15話 閑話1 美嘉の気持ち
私がせんぱいと出会ったのは、小学校の頃でした。
その頃は反抗期だったから両親ともよく喧嘩していたんですよね。
それは、いつものように私が人気のない近くの公園でゲームをして遊んでいたときのことでした。
ひぐらしが夏の終わりを告げるように鳴いていました。
「お嬢ちゃん、1人?」
いきなり知らないおじさんが話しかけてきました。なんか鼻息が荒くて、気持ち悪かったのを覚えています。
私の反応を見ずに、おじさんは話を続けました。
「1人ならウチにおいでよ。お菓子とかゲームとか色々あるよ」
私は答えませんでした。あまりにも怖かったし、何と答えればいいかもわかりませんでしたしね。
私がしばらく黙っていると、おじさんは痺れを切らしたのか、私の手を強引に引っ張って、連れて行こうとしました。
連れて行かれたくなくて、私は頑張って抵抗しましたが、やはり大人と子供、なす術もなく引きずられていきました。
ものすごく怖くて、涙がボロボロと出ました。
「やめろ!」
声がしました。
振り返ると、自分と同じくらいの歳の男の子が立っていました。
控えめに言ってもおとぎばなしの白馬の王子様みたいでした。
でも、現実は残酷でした。
「こいつボコしてから行くか」
おじさんは私の手を掴んだまま男の子に近づいていきます。男の子も必死でファイティングポーズをとります。
でも、大人にかなうわけがなくて、一瞬で殴り倒されました。
あぁ。もうだめだ。私はもう1度絶望しました。
でも、その男の子はあきらめませんでした。
男の子はもう1度立ち上がりました。そして、おじさんに、自分よりはるかに大きな大人に向かっていきました。
何度も、何度も、その男の子は、いえ、せんぱいは
せんぱいは、通報もしてくれていたらしく
警察が来るまでは3分くらいだったそうなのですが、1日くらい経ったように感じました。
これが、私がせんぱいのことを好きになったきっかけです。
……下ネタを言ったりしてからかったりしてても、本人には、好き、なんて恥ずかしくて言えませんけどね。




