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私の乙女を奪って下さい ~ 僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い ~  作者: 春原☆アオイ・ポチ太
最終章 アリア ~僕と晴希の愛の軌跡~
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79話 幸せを運ぶ福音

 ― チャペル ―


 今までリハーサルを繰り返し、何度もイメージトレーニングもして来たつもりだったけど……いざ本番を迎えると、途端に緊張で足が竦んでしまう。


 そんな自分自身が不甲斐なくて……

 酷く情けなかった。


「そんなに緊張しなくても平気だよ、直樹さん。練習通りにやれば、大丈夫だから……ねっ」


 そんな中、僕を窮地から救ってくれたのは晴希の笑顔だった。その太陽の様に明るい笑顔で励まされると、僕の心は少し軽くなった様な気がした。


 すると晴希は窓から空を見上げながら……


「お祖父ちゃんやお母さん……直樹さんのお父さんも見に来てくれてるのかな?」


「うん、きっと見に来てくれてるよ」


 さっきまでの不安は吹き飛び、亡くなってしまった父さん達に、精一杯の晴れ姿を見せようと、背筋伸ばしながら意気込んでいると……


「では、新郎様。そろそろご準備を……」

「はい」


 スタッフに連れられて、僕は入口の大きな扉の前に立った。綺麗な装飾の施された扉は、まるで異世界への入口の様な重厚感があり、僕の心にも緊張が走る。


【それでは新郎入場です。皆様、温かい拍手でお出迎え下さい】


 パチパチパチ……


 目の前の扉が開くと、目の前には僕達を祝うために駆け付けてくれた人達がいた。


 この幸せな瞬間を一歩、また一歩と……

 噛み締めながら僕は歩いた……


 思い出したのは僕達の始まり……

 雨の日の交差点で僕達は……


『すみません。僕がぼーっとしてたから……お怪我は無いですか?』

『はぁはぁ……大丈夫です。私の方こそ急いでて、すみません。えっ……どうして?』


 女子高生の晴希と三十路フリーターの僕……

 世間から見れば不釣り合いだったかも知れない……

 初めは距離を取っていた僕も……


『ごめんな、晴希。僕に勇気が無くて……』

『良いんです。私が一方的に好きになってるだけだから……グスッ』


 次第に晴希へ引かれてゆき……

 気付けば、恋に落ちていた……


『一度ならず二度までもハルに手を出しやがって……後悔しても遅ぇからな』

『いい加減にしてくれよ……僕達は真剣なんだ。晴希の事が本気で好きなんだよ。もう僕達の恋路を邪魔はしないでくれよ』


 晴希を巡って起きた夏稀との衝突も……

 今では良い思い出だ……

 夏稀が女性だって知った時には……

 腰を抜かして驚いたのを覚えている。


『例え直樹さんが亜紀先生の事を選んだとしても、きっと応援してあげられるから……私の事は気にせずに、ちゃんと好きな人を選んで欲しいの』

『晴希?』


 亜紀との出会い……

 僕の勘違いで、少し浮気もしてしまったけど……

 やっぱり、晴希の事が好きで……


『僕はやっぱり、晴希の事が好きなんだ。こんな僕で良ければ……付き合って下さい』

『はい……宜しくお願いします』


 僕達は……交際を始めた。


【続きまして、新婦入場です。皆様、温かい拍手でお出迎え下さい】


 パチパチパチ……


 真っ白なウェディングドレスを纏った晴希にライトの光が当たるとキラキラと輝くグリッターと優しいシルクの艶めき……この世界の誰よりも綺麗で晴希は見る人全てを魅了している様だった。


 一歩、また一歩と、歩みを進める晴希は……

 美しくも儚く、それでいて凛としていて……

 満開の桜の様に咲き誇っていた……


 思い返せば、僕達の人生は……

 平坦な物では無かった……


『私と……別れて欲しいの』

『えっ?』


 婚約者だった冨幸との因縁……

 僕達を引き裂こうとしたお祖父さんとの確執……

 僕に危害が及ぶ事を恐れて……

 晴希は別れを告げて来た……


『だからね……もう私には関わらない方が良いの。私、直樹さんまで不幸にちゃったらって思うと……グスッ』

『良い訳、無いじゃないか。それじゃ晴希があんまりにも……可哀相だ』


 それでも、僕は晴希を諦めなかった……

 諦めきれなかったんだ。


『晴希……僕と結婚しよう』

『直樹さん……うぅぅ……ありがとう』


 記憶を失った晴希……

 数多の苦難を乗り越えて……

 今、この瞬間を迎える事が出来た。


 僕の横まで来た晴希は、満面の笑みで腕を回すと……共にバージンロードを歩み進めた。


 僕は、この太陽の様な晴希の笑顔が好きだった。


 この小さな太陽が……

 いつまでも輝いていられる様に……

 僕は、晴希を幸せにすると決めた。


「新郎『直樹』 あなたはここにいる『晴希』を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、妻として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」


「はい、誓います」


「新婦『晴希』 あなたはここにいる『直樹』を、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し敬い慈しむ事を誓いますか?」


「誓います」


【それでは、これより指輪交換を行います】


 僕は小さな指輪を手に取ると、プルプルと震える手を抑えながら晴希の細い薬指へとはめた。ベール越しに見つめる晴希が嬉しそう笑うと、僕も自然と笑みが溢れた。


 今度は晴希が僕の薬指へと指輪をはめると、僕の笑顔に晴希が微笑み返してくれる。


 結婚証明書に、それぞれの名前を書いた僕は、壇上で向かい合うと……静かに晴希の顔に掛かるベールを優しく上げた。


 その瞬間、世界から音が消え……

 見えているのは晴希の顔だけだった。


 優しく微笑んだ晴希を見て僕は思う……

 今が人生の最上の瞬間なんだと……

 

「晴希……愛してるよ」

「私もだよ、直樹さん」


 チュッ


 パチパチパチ……


 誓いのキスを交わした僕達は、皆から祝されながら外へと出た。空は快晴……まるで僕達を祝福してくれているかの様であった。


 晴希に引っ張られる形で、高台まで進むと僕達は、ウェディングベルの手綱を掴みながら祈る……


「じゃあ、直樹さん。せーので引っ張るよ」

「うん……せーの」


 カラーン……カラーン……カラーン……


 一回目は、僕達の未来の為に……

 二回目は、家族への感謝の為に……

 三回目は、全ての人の幸せの為に……


 僕達が、幸せの祝鐘を鳴らすと参列者達が、花道を作ってくれていた。その手には小さな花とリボンが握られている。


「おめでとう!!」

「幸せになってね」


 軽快な音楽と共に、僕達が歩みを進めるとカラフルな花の雨が、祝福の言葉と共に降って来た。晴希の横顔を見とれていると急に目が合ってしまい、はにかむ姿に、僕の心はトキめいていた。


 僕達の通った後には、綺麗な花の絨毯が広がっていたのだが、その中に数枚……


「あらっ、嫌ですわ。フラワーシャワーの中に、こんな花が紛れてるなんて……クレーム物ですわよ」


 天音の手に握られていたのは、なんと黒薔薇の花弁だった。

過去描写

※二人の出会い 『1話 ソウルメイト』

※直樹の葛藤  『12話 ストロベリーロマンス』

※夏稀との衝突 『19話 クラッシュオーバー』

※亜紀との二股 『40話 エディセミネイティング』

※愛の告白   『42話 ドーニングフルムーン』

※晴希の別れ話 『48話 ミスティウォール』

※イブの夜   『51話 タースティレイク』

※プロポーズ  『72話 エスケープゴート』


※黒薔薇の花言葉

『恨み』『憎しみ』『貴方は私の物』

(永遠の愛って意味もあるそうですが、ネガティブなイメージのが強いです)

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