9 よみがえる記憶と魂1
「ドラゴンさん、どうかしましたか?」
ミラが不思議そうにたずねてくる。
『しばらく──静かにしてくれるか、ミラ。他の二人にも伝えてくれ』
「えっ?」
『ここにいると思い出せそうなんだ。だから──』
「は、はい。分かりました!」
ミラはすぐにうなずき、コレットとリーリアに俺の意思を伝える。
よし、あらためて。
俺は大きく息を吐きだした。
ぶしゅうっ、とドラゴンの息が白く吹き上がる。
脳裏に、何かが浮かんできた。
燃え盛る王都。
襲いくるゴーレムたち。
立ち向かう騎士団。
その中には、俺もいる。
そうだ、あのときの光景だ。
魔導王がエレノア王国に攻め入ったときの。
このときの出来事は鮮明に覚えている。
記憶が欠損しているわけじゃない。
俺の目の前でカレンが踏みつぶされた光景も。
その後に俺が小さな女の子をかばい、踏みつぶされた感触も。
そして──。
『死んだあなたの魂はここまで運ばれた』
ナビが言った。
『暗黒竜王の依り代として』
なぜ、俺なんだ?
他の誰でもなく、なぜ俺が──。
『暗黒竜王の依り代は誰でもなれるわけじゃない。生半可な者では、暗黒竜王の力を受け入れた瞬間に、魂が砕け散るの』
と、ナビ。
『だから、それに耐え得るだけの強い心と力の持ち主が必要──ガルダ、あなたが選ばれたのはそれが理由よ。きっとね』
俺の魂が、それだけの強度を持っている──とみなされたわけか。
『諸国に名を轟かせる「騎士の中の騎士」だもの』
ナビが言った。
『ここに運ばれてからの一か月ほど、あなたは記憶を失っているわ。だから、代わりに私が見せてあげる』
見せる?
何をだ?
『私が「鑑定」した過去の出来事を、ね』
そんなことができるのか?
『私は「竜王級鑑定スキル」よ。すごいんだからね!』
言うなり、俺の視界が切り替わった。
そこは神殿の中だった。
だが、がらんとしていて誰もいない。
ミラたちの姿がない。
つまり、俺の現在地ではないってことだ。
これは現実の風景じゃなく、ナビが見せている映像なんだろうか。
と──目の前にピンク色をした肉塊が出現した。
いびつな球形で、どくん、どくん、と脈を打っている。
まるで心臓だった。
『そう、心臓よ』
ナビが言った。
『これは暗黒竜王の心臓。これを起点に、新たな暗黒竜王の肉体を作り上げていくの』
新たな肉体を……作る?
『あなたを起点として、ね。ガルダ』





