No.53 それはさすがに抜き過ぎでは?
「カルカンよ。二月には大切なイベントがあると思わんか? ん?」
「んにゃ? もう節分はとっくに過ぎたのにゃ。周回遅れなのにゃ」
節分は掃除が面倒だという話で豆は投げずに終えたし、何よりラザたっての希望で粒あんにしたので投げることすら出来ず終い。粒あんには賛否が起こりそうだが豆は豆。
しかし問題はそこではない。このままでは妾の女子力がピンチ。
「妾はバレンタインに向けてチョコを作りたいのじゃ!」
「にゃー? 贈る相手も居ないのに何夢見てるのにゃ?」
そう。問題点は贈れる相手が3人しか居ないということ。由々しき問題だ。
「せめて未来の妾のために特訓あるのみじゃ! ちょうど良いことに三種類作れるからのぅ」
「何の三種類にゃ?」
「義理チョコ、友チョコ、本命チョコの三種類なのじゃ!」
カルカンは目を丸くしているが、数は少なくとも妾に手を抜く選択肢はない。
暫く固まっていたカルカンだったが、今度は頻りに首を傾げだした。
「友チョコは分かるけど、義理チョコと本命チョコは一体誰にあげるのにゃ?」
そういえばラザに希望を聞いていなかったことを思い出す。
立ち上がった妾は、隣室の襖を全開にした。
「ラザや。食べたいチョコのリクエストはあるかぇ?」
『う~? アンコがいいござる~』
「餡子は節分のときにたんまり食うたではないか。たまにはチョコもどうじゃ?」
妾の問いかけに子グマのラザは、つぶらな瞳で見つめ返してくる。答えを暫く待つ。
『チョコとアンコが食べたいござる~!』
「あい分かった。何とかするかの」
餡子以外の言葉が出てきただけで充分だろう。
チョコと餡子で作れるお菓子を何か考案してみることにした。
すると、服の裾を背後からクイクイっと引かれたので、襖を閉じて振り返る。
「何か用かぇカルカン?」
「私への友チョコのリクエストは聞かないのかにゃ?」
アホの子は自分が友チョコを貰える身分か何かと勘違いをしているようだ。
「お主には義理チョコなのじゃが、要望があるのならゆうてみぃ」
「私はブランデー入りチョコが良いのにゃ! それに……」
何か追加で要望があるのかチラチラと上目遣いをしてくるカルカン。
正直あざとさにイラっとするから、尻尾で示して先を促した。
「できればチョコレートと生クリームとココアパウダーを抜きだと嬉しいにゃ」
「ふむ。検討しよう」
要望は出揃った。
ネットで調べつつ、必要な材料を電話注文していく。
機械式駐車場のように二階を入れ替え、特設キッチン部屋に切り替えた。




