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そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~【連載版】  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)
【第一章】おなかいっぱい食べたいな

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6. 計画ってどうやって立てるの?

 ゴミ処理お試し隊は、リーダー格のボビー、お調子者のテオ、天真爛漫なコリン、、しっかり者のエラ、そしてアタシの五人だ。五人で集まって、計画を立てようと空いてる教室に入る。


「それで、どうすっかな。ゴミ処理に必要なものって、なんだ?」

 ボビーが言う。誰もなにも言わない。ううん、言えない。だって、さっぱりわからないもん。


「どうしよう。木箱持って歩けばいいのかな」

「重くね?」

「ぼく、くたびれちゃうかも」

「王宮のどこに行けばいいのかな」


 途方に暮れるって、こういうことを言うんだってわかった。困り切ってるアタシたちのところに、救いの神が現れた。


「よお、君たち。パイソン公爵とピエールさんに頼まれてやってきたよ。ゴミ処理隊なんだって? 段取りを一緒に考えようか」

「ジョーさん」


「助かったー。オレたち、始まってないのに諦めるところだった」

「そうだと思った。こういうのは難しいよ。働いたことのある大人がいないと、どこから手をつけていいかわからないと思ってね」


 ジョーさんが輝いて見える。なんて、頼りになる、素敵な大人なんだろう。


「でも、ジョーさん大丈夫? 忙しいよね?」

「うん、大丈夫。記事の目途はたったし、パイソン公爵とつながれたから編集長が喜んじゃって。パイソン公爵からの依頼は最優先で対応しろって言われた上に、臨時ボーナスまでもらった。だから、好きなだけ頼ってください」


「かっけえ」

「うんうん」

「尊敬しちゃう」

「憧れちゃう」

「ジョーさんみたいな大人になりたい」 

「まあまあ、みんな。もっと褒め称えてくれたまえ」


 ジョーさんのドヤ顔がおもしろくて、みんなで笑う。ジョーさんが真面目な顔で黒板の前に立った。先生みたい。


「いくつか、確認。孤児院でゴミ処理はどうしてる?」

「うーんとね、裏庭の穴にぶち込んでる」


「どんなゴミがある?」

「リンゴの芯とか。決闘ごっこで使った棒とか」

「料理長は野菜の皮とか捨ててるみたい」

「たいした量じゃなさそうだね。王宮ではどんなゴミがあると思う?」


「えーっと、庭がいっぱいあるんだよね。だったら葉っぱとか?」

「いいね。他には?」


「院長部屋からはたまに紙のゴミが出てたよね。王宮も紙のゴミがありそう」

「いい目のつけどころだ。たくさん出ると思う。他には?」


「王宮のキッチンからはいっぱい野菜の皮が出そう」

「そうだね。他には?」

「もう思いつかない」

「よし。ではいったん、庭ゴミ、紙ゴミ、キッチンゴミ、の三つとしておこう」


 ジョーさんが黒板に書いた。読みやすくてキレイな字だ。


「じゃあ次に、当日のことを考えてみよう。朝起きて、朝ごはん食べて。どんな服を着る?」

「動きやすい服?」

「そう。それだけ?」

「王宮だったら、ボロボロの服はダメなんじゃないかな」

「そう。動きやすくて、清潔でちゃんとした服がいる。持ってる?」


「アタシはこの前のワンピースがあるけど。あれでゴミ処理したらおかしいよね」

「もったいない。泥だらけになるぜ」

「そう。仕事着とオシャレ着は、別物だ。では、これはみんなの分を買わなければいけないね」


 ジョーさんが、動きやすい仕事着、と書いた。そっかーって、みんな頷いてる。何がわからないかも、わからなかったのに、今ひとつずつ見え始めた。なんだか、ワクワクする。


「帽子と靴もいるかな。さて、出発だ。どうやって王宮まで行こうか」

「歩いて?」

「歩いてか。君たちの足だったら一時間ぐらいかかるかな」

「王宮に着くまでにヘトヘトになっちゃうよ」


 コリンが情けない声で言う。


「そう。疲れて、肝心の仕事ができないと、意味がない。どうしようかな」

「ピエールさんの馬車に乗せてもらえないかな?」

「それはひとつの案だね。他に方法はないかな?」

「乗合馬車?」

「それもありだね。他には?」

「わかんない」


 そうやって、具体的に想像して、ああでもないこうでもないと話し合い、いくつか案ができた。


「じゃあ、これでまとめて、ピエールさんと話して、それからパイソン公爵に提案して、予算をもらって、って感じかな」

「ああ、疲れた」

「頭が痛いよ」

「もうイヤになっちゃった」

「おなか減った」


 アタシたちがぐったりしながら弱音をはいていると、ジョーさんが手を叩いた。


「君たち、よくがんばった。ご褒美があるよ。パイソン公爵が、パン代の予算はなんとでもするから、焼きたてを毎日食べられるようにしてあげなさい、だって。大量に買ってきてるから、全員で食べよう」


「全員って?」

「この孤児院の全員だよ。百個以上買ってきたから、ひとり二個ずつぐらい食べられるぞ。前祝だ」


「キャー」

「うおぉぉぉぉ」

「やったああああ」


 アタシたちはジョーさんに飛びつく。


「お礼はパイソン公爵にしないと。嬉しいけどさ。さあ、行くぞ、みんなが腹ペコで君たちを待ってるぞ。さあ、走れー」

「いええやああああ」

「うおっしゃあああ」

「わーーーい」


 疲れてたのなんて吹っ飛んだ。走って食堂に行くと、みんながソワソワして座ってる。アタシたちが来ると、歓声が上がった。


「やっときたー」

「ずっとまってたあああ」

「おなかへった。はやくはやくぅ」


 みんなの両手に、フワフワの丸パンがふたつずつ、大切に置かれていく。


「いい匂いがする」

「食べていい?」


「お前ら、先にお礼を言えよ。聞こえないと思うけど、パイソン公爵、予算をありがとうございます。ピエールさん泣きついてくれてありがとう。ジョーさん計画を一緒に作ってくれて、そんでもってパンをたくさん買ってきてくれてありがとう」

「ありがとう」


 ボビーに続いて、みんな大きな声で叫んだ。見守っているピエールさんがバッと後ろを向く。肩が揺れてるから、泣いてるのかも。メガネの奥でジョーさんの目がパシパシ瞬いてる。


 パンをひとつ机に置いて、ひとつを両手で持つ。真ん中に親指を立てる。パリッとした皮を簡単に突き破って、中に届く。ほんのりあったかい。そして──


「ふわふわあああ」

「ほんとにやわらかいよ」

「つめがいたくなかった」


 アタシ以外も、大騒ぎ。今までのパンが石だとすると、これはタンポポの綿毛。力を入れなくても、半分に割れる。ふわんっと。ふわんって。これ、夢で見た感じとおんなじだ。ひと口分をちぎって、口に近づける。香ばしい匂い。口に入れる。外はパリッ、中はフワッ。ああ。


「うん」

「うんうん」

「これかあ」

「これがフワフワパンかああああ」

「パイソン公爵、ピエールさん、ジョーさん、ありがとおおお」


 叫んで、食べて。忙しい。口の中に突き刺さらないパンは、とっても優しい噛み応え。いつまで噛んでもアゴが疲れないし、いつの間にか口の中から消えていく。大切にひと口ずつ、ゆっくり食べた。神さま、ありがとう。三人に会わせてくれて、ありがとう。フワフワパンをみんなと食べさせてくれて、ありがとう。おいしいパンを、ありがとう。


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― 新着の感想 ―
こんなん…こんなん…ピエールさんやジョーでなくたって泣くやつじゃん…!! ピエールさんこの夜は思い出して何度も泣くの決定じゃん…!!タオルぐしょぐしょ第二弾じゃん…嬉し涙で良かったねぇ…(;∀;)
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