10-06 2/2 それは超レベル迷宮を半裸で徘徊するという愚行
さてストレスフリーとはとても言い難かったですが、探索そのものは順風満帆にスイスイっと進んでいきました。
階層を二つ下ってここは封印区画3層目。
このフロアまで下りてきてやっと、我ら卒業生組にも出番ってやつが回ってきたのでした。
マナ先生の撃ち漏らしたハイオークさんを、魔力を込めたスタッフオブガイストで殴り吹き飛ばします。
するとよっぽどの大物以外はただちに灰へと変わってくれるので、これがなかなか気持ちぃぃ~です。
「あらあらアレッきゅんったらがんばり屋さん♪ その成長力にお姉ちゃんはメロメロよ~っ、フンハァ~♪」
「変な声出さないで下さい気が散りますっ!」
お嬢とアクアトゥスさんも見事な連携です。
レイスやジャイアントビー、クローカータイプを狙ってダブルファイアボルトを撃ち込み各個撃破されています。
「やりますね……」
「そっちこそねっ!」
この二人って普段はそこまで仲良くないです。
たまたま今回は共通の目的があるだけで、アトリエでは結構意識し合ってる気がします。
ところで一つ言いたいことがあります。
それは俺たちが確実に強くなっていっている、ということです。
採集をかねた日常的な迷宮探索や、あのワイバーン追撃戦のようなアクシデントってヤツがその犯人です。
俺たちの実力は事件を乗り越えるたびに一人前に近付いて行き、その身に自信と誇りを獲得していきました。
さらに言うならいつかはマナ先生の領域に追い付けると、今の若さに任せてここはそう信じたいところです。
特にこのスタッフオブガイストの力を見て下さい。
なんとこんなに上手く使えるようになったんですよ。
「ちゃー、しゅー、めんっ! っと。あ、もいっちょっ!」
身体が武器になじむのって大きいです。
特にこの杖みたいな暴れん坊は慣れれば慣れるほど、本来の力を発揮しやすくなります。
「アレクの負荷が増えてる。突破されたらつらいし、足止めに切り替えましょアクアトゥスさん」
「はい……もちろん……反論はありません……」
大部屋に入りました。
魔物の密度が一挙に上がり、後衛の二人は行動方針を足止めに切り替えてくれました。
これまた気が合わないはずなのに、やたら的確な連携で敵の機動力を奪っていきます。
二人とも性格柄なのか拘束魔法バインドも得意なもので、茨のツタがオークらの足首にからみ付き転倒させていきます。
「すごいすごいっ、みんなこんなに成長してくれて先生うれしいわぁ~♪ はい、サンクチュアリの出来上がりっ。殲滅完了~♪」
ま、それでも結局はマナ先生の一人舞台でしたけど。
あのデュラハンもここの大部屋にいらっしゃいまして、それが今にも襲い来る寸前に範囲神聖魔法のサンクチュアリが生み出されていました。
広範囲のそれは雑魚ごと全てを灰へと変え、そこに愛しい白銀色の砂、聖銀砂が散らばったのでした。
「強過ぎます……気が遠くなりかけるほどに……」
「なんなのよっ、マナ先生ってっなんなのよっ!」
「クフフフ……だってアレッきゅんがあんなに楽しそうに踊るんですもの……お姉ちゃん張り切っちゃった♪」
お嬢らの気持ちはわかります。
でもこうやって目当てのものは調達出来ました。
後はついでに生命の林檎をボスとやらからゲットするだけです。
この聖銀砂さえあれば愛しいワイバーンが生み出せる。
そう考えるともう多少変質的な目で尻とか前を見られようとも、何もかも許せる仏の気持ちになってきたのでした。
・
デュラハンの住まう大部屋。
その山場を乗り越えると、俺たちの探索はまた順調に進んでいきました。
難易度ナイトメアな封印区画を勢いに任せて下り下り、次第にそこは恐ろしい超レベルの魔境に等しい世界と相成りました。
でも大丈夫です問題ありません。
先生もまた下れば下るほど限界知らずにパワーアップされますので。
ええ、頭の方がちょっと追いつかないですけど、なんか不思議なバランスで行けてます。
そうこうして俺たちは区画6層目へと到達したのでした。
「ちなみにどの辺りでそのボスっての見かけたんですか」
身体の正面を向けると、皆さんの動きがそれぞれ思い思いに挙動不審となるので上半身だけで後ろを振り向きました。
「うん、確かこのフロアよ。みんな凄いのね~、途中でヘバると思ったらちゃ~んと付いて来て偉い偉い♪」
「ここに生命の林檎……ううんっ! あたしたちの胸があるのねっ!」
俺の気配りのかいもあってか、お嬢は期待に小さな拳を握って大変元気で現金な声を上げました。
「ふ、ふふふ……ついにアレが手に入るのですね……これが喜ばずに……いられるでしょうか……いいえ不可能です……」
「ええがんばりましょっ、あと一息よっ!」
さすがに疲労してきてたはずなんですが、ここに来てお二人の気迫とやる気がハイパーです。
アクアトゥスさんなんかマジマジと先生のおっぱいをガン見して、我が物のようにニヤニヤと期待に口元をだらしなくされる始末です。
アレですな、ウルカさんに見せてやりたいくらいのダメっぷりですよこれは。
……いやしかし。
何度見てもマナ先生のソレは、正気を疑う貝殻と紐と肌色の大型鏡餅としか言いようのないものです。
実力は認めますよ、平時の人柄の方も。
でもこんな変態が教師してて本当にいいんでしょうか。
ちゃんとよく見て下さいよこの姿です、貝殻と肉の塊以外の何物でもないじゃないですか。
「えーと……植物タイプでしたっけ、例のボス」
「そうよ~、エルダートレントって呼ばれてるタイプ。前は下層への階段部屋前にいたから~、きっとわざわざ探さなくても会えると思うの」
植物タイプのボス。トレントって確か動く樹木の怪物だったっけ。
エルダーが付くってことはその上位タイプってことなのかな。
「マナ先生がいるなら楽勝よね」
「はい……それ以上でもそれ以下でもありません……」
なんか寄生プレイっぽくてやだけど、うんでもそれがこのパーティの真理。間違ってない。
「ううんそれね~。実はー、植物系って神聖魔法があんまり効かないの~。だから皆でがんばろうね~♪」
と思ったら何ソレ聞いてない。
早く言おうよそれ、ここでいきなり思い出したように言うことじゃないじゃん?
「上等じゃないっ! あたしらの力見せてあげるんだからっ!」
「はい……おっぱいのためなら……そんな偉そうな響きの木……消し炭にしてあげます……!」
お二人はやる気いっぱいでした。
そうですね、あまりネガティブなのはいけません。
こうやって深層にやって来たからには、お宝も無しに手ぶらで帰るなんて許されませんから。
「じゃソイツ倒して生命の林檎を調達。それでミッションコンプリートだ。さあ行こう、いざボス戦だ!」
「ふふっ、意外にアレクもその気なのね。がんばってよね、アレクなら絶対……あたしたちの夢を叶えてくれるって信じてるから……っ」
「兄様っ、愛しい妹の爆乳まであと少しですよっ、がんばりましょうっ、がんばりましょうっ、おっぱいは全ての価値観より優先されますっ!」
「ぁぁ……アレッきゅんの揺れる痴態もここがピークなのね……。お姉ちゃん寂しい……でも、でももっと過激なお返しを期待してもっとがんばっちゃうっ!」
うっわ……。
どいつもこいつも欲望たれ流しじゃん……。
あ、俺もか。じゃあしょうがないね。




