9-07 1/2 迷宮より、竜を討ちし錬金術師へ
終わりました。
粉塵がようやく薄れて視界が晴れてきました。
それで爆心地の状況はといいますと……床がえぐれて大穴が開いています。
その中心核ともなると人一人分の深さまで陥没し、土くれの地面が見えているんだから驚きです。
あれ、もしかして俺、マナ先生並みに強い?
瞬間火力だけなら越えちゃった?
「っっ~、加減しなさいよバカアレクっっ!!」
「ぅ、ぅぅ……。鼻打ったじゃないかっ、せんせーのアホーっ!!」
視界が晴れるまでずっと顔をおおって堪えてました。
俺が立ち上がると二人もそれにならい、ただちにお怒りと不平をぶつけてきました。
「いったたた……ごめん起こしてアトゥちゃ~ん……。重鎧の私まで吹っ飛ばすとか……なにこれ……ダリルちゃんの杖すごいじゃんっ!!」
「大丈夫ですか……? このたびは……うちの兄がご迷惑を……」
皆さん怒ったりテンション下げたり、でもダリルだけ上がってたり多種多様です。
せっかく完全勝利したんですから、ここはもうちょっとはっちゃけて喜ぶべきだと思うのですが。
「先輩……残念なお知らせっス……。ざっと見たところ……今のでレアドロも一緒に消し飛んだくさいっス……」
「え……。えーー?」
いやなにそれやっぱテンション下がる!
いや、やだ、うそ、実は期待してたのに……っ!
いやいやいやまだ諦めるのは早い、どこかに吹き飛んだのが落ちてるかもしれないよ!
「ああ……砂煙で奥の方ぜんぜん見えねーし……」
いくらか進んでみるとメチャ土埃っぽい。
マジックブラストの爆心地が無数の瓦礫を生んで、余計に何がどこにあるのかわけわかりません……。
誰だこんなことしたヤツ! 知ってるよ俺だよぉぉぉぉっっ!
「んーまぁお疲れっス。無事任務完了っスからギルドから報酬がたんまり出るっスよ」
それはもちろん貰う。
でも諦めが付かないから俺だけ砂煙の中をうろうろさまよう。
お、これは……うーん……?
「じゃあ帰ろっか、あーあー……今のでアトゥの綺麗な髪が埃まみれ……。ボクがお風呂で綺麗にしてあげるからね~アトゥ♪」
「助かりますウルカ……服の中までジャリジャリです……正直に言いますともう帰りたいです……積極的速やかに……」
彼女らは帰りたいようです。
女の子ですから全身汗と砂まみれになってはたまらないんでしょう。
でもそれとこれは別ですから。
「うん、じゃあ進もうか」
進みますよ。
ここまで降りてきて手ぶらで帰れるわけないじゃないですか。
このフロアのお宝を一つも手にしないで戻るだなんてそれでも冒険者でしょうか。
いやそんなものは冒険者とは呼べない。
「はぁ?! ボクらは帰りたいって言ってるんだけどっ、要請もこれでクリアっ、せんせーのせいでもうやる気0だからね!」
ウルカの言葉はそのまま俺を除いた総意となりました。
どいつもこいつも冷たい視線でこっちを見てきます。
「むっふっふ~っ、ダリルちゃん今いいこと思いついたよっ、今からみんなで……銭湯行こうっ銭湯!」
「ふふふっ、それ良いじゃない。でもアレクだけ仲間外れになっちゃうけどね♪ ……。じー……」
そこまで言っておいて、お嬢は唐突にダリルの胸元を凝視しました。
続いて自分の胸へ。
あ、なんかいきなり落ち込んだ、テンション急降下してるよこれ。
「先輩……一応理由を聞いてもいいっスか?」
「アシュリー。よくぞ聞いてくれた、さすがアシュリー俺のことをよくわかってる」
ボサボサ頭を払いながら、アシュリーが仕方なさそうにわけを問いかけてくれます。
嬉しいので俺は笑顔まで浮かべて言葉を返しました。
「普段ならまんざらでもない言葉っスけど、この状況で言われると孤立感とか裏切りっぽさがあるっスね……。で、それで何が気になるんスか?」
「うん、それはね。ウルカさん、ちょっとお宝探索魔法使ってみてくれるかな」
スカウト専用の便利な魔法があります。
特殊な訓練が必要な上に燃費が悪いので毎フロアで使うものではないですが、標的を撃破した今こそ出番です。
「そういえば追跡優先で使ってなかったなぁ。いいよ、一応やってみてあげる。これで諦めるなら早いし」
短い詠唱の後に、ウルカを中心にして微弱な風が吹きました。
メチャ地味だけどこれで宝の位置がわかるとか……。
どこをどうやればそうなるのかマジシャンには原理すらわかりません。
「お、なんかあるよ? ほらこっちこっち」
やっぱり思った通りです。
このフロアのレリーフは意匠が細かく、これまでの経験則からするとハイリスクハイリターンの手合いです。
ウルカもお宝が存在するなら話は別だと、己の出番を喜び率先してパーティを先導してくれました。
次話で章ラストになります。
挿絵の中でもなかなかもって美味しいヤツも付きます。予告!




