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神(自称)、調子にのる

「フフフフ。驚いてるねトウマちゃん」


 神(自称)の発言の意味がわからず、なにも言えないでいる俺に、紙袋は笑みを向けてきた。

…いや、実際は表情はわからないんだが、向こう側が透けて見えるというか。

察することができてしまうのは、ひょっとしたらまずいんじゃないだろうか。


「でもそれも仕方ないことなんだよ。私だってこの作戦を思いついたとき、自分で自分が恐ろしくなったからね。まさに天才の発想ってやつだね」


 思い悩む俺をよそに、チッチッチッと指を振りながら、なにやら得意げに神(自称)は語る。

 いや、俺が驚いているのはそっちじゃないんだが。

 半ば呆れながら、とりあえず疑問に思ったことを聞いてみることにした。


「押してダメなら引いてみろ、ですか」


「そう!昨日泡を吹いてるお母さんの介護をしながら、じっくり考えてみたんだ。そしたら気付いちゃったの!」


 なにに気付いたのか知らんが、神(自称)のことだからどうせロクな考えではないなこれは。


「はぁ…」


「トウマちゃんって、素直になれない天邪鬼な性格じゃん?だから超美少女である私の告白にきっと照れちゃって、自分の本当の気持ちに気付くことができないんじゃないかってね。そうでしょ?」


 いや、でしょって言われても…


「別にそんなことは全くないと思うんだが…」


「またまた!照れちゃって!今日ずっと幼馴染のことを意識していたのはわかってるんだから!チラチラ私の方を見てきたのはわかってるんだからね!」


 ビシリと指先をつきつけてくる神(自称)。

 いやちょっと待て。その言い分には異議しかないぞ。


「おい待て。逆だ逆!意識もなにも、それは花梨が見てきたからだろーが!」


 朝からずっと見てきたうえにストーキングまでしてきたのはコイツのほうだ。

 なんで俺のほうが花梨を気にしていたことになる。

 事実を勝手に上書きされたら、こちらとしてはたまったもんじゃないんだが。

 俺が慌てて否定すると、神(自称)は何故か鼻で笑った。


「フッ、ほんとにトウマちゃんは素直じゃないなぁ。ツンデレなんだから。このこのー」


 そういうと神(自称)は俺の脇腹を肘でグリグリとえぐってくる。

 地味に痛いしウザったいしで、ここにきて俺の怒りのボルテージは、一気に高まりつつあった。


「…………」


「まぁそういうわけだから、これで全部解決だね!さぁ、自分の気持ちに気付いた三雲冬真よ!今すぐ幼馴染に告白し、付き合い始めるがいい!」


「…………おい」


「さぁ、ハリーハリーハリー!」


 …………ブチリ。

 俺の中で、なにかが切れた。


「こっくはく!こっくは…あれ、トウマちゃん。なんでそんなに顔しかめて…ていうか顔怖…え、もしかしておこ、いだだだだだだ!!!」


 調子に乗り始めた神(自称)の紙袋の下から俺は手をつっこむと、紙(自称)の頬があるらしい部分を思い切り引き伸ばしていた。


「調・子・に・の・る・な!」


「痛い痛い!ごめんなさいトウマちゃーん!」


 夜の我が家に、またもや神の叫びが轟いたのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この話は、一体どこに向かおうとしているんだろう・・・。
2021/05/18 07:30 退会済み
管理
[一言] 短編とは違う意味で目の部分が濡れて恐ろしいことになりそうですねw
[良い点] どうしよう...花梨がこ〇すばのア〇アに見えてきた....
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