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そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~【連載版】  作者: みねバイヤーン(石投げ令嬢ピッコマでタテヨミコミック配信中)
【第三章】おいしいお菓子を食べたいな

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21. 毒消しアクセサリー

 部屋に戻って、勇気を出して声をかける。

「あの、みんなでクッキーを食べませんか?」


 三人が一斉に振り向く。すごく勢いがあったので、ちょっと怖くて後ずさってしまった。


「素晴らしいお誘いですわ。嬉しいですわ」

「甘いものが食べたいなと思っていたところです」

「クッキー大好きですのよ」


 四人で窓際の丸テーブルの席につくと、どこからともなくメイドが現れてお茶をいれてくれる。


 お皿の上にクッキーを並べて、はたと気がつく。

「あ、忘れてました。毒見とか必要ですよね」


 そうだった。気軽に買い食いできないお嬢さまたちだった、この人たち。どうしよう、アタシが食べてみせればいいのかな。すると、ロザムンド様が微笑む。


「お気になさらず。毒消しネックレスをつけておりますから」

「同じく。私は毒消しブレスレット」

「わたくしは毒消しイヤリングですわ」


 三人が毒消しアクセサリーを見せてくれる。


「さすがです。すごいです。便利ですね」

 アタシがすっかり感心していると、三人が顔を見合わせている。


「サブリナ様は毒消し魔道具をお持ちではなくて?」

「だって、お高いんでしょう?」


 アタシが思わず本音を言うと、三人は目を丸くして固まった。


「あの、もしよろしければ、わたくしのをお譲りいたしますわ」

「いえ、そんなわけにはいきません」


 ロザムンド様の申し出を即座に断る。ホイホイものをもらって、未来でとんでもないことになっていた。未来では、男性からばかりもらっていたけれども。


「では、我が家の試供品をお貸ししますよ。使い心地を教えていただければ、改善できますし」

「それなら──」


 いいかもしれない。もらうんじゃなくて借りるなら、問題ないかも? アタシの返事を聞いて、ミシェル様が満面の笑みを浮かべた。ロザムンド様が唇をかみしめている。どうしたのかしら。


「あの、どうでしょう。我が家でも毒消しアクセサリーを売り出す予定があります。もしよければ、四つ作って、お揃いにいたしませんか?」

「いいんですか?」


 クリスティーネ様の案って、よくない? なんだか、お友だちみたいじゃない? お揃いのアクセサリーって、憧れるよね。


「クリスティーネ様、とてもいいご提案ですわ。お揃いって素敵ですわ」

「私もお揃いでお願いします」


 ロザムンド様とミシェル様が声を弾ませている。


「クッキーを食べながら、どんな形にするか決めましょうよ」


 クリスティーネ様がクッキーをひとつ手に取り、毒消しイヤリングをアタシの方に向ける。


「手に取って少し待たなければいけませんの。もし毒が入っていたら、イヤリングが光りますわ。万一イヤリングが光ったら、その食べ物や飲み物は口にしません。少しぐらいなら口に入れても、イヤリングが毒を消してくれますのよ」


 イヤリングはもちろん光らない。クリスティーネ様は上品にひと口かじった。


「そのイヤリング、おもしろい形ですね」

「馬の蹄鉄ですわ」


「わたくしのネックレスはヘビの目を模しておりますの」

「私のはトラのしっぽブレスレット」


 ロザムンド様とミシェル様も毒消しアクセサリーを見せてくれた。


「毒消しアクセサリーは家紋にするのが普通なんですか?」

「代々受け継いでいったりしますので、家紋にする家が多いのではないかしら」

「でも、せっかくお揃いで作るんだもの。サブリナ様が好きな形にしましょう」

「ええ、ぜひそういたしましょう。サブリナ様は、何がお好きですか? お花? レース? 動物?」


 三人がアタシに返事をじっと待つ。何がいいだろう。四人でお揃いにするんだもん、特別な形がいいな。手に持ったクッキーを見ながら考える。あ、そうだ、これがいいかも。


「お菓子はどうですか? クッキーとかケーキとか。それぞれが好きなお菓子を選んで、四つをつけたらかわいくないですか?」

「お菓子のチャームを四つつけるということね? かわいいわ。素敵だわ」


「それなら、イヤリングでもネックレスでもブレスレットでも、何にでもつけかえられる。それ、絶対はやると思う」

「うわー、楽しみですわ。なんのお菓子にしようかしら。サブリナ様はどんなお菓子がお好きですの?」


 またまた三人がキラキラした目でアタシを見る。好きなお菓子。たくさんある。夢で見たけれど、まだ食べていないお菓子。王宮のお茶菓子でも出てこなかった幻のケーキ。


「まだ食べたことがないけど、夢で見たお菓子でもいいですか?」

「もちろんですわ」


 三人が身を乗り出す。


「えーっと、三枚のパイ生地の間にクリームとイチゴがはさんであったような」


 口でうまく説明できる気がしなかったので、紙に書いてみる。


「まあ、とてもおいしそうですわ」

「パイ生地とクリームとイチゴ。おいしさが約束されている」

「おいしそうですわ。食べるのが難しそうですけれど。フフフ」

「そうなんです。パイ生地がサクサクなので、上手に切らないとお皿の上がパイ生地まみれになるんです」


 上手に食べられなくて、よく笑われたりバカにされたりしてたっけ。


「サブリナさん、我が家のパティシエにこの絵を見せてもいいかしら? 作れるかどうか聞いてみますわ」

「いいんですか? ずっと食べたいなって思ってたの」


 アタシが紙を渡すと、ロザムンド様が大切そうに受け取ってくれる。ミシェル様が咳払いをした。


「あの、我が家にも自慢のパティシエがいるの。他に食べたいお菓子があったら教えて」

「いいんですか? えーっと、フワッとした丸いパンみたいな生地の中にクリームが入っているの」

「パティシエに相談してみる」


 ミシェル様が絵をしげしげと見ている隣で、クリスティーネ様が小さく手を上げた。


「わたくしにも、お題をお願いいたしますわ」

「はい。ガラスのグラスにクリームやフルーツを積み重ねたお菓子なの。スプーンで食べるの。宝石みたいにキレイだった」

「全力でがんばりますわ。がんばるのはパティシエですけれど」


 四人で顔を見あわせてフフッと笑う。おいしいお菓子、新しいお菓子、楽しみだな。


「孤児院にはパティシエはいないけど、料理長に相談してみます。新しいお菓子を持ち寄って、試食会をしましょう」

「ぜひわたくしも参加させてくださいな」


 いつの間にか、先生が後ろに立ってニコニコしている。


 お揃いの毒消しアクセサリーを作る話が、王族参加の新しいお菓子試食会になってしまった。どうしよう。


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― 新着の感想 ―
か〜〜〜〜わいい。仲良しの女の子たち、和むぅ〜。お可愛らしいお嬢様方(+貴婦人の先生)がお菓子のお話して、キャッキャウフフ。楽園〜。永遠に見てられるぅ〜。
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