10-05 水着デビューから始まる高難易度ダンジョン(挿絵あり
翌日、お嬢を連れて初級迷宮のエレベーターを下りました。
それから封印区画の隠し扉を開いて先に行かせます。
もうこの先でマナ先生アクアトゥス組が待機していますし、階段エリアは安全地帯と決まっているので危険はありません。
「ぁぁ……ついにこの時が来てしまったか……」
独りになると一気にボディブロー的な重いものがジワジワ来ました。
だだ下がるテンション、思考力、生きる意思……。
レリーフがギザギザする壁にもたれかかって、俺は息を深く吐きながら脱力していくのでありました。
しょうがないので道具袋をあさり、その中から一枚の薄く呪わしい布切れ……ブーメランッパンチュッを取り出します……。
鈍い動きで装備中の魔導師のローブを脱ぎ捨て肌着にも手をかけ、何も考えず一息に全裸となりました。
「や……こんなところでなにしてんの俺……ねえ、なにしてんの俺、俺よー?」
その素っ裸にブーメランパンツをスッ、パチーンッ、シャキーンと装着しまして、今確実なる守備力大幅低下と敏捷性の頼りない上昇を実感いたしました。
それから脱いだ衣類を小脇に抱えて階段を下ります。
封印区画に入った途端、ギョッと空気がおののいたような気がするけどまあ気のせいでしょう。
さて下り切ると女性陣らと合流することにあいなりました。
華々しき女の子たちの水着がお目見え――を楽しむ前に熱い視線がお出迎えしてくれて、もうそれどころじゃありませんでした。
「…………」
マナ先生は無言で凝視を続けられました。
かと思えばブツブツと女神との不気味な交信を開始されます。
ほら、耳を澄ませば……。
「アレッきゅんの乳首っアレッきゅんのお尻っ、ふとももっ、膝こぞうっ、ハァハァハァハァハァハァッ、女神よっ女神よこの世は素晴らしいですありがとうございますっっ♪♪」
ペア編成で来ようものなら押し倒されてたに違いないです、マナ先生という聖職雌獣に。
先生を信じたいけど信じちゃいけない危険な興奮のされようです。
「お似合いです兄様っ! アトゥは今日という日が楽しみで楽しみで朝方まで眠れませんでした! ああなんと淫美な肢体でしょうか……兄様は……兄様はご自分の色気に無自覚過ぎますっ!! まだ成長の余地を残したその鎖骨っっ、引き締まった小さなお尻っ、そ、そそそ、そして……ああっ、アトゥはとても直視できません兄様っっ!!」
とか言いながら顔をおおいます。
ですがもちろんその指の隙間から、野獣の眼孔がギラギラと輝いていらっしゃいますのです。
「めっちゃ見てるじゃん……」
「み、見てませんっ、見えてませんよこれっ、本当ですっ、じーーーーーーー……」
もう何も言うまい……。
かく言うアクアトゥスさんの白スク的なお水着だって、無自覚にもほどがあります。
光線の加減と汗やら水気さえ加われば、いつ危険な白透けが起きたっておかしくありません。
てかスタイルいいです、細いです。
マナ先生の方は……うん、やっぱり見なかったことにしましょう。
紐と貝殻みたいなものが白いムチムチプリンにくっ付いていました。
それ以上でもそれ以下でもありません、そこには常識とか理性とか日常生活を送る上での大切なものが片鱗すら存在しておりません。
「むぅぅ……っ、どうしてこっち見ないのよっ!」
そんな状態ですからお嬢だけが救いでした。
「ひっひぁぁぁーっ?! へ、変なところ揺らすなぁっ、ひ、ひぃぃぃーーっっ?!」
「え、お嬢? へ、揺れるってなにが……? あっちょっちょとっ、どうしてそんなに距離を取りますかっ」
エルフの少女は俺の注意を引こうと詰め寄って来ました。
けどなにかとんでもない光景を目撃したらしく、顔を真っ赤にして逃げ出していきましたとさ。
フリル付きの青いセパレートが、お嬢の金髪とあいまって超少女趣味かわいいです。……ずいぶんそのお姿が遠いですけど。
「ほらほらお嬢、あんまり離れたら危ないしこっちこっち」
「いやーっ、いやーーっ、この距離が限界だもんっ、あっ、アレクってば変な目で見るしっ!」
「見てない見てない、ほらおいでおいで、お嬢~?」
「無理ッッ!!」
……わかってました。
予想はしていました。
こうやって開幕からグダグダになることなんて。
あえて以前との違いを指摘するなら、どうも今日は封印区画の気温が暖かいようで一安心だってことです。
ここ数日の暖気の影響か何かなんでしょうか。
あるいは迷宮そのものがこの異様な情景に恥じらっている。……とでも詩的に言えばそれっぽいでしょうかねー。
「では先生、グッダグダなのでパーティーリーダーとして早速指揮を……」
ところで入り口とはいえ、ここも魔物が現れてもおかしくない場所です。
油断して遊んでたら死にます。ならここはしっかりしてもらいましょう。
「アレッきゅぅん……そんな、お姉ちゃんに全て身をゆだねるだなんて……ハァハァッ♪ 願望があってもそれは言っちゃダメ……お姉ちゃん止まらなくなっちゃう……っ♪」
「止まって下さい」
「無理っ♪」
「無理です兄様……っ」
この人たち何しに来たんでしょう……。
いやここを出落ちのピークにされたらその後の士気はどうなる。下がる一方じゃないですか。
もうだから水着で来るとかやだったのにっ!
「あ、あんたがどうにかしなさいよアレクっ! あ、あたしだって……こんな水着で冒険するとか……き、聞いてなかったんだからぁっ!」
「うん、気づいてた。絶対こういう流れになるんだって……水着のことは忘れてた、ごめんねお嬢、だからもうちょっとだけこっちに来ようか」
「そ、それは……うっ、無理っ絶対無理っっ!」
パーティーリーダーが決まりました。
どう考えてもマナ先生のがここに詳しいはずなのに、俺がまとめる他にないようです。
たかが水着で心乱すのもバカらしくなってきましたし、編成を決めてどんどん進んでいくことにしましょう。




