」
「そうやって警察は、内部崩壊をしてしまう可能性が高いでしょう。
私が知るキャリアの所長では、この難局を乗り切れるか疑問ですのでね。
曽根氏もハッキリとは言いませんでしたが、暗に示唆していましたよ」
「ではこれからも近隣の警察署は、要監視対象として偵察を続行、もしゾンビに制圧されたら、速やかに証拠品保管庫と武器庫の銃器を確保で良いですね」
「それで良いんです、後明日は4t車のパネルトラックを3台位確保し、それを明日鉄パイプと、金網で窓とフロントを補強して、簡易装甲トラックにして、明後日トラックターミナルに物資を補給に行きます。
いずれ下面にガードを取り付けて、ゾンビを轢いた場合でも下面を防護出来る様に改造しましょう」
「ハイ○ースやステップ○ンはどうしますか、確か街道沿いの中古屋に展示してありましたが」
「宛があるのなら調達しましょう、後は改造用の工具も手に入れるのを忘れずに」
「よし明日は剥ぎ取りだ、野郎ども張り切っていこうぜ!」
「鬼山君、似合いすぎてて怖いんだが」
「ダイヒョウ~~、それは無いでしょう?」
そんな馬鹿な事を話しながら我々は家路を急いだ。
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