六、➁
12月31日、大晦日、肥後製菓堂山鹿店は最後の日を迎えた。
隼人も最後の勤務日となる。
彼は晴れ晴れとして、妙に落ち着いて朝を迎えた。
いつも通りの勤務といつも以上の接客を心がけ、仕事に取り組む。
あっという間に閉店間近となる。
店の常連である老婆が名残惜しそうに、最後までいてくれて、肥後シリーズの和菓子を箱詰めで買ってくれた。
隼人がレジを打っていると、
「せっかくもうすぐ新年なのに、残念だったね」
と、老婆はしんみり言った。
隼人はスマイルを心がけ、
「はい、そうですね。熊本市内の本店は営業しますので、よろしかったらそちらの方もお越しください」
「アンタも、そこにいくんかい?」
「いえ、私は今日で・・・」
「そうかい・・・」
老婆は気まずい事を聞いてしまったと苦笑いをする。
紙袋に入れた箱詰めのお菓子を受け取ると、
「がんばんなっせ」
と言い店を後にする。
隼人は最後のお客様を、店の外まで見送ると深々と一礼し、
「ありがとうございました」
と、心を込めて言う。
隼人は老婆が暗闇に消えるまで見送り、頭をゆっくりあげると、
「がんばなっせ・・・か」
と、呟いた。




