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10-09 後日譚 SIDE:育毛剤

「キァァァァッッ!! ウワァァァァッッレクッサントゥォォォォォォーッッ!!」


 やっとあの巨乳女子会が落ち着き、その隙にさっと育毛剤を仕上げてアクアトゥスさんに帰りがてらの配達を頼みました。

 それから翌日となり、迷宮探索に力をだいぶ使ってしまいましたし、その日はゆっくり錬金釜をかき回して過ごしていました。


 油も石鹸も抽出した匂い成分を混ぜて調合するだけで、ご婦人方が喜んでお買い上げ下さいます。

 お嬢が開拓してくれた上客なんかには、珍重されている香料を材料から抽出しまして、石鹸、油、蒸留アルコールなどと一つにするだけで大満足の大枚はたいてくれちゃいます。


 月並みで申し訳ないですが、お金ってあるところにはいっぱいあるんですねぇ……。

 一体どこからこの大金が湧いてくるやら、この国は金の流れが複雑かつ激し過ぎます。


 で、まあ……。


「ァァァァ……ルェェェェ……クゥゥゥゥ……スァァァンンンッッ……トォォォォーッッ!! 貴様ァァッどこにいるゥゥゥゥーッッ!!」


 その日、教頭がいらっしゃったんです。

 そしたらラウンドワンッファイッ! 開幕怒りゲージマックス、毛根の方のライフもマックス限界突破。

 はい、別に育毛剤が失敗したわけじゃありません。


 しかし彼がアトリエを訪れ、その容姿お姿を見せた時は一体誰なのかと我が目を疑いました。

 いやぁ…………知らなかった……。

 微少に残る白髪にハゲ散らかった肌色の頭、それが教頭のイメージでしたから。


 まさかあんな美しいプラチナブロンドが、腰くらいまでふわっっさぁ~~とか伸びて、サラサラストレートになっていたなんて……。

 いやぁぁぁ……若い頃はぶいぶい言わせてたのかもしれんですね。


 ま、それは、ま、良かったんです。

 でもまあそのお顔はまさに般若、怒りの阿修羅、あのエルダートレントよりおっそろしー顔でこう言うんですよ。


「アレクサント貴様ッッ!! 確かに髪はふさふさ、私は感激のあまり涙し、これまでお前につらく当たってきたことを恥じた……っ、後悔した……っ、悔い改め良く生きようと改心を決めた……っ! だが……だがこれはなんだ貴様ッ、貴様アレクアントァァァーッッ!! キェェェェェーッ、絶対にッ絶対にッ、絶対に許さんぞォォォォォーーッッ!!」


 だってアクアトゥスさんにも門限あるし、だから早く作らなきゃーって焦ってたんですもん。

 ですからね、髪も無事にフサフサになったことですし……。


 釜を洗い忘れて豊胸剤成分が薬に混ざったところでこれ、イーブンどころか感謝されることだと思うんですよ。

 それなのに教頭ってばもう……。

 仕事もあるだろうに朝からずーーーっと、俺を追って街を徘徊していらっしゃいます。


 アシュリーの独身宿から眼下の町並みを見下ろせば、ふっさふさのブロンドストレートヘアと、Hカップはありそうな爆乳をゆっさゆっさバイ~ンバイ~ンと痩身から揺らされるハゲール教頭先生。


 ……あれ、ツルピカ先生だっけ? あ、ピカール? だっけ?

 まあその足取りはお怒りのガニ股で大地を揺らし、今日はそんじょそこらの雌オークより俄然強く雄々しいです。


「いい加減……帰っちゃくれないっスかね先輩……。いくらなんでもアレに巻き込むのだけは勘弁してほしいっスよ……」


 部屋の主が柄にもないことを要求します。

 せっかく人が遊びに来たんだからここは喜んで接待して欲しいところです。


「そう言うなアシュリー、全ては手違いに過ぎない。愚かな人間の欲望がアレを生み出してしまったのだ。俺たちは忘れてはならない、欲望を律して生きるという道を……」

「話聞く限り、先輩が釜を洗い忘れただけじゃないっスか。そりゃ教頭もこれ怒るっスよ、あの姿で生徒と向き合うのは……胸が痛くなるくらいつらすぎるっス……」


 常識人アシュリーは俺の隣から、変わり果てた教頭の姿を不憫そうに見下ろすのでした。


「ああでも、あのサイズは自分も憧れるっスね。剣士してるうちは諦めるしかないっスけど」

「ならいっそ、かくまってくれたお礼に今より小さくなる薬でもつくろうか?」


「先輩……さすがにそれは遠慮するっス。自分も先輩の前では一人の女の子っスから」


 それは心外だとアシュリーは露骨にイヤな顔をしました。

 彼女の胸はけして小さいものではなく、人並みながらチラ見して嬉しい魅力があります。


「――!! フッ、フハハハハッ……そこにいたかぁぁぁーっっ、みぃぃぃつぅぅぅぅけぇぇぇぇたぁぁぁぁ……っっ!!」

「あ、バレたし」


 彼女のジト目を笑顔で返していたら、下の方から怨念の叫びがこちらに飛んできました。

 目を落とせば完全に教頭は俺を視界におさめロックオンを果たされておられます。


「キェェェェェーッッ!! そこを動くぬあーっ、今すぐっ報いを受けさせてやるぞぉぉぉーっっ、このっこのっこのぉぉーっっ、この人間のクズめがぁぁぁーっっ!!」


 ほんで猛ダッシュでこっちへと教頭が突進を始めますです。


「こんなにのぞき込んでたらそりゃバレるっスよ……」

「だってほら、見てる限り面白い光景だし……?」


「そっスね……。じゃ宿に迷惑かかる前に出てくっス……ダメ元で自分が説得足止めしとくっスから……」


 アシュリーってばなんて良いヤツなんでしょう。

 いつでも逃げ出す準備は整っているので、この隙に窓から屋根づたいに下りるのが良さそうです。


「ありがとうアシュリー、アシュリーはいつだって俺の味方でいてくれる。頼りになるよ、大好きだ」

「先っっぱぁぁ~ぃぃ♪ に言われると悪い気はしないっス、任せてほしいっスよ。……ちなみにアレ治せるんスよね?」


 ………………痛いところを突くものだ。

 そうは言ってもねアシュリー、なんと言ったものかな……うん……。


「先輩……?」

「……。ハハハハハハ、治せたらそもそも逃げ回ってるわけないと思わないかいアシュリーくん。まあその……いつかは効果が切れるかもしれないね、不自然なブーストなんだし。……それがいつになるかはサッパリだっ」


 これが人の罪、人の欲が生み出した甘く切ない悲劇。

 しょうがないことなんだ、わかってやって欲しい。


「教頭先生……ご愁傷様っス……」



 ・



 そうしてこうして俺は間男のようにアシュリーの宿から脱出した後は、教頭が疲れ果てるまで知り合いのすみかを転々としたのでした。


「我が息子よ、もっと食えっ、酒も飲めっ、いっそ両方同時にぐっとっいけっ! お前の方から押しかけてくれるだなんて……っ。うっ……グスッ……ぁ、ぁぁぁ……父ちゃんなぁぁ……嬉しくて……嬉しくて涙がでらぁっっ!!」


 安住の地はダンプ先生のお宅でした。

 迷惑なんて言葉ここじゃ存在しないみたいです。

 もう一家総出大歓迎で美味いディナーをご馳走してくれちゃいました。


「はじめましてアレックスお兄ちゃん。話はパパから聞いてるよ、こっちの8人がお兄ちゃんお姉ちゃんで~~、こっちの4人が妹で弟だよっ!」


 12人兄弟なんですって。

 しかも嫁さんいるのに一人残らず養子。

 誰一人俺を拒むものなく、そうなるとこっちも拒み切れず、一夜にして俺は義理の兄弟が12人も増えてしまったのでしたとさ。


 ああ恨むべきは人の業。

 教頭もダンプ先生一家みたいに暖かい心を持って、今の肉体に身をゆだねてもらいたいものです。

 この日アカシャの家より一つの怪談が消え、代わりに末代まで語り継がれる恐ろしい伝説が爆誕したのでした。


 教頭ごめんね?


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[一言] >「キァァァァッッ!! ウワァァァァッッレクッサントゥォォォォォォーッッ!!」 満月の日のDARK悪魔かな? 大丈夫?マグネタイト食べる?
[良い点] 誰得かと思うかもしれませんが、教頭先生のボインボイン見てみたい気も……………する。
[良い点] 髪アンドおっぱいは素晴らしい。 [一言] なろうでここまで声を上げて笑ったのは初めてでした。
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