No.11 世界の理? それよりもゲームを!
「ミルクスタウトはマイナーではない黒ビールなのにゃ。仕方が無いから説明するにゃー!」
詳しく話を聞いてみると神界は平和そのものらしく、長いこと問題が何も無かった。そこに妾の母にあたる闇の神が何やらとんでもないやらかしをしてしまい、対応をしなければならなくなった。平和ボケしまくっていた神界の連中は、互いに担当を押し付け合ったそうだ。
そこまで語ったカルカンがグッと胸を張る。
「そこで下界を良く知っていて、且つ、一番若い私に白羽の矢が立ったのにゃ!」
「あい分かった。ようは面倒事を押し付けられた訳じゃな。して妾を封印せねばならぬ理由は?」
カルカンはキョトンとして、目を数度瞬かせた。
なんだかとても嫌な予感がする。
「聞いてないのにゃ。不思議なこともあるにゃー」
視線を反らすカルカン。とても怪しい。
妾は一つ咳払いをして、正座でカルカンに向き合った。
「きちんとその辺りを説明せい。怒らないでやるから。そうでないと妾も封印に納得できんのじゃ」
「まったく、ワガママなのにゃー」
今のはちょっとイラっとした。神でなければグーで顔面を殴りたい。
カルカンは伝心という神の権能を使って諸々を直接脳内に共有してくれた。
「……のぅ、カルカンよ」
「なんにゃ? 取り合えずビールを追加発注するから後にするのにゃ」
ダメだ。この酔っ払いに何を言っても詮無きこと。
一先ず整理してみる。
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・母に当たるヨーコは寿命を持たない不死の存在。
・にも関わらず、何故かは知らんが身籠って妾を出産。
・新たな命を生み出せるのは、命の終わりを持つ種族だけ。
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そのルールを破ってしまったから法則の男神が激おこらしい。
ちなみに母の力の影響で妾も不死の存在でありつつ、次の命を育めるそうだ。
減らないのに増やせる。だから将来的に魂が枯渇する事態になるとのこと。
「世界の魂の総数は増やせんのかぇ?」
「ぷしゅる~、うまーー、うぃっく。なんにゃー? 魂は上限があるにゃー。IPアドレスみたいな物なのにゃー」
「ふむ、神の中で魂は随分とやっすい扱いなのじゃな」
酒瓶を抱えて横になり始めた猫とは、もうまともに会話できそうにもない。
でもこれ、妾が子を宿さなければ済む話では無いのか?
母が前科持ちなゆえ、信用して貰うのが難しいことは分かる。だが、大人しく封印されてやる義理もないし、そもそもすぐに魂の枯渇ともならないだろう。
……と、言う事は。
「よし、まずはゲーム三昧じゃな!」
妾が気合いとゲーム機の電源を入れたとき、カルカンの様子が急変した。




