14話 朝倉さんレベリング
しばらくして、15層のあたりで昼食だ。
階段のところで昼食を取ればモンスターには襲われにくいのではないかということで、階段の手前の地面に腰を下ろしてコンビニ弁当をみんなで食べる。
もちろん2人の分の鉄パイプは2人の近くの地面に置いて、いつでもモンスターに対応できるようにしてある。
「それにしても、ずいぶんと深くまで潜りましたね」
朝倉さんがぽつりと呟く。
自衛隊でさえ10層までしか潜れていないのだから、不安になるのも当然だろう。
「多分安全マージンを取って、20層あたりまでしか潜らないかな」
「20層!?」
あっけに取られたような顔の朝倉さん。あまり効果がなかったかもしれない。
「せんぱい、そういうときは俺が守るから安心しろくらい言うんですよ」
美嘉がからかってくる。
「俺はそんなに強くないよ。守れるかどうかなんてその時にならないとわからないよ」
美嘉は意にも介さず微笑む
「せんぱいは必ず守ってくれますよ」
ちょっとクラッと来た。いや、かなりクラッと来た。
「なんかちょっと妬けちゃいますね」
冗談を言う朝倉さんの表情は、すこし明るくなっていた。
そして、21層
「はあっ」
俺は向かってくる大きな狼の鼻面を鉄パイプで突く。戦いに慣れた人ならともかく、一般人なら、1番強い戦術は突きだ。
手に軽くはない衝撃が走り、狼がつんのめったように止まる。
地面に落ちる間に俺はサッと後ろに後退する。
狼はすぐに体勢を立て直して、再び飛びかかってくる。ワンパターンな攻撃だ。
今度は1度避けてみようかと思ったが、後ろの朝倉さんが心配なのでまた同じように鼻面を突く。
今度は頭を低くして地を這うように襲いかかる。
今度は振り下ろす、位置エネルギーを衝撃に変えられるので低い位置への振り下ろしはかなり有効だ。
狼の頭頂部を思いっきり殴ると、狼はそのまま起き上がらず、じきに光の粒子になった。
「お疲れ様です」
安心したように美嘉が駆け寄ってくる。遅れて朝倉さんも来る。
「ここなら良さそうだな」
俺は美嘉にアイコンタクトを取る。美嘉はうなずく。
俺と美嘉は、朝倉さんのレベリングをしながら戦闘訓練をしようと計画していたのだ。
「とりあえず、レベルが45を超えるまではここでレベリングしましょう」
比較的レベリングは問題なく進んだのだが、少しヒヤリとさせる場面もあった。
一度は正面から避けてみようということになって、俺が避けた先に美嘉がいて、ぶつかりかけたのだ。
もちろんそのあとはきちんと倒せたが、まだレベルの低い朝倉さんの身の安全を考えると、あまり避けることはせずに戦うことにした。
そして、夕食。やはりコンビニ弁当を出して食べる。
「どこまでレベリングするんですか?」
「俺と美嘉がレベル50、朝倉さんがレベル30になるまでかな」
俺は美嘉と決めた目標を答える。
「大丈夫ですよ。レベルはすぐに上がりますから。今すでに結構高いんじゃないですか?」
朝倉さんは恐る恐るステータスと呟く。
「レベル25!?」
朝倉さんが大声を上げる。
「結構深いところのモンスターを倒しているからレベルの上がり方が速いんだよ」
俺は一応、放心状態の朝倉さんに解説をしておく。
だめだ。多分聞いていない。
朝倉さんが放心していたし、夜6時になっていたので、今日の探索はここで戻ることになった。




