931 まるで話にならない
ボクは大きくつんのめって前にコケてしまった。
だが運の悪い事にその時に剣を振るったらしく、目の前の建物が真っ二つになってしまった。
「な、何をするだぁー!? オラの家を!」
「す、すみませんっ、そんなつもりは無かったんです!!」
家を真っ二つに斬られてしまった人が怒っている。
そりゃそうだよな、もらい事故みたいなものとはいえ、いきなり家を真っ二つにされたらそりゃあ誰だって怒るってもんだ。
「まあまあ、ここは妾に免じて許してやってくれないかねェ」
「まあ、村の恩人の貴女達が言うなら、今回の事は許してやるよ……」
「エントラ……さん、一体どうなってるんですか?」
ボク達はここに来たばかりなので何がどうなっているのかわからないが、村の人達は大魔女エントラ様達の事をよく知っているようだ。
「そうねェ、何かあったとすれば、ここの村の危機を妾達が救ったってことくらいかねェ」
「そうか、そういう事だったんですね」
そういう事だったんだ、だから村人達は村の真ん中に集まって宴会をしていたって事だな。
その火を村が燃えていると勘違いしてボク達が突っ込んできてしまったってところか。
しかし、村の真ん中の像がまるでドラゴンのような木彫りになっているけど、コレは一体?
「コレは一体?」
「ここの村を守ってくれた黒竜、ヘックス様の像です。ヘックス様はこの村に押し寄せたモンスターの群れをお仲間の方々と一緒になって退けてくれたのです」
成程、それであのスタンピードのモンスターの足跡がこの村で消えていたって事か。
まあ、大魔女エントラ様とフロアさんやサラサさん達なら、スタンピードのモンスター程度は余裕で全滅させる事も出来るだろう。
でも、あの黒竜王ヘックスの像は? 確かヘックスは今は力を奪われていて小さなブラックドラゴンになっているんじゃなかったんだっけ?
実際、ヘックスは女の子の膝の上で気持ちよさそうに寝ている、あの小さなブラックドラゴンをどう解釈したらあんな巨大なドラゴンの木彫りの像になるのやら……。
まあ、色々考えても仕方ないな。
ボク達はどうにか大魔女エントラ様達と合流できたワケで、ここからまた探し物の為に旅に出なきゃいけないんだ。
「エントラ様、聞きたいことが色々あるんですけど」
「あー、それは明日にしてくれないかねェ、今日は久々に飲んでるんだからねェ」
ダメだ、今日はもう彼女は出来上がってしまっていて、話を出来る状態ではなさそうだ。
ボクは真っ二つにしてしまった家の人に謝り、家の整理を手伝う事にした。
そして次の日、村の人達は酔いつぶれて外で寝てしまっていたようだ。
まあ、モンスターを退けていたので特に命を狙われることも無かったのが幸いしたのだろう。
何名かは気持ち悪そうにその場で寝転がっている。
大魔女エントラ様もその中に混ざって完全に酔いつぶれていた。
「エントラさん、エントラさん! 起きてくださいっ!!」
「ン……もう朝かねェ、どうやら昨日はあのまま寝てしまったみたいだねェ」
「エントラさん、昨日聞けなかった話をしてもらえますか? いったい今まで何があったんですか」
「そうねェ、話すと長くなりそうだねェ、ちょっと水呑んできても良いかねェ」
寝ぼけたままの大魔女エントラ様はフラフラと歩いてそのまま壁にぶつかってひっくり返ってしまった。
あーあ、こりゃ今話を聞くのは無理かな。
ボクはフロアさん、サラサさんに話を聞いてみる事にした。
「ユカさんと離れてからオレ達はザッハーク神教の総本山って場所に向かったんだが、そこにいたのが魔将軍アビスって奴だったんだ」
やはり、そういう事だったんだな。
この話はきちんと大魔女エントラ様に聞いた方が良さそうだ。
仕方ない、彼女の目が覚めてからゆっくり話を聞く事にしよう……。
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