表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情緒桜城  作者: 山本大介
11/20

四、光①


 猛暑が続く晴天のある日、隼人と夏菜はお互いの不規則な休日を合わせてデートをした。

 熊本市内にある彼女の家まで、朝早く車を走らせ迎えに行き、再び山鹿方面へUターンをする。

 そこから菊池渓谷を目指す。

 いわゆる涼を求めてというやつだ。


 山鹿からしばらく山道を走らせる。

 脇に生い茂る木々の青々とした緑葉の間から、陽光がキラキラと光っている。

 渓谷に近づくと、エアコンを止め、車窓を開ける。

 そうすると、ひんやりとした空気が車内に入り込んでくる。

 夏菜はニッコリと微笑むと、


「気持ちいいね」


「うん」


 隼人も微笑み返すが、その表情にはどこか翳りがあるように夏菜は見えた。

 彼は肥後製菓堂の新しい和菓子を何にするか今だに決めかね、迷っていたのだった。


「どうしたの?ひょっとして例の?」


「う、うん、あっ着いたよ」


 隼人は駐車場に車を停める。

 降りるとそこで夏菜と視線が合い、バツの悪そうな引きつった笑顔を見せた。

 二人はちょっぴり気まずい雰囲気のまま、無言で渓谷に向かった。

 入り口をくぐると、渓谷特有の涼しさが包み込んだ。

 みやげ屋を通り、赤い橋を渡ると、木々によって光が遮られ鬱蒼としている。

 しばらく歩くと登山道のように道が悪くなる。

 時折すれ違う人たちは、ファミリーや風景写真を撮りに来た人、涼みに来た人、お年寄りの方など様々だった。

 だけど半分くらいは隼人達のようなカップルだった。

 思わず隼人は苦笑した。


 肩が触れ合うくらいの狭い道もあり、真下には清らかな水が満々と流れている。

 ドドドドドと轟音が聞こえはじめると、ゴツゴツとした石のある開けた河原にでる。

 そこにある落差の少ない滝が二人の目の前に現れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ