10.Pday 1日目
AM9:30 調布飛行場
今日は朝から6人乗り軽飛行機、セスナ206ステイショネアで、福島工場飛行場へ移動する予定である。
本来昨日の夕方に福島工場の、飛行場に着いている予定だったのだが、公安部での予定が押してしまい、今日のフライトになったのだ。
本来今日は《神》が予言した、パンデミックの発生日なので調布飛行場に隣接している、セーフティハウスの拠点調布社員寮の[ひよく寮]で、我々は一夜を過ごした後朝タクシーにて調布飛行場に来た。
メンバーはいつもの俺、秘書の田中君、護衛の田所・鬼山ペアだ。
[ひよく寮]は200坪程の敷地に、建坪60坪3階建てのS樹脂でコートされた、鉄筋コンクリート制の一般家屋に偽装した、一種の要塞である。
3mの丈夫な塀で囲まれた敷地に、戸締りをすれば認証を受けて居ない者は、侵入不可能な作りの一種の要塞なのだ。
外観は味も素っ気もな四角く黒っぽい建物で、特徴としては今時珍しい雨戸の戸袋がポイントの、バルコニーも物干しも無いコンクリートで出来た、積み木に窓を付けた様な作りの建物だ。
しかし非常時になると雨戸の戸袋から、装甲シャッターが窓を塞ぎ120mm砲の砲弾を弾き、火災旋風からも建物内の人員を保護する要塞となる。
建物内は10LDKの免震・完全自家発電可能なBBLSGを屋根と壁面に使い、蓄電池のBgBをセットにしたパワーパックに井戸と天水タンクを備え、地下室の核シェルターには20人が2年暮らせる食料と、生活必需品に隠し武器庫・武器弾薬が備えてある、倉庫も兼用した作りになっている。
この施設は一応会社の寮扱いであり、東京奪回時は調布飛行場への宿泊施設として、活用する予定でつくられた物だ。
対弾バンガー車庫には装甲車化したウニモグとパジェロ改、ジムニー改・250ccのオフロードバイク2台と、26インチのATBが6台・分解してある軽飛行機チャレンジャー Ⅱ3機と、個人ヘリの[GEN H-4]改2機・[bit]改2機を収納している。
この様な拠点が全国に10箇所ほどあり、いざという時の避難場所になっている。
田所は飛行場に着くとセスナの最終点検と、飛行プランを提出しに管理事務所とハンガーに行き、点検終了後福島工場飛行場に向けてのフライトになる。
「しかしだいぶ涼しくなって来たね、さすがもうすぐ10月だ」
「ええこの15年間位は本当に、温暖化のせいか熱くなりましたからね」
「私なんかクーラーが効きすぎて、夏場なのに冷え性に成りそうですわ」
「女性は大変だね、それに引き換え男は冷えには、強い人が多いからな」
「しかし離島への観光が減ったせいか、いつもより閑散としているな」
「そうですね、ニュースも戒厳令のせいか、何時もより内容が少し大人しめですね」
「ああ今もラジオのニュースを聞いているが、パンデミック関係が多いね、しかし防諜法成立と悪質マスメディアへの対処のせいか、政府への批判は少ない様だね」
「ネットの情報はどうでしたか? 私が夕べ調べたのが11時位でしたけど、特亜板はサヨちゃん+在日VS日本人で、軒並み炎上していましたけど、サヨちゃん組の旗色が悪かったみたいでした。
あとデモをするとの煽りが有りましたけど、口先だけみたいでしたね」
「まあ今デモをやったら即座に逮捕されて、在日だったら即幕張へ送致され、帰還船へ乗せられ強制送還だし、左翼系右翼系問わず即座に立件されて感染者センターの、ボランティア行きだから意気も上がらんだろうね」
「まあ騒いだ奴らは即座に感染者センターの、ボランティアに強制労働の刑にして当然ですよ。
非常事態宣言が発令された時に、騒ぎを起こすという事の重大性が、解らん馬鹿には良い薬になる。
最も致死性の劇薬でもあるんだけどもね・・・・フフフ」
「あ~、鬼山さん悪人顔になっていますよ! 私も同意見ですけども」
「私も鬼山君に1票だ・・・・ん?
どうした外が騒がしいが・・・
感染者が出たかもしれない! 各自[バイパー]を用意!
服は上下Sスーツを着用しているな?」
「「はい」」
「では武装を整えてくれ、その間私が安全を確保する」
俺が[バイパー]をKモードで取り出し、100連マガジンを装着して命じた。
「「了解」」
二人が装備を整えている間壁を背に、辺りを監視していると外から大勢の人達が、ロビー内に慌てて逃げ込んで来た。
パニック状態で何を言っているのか、分からないがどうやらゾンビが出たらしい。
「鬼山君装備は終わったか?」
「ええもう終わります」
「では俺と代わってくれ」
「はい ・・・・もう大丈夫です、代表も装備を整えて下さい」
「分かったそれから田中君、田所君に連絡して状況を伝えておいてくれ」
「はい私も終りましたので、田所さんに連絡して状況を説明します。
後フライトは可能かも聞いておきます」
「ああ宜しく頼む」
俺も[ライジングサン]謹製のバトルスーツRS050Tと、メッシュチョッキ・パンツを装着し、コンバットベルトとハーネスに、予備弾倉や予備バッテリー・各種装備を確認しながら装備した。
バトルスーツとメッシュチョッキ・ハーネス類は、防弾・防刃性のSライン製で色は、都市迷彩の黒を基調とした、赤外線・紫外線・電波吸収処理をほどこされた、ステルススーツになっている。
付属のマスクとグローブを着ければ、サーモグラフィーや赤外線映像・対人レーダーに捉えにくくなる。
「代表、田所さんは無事ですが滑走路に、ゾンビが多数徘徊して離陸が困難だそうです。
どうも航空会社からパンデミックが発生したらしく、結講な数が徘徊しており更に数を増やしている模様!
彼も装備を整えて、此方に合流するため移動中だそうです」
「分かった田所君とここで合流したら、直ちに[ひよく寮]に戻る」
「無論徒歩で移動ですね?」
「ああその為飛行場に隣接した、土地に建てたんだからね」
「まあ良い訓練になりますね」
鬼山は専用のサプレッサー仕様の、[パイパー]の折畳まれたフォアグリップを起して構え、装着されている0~10倍スコープ型ダットサイトを、調整しながら言った。
「ゾンビを入口に発見! 処理します」
自動ドアを開けて侵入して来た、ゾンビを発見するなり鬼山が言った。
「ガラスに注意、下手に破壊すると雪崩を打って侵入して来るから壊すな」
「了解!」
パス・パスパスパス・パスパス・パス
鬼山はセミオートで狙撃し、7体の侵入して来たゾンビを、ヘットショット7発で倒した。
「お見事、流石パラグアイのオンサの二つ名持ちだね」
「代表やめて下さい、その名で呼ばれると中二病みたいで恥ずいです」
鬼山は心底ウンザリした顔で、文句を言ったが流石プロ、廻りに注意を怠らない。
「よし装備終了、すまんな鬼山君。
早速だが入口の自動ドアの電源を、カットしないと又侵入して来るからさっさと戸締りをしよう。
そして田所君が来るまで玄関を確保、合流後[ひよく寮]に移動だ。
田中君、田所君に喫茶ルームの表玄関にて、合流と連絡をしてくれ」
「了解」
移動しながら衛星携帯電話で、田所を呼び出しつつ我々は玄関前に移動した。
幸い後続のゾンビは玄関から侵入はして来ず、無事玄関脇のスイッチで自動ドアの電源を切り、これ以上のゾンビの侵入を阻止出来た。
田中君に外を監視させ我々は、屋内からの襲撃に備えて近くの椅子やソファ、テーブルで簡易バリケードを作り、そこを拠点に防備を固めた。
そうしていると、遠巻きに我々を見ていた避難してきた客と思われる数名の男性が、ゾンビの死体を怖々見ながらこちらに近寄って来た。
「あの貴方達は警察の人ですか? 一体あれは何なのです?」
鬼山君が答える。
「我々は警察ではありません、私はこの方達をガードしている警備会社の者ですがね。
表の騒ぎは昨日総理が会見で言っていた、ゾンビ化した感染者でしょうね」
「ああ、あれが感染して死んだ者達なのか・・・まさかと思っていたがほんとに、死体が動くなんて事が起こるとは信じられんな・・・・」
「ともかく奴らに噛まれたら100%感染して、仲間入りになるので注意して下さい」
「どうすりゃ良いんだ、これから・・・・・。
あんた方武器を持っているんだから私たちを守ってくれんか?」
「すみませんが、我々はこれから会社に戻らなければならないので、ここから直ぐに立ち去るので無理です」
「ええ、俺達を見捨てて逃げる気かあんたら」
別な男達も口を挟んできた。
「お前ら武器持っているんだから、ここにいる人達を守るのが当然だろ」
「なんでお前ら武器何か持っているんだ、テロリストか」
「私は警備会社の要人警護のボディガードです、武器の携帯は公安警察から所持許可を頂いておりますので合法です。
だいたい私はこの方達に雇われている者で、あんた達は赤の他人だよ、何で関係の無いあんた等を守る義務があると思っているのかね」
「なんだと、この非常時に自分勝手な事を言うな!」
「そうだ、そうだ自分たちだけが助かろうなんて勝手だぞ」
かなり場が荒れてきた様で、今にも掴み掛らんばかりに男達3人が詰め寄って来た。
俺はメッシュベストのポケットに、ビニール袋に入れて置いた“符”を3枚取り出し、呪を唱え印を結ぶと3人に向かって飛ばした。
『我が名に於いて急急如律令の様になれ』
縛と呪紋が書かれた“符”は、3人の額に張り付き金縛りにしてしまった。
実際は魔法のバイントで拘束したのであるが。
「な、か、体が・・・・・」
「ぎが・・・・・」
「ッ・・・・・・」
「少し落ち着いて下さいませんか?
因みにその“符”は私が解除しないと、死んでも霊自体がこの場に捕縛されて、自縛霊どころか封印霊になって、数万年は身動き一つ出来ませんよ」
俺の警告に廻りに集まって来た人々は、思わずたじろいで離れて行った。
どうやら俺のことを霊力を持った、陰陽師か霊能者と認識したみたいで、怯えた目で此方を伺い出した。
「さてと、我々が持っている武器は、それなりの訓練をしなければ扱えないし、素人が行き成り使っても20m離れた、畳に当てるのが精一杯ですよ。
もし当てられたとしても、弾倉の交換や手入れの仕方も解らず、直ぐ故障して使えなくなるのが関の山です。
銃に慣れて居ない日本人は、特に基本的な扱い方を知らない人が、ほとんでしょうしね。
仮に狩猟で散弾銃やライフル銃を扱える人でも、これは特殊な火薬を使わない銃なので、手入れの仕方も分からないでしょうから直ぐ故障します」
「じゃあどうすれば良いんだ? このまま黙ってアイツ等に喰われろと言うのか」
年配の男性が聞いて来た。
「ちがいます! ゾンビは刃物や銃で心臓や動脈を切っても、腹を撃っても倒せません、唯一有効なのは脳や中枢神経を破壊する事です。
銃は訓練したプロなら1発か2発で、頭を打ち抜き殺せるでしょうが素人がいきなり撃っても、20~30発弾を使ってようやく、頭に当てる事が出来る位難しいですからね。
素人が使ってもっとも効果的で扱い易い武器は、幾らでも其の辺に転がっている金属バットや鉄パイプなどの鈍器です。
例えば靴下を2枚重ねにして中に、大き目の砂利や石を入れてアイツ等の頭に振り下ろせば、立派なメイスモドキになるし、金槌やバール等も良い打撃用の武器になります。
でも頭に拘る事は無い、ゾンビは力は強いが素早く動けないので、要は動きを鈍くすれば幾らでも対処出来ると言う事です。
まず決して一人では戦わず2~3人でチームを作り、長物の武器で転ばせた所に金属バットやパイプで頭を潰せば良いんですから、分業制にして対処すれば楽に駆除出来ますよ」
この様な場合、人は目先の具体的な目標を与えれば、秩序立った動きをする物で、パニックに成りかかった場合は有効だ。
「え、そんな物こんな所には都合良くないぞ」
「いえありますよ、扉の外の右脇6mの所にブルーシートの下に足場用の鉄パイプが、長短取り混ぜて置いてあります。
多分外壁塗装か何かに使う為に置いてあるんでしょうが、武器としては理想的な物です」
「え?・・・・表に出るのか・・・・・」
「私たちがガードに付きますので、その間に回収して下さい」
俺は[バイパー]を掲げて見せるとそう提案した。
「但し奴らは音に敏感に反応しますので、極力静かに作業して下さい」
そう注意をして俺は8人程の、有志を募り自動ドアの電源を入れ、田中君にドア付近を見張らせている間、長短20数本の鉄パイプを回収した。
その間ドアに近づいたゾンビ2体を田中君が始末した。
鉄パイプを回収した俺たちは、館内にある救急箱を持って来させ、90cm位のパイプの端に包帯を巻きつけて、滑り止めを付けたパイプを10本と、120cm位の長めのパイプに連結用の金具を付けた、何ちゃってハルバートを10本程作り打撃用の武器にした。
その他、事務所に有った梱包用のビニール紐40cm3本と、20cm角に切った布に外で拾った拳サイズの石を包込み、紐で括った物を3本つなぎ合わせた簡易版の[ボーラー]を作り、ゾンビが近づいて来たら其れを繋ぎ目を持って振り回し、ゾンビの足目掛けて投げて、足を絡め取り転ばす方法を教えた。
後、同じく事務所に有ったガムテープと針金を使い、簡易バリケードを作る方法や釣具を使った、色々なゾンビ阻害方法を伝授した。
特に針金単体だと障害物が無い場所でも、標識や柱を使った簡単なバリケードを作る方法や輪罠の作り方や、細い釣り糸に小さな針を沢山はえ縄状に付けた罠を仕掛けて、鳥を捕獲する方法を伝授して生存率を上げるコツも教えておいた。
そんな事をしている内に田所が合流した。
俺はそこに居る人達を集めて、今後の国の動きや取る戦略をみなに話した。
「皆さん今後政府の取るであろう行動は、一時的に首都を放棄し現在一番安定している北海道に拠点を移し、反攻の足場にする計画であります。
これは政府筋からの確かな情報であり、テロリストによる生物兵器のパンデミックが発生した場合を想定して作られた行動計画ですし、今回のパンデミックにも当て嵌る事態です。
今現在自衛隊の保有している武器・弾薬では、今後増え続けるゾンビには数の暴力で圧倒され、悪戯に兵力を磨り潰してしまいますので、一旦北海道に安全な拠点を作り、大量の武器・弾薬を生産して後に、日本本土の奪還作戦を行う事になるため、最速で事を成しても6ヶ月~8ヶ月、最悪1年以上は政府の支援は当てには出来ない状況になります。
今回の災害は大震災等とは違い、事は地球規模の大災害であり、無事な後背地は何処にもなく他国からの救助もありません。
唯一有る現実は、最低一年間に及ぶ自力救済のみであり、他人が貴方がたを助けるのは、当前であると言う考えを持つ者は、即座にゾンビに殺されてしまう世の中になったと言う事、をまず理解して下さい。
私が思うに、今後人のせいにする人は、真っ先に淘汰されるでしょう。
自分は税金を払って来たので国が私を助けるのは、当然の義務であり自分の権利である。
そう思っている人は真っ先に喰い殺されるでしょう。
何故なら今回の事態は貴方が払って来た、税金の総額では貴方を助けるには、まるで不足している事態なのです。
自身の身を守るのに最低100万円かかる事態にも拘らず、1万円しか支払っていないのに助けられるのが、当然と思っている他人を見れば、滑稽な馬鹿者だと傍で見ていればそう思うでしょう?
ではどうすべきか?
実に簡単な事ですよ! 足りない部分は自分が戦って補えば良いのですから。
まず自分の役割を確り自覚し、するべき事をして行く人のみ生き残れる世の中が、向こう3~5年は続くと思って覚悟して下さい。
幸い此処の空港は、災害避難地域に指定されていますので、水や食料の確保は楽に出来ますし、滑走路があるので東京の奪回作戦の時に高い優先順位で、自衛隊が進駐して来る可能性が高い場所です。
今後出来れば皆さんで空港を閉鎖し、空港内にいるゾンビを掃討して立て篭れば、生存率もかなり高くなると思います。
幸い飛行場は安全の為の遊休地が多く、周りのホームセンター等を探せば農作物の種や肥料、農薬等も手に入り易い環境に有るのがこの辺の環境ですので、簡単に作れる馬鈴薯などや葉野菜を育てる事も、周辺の農家の方の協力があれば可能です。
又日本は先進国であり、保存食である缶詰やレトルト食品・フリーズドライ食品のストックが国内に大量にあり、生存者が上手に遣り繰りすれば飢えずにこの難局を乗り切る事が出来るでしょう。
まして東京は人口密集地であるため、人口の7割以上がゾンビ化してしまい、保存食は生き残った人々に余る程の量が確保出来ます。
残念ながら私は、此処から移動しなければ成りません。
何故なら私は製薬会社の代表をしており、ゾンビウィルスのワクチンを開発する陣頭指揮を、取らなければならないからであります。
済みませんが、我々は此れから開発工場へ行き、責任を果たさなければならないので此処を離れます」
俺は礼をしてその場を立ち去る事にした。
「あ、あの・・・・」
「何か?」
「先程は済みませんでした、いくらパニックになっていたにしても、考え無しな言動をしまして・・・・・」
「いえ構いません、こんな状況で冷静に対処するなど、普段から修羅場を潜り付けて居ないと無理でしょう」
「いえ貴方はお若いのに、冷静に対処できているので驚きました、何処の会社の社長さんですか?」
「私は旭製薬の代表をしています、甘莉と申します」
「あ、あの有名な“陰陽師社長”さんですか、道理でお若いのに肝が据わって居ると思った」
「え?“陰陽師社長”ですか?
・・・・・ハハそんな二つ名を頂いて居るとは思いませんでしたよ」
「へ? 結講有名ですよ、なあ皆んな」
「そうですね、業界じゃ有名ですよ」
「そうそう、土地や恨みで霊障を受けたら甘莉CEOに、相談すれば即解決だそうですね?」
「成程、さっき護符を受けたけど正に金縛りになって、身動きが取れなかったものな~。
あれを受けたら並の悪霊じゃ直ぐに封じ込められて仕舞うよな!」
変な所で有名人になっていた、さっさと脱出するに限るな!
「まあそんな訳で我々は移動しますので後は宜しく、空港長に聞けば災害支援物資の場所や、緊急の発電機や井戸のポンプ等の場所も解ると思いますのででは失敬」
そう言うと俺は3人を促し、そそくさと喫茶ルームを後にした。
「代表、どうしたんですか慌てて?」
「イヤ何いつまでも居るとゾンビに、周りを囲まれ兼ねないからね」
「・・・・プッ、ククク・・・」
「何ですか田中さん? 意味ありげに笑って」
「フフ、いえ何でもありませんヨ? ネ、ダイヒョウ」
「そうね、なんでも無いよ、ソレより周りを警戒しつつ拠点に急ごう」
「この辺はあまり人が居ないせいか、ゾンビも少ないですね」
「東京の田舎だからな、公園とか緑地だらけで用地確保は楽だったよ」
俺たちは田中・田所、俺・鬼山の、2マンセル体制で周囲を警戒しながら、飛行場の北北東にある[ひよく寮]に向かい歩いていった。
朝空港に来るのにタクシーを使って来たのは失敗だったか。
まさかゾンビが徘徊しだして、空港が閉鎖するとは判断が甘かったか・・・。
俺達は空港側の歩道を歩きながら、警戒していると前方200mに路線バスを含む、車5~6台の事故現場に差し掛かった。
軍用の測距離計付の小型双眼鏡で観察してみると、路線バスが信号待ちをしている車両に突っ込んだ直後の様だ。
バスの窓からは乗客が何かに追われる様に、脱出しているみたいに見える。
「あれはバスの中で乗客から発生したゾンビが、運転手や乗客を襲い事故を起こしたようですね」
田所君が同じく双眼鏡で偵察しながら言った。
「場所が不味いな、航宙センター前のY字路前だと、戻るにしても迂回距離が大きくなるし、更に不確定要素が増えるしな・・・・。
鬼山君プロとしてはどう思う?」
「そうですね・・・・、やはり現状だと距離を大きく取りたく無いですね。
代表が仰る様に、現状だと何が起るか予測不可能ですが、ガードの立場からすると、あまり危険に飛び込むのもおススメ出来ないですが、代表の法力が有ればかなり勝算は高くなるので、トライしてみるのも良いですな」
「よしじゃ行ってみようか! 田中君、田所君もそう言う訳で宜しく」
「ハイ代表、頼りにしておりますので」
「了解!」
俺たちは航宙センター側の歩道に渡り、事故現場に近づいた。
歩道にはバスから難を逃れた乗客達が、7人程何時でも逃げられる様にしながら様子見をしている。
バスが突っ込んだ宅配便の2tトラックの荷台は、大破しているが運転手は無事のようで、バス内の異様な光景に氷着いた様に見入っていた。
その先に居る軽ワゴンではドアが歪んだらしく、開かないドアと格闘しつつ中から助けを求めて母親らしき女性と、後部座席の娘らしき女の子が窓を叩いて居る。
その前方の車列は軽く衝突したらしく、特にけが人は出てない様で乗員達が車から、次々に降りて何事かと後方に移動しつつあった。
「田中君、田所君軽のドライバーを救助するぞ!
鬼山君は周囲の警戒を頼む」
「「「了解」」」
俺たちは周囲を警戒しつつ軽ワゴンに近付き、中の母娘にガラスを割るので後ろに退く様指示し、特殊警棒で車のサイドガラスを叩き割った。
その時鬼山が注意を喚起した。
「全員注意! バスの乗降口が開きゾンビが出て来た。
今現在6体を確認、直ちに処理をする」
俺達は、素早く軽ワゴンから少女と母親を救出すると、鬼山と田所を殿軍に据えてY字路を右に入っていった。
以上で第3弾投稿終了です
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