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12-03 2/3 白き来訪者

 夕方が忙しさのピークです。

 といっても祝日なので客足もゆるいものでした。

 それをだらだらと乗り越えると、また店はうら寂しく静寂という閑古鳥が鳴き出していました。


 しかしアインスさんはこれを毎日平然とこなしてくれているんです。

 すごいです、ありがたいです、もっと感謝しないといけないとあらためて思いました。

 お嬢とアインスさんがいなければ、俺は身動きが取れなくなっていたことでしょう。


 さてそれっきり来客が途絶えました。

 夕空までもが群青色にかげって、時刻は黄昏時から夜の領域へと入りかけています。


 ならそろそろ店じまいしてしまってもいいでしょう。

 そう考え始めていると入り口の鈴が突然騒がしく鳴り響きました。

 アインスさんたちが晩ご飯抱えて戻って来てくれたのでしょうか。


 また菓子とつまみでないことを祈りつつ、カウンターからだらけたゆるい顔を上げます。


 あれ……子供……?

 違いました。それは小さな女の子でした。

 でもどこの子でしょうか、職人街では見かけない子です。

 そもそもローブを深くかぶっているので容姿をしっかり確認できませんでした。


 しかし子供であることならハッキリとわかります。

 だって自分より頭一つ、いや一つ半は小さな背丈をしていましたから。


「ふむ……なるほどな……」


 彼女は棚のあちこちをゆっくりと物色します。

 子供なのにババくさい没薬もつやくの匂いを香らせて、大人のふりしてあごを撫でていました。

 どこかの神殿かなにかの子でしょうか。


 あるいはローブを深くかぶっている辺り、良いところの小さなお嬢さんがお忍びで祭りを散策……って可能性も広がって妄想楽しいです。


「これはなかなか……ほぉ、ほほぉ……大したものだ。フ……」


 なかなかさまになった背伸びです。

 なんか面白い光景なのでボケーーっと眺めていたら、気づいているぞと言わんばかりに少女の目がこちらに向きました。

 慌ててこっちはまぶたを閉じてごまかしましたが、なんか軽い足音が近づいてきますよ。


「店主よ、念のため聴くが、お前が錬金術師のアレクサントだな」

「え、ああ……そうだけど……」


 言葉使いも老成していて口調もしっかりしていました。

 子供とは思えない強い意志力があって、そのギャップに驚いていると気になるフードがいきなり上がります。


「我が名はグリムニール。貴様に会いに来てやったぞ」


 なんとその下に現れたものはエルフ。

 しかしもその容姿は正真正銘のロリ、我らがお嬢よりさらに幼い超ロリエルフがそこにいらっしゃいました。

 小学校高学年といったところでしょうか、こんなロリロリしたエルフは初めて見ます、珍しい。


「フフフ……驚きのあまり声も出せぬか」


 なるほどしかも達観型のロリエルフですか。

 美しいその銀髪にやわらかそうなエルフ耳……おお、おおっ、エルフ最高。


「貴様の噂は聞いている。まさか生きていたとは夢にも思わなかったが……確かに死んではおらぬ。久しいなアレクサント」

「……え、どちら様?」


 彼女は自分に見とれたとでも勘違いしたんでしょうか。

 上機嫌な声色で、最後の言葉を親愛で締めくくります。

 つか誰?


「うむ、言ってみただけだ。記憶が無いということも聞いている。……むしろ失うことで幸せになれたようだな」


 もしかして昔の俺を知っているんでしょうか。

 いやだけど幼女だしこれ。

 あ、そうか、でもエルフなら俺より長生きしてても変じゃないです。

 ロリババァという解釈をすれば、その子については一通りの納得が出来ました。


「どこのどなたでしょうか。すみませんが幼少のことは全く覚えていないものでして……」

「うむ、ただの通りすがりのお子様だ。妙なことを言って済まなかったなアレクサント」


 はぐらかされてしまったみたいです。

 いいんじゃないでしょうか、その方がロリババァ感が出て良いと思います。

 ええ、俺の中でもうグリムニールさんはロリババァで確定しちゃいました。


「これはクレイゴーレムか。そしてこっちは……ほぅ、これは珍しい……。竜だな」


 グリムニールさんが指をドロポンに伸ばしました。

 初対面にそんなことをされたら逃げるはずなのですが、でもモゾモゾとその指にまとわり付きます。


「うっうぉっっ?!」


 そしたら撫でたがりの犬みたいに、レウラも床からカウンター跳ね上がってグリムニールさんの腹に頭を擦り付け始めるじゃないですか。


「おぅおぅ、なつっこいやつらだ。我のことが好きか、そうかそうか、フフフ……ういやつめら」

「うわぁビックリしたぁ……。しかし、こいつらが初対面の相手にこんなになつくなんて、すごいなグリムニールさん」


 ちょっと高慢な感じの彼女も、ホムンクルスらとたわむれている間はあどけない少女の微笑をするようです。

 うーん眼福。エルフ最高。


「どちらも幼体だな」

「え。そうなの……?」


 すると思わぬ言葉が彼女の口から現れます。

 それはちょっとずつ俺の頭に染み渡って、希望と喜びと納得へと変わってゆくのでした。


「知らなかったのか、相変わらずの間抜けめ。ホムンクルスはこのような幼体として生まれてくるのだ。いきなり飛び越えて成体として生み出す方法もあるが、それは特殊なケースだよ」

「ああ。ああそれで、ああ……あーーー……。なるほどなぁぁ……っ!」


 ごめんレウラ、お前失敗作じゃなかったのな。

 でも翼がないってのはどういうことだ、んん~?

 少なくとも飛竜の幼体ってやつじゃぁないよなぁ、お前?


「段階的に成長させねば、成体となる頃には人間のお前などじじぃになってるじゃろう」

「そうなんですね。じゃあどうすればいいんです?」


 この子ホムンクルスに詳しそう。

 俺らしくもなく期待いっぱいの問いかけをしていました。

 ダラダラ店番してただけなのに、こうやって空からヒントが降ってくるだなんて……なんて今日は良い日なんでしょう!


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