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私の乙女を奪って下さい ~ 僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い ~  作者: 春原☆アオイ・ポチ太
最終章 アリア ~僕と晴希の愛の軌跡~
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78話 晴れ空に掛かる暗雲

「ご機嫌よう、ハルお姉様。ドレスお似合いですわよ、3号の方は……まずまずですわね。二人とも、ちょっとだけお時間、宜しくて?」


「もっ……もう、3号は止めてくれよ」

「天音ちゃん、今日はありがとうね」


 僕を訪ねて来たのは、なんと天音だった。披露宴の司会を買って出てくれていたのだが、何かあったのだろうか?


「お二人に祝電の内容確認を、お願いしようと思ってたんですの」


 祝電とは、結婚式に参加出来ない時にお祝いの場で送られる電報の事だ。既に何通か届いている様だが……


【草原君 ご結婚おめでとうございます。日頃から笑顔の接客を心掛けてる草原君なら、笑顔溢れる結婚生活を築いていけることでしょう。幸せな結婚生活になるよう心から祈っています。倉本 賢二】


「これ、店長からだ。今日、娘さんの結婚式と重なっちゃたって言ってたから祝電嬉しいな」


「ふふっ……良い店長さんですわね」


 そして、次の祝電の紙を開くと何故か天音が固まってしまった。その衝撃の内容とは……


【草原君 晴希ちゃん ご結婚おめでとう。あとは天音、適当にアドリブで頼む 慶恩寺 隼人】


「もう、お父様ったら……」


 海外事業が忙しく、式に参列出来ない事もあり、祝電を送ってくれた様だが、そのあまりにも杜撰(ずさん)な内容に内心、呆れている天音だったが……僕達は天音の反応を見て笑っていた。


 そして、最後の祝電は……


【お前らが結婚しようが勝手だが、俺を選ばなかった事を一生後悔させてやるからな。慶恩寺 冨幸】


「…………」

「…………」


「こんなの却下ですわ。大体、招待状も出していないのに、こんな電報だけ送って来るなんて、非常識にも程がありますわよ」


 冨幸からの祝電があまりに酷すぎて、僕達は固まっていたが、身内の天音だけは手を握りしめ、怒り心頭の様子だった。



 ― ゲストハウス ―


 着替えを済ませた僕達が、ゲストハウスまで挨拶に向かうと、真っ先に声を掛けて来たのは母だった。


「晴希ちゃん、素敵よ。私、嬉しくって涙が……」

「母さん……泣くの早い過ぎだろ」


「今日から草原家の一員となりますので、末永く宜しくお願いします」


 既に涙でボロボロの母に晴希はお辞儀をすると、家族になる喜びを共に分かち合った。


 すると今度は……


「ふふっ……晴希ちゃんも、直樹さんも素敵ですね。二人の未来に幸多からんことを願っています」


「亜紀先生だ。今日は来てくれてありがとう」

「亜紀さん……ありがとうな」


 晴希に取っては恩師、僕に取ってはお見合い相手だった亜紀が、こうして祝ってくれる事に僕達は感謝していた。


 陰ながら僕達も亜紀の幸せも祈っていた。


 その後は数少ない親戚達に声を掛けて回ったのだが、夏稀達や中年童貞の集い(ファントムグリフ)のメンバーがまだ来ていない事に気付いた。


 バタン


 すると突然、誰かが勢い良く入って来た……夏稀だ。鮮やかな青いドレスを身に纏っていたが、その左半分は血や泥にまみれており、腕には擦傷が見える。


「おい、ナツ。どうしたんだよ、その怪我」

「やだぁ、腕から出血してるじゃない」


「小湊さん。消毒するから、こっち来て……」

「桐月先生、すみません」


 夏稀は今日、政斗と一緒にバイクで会場まで向かっていたらしいのだが……突然、ブレーキが利かなくなって、ガードレールに突っ込んでしまったらしい。


「政斗の奴は、俺を庇って……だから、今日は来れない」


 どうやら政斗に意識はあった様だが出血が酷く、救急車で搬送されるのを見送ってから、夏稀はココまで走って来たらしい。


 ピピピ……


 亜紀が夏稀の手当てをしていると、今度は僕の電話が鳴った……どうやら相手は、中年童貞の集い(ファントムグリフ)の水嶋の様だ。


「ごごご……ごめん、草原君。たたた……大変な事になっちゃったんだ」


「?」



 ― 数時間前 ―


「ぜぜぜ……全然、来ないですね」

「安倍さん、こんな大事な日に寝坊でござるか」


 受付の城崎と不参加の佐武を除き、『中年童貞の集い(ファントムグリフ)』の残りのメンバーは待合せをしてから、会場入りするつもりでいた様だが、時間になってもリーダーの安倍が姿を現さず痺れを切らしたメンバー達は……


「電話にも出ないだにね。もう時間が無いから、家まで迎えに行くだによ」


 このままだと、挙式に遅れてしまうと3人は阿倍の家へと向かったそうだが、インターホンを何度、鳴らしても安倍は出て来なかったらしい。


 すると……


 ガチャ……


「鍵が開いてるでござるよ」

「あっ、土井君。かかか……勝手に入っちゃ……」


 常識知らずの土井が扉を開けると部屋に入ってしまう。そして、寝室に寝転がる安倍を、発見した土井が声を掛けると……


「安倍さん、二日酔いでござるか、早くしないと式に遅れるでござ……安倍さん!?」


 なんと安倍の周りには血溜まりが出来ており、意識を失っていた。その腹部にはナイフが深々と刺さっていた様だ。


 ・

 ・

 ・


「いいいっ……今、びびびっ……病院に搬送中ででで……」


 腹部を刺された安倍は、意識不明の重体で現在は救急車で搬送されているらしい。


 何でもあれから佐武を説得しようと奮闘していた様で何度も衝突していた事。腹癒せに襲われた可能性もあるらしく、警察には通報した様だが……


「はい……分かりました」


 既に警察は重要参考人として、佐武の捜査をしているらしいが、恨みの根源である僕を襲いに来る可能性もある為、警戒して欲しいとの事だった。


 ――安倍さん……大丈夫かな?


 人生最良の日に起きた悲劇、不安な気持ちが無いと言えば嘘になるが、この日の為に準備をして来た僕達に……後戻りする気は無かった。


 スタッフへ外部からの侵入者を警戒して貰う様にお願いすると、僕は挙式に向けて準備を始めた。

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