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感染戦線  作者: ヘロおやじ
第 一 章 調 布 編
13/72

13.Pday 1日目

あらたな投稿です

今回は2話投稿します


PM17:30 調布飛行場側 調布[ひよく寮] リビング


 俺と田所君、鬼山君はリビングに集まり、今日有った事を話していた。


 女性陣はキッチンで、夕飯作りに精を出している真っ最中だ。


 俺達も手伝おうかと言うと、後日にして欲しいと言われた。


 どうやら佐田婦人と愛美ちゃんが、二人の女子力を見て欲しいそうだ。


 俺達もアウトドア系のヤロー共なので、それなりの男めしは作れるが、女性であり母である人の繊細な手作り料理は、ご馳走なので期待満々ではあるのだが。


 俺達は料理の話から誰が一番のゲテモノ喰いかを競うと言う、虚しい独身男のバトルを展開していると、田中君に愛美ちゃんの情操教育に宜しくないと駄目出しを頂き、それ以上続ける場合夕食抜きであると言われ萎んで居る所だ。


「しかしTVも、パンデミック間系のニュースばかりで食欲減退の内容盛りだくさんだし、ビデオをみても興ざめだしで困ったもんだ」


 鬼山君がぼやくと、読書中の田所君が活字でもたまには読んだらと言うと、


「ダメ、俺目が良すぎて細かい活字を読むと頭痛がするんだよ。


 どう言う訳か武器間系のマニュアルや、取説は大丈夫なんだが」


「じゃあ変わった目をした鬼山君に、公民館で何をレクチャーして来たのか報告してくれ」


 俺がそう言うと、嬉々として話してくれた。


「いやーたまに素人さん相手をすると、昔山賊に悩まされていた山村へ助っ人をした時を思い出して、楽しかったですよ。


[とおりゃんせ]設置の裏技や、補強の仕方なんかも教えて来たので、車の出入りも簡単になりましたよ。


放置車両の鍵なし始動の方法や、利用法なんかもレクチャーして来ました。


それと簡易プロテクターの作り方や、簡単に出来る阻害罠の作り方とか、誘き寄せて一網打尽に倒す方法なんかもね」


「引かれなかったかい? そんな凶悪な方法をレクチャーして」


「意外と大丈夫でしたね、やはり自分の命が掛っているとゾンビに対する思い遣りなんて、出ないのかも知れないですね。


自分の肉親が襲って来たら別でしょうが、他人ならある程度折合いを付けるのは楽みたいですね」


「そうだな、いざ自分や自分の子供が殺されるとなったら、腹が決まるのかも知れないな。


あの優しげな佐田婦人も、愛美ちゃんが襲われそうになれば、躊躇無く撲殺するかも知れないな」


「俺なんか童貞を捨てた時なんか、意外と葛藤は少ない方でしたね、知合いなんかPTSDになって、カウンセリング受けていた奴も結講居ましたからね。


やはり人それぞれじゃないですか」


「私なんかも除霊して居る場合、消滅させる事があるから、ある意味殺人犯より凶悪犯罪者かもね。


何せ殺しどころか、魂を消滅させるのだから、ある意味飛んでもない行為だな。


だから今更人を殺しても、まるで罪悪感に苛まれるとかはないね」


「代表の場合、戦場の兵士よりシビアな選択を、常日頃行なっていたんですね」


「我々戦いのプロとしても、代表が同類と感じる事がままありましたが、それが原因だったと言う訳ですね」


と田所君が言った。


「まあね、私の副業は警察官であり裁判官であり、且つ又刑の執行者でもある事を望まれる職業だからな。


 私設の法の執行者みたいなものさ、上司は閻魔大王といった所かな?


 しかし俺達が犯罪を犯した場合は、よりキツイ罪過が降りかかるんだよ」


「え? どの様な罰が当たるんですか?」


「最悪な精神状態のまま、何万年も身動きも出来ず放置されるのさ

、いっそ消滅したいと思うらしいね」


「うわ~ それやだ! 下手な拷問より酷いじゃないですか?


だったら地獄へ行った方がましですね」


「ああ前に関わった事例で、元僧侶の霊が居たんだが、彼も狂いもせず出来ず数百年も呪縛されていたな。


呪縛が緩み出している所に、偶々肝試しに行ったDQNに取り憑いて、大変な騒ぎになっていたよ」


「うわ! 怖いですね! 偶々行ったDQNも気の毒だな」


「実はそうでも無いんだよ、そのDQNは前世でその坊さんを騙して、罪を擦り付けた詐欺師の転生した奴だった。


それが原因で濡れ衣を着せられ、処刑された僧侶が祟った為封印された経緯があったんだ。


結局その良い所の、ボンボンだったDQNは助からなくてな、その家族も一味だった前世があり、最終的に一族根絶やしになったよ。


私としては、まあ前世の因縁と言う事で、仕方がないと諦めたけどね」


「ハ~、因果応報って話は聞きますが、本当にあるんですね。


俺なんかもかなり人を殺していますから、やはり地獄行きかな」


「兵士が全て地獄行きかと言うと、必ずしもそうでは無いみたいだね。


日頃覚悟を持っている者は、意外と戦争や犯人の検挙で殺人を行っても、下の世界には行かない者が多いんだよ。


しかし戦いで人を殺すことに快楽を覚えて、楽しみの為殺す者や自己の利益の為に殺す者は、あまり良い世界には行けないね。


どうも殺人と言う行為は、あちら側の世界ではさほど問題にされていないみたいだね、それより生き方とか生きている間の精神状態や、雰囲気に見合った世界に行くみたいだな。


所謂類は友を呼ぶと言うわけさ。


だから殺人犯よりイジメをして、自殺させた者や詐欺師はより厳しい所へ行く場合が多いな。


 ヤクザの様な連中も、中には道を正し改心出来る人も少数だか居るが、殆ど地獄と言われる所に自ら惹きつけられて行くんだよ。


 別に閻魔様が裁判をして、地獄・極楽行きを決めるのでは無くて、その人が生前持っている波動と言うか、周波数に合う世界に行くのさ」


「ふーん・・・・、 なんとなく解る気がしますね、殺人者でも呑まれない人間は意外とまともな生き方・死に方をしますが、所謂暗黒面に呑まれた者は、禄な死に目にあいませんからね」


「ま、覚悟をして行わないと、断罪された方も納得行かないだろうな。


 その時が来たら逍遥と行ける胆力と、明るい心に世の為人の為を心掛けている者は、例え地獄霊に引き摺り込まれても助けが入るんだ」


 その時女性達から、食事の用意が出来たと言って来た。


「お、中々のご馳走だね」


 ポテトと生野菜のサラダに、魚と海老・肉のフライに赤だしのとうふとわかめの味噌汁、箸休めに野菜と鶏肉・里芋の煮物、燻りガッコのお新香、オクラと鰹節の和え物、そしてご飯と言う家庭料理全開の献立だ。


 我々独身男性陣に取っては、何よりのご馳走だ。


 各自、自分の郷土料理に付いての話で盛り上がり、大人に吊られて愛美ちゃんも大いに食べた。


「まあ愛美、いつもはあんまり食べないのに、今日は大勢での食事のせいか沢山食べたのね」


「うんお母さん、みんなで食べるとたのしいね」


「そうだね愛美ちゃん、今日は色々有ったからご飯食べたら、お風呂に入って早く寝ようね」


「はーい、お兄ちゃん!」


「そおいえば、明日の予定は特にありません。


 パンデミックが始まったばかりで、事態は流動的なので5日位は様子見で、あまり動かない方が良いとおもいますので、休養日に当てて下さい」


「そうですね、今外に出るとどんな2次災害に巻き込まれるか、分からないですしね。


 先程も外を監視していたら、事故による火災が2~3箇所で発生していたけれど、消防車が来た形跡は無いですからね」


「TVでもやっていたけれど、幹線道路が渋滞でそこにゾンビが発生して、かなりの被害が出ているみたいですね」


「ああこういう場合、あまり早計に動くと返って被害を出しやすくなるんだよ、やはり常日頃判断力を鍛えておかないと判断ミスを犯すね」


「全くですね、せめてゾンビ物映画のDVDでも見て置けば、かなり参考になるのにな。

 

 ロメ○の古典物の映画なんて、良い教材になるのに」


「流石映画好きの鬼山君だね、確かにロメ○やダリオ・アル○ェント監督のゾンビシリーズは、こんな時にいい教材になるね。


 ショッピングモールへの避難など、結講秀逸な着想だとおもうよ。


 あの映画には、避難民グループの対立が抜けているのが惜しいね、しかし3人しか避難民がいなかったのが原因だが。


 あとヘルス・エンジェルスの襲撃は良く考えられているな、実際今後サイコパスやDQNの馬鹿共による、略奪や暴行・強姦・殺害などの襲撃が必ずあると思って行動しないとね。


 後、1971年作のオメガマ○なんかも良いな、確かワー○ーで作られ、主演が○ャールトン・ヘストンだったな。


 そして2作目の2007年ア○・アム・レジェ○ドは、主演がウィ○・スミスだったよな。


 ニューヨークでサファリ・ハンティングが出来る場面が秀逸だったね」


「怖いですわね、この辺は大丈夫でしょうか」


「今日鬼山君と田所君が町内会で、其の辺の危険性を充分レクチャーしたので大丈夫だと思いますよ。


 後、この寮は災害や暴動に対処した作りになっているので、門扉を閉じて各部屋や窓を装甲シャッターでロックしてしまえば、要塞になりますからいざとなれば10人で籠城しても8年は持ちますよ、核シェルターも地下にあるのでね」


「核シェルターですか? だとすると原発事故や核爆弾で放射能汚染が有って も、暫らくは大丈夫なのですか」

              

「最大20人が、2年間生活出来る物資や空気浄化装置があるし、水も地下500m下から100年前に浸透した、深井戸から汲み上げているので問題無いですよ。


 後EMP対策や、発電機の対放射線・降灰対策もしてありますし、LEDランプを使った水気耕栽培もあるので、各種野菜やイモ類も育てられるし、食用の魚も生簀で養殖出来るからね」


「随分厳重な施設なんですね、まるで今回の事があるのを予知しているみたいですね」


 お?・・・・、 結講鋭いなこのひと


 まあ、既にパンデミックは始まっているのだから、多少はばらしても構わないか。


「佐田さん、私に不思議な力が有るのは聞いた通りなんですが、実は7年程前私が19才で両親を亡くした頃、ある事を切っ掛けで今回のパンデミックが起る事を予知と言うか、聞いたと言うか兎も角事前に知っていたのです」


「予知ですか? 予言とかあの・・・・?」


「ええ・・・まあ明晰夢と言うか、瞑想の修行中にある“上津方”所謂《神》が降りてきて、今日のこのパンデミックが起きる事を知らされ、それを終息させる力のある方の支援を、依頼されてしまったのです。


 まあ私が資産家に生まれ、霊能を持って誕生したのは偶然では無い、所謂“神謀り”の結果だそうです。


 まあ私の認識している《神》とは、日本の八百万の神々なんですが、実際神界には一神教的な《神》、所謂唯一絶対神は存在しないみたいですね。


 近い概念的存在は《霊太陽》と呼ばれる、神界・霊界を太陽の様に照らす方がそれに相当する存在ですが、“彼の方”は只ある存在ですから、ああしろこうしろとは命令しませんからね」


「へえ・・・西洋的な絶対神は居ないんですか? じゃあ神界って結講混沌とした場所ですね。


 しかし神様と言うより、神々とお呼びした方がいいんですね」


「ええそうですね、しかし私に“おやくめ”をくれた方は、かなり力のある方のようですね。


 自身でこの世に顕現すれば、その“存在の力”で世界を壊してしまうそうなので、代理人である私を選んだみたいです」


「凄い力を持った方なんですね、そんな方にお役目を任されたのなら責任重大ですね」


「ええ、放置して置けば人類が滅亡してしまうそうなので、滅亡を回避して人類存続を目指すのが私の仕事です。


 その為に力を頂いて生まれたのですからね」


「大変な仕事を任されてしまったのですね、怖くは成りません?」


「間に合わないのが怖かったですね、7年掛けて会社を作り色々な人の協力を得て、ここまでなんとか来ました。


 仕込み自体は、7年掛けてじっくり用意出来たので、後は目標に向かいやるべき事をやるだけですね・・・・・・。


 しかしこんな事を言えば、電波系の人と勘違いされるので、あまり言わない様にしているんですが。


 しかしこのパンデミックが実際に起ってしまい、実際その為の対策を早い段階で行なっていたのは事実ですし、まさか自分でゾンビウィルスを作り散布などする才能はありませんしね。


 しかし人工的に作れば直ぐバレてしまうんですよ、以前C国国内で生物兵器の開発研究所で、バイオハザードが起きて実際国民に死亡感染者を出した、キメラウィルス“サーズ”事故が有ったのですがね。


 ウィルス研究者の間では、完全にC国のバイオハザード事故だと分かっていたのですが、C国の市場へ介入したかった欧米勢力が、政治的に有耶無耶にしてしまったのです。


 しかし今回のパンデミックは、自然に形成されたウィルスでしたからね」


「しかし代表、成るべく早く、福島工場へ行かないと今はまだインフラは問題ないですが、今後色々問題が出て来そうですね。


 陸路と空路・海路がありますが、どのルートが良いでしょうか?


 陸路は、やはり路面にある事故車や放置車両の問題がありますし、空路はまだゾンビが空港内に徘徊して、滑走路上の事故が心配です、海路は港まで距離がありピックアップの場所に行くまで、人口密集地が結講あるので心配ですからね」


「田所君、セスナの方はどんな様子かな、整備は問題無いかな?」


「ステイショネアの整備は問題無いですが、滑走中にゾンビが音に引かれて滑走路上に現れ、徘徊仕出すと非常に危険ですね。


 寮にある車両の整備や、燃料は取敢えず問題ありません、もし車両で移動する場合はウニモグ改と、パジェロ改の2台での移動を進めます。


 後、代表が指摘されていたチタン製排土板を、装備して置きましたので、ゾンビの排除時の損傷も起こり辛くなりました」


「やはり後1週間位、様子見をしないと身動きが取れないか、まだ下手に武装商船は動かせないしな。


 一番早いのがセスナでの移動だが離陸に難あり。


 一番確実なのは海路にて、相馬漁港で福島工場へだが、今だ道路状況が掴めず、時期が早すぎて自由に航行は出来ないし、ヘリの運行も時期尚早だ。


 最後の陸路は最悪のケースだな、田所君と鬼山君は最寄りの海路の出口を調べて、一番安全で時間の掛らない方法を検討してくれ。


 あと8人乗りのゴムボートが、此処に収納されていたはずだ、済まんが田所君は船とエンジンの整備を頼む。


 時間は道程を3日以内で、整備を5日でお願いする。


 その結果が出たら、田中君は海運と連絡を取ってヘリ搭載の商船で海まで、迎えに来て貰う予定を今から一応立ててくれ」


「代表、玉川は東急東横線の、橋側の丸子緑地まで下らないと確か堰があって、そこまで陸路を通らないと海まで行けないはずです。


 私が大学に通っていた頃、玉川の河川敷の丸子緑地で、BBQを友人達とした時そう聞いたのですが、荒川の支流の新河岸河は、たしか志木市役所辺まで底の浅い船なら、海までそのまま行けるそうです。


 調べてから後で報告しますが、川好きな友人の言なので間違い無いと思います」


「う~んそうか、玉川は堰が多いと聞いていたが、そんな下流まで堰があるのか。


 じゃあ新河岸川の、最短ルートを通って行く場合と、丸子緑地から種発する場合、どちらが安全か調べて置いてくれ、では解散」


「「「了解!」」」


 そのあと細かい打ち合わせをし、俺は入浴後就寝した。





Pday 2日目

AM05:00 調布飛行場側 調布[ひよく寮] 前庭


 俺は毎朝の日課である、魔力と気を別々に体内で廻し、練り上げる呼気法を行いつつ、古武術の型をゆっくり行なっていた。


 この呼気法をすると、体内の気と魔力の代謝が上り、体が整えられるのでいつも行っている健康法であり、調息法でもある。


 10分程行えば、10kmのジョギングをした程の効果があり、忙しい時の朝練には持って来いの修行法だ。


 汗をかき火照った体に、温水と冷水のシャワーで体を引き締め、入浴後タブレットを立上げて本日のニュースを見た後で、リビングに降りコーヒーを大型サーバーで多めに作り、それをマグカップで飲みながら残りのニュースを読んでいると、AM6:00時頃に田中君が起きて来た。


「お早う、今朝もいい天気だよ。


 今日はあまりする事も無いから、ゆっくりしていれば良いのに。


 外はあまり見た目には変わりない様だね、コーヒーが入っていますよ」


「おはよう御座います代表、ついいつも通りの時間に目が覚めてしまいますのでお気遣い無い様に。


 コーヒーは頂きますわ」


 俺は手が空いていると、自分でコーヒーを淹れるので、彼女も慣れたものだ。


「ああ飲んでくれ、そう言えばこの周りの量販店や、トラックターミナルの場所は調査したかな? してないのなら私が調べるが」


「いえ既に昨日調査済みですわ、後程代表のタブレットに送信しておきますね」


「相変わらず仕事が早いね、助かったよ。


 今日辺り鬼山君と二人で散歩がてら偵察へ、パジェロ改で行こうかなと思っていたからね」


「気を付けて下さい、あまり無理をされると心配です」


「ああ無理はしないよ、表から倉庫やショッピングモールの様子を見て、これから地域の調達計画を考えないと、この辺はゾンビに飲まれてしまうからね。


 後、八王子の倉庫に太陽光の発電ユニットの在庫が、相当数あるはずだが何世帯分のユニットが有ったか、調べて置いて一緒にタブレットに送信してくれ。


 それとこれから朝食を作るけど、嫌いな食べ物はあるかい?」


「はい解りました、しかし代表が作って下さるんですか? 私は特に嫌いなものはないですが、愛美ちゃんは匂いのキツイピーマンや、苦い系の野菜は駄目だと昨日光恵さんに聞いています」


「ふーん・・・・、じゃあベーシックにスクランブルエックに、ソウセージのボイルと昨日のポテトサラダの下に、レタスとトマトのサラダを敷いて、コーンポタージュスープとトーストで良いか。


 和食も考えたけど、夕べが家庭料理だったからな、そうだ残りご飯でしおにぎりでも作るか、味噌汁も惣菜も残っているし、鬼山君や田所君も結講食べるし、いざとなれば昼の弁当にも出来るから、梅干を入れておこう」


「代表、チーズ類も結講揃っていましたよ、トーストならシートタイプか6pチーズも良いかも知れませんね、盛り合わせの冷凍物もありますし。


 しかしホールタイプのチーズが、ストックされていたのには驚きました」


「ああ、前に私が趣味で作ったゴーダやモレッア、レットチェダーにグリエール、エメンタールチーズだが、このシェルターは良い貯蔵庫だから、ECO権限で貯蔵させて貰っているんだ、好きにたべて良いよ。


 他にもベーコン、生ハム、サラミ、味噌、醤油、梅酒、果実種、山菜の保存食にワインなんかも、自家製の物があるからね。


 よし久しぶりに料理を作るか、この所外食ばかりで詰らなかったんだよな」


 俺は台所に立って朝食を作り出した。


 以外に器用に料理をする俺を見て、田中君も安心して調べ物を始めた。


 人数分の朝食と、弁当用に昨晩の残りで梅干のおにぎり大を、10個用意し惣菜をレンジで温めていていると、佐田婦人も起き出して来て朝食が出来たのを見て恐縮していた。


「気にせんで下さい、独身なもので暇な時は結講自炊するんですよ。


 今日はそんなに手の込んだ物は作らなかったし、手間はかけてないですしね。


 そう言えば佐田さんは、コーヒーですか紅茶ですか、それとも緑茶ですか、他にミルクも冷・温両方用意出来ますし、ジュースもりんご、オレンジ、ミックスと用意できますよ」


「有難う御座います、色々気を使って頂いて。


 それでは紅茶をお願い致します」


「愛美ちゃんはジュースとミルク、どっちが良いかな?」


「え~と、りんごジュースが良いです」


「ハイ解りました、どうぞ」


「ありがとうお兄ちゃん」


「そう言えば鬼山君と田所君は、ジョギングがてらに見回りに行ったけど帰って来たかな」


「はい代表、15分程前に帰って来て今シャワーを浴びていますわ」


「そうかじゃあそろそろ来る頃だな」


 そう言っている傍で、二人が部屋からタオルを首に掛けて降りて来た。


「「おはよう御座います」」


「お早う、朝食はできているぞ」


「お、代表謹製の朝ごはんだ、久しぶりにご馳走になります」


「そうだな、南米の密林でのサバイバル訓練以来だから、8ヶ月ぶりか。


 あの時は禄な食材がなかったので、蛇の丸焼きやスープに、泥ガニのボイルとかバナナの蒸し焼きに、フルーツ各種だったな。


 そうそうキャッサバ芋粉の、パンケーキも結講いけたな」


「しかし代表よくキャッサバイモの、毒抜き方法なんて知っていましたね」


「ああ私は雑学の大家なんだよ、興味が湧くと何でも実践する所があってね、味噌・醤油・日本酒・どぶろく・ワインにビール・納豆に蒟蒻・チーズ・ハムやソウセージにフランクフルトや、各種燻製に和・洋・中の料理やスイーツなんかも一通りつくれるよ」


「・・・・・・・何ですかその多趣味?


 技術全般をおさめているし武道もプロ並み、ついでに陰陽道にも通じているってどんなチートなんですか。


 更に腰を抜かす程の資産家ですよね・・・・ハア」


「それだけお役目も大変な物を押し付けられるんだよ? 


 良い事ばかりじゃないさ、たまには息抜きもしたくなるんだ。


 時たま思うが引き篭って、好きな事が出来たら気楽でいいよなと思うよ」


「まああちらを立てれば此方が立たずですね。


 器には器に合った苦労が付いてまわるんですよ。


 俺に代表と同じ苦労を充てがわれたら、3日と持たずにギブアップする自信があるぞ」


「一日持てば良い方だ」


「・・・・!」


 田所君に痛い所を地味に踏まれ、顔を引きつらせる鬼山君を見ながら皆んなが笑う。


「まあ飯でも食って力を貯めて、頑張って働きましょうか」


 そんな感じで食事をしながら、先ほど田中君と話した偵察の件を、鬼山君と田所君に話すと。


「ええと代表、町内会からも2人位同行させては如何ですか?


 元陸自経験者で現在工務店勤務の者が、2人ばかり居りますので将来の戦力になると思いますが」


「ほお良いね! 陸自経験者が2人もいたか、だったら中核戦力に成るな。


 場合によっては武器の配布も、視野に収めた戦略が取れそうだな

どんな人達かな」


「元空挺師団出が一人で、訓練中の事故により足を痛めてリタイヤしたそうですが、もうすっかり良くなり余程キツイ行動をしなければ、大丈夫ですね。


 もう一人は工兵出ですが、狙撃が得意な変わり種で、重機の扱いに長けているそうです。


 除隊理由は親父が体を壊した為、家業の工務店を継いだそうです。


 二人は工兵出の田嶋の店で働いていて、柏葉(レンジャー)の訓練課程の時、バディを組んだ相棒だそうです。


 空挺出のほうは逆髪 義樹で、工兵の社長は田嶋 務と言います」


「ふーん、空挺出に工兵出で柏葉狙いの、猛者か良いコンビだね!


 じゃあ今日は、同行して貰うか後々我々が出た後、物資の調達の中核に成りそうだしね」


「じゃあ食後工務店に一走り行ってきます、彼らに渡す装備はどうします」


「フルが良いだろう、特殊な奴もあるし[バイパー]の扱いに慣れて貰った方が後々便利だからね」


「解りました取り扱いを覚えさせますよ、マニュアルはどうします?」


「装備のマニュアルは、一通り渡しておいた方が良いだろう。


 こんなご時世だ、今更銃刀法もないからね」


「では後10分程したら店の方へ行きます、その時に装備の簡単な説明も一通りしておきますので」


「1時間後の0730に寮の前よりパジェロ改で出発する。


 残った握り飯で昼食を用意するので、昼付きと伝えてくれ、以上」


「了解」


「田所君はゴムボートに付ける船外機とボートのメンテナンスを頼む」


「了解」


「田中君は此処に詰めて無線の連絡係を頼む、周波数は1285を基本にデジタルスクランブルで行います」


「了解しました」


「佐田さんは済みませんがお昼と夕飯の用意をお願いします」


「ハイ、後お洗濯もしておきますので部屋に入っても大丈夫な様にしておいて下さいね」


「「「了解」」」


「リョウカイ」


 最後に愛美ちゃんの、リョウカイで皆が和んだ後、それぞれの仕事に皆散っていった。



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