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13 攻防

※ 第三者視点

「貴様、いったいどうやって!」


「何のことだ!」


 ジーナは息を切らせてリーザロッテと男との間に身体を滑り込ませる。


「くそっ、人払いの結果が効いていない!? これは急ぐ必要があるな……」


「いったいなんの、くっ!」



 ―――キインっ



 男が突き出した短剣をジーナはとっさに太ももに巻いていた革のベルトから取り出した短刀で弾く。


 甲高い金属音が城内の廊下に響いた。



(重い……)



 ジーナは痺れた手にぐっと力を込めて短刀を握り直す。

 一度刃を交わせばわかる。

 この男はかなりの手練れだ。


「御嬢様、お下がりください!」


 リーザロッテはジーナの言葉に従いジーナたちから大きく離れる。



(このまま人の多いところへ逃げて欲しいところですがそうはさせてくれないでしょうね……)



 ジーナの背中に冷たい汗が零れる。


 こうして駆けつけてみたはいいものの相手の実力はおそらくは自分よりも上。


 自分でこの男を相手にリーザロッテを守り切れるのか。


 一瞬だけとはいえ彼女に生じたわずかな逡巡。


 手練れの男がそんな好機を逃すはずはなかった。



(しまっ……)



 ジーナの隙を突いた男は一瞬で彼女との距離を詰める。


「くうっ!」


 右手に持った短剣はフェイント。


 本命は遅れて放たれた左の掌底。


「もらった!」

「ぐふっ……」

「ジーナ!」


 上半身に叩き込まれた男の一撃でジーナは数メートル後ろに飛ばされる。


「はあっ、はあっ……」

「自分から後ろに飛んだか。なかなかの実力、しかしまだ若い」


 男はじりじりと距離を詰めてくる。


 そんな男を前にしてジーナも少しずつ後ろに下がっていく。 


「貴様が誰かは知らんがあまりお前と遊んでいる時間はない。申し訳ないが退場してもらうぞ」


 男はもぞもぞと唇を動かしぶつぶつと何かを呟いた。



(魔法っ!?)



 男が魔法を発動する直前、ジーナはナイフを取り出し男に投げた。


「おっと」


 男が躱すその隙にジーナは再び男との距離をとろうとする。


「甘いな」

「えっ……」


 その瞬間、男が発動させた魔力弾がジーナの身体を吹き飛ばす。



「今のはまともに入ったな。今度は立てないだろう」


 さっきとは違って、威力を殺せないままジーナは廊下に転がった。


「これで邪魔者は片付いたな」

「あっ……」


 男がギラりと視線を向けるとリーザロッテはその顔を青くさせる。


 どうする、どうしたらいい……。


 そう思いながら男が近づいてくるたびに一歩、また一歩と後ろ向きに後ずさる。



「……待て」


 リーザロッテに迫ろうとした男にフラフラと立ち上がったジーナがそう声を掛けた。


 そして再びリーザロッテの前に立ち、男の前に立ちふさがる。


「しぶとい奴だな、お前の命はどうでもいいがお望みならそこの娘と一緒にあの世へ送ってやろう」



(今度はもたないかもしれない……)



 男の右手に集まる魔力の渦を感じてジーナはそう当たりをつけた。


 余裕を覗かせながらも時間がないのはあっちのはずだ。


 恐らく今度こそ決めにくるだろう。


 この王城でそこまで大きな魔法を使えばさすがに誰かが気付くはずだ。


 少しでも時間を稼ぐことができれば……。


「終わりだ! フレイムジャベリン」


 詠唱を終えた男の手からひと際大きな魔法が放たれる。


 燃え盛る炎の大槍を前にジーナは魔力を集めて魔力障壁をつくった。



(ダメっ、足りない……)



 明らかに魔力の量が違う。


 ジーナは目をつぶり最後になるかもしれないその瞬間を覚悟した。

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