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私の乙女を奪って下さい ~ 僕と晴希の愛の軌跡 731日の絆と58年の想い ~  作者: 春原☆アオイ・ポチ太
第五章 セレナーデ 〜巡る季節と紡いだ絆〜
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69話 コラボレーショニスト

和訳『陰の協力者』

 スキー場から帰宅した後も、晴希の悲しそうな顔が忘れられず、僕は頭を悩ませていた。



 ― 翌日 ―


「おっす、草原さんって……何だよ、そのロボットみたいな動きは、馬鹿にしてんのか?」


「いや、全身筋肉痛なんだ。ナツこそ大丈夫なのか」


 案の定、普段から運動をしていなかった僕は全身筋肉痛だった。体には力が入らず、無意識にプルプルとしてしまう……


「普段、運動不足だからだろ」

「うーん……返す言葉もない」


 蔑んだ目で睨み付ける夏稀だったが、正論なだけに言い返す事が出来ず、僕は苦笑いをしていた。


「ところでハルと何かあったのか。お昼は、あんなに楽しそうに話してたのに、帰る頃には二人とも黙り込んでてさ」


「えっ? いや、疲れてただけだよ。晴希もきっと察してくれて……」


 咄嗟に言い訳をしたのだが、晴希が結婚する事を知ってしまってからは、すっかり気を落としてしまい……ギクシャクしてしまっていた。


「なら良いけどよ。ハルの記憶は戻りそうか?」

「……分からない」


 確かに記憶の根底には、この数ヶ月間の思い出が眠っている可能性は大いにあったが、記憶を呼び起こす方法までは思い浮かばず、あの傲慢で最悪な冨幸と籍を入れる事になってしまうと思うと気持ちが深く沈んでしまった。


 一縷の望みを掛けて、冨幸の家にも何度か足を運んでみたが当然、門前払いされる始末……そして、寒さを越え初春を迎えた頃だった。


「はい、もしもし草原です。あっ、亜紀さん。どうかしましたか?」


「今度の週末、直樹さんは予定空いてますか?」


 突然、亜紀から電話が掛かって来た……どうやら、お花見の誘いの様だ。晴希の事で躍起になっていた僕は、気分転換になればと誘いを受けたのだったが……



 ― お花見当日 ―


 公園に着くと……


 そこで待っていたのは、亜紀と夏稀と……晴希だった。どうやら僕にサプライズのつもりで、夏稀と共同でコソコソと計画をしていたらしい。


「お久し振りです、草原さん。スノボーの時、以来ですね」


「あっ……あぁ」


 声を掛けて来てくれた晴希に、どこか浮かない返事をしてしまう僕だったが、ここで痺れを切らした夏稀は……


「そんな話は良いからさ、早く始めようぜ」


「それも、そうね。今日は皆さん、お忙しいところ、お集まり頂きありがとうございました。僭越ながら、料理をご用意させていただきましたので……」


「亜紀先生も固いよ。早く、乾杯しよ」


 堅苦しい挨拶に晴希が突っ込むと、亜紀はいそいそとクーラーボックスから飲み物を出し始めた。


「直樹さんはビール、晴希ちゃん達は自家製レモネードで良いかな」


「折角の花見なんだし、俺もビールが良いなぁ」

「まだ未成年だから、お酒は駄目ですよ」


 そこは教師である亜紀……夏稀もちゃんと制御してくれていた。桜の花は八分咲きだったが、とても綺麗で亜紀の手料理を食べながら盛り上がっていたのだが……


「先生の手料理、凄く美味しいです。私の料理なんて、まだまだ足下にも及ばないですね」


「確かに亜紀さんの料理は美味しいけど……春日野さんだって料理は、上手じゃないか」


 晴希を擁護する僕がだったが、何故か目を丸くして驚いていたのは晴希の方だった。


「あっ、あれっ……私、草原さんに料理を作った事、ありましたっけ?」


「えっ? あっ、ごめん。僕の勝手な妄想だったかも知れない」


 直ぐに否定した物のバツの悪くなった僕は俯いたまま、動けないでいた。すると、空気を察してくれたのか亜紀が……


「桜……満開には少し早かったみたいね」

「満開になると混むし、俺はこれぐらいが好きだな。ハルはどうだ?」


「満開の頃には、落ちてる花弁も多いから、私も今ぐらいが一番、好きかな。それに……やっぱ、何でもない」


 儚く笑う晴希は、少しだけ寂しそうな目をしていた。もしかしたら、満開の頃には冨幸との結婚も控えていたからかも知れない。


 ――晴希を救いたい。でも僕には……


 男性嫌悪症(ミサンドリー) が発症してしまう以上、僕が晴希を幸せにする事は出来ないと考えてしまい、己の運命を呪いながらやるせない時間だけが、ただ続いていた。



 ― 数日後 ―


 アルバイトから帰宅中、誰か跡を付けられている様な感覚に駆られた僕は、警戒していた。思い返すと今日だけではなく、この一週間ぐらい、ずっと視線を感じている。


 ――まさか、ストーカー?


 僕は路地に入った振りをして電柱の影に隠れてみる事にしたのだが、現れたのはなんと小柄な女性だった。


「もう……見失ってしまいましたわ」


 なんと、それは冨幸の妹『天音』だった。何やら僕を見失った事に酷く腹を立てていた様だが、そっと近付き肩を叩くと……


「きゃっ……ちょっと、驚かさないで下さいます」

「僕に何か用なの?」


 僕の質問に対して、不敵な笑みを浮かべた天音は、高笑いをすると……


「ふふふっ……喜びなさい。貴方を恋人3号に認定して差し上げますわよ」


「へっ?」


 突然の恋人発言に、理解の追い付かない僕が、口をポカンと開け、頭にはてなマークを浮かべていると……


「でも、勘違いしないで下さいます。別に貴方の事が好きで、恋人認定した訳じゃございませんのよ」


「…………」


 ――好きでもないのに……恋人認定?


 最早、何を言ってるのか分からず、僕が両手で頭を抱えていると……


「もう、察しの悪い方ですわね。ハルお姉様を助ける為に決まってますわよ」


「えっ?」


 何でも天音は、幼少期から晴希と仲が良く、ずっと慕っていたらしい。冨幸の愚行は到底許せる物では無かったが、義姉妹になれるならとずっと我慢して来たんだとか……


「でも、あの日……お兄様はハルお姉様を見捨てて逃げ出しましてよ。私もハルお姉様を逃がそうと手錠のロックを解除したんですが、通信障害で遅くなってしまいましたの」


 ――あの時、手錠が外れたのは、この子のお陰だったのか。


 天音は、小さく頷くと現状について語り始めた。


 何でも晴希は今、高校生活を終え、メイド小屋と呼ばれる御屋敷で花嫁修業に勤しんでいるんだとか……


「屋敷の警備は、とても厳重でしてよ」

「そんな僕は、どうしたら……」


 狼狽える僕に対し、天音は手を腰に当てると、妖しく笑いながら……


「目に物を見せて差し上げますわ。さあ、私と共にハルお姉様を奪還しますわよ」


「えっ……ええっ!?」


 突然の申入れに戸惑いつつも、僕は天音の企てに巻き込まれて行くのだった。

※晴希の料理上手エピソードは『4話 モーニングロッキー』『44話 ユニバーサルグラビテーション』を御覧ください。 

※晴希の男性嫌悪症(ミサンドリー)は『26話ツイストリング』を御覧ください。

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