ハムスターの食事姿は可愛いけど、人間でそれをやるのはやめなさい
「モッキュモキュ。モッキュモキュ」
ハムスターの食事風景を見たことがあるやつはいるだろうか。
頬袋一杯に食料を詰め込んで、ほっぺを思い切り膨らませながら食べるあれだ。
SNSの動物動画でたまにバズっているのを見かけるくらいには定番だが、目に入ると気付けば動画の再生時間が終わるまで見てしまう謎の魅力があの食事姿にはある。
癒されるっていうのかな。つぶらな瞳で必死になって食べるものだから、妙な愛嬌を感じてしまうのだ。
庇護欲が刺激されて、つい見入ってしまうわけだが、あれはやっぱり小動物だから素直に可愛いって思えるのかもしれないな。
「モッキュモキュ。モッキュモキュ」
そんなことをふと思ってしまうのは、目の前で小動物と全く同じ食事の取り方をしている人間大の銀髪生物がいるからである。
「モッキュモキュ。モッキュモキュ」
大きく口を開けながら、ハンバーガーを頬張っている姿は正しくハムスターのそれだ。
つぶらな青い瞳はとろけきり、どこか恍惚とした表情を浮かべている。
とても食べているものが税込680円の全国どこでも販売している一般的ジャンクフードとは思えない満足っぷりである。
というか、仮にもお嬢様なのにそれでいいんだろうか。えらい安い舌だなおい。
おばさんが泣くぞ…
「なぁ、そんなに美味いかそれ…」
「ん?もふぃふぉん!ひょうおいひいよこのファンハーガー!」
あ、おいコラ!口にもの入れたまま喋んな!
確かに聞いたのは俺だが、ちゃんと飲み込んでからにしろ。ばっちいだろうが。
そのことを指摘すると、花梨は慌てて口の中のハンバーガーを飲み込もうとしたのだが、
「おべっ!うごっ、げほっ!」
次の瞬間、花梨は盛大にむせていた。
明らかに女の子が出してはいけない声を出してやがる。
「ああ、もう。言わんこっちゃない」
それを目の当たりにした俺は半ば呆れながら席を立つ。
なんつーベタな。ここまでお約束を守られると怒る気も失せるな…ただ、これは仮にもデートのはずなんだがな。
なんでこんな姿を見せられにゃいかんのだ。
「おい、大丈夫か?ほら、とりあえず飲み物飲んどけ」
俺はむせ続ける幼馴染の背中をさすりながら、セットで購入していたジュースを取ると、そのまま花梨に手渡した。
その際背後から身を乗り出す形になったため、実は上から花梨の胸の谷間が見えてしまったりしたのだが、さっぱり興奮出来なかったのはどうしたものか。
今はとにかく落ち着いてもらわないと話にならんから別にいいのだが、このままだと俺は巨乳に反応できない身体になってしまうかもしれない。
いくら美乳派を自称しているとはいえ、健全な男子高校生としてはこれってやっぱりまずいよな…なんか怖くなってきたぞ。
「う、うぇぇ。ありがとうトウマちゃん。優しいね、愛してるよ…」
「そりゃどうも。どうでもいいがよだれ垂れてるぞ。あと口から見たくないもの見えてるからさっさと飲み込んでくれ」
「……うぼえー」
お礼と愛の告白を同時にされたが、この状態で言われてもマジで嬉しくないな。
むしろテンション下がるわ。こんなことって普通あるか?
「飯ですらゆっくりできないとは…」
あれだな、幼児から目が離せない母親みたいな気持ちって言えばいいんだろうか。
大丈夫だろうと目を離した隙に予想の斜め上をいく行動を常に取られるもんだから、一緒にいると気苦労が絶えないんだ。
コイツ、毎回なにかしら突飛なことをしないと気がすまないんじゃないか?
そんなことをつい考えてしまうくらいには、この幼馴染は色んな意味で心配になる。
他人に預けても、果たして大丈夫なんだろうか。
このままだと付き合ったやつは真面目に過労死しかねんぞ…
「もぐもぐ。ごっくん。ぷっはぁ…ふぅ、ねぇトウマちゃん、聞いて欲しいことがあるの」
ようやく口の中のものを飲み込んで落ち着いたらしい花梨が、振り向いてなにやら言ってくる。
えらい神妙な顔をしているが、なんだろう。
ロクでもない予感しかしないんスけど。
「…なにさ?」
「私、もしかしたら取り憑かれてたのかもしれない」
はい、予感的中。
俺の幼馴染、またアホなことを言い出したわ。
投稿遅れてしまい、申し訳ありません




