20 俺は 涙を流さない
一度出直す事にした私は、遺跡から家に帰る事にした。
古代遺跡の事を地図だけではなく、書物から古代文明についても調べる為だ。
家でワープ床を元に戻した私は部屋で古代語の勉強をした。
それで少しずつ分かったのが、あの遺跡は『創世神クーリエ』を祀る神殿だったという事だった。
創世神クーリエと破壊神ダハーカ、この二柱の神が遥かなる太古からお互い争っていたのである。
そのクーリエを信望する民が作ったのが創世神の神殿だったのだ。
だが、長い戦いの中でダハーカは人々の精神を腐敗、堕落させ、信者の力をどんどん失ったクーリエは永い眠りについた。
そして彼女の弟『調整神アジャスト・ツクール』が調整の力を使い破壊神ダハーカを封印したのが現在の社会だという事がわかった。
その他にはあの遺跡には祭具の鏡が祀られているだの、女神を守る為に古代の英知を集めた魔神がその神体を守っているといった話が載っていた。
「鏡、これを使えば敵が光線を撃ってくる敵なら倒せる!」
私は隣町に行き、冒険で溜めたなけなしの報酬を使ってMPポーションをあるだけ買った。
それと雷石(この世界ではこれを使う事で夜の明かりに出来るのだ)を買えるだけ買った。
これで準備は整った!
◇
私は再び忘れられた遺跡に戻ってきた。
そして遺跡の地図を頼りに祭具殿の部屋を見つける事が出来た。
祭具殿には大きめの鏡が飾られていた。
私はそれを取り外し背中に背負った。
他にも使えるものがあるか確かめたが……他はどれも風化していて使い物にならなそうだった。
そして再び床を歩けるようにマップメイクして最深部の大広間に来たのである。
魔神は沈黙していたが……私の存在に気が付くと再び頭部に光を宿らせ、その目を光らせて私を叩き潰そうとしてきた!
「MaZZZzzzzZZIIIIIIN! GOOOォオオ」
今度は泉は無かった、古代の力で作られた泉はメンテナンスされていないので一度しか使えなかったのだろう。
「KOOOOOSHIRYYOOOOKU BEAAaaaM!」
魔神の目が光った!やはりこいつには光線武器が備わっていたのだ。
魔神が他の武器を使わない立ち位置を把握していた。
近すぎると打撃や冷凍光線、あまりに遠いと腕を飛ばしてくる。
中間の立ち位置だと目から放つ光線だと古代書から分析していたのである。
「倍返しだぁぁぁぁあ!」
鏡を私の前に立てた事で魔神の目からの光線は鏡で反射しその全てが魔神の体に命中した。
古代の英知は必殺の技が反射し、その光線は古代金属をも全力で切り裂くほどだったのだ。
光線によって魔神の右腕が斜めに断ち切られた。
「RUST……HA」
怯んだ魔神は口の格子から突風をまき散らそうとした。
「魔神の足元の床を落とし穴にチェンジ!」
ガァァァ!
魔神は落とし穴に右足を取られ、出そうとした技を出せなかった。
「そうだ、こいつの弱点は間違いなく頭部だ!
届かないなら届くようにすればいいんだ!!」
私は魔神を倒す方法を思いついた。その為にマナの全力集中をしなくてはいけない。
私は持ってきたありったけの雷石をあたりにばらまいた。
激しいスパークがあちこちで起こった事により、魔神のセンサーが一時的に混乱状態になった。
よし! このタイミングならいける、マナの力を集めてやる。
「目の前の床を10メートルの落とし穴にチェンジ!!」
mpが一度で全部尽きた、私は持ってきたmp回復薬を服用、mpを最大に回復させた。
「目の前の床を10メートルの落とし穴にチェンジ!!」
成功だ! 魔神は穴の中にピッタリになる形に収まってしまい、身動き一つとれなくなっていた。
かろうじて腕を上げ胸の巨大な板から超高熱の熱線を撃ち、辺りの床を溶かして動こうとしていた。
「BREEEEAST……」
「そうはさせるかぁぁぁあ!」
私は遺跡の剣を逆手に持ち、飛び降りて頭部の球体目指して深く深く突き刺した。
魔神の体が激しくスパークし……数回動いた後、魔神は眼の光を失い二度と動く事はなかった。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』




