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9-04 追跡開始、黒き飛竜を求めて奈落の底へ(挿絵付き

 アカシャの家に急行し、俺たちは上級修練迷宮に踏み入りました。

 結論から言いますと、やっぱりこの迷宮、何か意図があって俺たちをここに招いたのかもしれません。

 なぜなら追跡隊一行はこの場所で、不可思議なものを目撃することになったのですから。



 ・



 初級と同じくここにも最下層に通じるエレベーターがあるのですが、討伐対象を見落としては二度手間です。

 なのでB1から順番にワイバーンを追跡することになりました。


 入場制限に従って編成は6名構成。

 前衛が鍛冶師ダリル、エンハンサー・アシュリー、双剣スカウトのウルカ。

 後衛が商人リィンベル、錬金術師アクアトゥス、あと俺。


 ちなみにお嬢は冒険科に二期在籍していた上に魔法優遇種エルフ様です。

 ダリルだって鍛冶工房から重鎧と盾、軽量な片手槍のスピアなんて借りてご参戦です。

 元からタフな人ですし、武装も守備力特化なので前線維持の足しになってくれることを期待しましょう。


 さて、当時は途中から苦労しましたけどそれも二年も前のことです。

 アルフレッドとロドニーさんがメンバーにいなくとも、これが余裕余裕……。


 いえ……余裕っていうか……あれ、今のところ全くといって……出番がないですねー……?


 もちろん昨日の徹夜作業で消耗していますし、申し訳ないですがマジシャンとしてのMPなんかは半分も残ってません。

 みんなそれを分かった上でカバーしてくれているんだから、これは喜ぶべきなんですけど……。


 これじゃせっかくの愛杖、スタッフオブガイストが泣いちゃいますよ。

 ここはせめて一発だけでも……あっ、ああっ……。


「せんせーには出番あ~げないっ♪」

「そう言わず下さいよ……ああくそ……お嬢、それ俺が目をつけてたやつ……」

「ふふふっ……のろまなアレクが悪いんだから。魔法でエルフに勝てると思わないことね」


 はい、ご覧のとおりにございます……。まるで食卓のオカズを奪い合うような光景です……。

 そのおかげで行軍の方は駆けるように順調でした。

 圧倒的なペースであれよあれよと、全13層のうち9層を踏破してしまったのでした。


 ですけどその足が急に止まります。

 ここまでやって来て、俺たちは異様としか言いようのない光景を目撃していたのでした。


「なにこれ……どうなってんスか……」


 まず……例の標的は下層へ下層へと進んでいることがわかりました。

 これだけでも通常のケースではありません。

 ボスは決まった特定の階層に留まるもの。今までそう俺たちは思いこんでいました。


「おかしいよね、ボクもこんなの初めて……何だろ、ピリピリしてくる……」

「もうウルカちゃんってば、そんな殺気立たないのー。このダリルちゃんが守ってあげるよっ! ……守るだけだけど。んん、もうちょっと軽いの選べば良かったかな……なんか蒸れる……」


 実は7層目から兆候が現れていました。

 それがここ10層目にて顕著となり、今俺たちの目前にとんでもない光景が広がっています。


 いわゆるモンスター部屋と呼ばれる大部屋なのですが……そこには無数の灰だけが散乱していました。

 しかも魔物素材が未回収のまま捨て置かれて、あちこちの灰の墓標に埋もれてるじゃないですか。


「なによこれ……なんだか怖い……。誰がやったのよっもうっ」


 お嬢は少し怖がりです。

 俺の背中側に入り込んで、後ろからローブの裾を引っ張ってきました。


「鍛冶師とか錬金術からすると美味しい光景なんだけど……ソレが逆に不気味だよね。うわぁぁ……って感じ」

「私たちとは別に……ワイバーンを……追跡してる人がいるのでしょうか……」


 アクアトゥスさんの問いかけに思考が動き出します。

 別の追跡者が先行している可能性……そう考えたくもなる奇妙な情景でした。


「違う。迷宮の入場制限は絶対だよ。その入場制限を満たすにしても、この迷宮は錬金術師を要求してきたじゃないか」

「つまり先遣隊なんているわけがない。ってことっスね先輩」

「うん、だから消去法。この結果から導かれる事実は一つだよ」


 常識が邪魔して、彼らも俺も当たり前の発想が出来ていない。

 この灰の墓場を生み出した犯人は、最初から一人しかいない。


「外と中のモンスターは、敵対関係だってことだよ。これをやったのは俺たちの標的、ワイバーンだ」

「ま……そうなるよね~……。ぁぁ……せんせ~のせいで、余計にゾクゾクビリビリしてきたじゃん……」


 ウルカさんってば目が生き生きしてます。

 そんな猟奇的なアルカイックスマイルで笑うところですか、ここ?


「つじつまは合います……冒険者なら……宝を回収しないわけがありません……」

「後で回収するにしたって、せめてどこかにまとめて置いておくわよね……。じゃ、じゃあ、本当にこれって……っ」


 お嬢は怖がりなだけではなく子供並みに温かいです。

 でも動きにくいから背中にぴったり張り付かれるのは……あ、なんか雷怖がる犬猫っぽい。


「せーんせ、でも仮にそうだとしてさ……」

「はい……この進入者は……一体……どこを目指しているというのですか……」


「さあ、それはわからないね。少なくともわざわざペナルティ覚悟で人類の領土深くに入り込んでまでして……この竜はここの迷宮に来たかったんだろうね。そこにはもちろん、何らかの理由があってしかるべき……。といったところでしょ」


 どちらにしても答えが出るわけもありませんので、状況を受け止めつつ先へと進みました。


 下れば下るほど、さらにまた灰の墓標が続いていきます。

 少数の迷宮側モンスターが残っていてもそれは疲弊しており、やっぱりここでもスタッフオブガイストの出番がないじゃあーりませんか。


 交戦と呼ぶよりいわば抗戦。戦いの爪痕はどれも一方的な進入者の勝利で終わっていたのでした。


 これで間違いないです。

 公国に襲来した漂流型の魔物と、迷宮定住型の魔物は別物です。

 両者の関係がよくわからないですけど……役割が決定的に違うんでしょう。


 俺たちは今まで、魔物と魔物が闘争するだなんて知りませんでした。

 これも公国の常識を揺るがす不穏な何かなのだと、ま、アシュリー辺りに報告書を書かせましょう。



 ・



 敵がほとんどいないのです。

 当然ながら進軍は順調どころか加速するのが道理。

 くだんの最下層13層目の最奥に難なく到達してしまいました。


 ここには鐘の音も届きませんが、体感でまだ一時間もかかっていないはずです。


「ここって一番下だよね……もしかしてボクら見過ごした……?」


 いいえ違います。

 それは外部に公表してないだけです。


「ウルカ……実は……一般には知らされていませんが……この先にまだ……隠し階層があるのです……」

「えっ、ホント?! えっ、もしかして知らなかったのボクだけっ?!」


 イエス、その通りにございます。

 マナ先生が案内した下級修練迷宮・封印区画もそうですけど……ここの学園の迷宮って、臭い、怪しい、なんかヤバくないですかねー……。


 そもそも踏破したのに機能を失わないタイプって、ナニソレですよ。


「あんときはヤバかったよね~っ、マジで死ぬかとっ!」

「そうね、アクアトゥスさんのあの爆弾がなかったら……生きてなかったわ。つくづく錬金術ってすごいのね」


 ダリルの盛り上がりにお嬢が乗りました。

 尊敬の感情を交じらせて、小さな少女が生粋の魔女を見上げます。

 そうするとその魔女の方はというと……。


「……ぴと」

「……っ、ひ、ひぁぁっ?!」


 いきなり、お嬢の平たいおっぱいをタッチされました。

 敏感なロリエルフは胸を抱えてしゃがみ込んで、半泣きでアクアトゥスさんを見上げます。


「ニヤリ……フ、フ、フ……」

「な、ななななっ、なにすんのよぉっ?!」


 魔女に優越感の微笑が浮かび、エルフ少女は大きな声で抗議されました。

 そりゃ当然です。


「いえ……なんとなく……。兄のアトリエを任せられるだけの……資質があるか確認……確認しただけです……」


 うん……何言ってるんでしょこの人……。


「ふーん……どれどれ~?」


 お嬢ってかわいいです。

 ウルカもそう思ったんでしょう。ってことで一緒になってエルフの胸部をペタペタされました。


「やっなにすんのよぉっ、ひぁぁっ、止めなさいよぉ~っっ、あたしはエルフなんだからぁぁ~っっ!! 大器晩成型なのーっっ!!」


 真っ赤になって恥じらうお嬢。

 涙を浮かべて止めて止めてと、くすぐられるお子さまみたいにもがきます。


「なにしてんのおたくら……」

「はい兄様、自分より胸の小さなお子様でした。住み込みの小さな小さな押し掛け女房なんてかわいいものでした。これからも兄様のアトリエをよろしくお願いします、リィンベル様」


 ああそう、そういうこと。

 乳による絶対的な(くつがえ)せぬ上下関係ってやつね。

 アクアトゥスさんの頭ん中、ホンットわからん……。


「だ、だだだ、誰が貧乳よっ! あと20年もすればっ絶対っ、絶対すごいんだからっ! いつかっ絶対っ、吠え面かかせてあげるんだからぁっ!!」


 いや誰も貧乳とは言ってないようなー……。

 つかそれよりワイバーンの追跡が優先事項だし……。


「笑止……」

「クスス……この子かわいいなぁ……ボク気に入ったかも……」

「っっ~~~! 覚えてなさいよっ、絶対絶対二人より大きくなるんだからっ!!」


 緊張感……わくわく感……薄れてきたぁ……。

 いや、こういうイベントはさ、家でやろうよ家で。

 何もこんなところで……ああ、お嬢も厄介なのに好かれたもんねー……。


「あーー……細かいことはまあおいといて。先に進むよー? だってほら、このワイバーンに何か目的があるんだとしたら……なんとなくだけど、その目的地に到達する前にしとめるのが無難だと思わない? ってことで少し急ごうか」


 なんかパーティリーダーっぽいことしちゃってます。

 指揮らず後ろからこそこそが俺の趣味なのに……うん、でもみんな納得してくれました。


「……とか言いながらなにしてんのせんせー?」


 や、何と言われましても。


「いや、うん、もったいないし。かさばらないのだけ回収しておこうかなとか……」


 近くの灰に素材が一つ埋もれてたのです。

 これで……10、11、12、13……うははっ。


「言ってることとやってることが全然違うしこの人……アトゥのお兄さんなのも納得かも……」

「てへへ……実はダリルちゃんもこっそり拾ってたりしたり……。まあでもこれはこのへんに置いておこっか」


 [各種魔物素材x13を手に入れた!]


 でもちょっと邪魔なので、隠し階層に入る前に彫刻の物陰にそれを隠しておくことにしました。



挿絵(By みてみん)

胸サイズという絶対的なヒエラルキー イラスト:シーさん


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[一言] >乳による絶対的な覆せぬ上下関係ってやつね。 もしかして:胸囲の格差社会
[良い点] 貧乳はステータスだ
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