54-1 カマの力でカマを救うべきか否か とかいう命題 - 公都ぶっちぎりの凄い客 -
前章のあらすじ(ざっくりエディション)
夏島作るよ。
ドロポン凄い。
アルフレッド結婚するって。
生態系破壊、ココナッツ、イカ、MAGURO!
やっぱりマナ先生には勝てなかったよ……。
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水涸れの村 あとオカマとアインスさん
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54-1 カマの力でカマを救うべきか否か とかいう命題 - 公都ぶっちぎりの凄い客 -
「じゃあ後よろしく、大公様」
「うむっ、こっちは任せておけ。まったく俺もいい友人を持ったものだ」
しばらく出番がなさそうだから、いったんドロポニア島の開拓から手を引く。
そうみんなに伝えると、なんと大公様がここの管理者になりたいと立候補してきました。
なんかべらぼうにこの島が気に入ったそうで、経済的に自立するまで面倒を見たいとか、なんとか。
やったね、出資者と管理者を同時にゲッツだぜ! でした。
「けどみんな不審に思うでしょうね。日に日に大公様が、焦げ茶色の肌になっていくんだろうし。あ、今さらだけど、日焼け止めとかいりますー?」
「うむ、俺は要らんが妻とマハが欲しがるはずだ。後で直接取りに行こう」
「ははは、勝手知ったる他人のなんとやら、ってやつですね。んじゃ、そういうことで」
それと大公家の財力を使って、スレイプニルの石段をもう一つ作りました。
これはこの南国ドロポニア島と公城を繋ぐやつです。
大公様たちがいつでもこの島にこれるようにと、最初は友人としての心付けのつもりでした。
ですが大公様は、これを開拓に使う気満々です。
「アレクサント殿のおかげでいい夢が見れそうだ。そうだ、後でレウラを一匹貸してくれ。リィンベル殿と一緒に西の大陸との商談を取り付けておこう」
「いや、公務があるでしょ、大公様……」
「問題ない。マハに代わらせる」
「なるほどそんな手が。酷い父親ですね。んじゃ、しばらく島を任せましたよ」
「うむ。公務の片手間に栄えさせておく」
なんだか、大公様との主従が逆転しているような気がするけど、まあ本人が楽しそうならそれでいいか。
開拓を大公様とヤクザ、アルフレッドに丸投げして、俺は平穏なアトリエ生活に帰りました。
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それから穏やかな日々が続きました。
いつものように店を開いて、釜をかき回して、たまにアシュリーと冒険もして、帰ってきたみんなと賑やかな夕飯を食べる。そんな当たり前の生活です。
「先輩、ドロポン島に弟たちも連れてくっス。先輩もくるっスか?」
「いや遠慮しとく。つか、なんかやたら日焼けしてないか、お前……?」
「やっぱ海は最高っス!」
「日焼け止め持ってけよ、そのうちガングロギャルになっちまうぞ……」
「なんスかソレ?」
「特殊メイク」
繰り返す。夏島にまだ浮かれてる連中もいたけど、平穏な日々が続いていきました。
お嬢は大公様にくっついて西の大陸に渡ったかと思えば、あちらの王侯貴族に接触して、島に遊びにきてもらう約束を取り付けたそうです。
「あのねっアレク、悪いんだけどあのキラキラした光が浮かぶキューブ、作って!」
「……キューブ、キラキラ? そんなのあったっけ?」
「もうっ作ったじゃない! 温泉街の泉に入れて、観光名所にしたでしょ。アレをドロポン島に使わない手はないわ! 今度向こうのお偉方の接待があって――」
「そういえばそんなのあったかもね」
精霊伝説とかでっち上げて、アルブネア温泉街を観光地として盛り上げよう。としたんだっけ……?
「あったかもね、じゃなくてアンタが作ったのよっ!」
「うーん……そうなんだけど、レシピがなぁ、アレの製法どうだっけ……」
「錬金術師がっ、大事なレシピをっ、なんで忘れられるのよっ!?」
「ぁ……あの、私、覚えています。綺麗、だったから――」
「じゃあアインスさんに任せた」
「ぇ……」
「そうね、アレクに任せるのは心配だから、ここはアインスに頼むわ」
そういうことになったので、寝ながら作れる調合薬ポーションを完成させた俺は、アインスさんと店番を交代することにしました。
カウンターに腰掛けて、客足の落ち着いた昼過ぎのアトリエをぼんやりと眺めながら、いい加減な接客をしてゆきます。
「アインスちゃんはおらんかのぅ……?」
「奥にいるけど仕事中だよ。今邪魔したらお嬢が怒る」
湿布薬一枚だけ手にした爺さんたちが、それをピラピラさせながらレジに並んだかと思えば、ため息を吐きました。
アインスさんはジジババに、特にジジの方によくモテます。
「ロリコンから物を買うのは気が引けるのぅ……」
「そうじゃのぅ、もう帰るべや」
「はいはい、帰った帰った。アインスさんが悲しむから、ポックリ死ぬなよ~」
職人街の爺さんたちは湿布薬をカウンターに投げ捨てて、杖も突かない健康な足取りで立ち去っていきました。
「グリムニールちゃんまで囲ってるくせに、このロリコンが偉そうに……」
「最近の若者はのぅ、風紀の乱れが醜いもんじゃのぅ」
「ダリルにまで手を出してるからなぁ。はぁぁ、とんだドスケベ野郎じゃの……」
「さっさと帰れよ……」
今度コイツらの湿布薬、強い薬にすり替えて悶絶させてやるかな……。
いや、それはアインスさんが怒るかな……。このジジィどもと妙に仲良いし。
「ん……? どうしたジジィ、忘れ――ありゃ?」
「おほっ、あらいい男っ……♪」
入り口の鈴が鳴ったので、てっきりジジィどもが引き返してきたかと思ったら、なんかもっと物凄いやつがエンカウントしていました。
つーか、おほっ♪ とか久々にきいたよ。ウィンクとかされちゃったし……。
「あらやだっ、目が合っちゃったわっ♪」
それは立派なオカマさんでした。
鍛え上げた痩身の体躯の男が変な内股で、一直線にこっちに早足で迫ってきたら、あなたどうしますか? 俺はイスを後ろに下げて十分な距離を確保しました。
「何かお探しですか……?」
「ウフフ……シャイボーイなのね♪ アタシの名前はトレンデ、あなたにお願いがあってきたのよ。希代の錬金術師アレクサント様。んほっ♪」
濃いな……。ノースリーブから露出したその肩が、同性から見ても非常に男らしい。
だけどオカマ。マッチョ系オカマ。すげぇ濃い客がきたもんだな……。




