No.51 パターならギリ
「カルカン……カルカンや」
「もう、何なのにゃ? 私は帳簿のチェックで忙しいのにゃ。あー、忙しいのにゃ」
妾が下手に出ているのに、カルカンは何やら財源の捻出で忙しいとかで最近は特につれない。
今も苦手な計算をしながら残り予算と向き合っているようだ。
「のぅ、そこは計算間違っておるぞ。それからこっちは減価償却じゃろうに」
「んにゃ? 助かったのにゃ。……で、何か用事があったのかにゃ?」
妙にカルカンの声と表情が優しくなった。
その顔には「手伝って欲しいにゃ」と書いているようにも見える。
「計算に関しては手伝ってやろうて。ほれ、それを貸さんかぃ」
「恩に着るのにゃーーー」
……と言う訳でカルカンの計算ミスを軒並み修正し、資料をほぼ全直しした。
二人してお茶を淹れて一息入れる。
「ヨウのおかげで早く終わったのにゃ。用事は私に手伝えることにゃ?」
「最近ちょっと運動不足が気になるのじゃ。それでアクティビティを追加したいのじゃが……」
言いかけて迷う。
さきほどずっと帳簿を見ていて気付いたが、この部屋の管理はずっと赤字だ。
カルカンが任されている予算に対し、使い込んだ金額はおよそ10倍。
どこからその金額を捻出しているのか不明だったのだが、先日名刺を貰った男に高額の借金をしている。
だが、カルカンは妾の懸念を他所に話を盛り上げ出す。
「アクティビティにゃ? 私もちょっと運動したいと思ってたにゃー。キャットウォークとかお勧めにゃ」
「妾はそんなにジャンプ力とか無いからのぅ」
「ならボルダリング……クライミングはどうにゃ?」
小さくなった時に絶壁に絶望した記憶が蘇る。
妾は小さく首を振った。
「妾はクライミングも出来ぬ。消えないトラウマがあるのじゃ」
「そうなのにゃ? でも屋内で出来るスポーツは少ないのにゃ」
そう。この二畳間でやれるスポーツはない。さきほどからカルカンの提案も上方向に伸ばす類のスポーツだったのは、狭さを感じてのことだろう。
「広大なスペースでやれるスポーツに憧れるのじゃ。例えばゴルフとかのぅ」
「クラブを振り回すスペースがないのにゃ。んにゃ? パターゴルフだったらいけそうな気がするにゃ」
尻尾と耳をピンと立てたカルカンが自信ありげに提案してきた。
妾も顎に指を当てて意識高い系女子の雰囲気を醸し出しながら検討してみる。
「……ありじゃ」
「なら用意するのにゃー」
いつもなら男たちが現れて用意するところなのだが、妾はつい余計なことを口走ってしまう。




