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6-01 両手杖にオーブはロマンです 2/2

 お嬢元気かなぁ……。

 北に帰ったっきり音沙汰ないけど、ちゃんと上手くやれてるのかな……。


 なんかこんなすごい店見たせいかな、心配になってきたよ。

 そりゃ、分かれるときはショック受けてたみたいだし……あ、罪悪感ぶり返してきたー。


「ようこそおいで下さいましたお客様。さて当商会にどのような御用向きでございましょうか」


 入るなり店員さんが待ちかまえていました。

 丁重にこちらへお辞儀しつつ、マジシャン17歳の風体を失礼がないよう礼儀正しく値踏みしてきました。


 ああよかったセーフだったみたいです。

 つまみ出されたりはしませんでした。


「うん、初めて入ったんだけどすごい店ですね」


 あえて本題は避けて遠回しにいきましょう。

 目的買いなのが見透かされるとふっかけられるかもしれないです。


「はい、当店は紳士淑女にふさわしい特別上等な品を取り扱っておりますので、それ相応のブラフとか飾り気というのものが大切なのです」

「ハハハ、それわかりますけどぶっちゃけちゃダメな部分ですよね」


 店員さんは壮年の気品あるおじさんでした。

 どこかの執事とか言われたら信じちゃいそうです。


 赤基調の店内は高級感に溢れ、大粒の宝石がむき出しで絹の上に並べられていました。

 他の従業員に目を向けてみても気後れするくらい質が良いというか、いかにも貴族様をおだてるのに特化してる感じです。


「それで実は杖に装着するオーブが欲しいんです。予算は50000zくらいまでを予定しています」

「そうでございましたか。ではどうぞ、こちらのお部屋にお越し下さいませ」


 やっぱ丁寧過ぎて落ち着かないなぁ。

 紳士おじさんに案内されて奥の別室に通されました。

 さっきの場所にはオーブらしきものが見あたらなかったのですが、ありましたありました。


「おー、こりゃすごい」


 でっかいのから小粒なものまで、全方位が虹色にキラッキラッ輝いています。

 まるで宝石箱の中に入ったかのよう。


「ところでどなたの紹介で当店にお越しに?」

「ダリル。職人街で鍛冶師をしている子ですよ」


 貴族様には魔法のオーブなんてあまり縁がないんでしょう。

 他に客もいないのでおじさんも言葉を少しだけ崩したみたいです。


「なるほどダリル様でしたか。確かアカシャの家の卒業生ですね。あそこの親方にはいつもお世話になっております」

「へぇそうだったんですか。ええ、ダリルとは同級生なんです」


 学歴誇るみたいでイヤらしいけど高級店だし、見栄くらい張った方がいいだろう。

 そう答えるとおじさんも、このマジシャン17歳が来店したことにやっと納得がいったみたいです。


 まあそろそろいいだろう。

 品物が気になるといった態度で、ジロジロと室内のオーブに目を向けます。


 魔力を増幅させるものなので、それぞれは適度な間隔で離されて、それぞれの値札は宝飾的価値から見るとどんぶり勘定も良いところです。


「さて、本日はどのようなオーブをご所望でしょうか」

「ああ、それなんだけど……」


 回答の代わりにあのダリルの杖を見せました。


「ほう……ずいぶん使い込まれていますね。しかしこれは簡素ながらも素軽で……安物とは言い難い良さがあります」

「三年前くらいにダリルが作ってくれたんです。それで実は、そのダリルと新しい杖を作ることになったんですよ」


 プロフェッショナルらしくおじさんは先端のオーブに目を向けました。

 そんなに見られてもそれ二束三文の安物です。

 見ないで恥ずかしい、場所が場所だし。


「ま、そこで飛びきり良いオーブが欲しいんですよ」

「……かしこまりました。では得意な魔法を3つほど列挙いただけますかな」


 しかしこの店員さんなんかこなれてる感じがする。

 もしかしたら俺みたいな客も珍しくないのかもしれない。


 魔法使いなら自分にあった杖の一本も欲しがるものだろうし。


「ウィンドカッター、アイスボルト、アーススパイク。あまり苦手な魔法はないです。戦い方としては……下級魔法をせこせこずる賢く撃つスタイルかな」

「なるほど……さすが卒業生ですね。若いのになかなか大したものです。それでは今しばらくお待ち下さいませ、お客様にふさわしい物を見繕いますので」


 なんか正直に言ったら素直に感心されました。

 プロ意識が刺激されたのか、やたらと深く思慮しながらあちこちのオーブに目を向けています。


 とはいえ在庫をしっかり把握しているんでしょう、言うほど待つことはありませんでした。

 イスに着席を勧められて、黒塗りのテーブルにオーブが二つほど置かれます。


「ならこちらをおすすめしましょう。片方は妖魔の瞳、氷系の魔力効率を特に引き上げます。それだけではなく増幅力も属性を問わずハイスペックです。しかし……難点を申しますと出力が極端でピーキーですな。細かい威力調整に向いたオーブではございません」


 妖魔の瞳。聞く感じでは破壊力重視暴れん坊。

 アメジストみたいな紫色をしていて、他のオーブと見比べると少し小粒です。


「それからもう片方のこちらが森星の宝珠。地属性の高い増幅作用があります。その他属性はほどほどといったところですが……はい。妖魔の瞳ほどの出力はございませんが、それだけ安定していますね。細やかで丁寧な戦い方を希望されるならばこちらが正解です」


 森星の宝珠。値段相応の無難系。

 そのエメラルドグリーンの輝きは心を安らげてくれて、綺麗だし妖魔の瞳より大きくて豪華。こっちのが売れそう。


「まあ……こうやって勧めますと、お客様は皆こちらの森星の方を選ばれるのですが……いやはや……」

「あーわかる気がします。あ、少し考えさせてもらっていいですか?」


 大事な買い物なので真剣に考えないと。

 50000zといえば農場長感覚で言うと奴隷が半身買えちゃう。

 ロドニーさんの依頼で言うと2.5回分ですよ。


 ま、ぶっちゃけ、たかが杖一本に投資し過ぎなんだけど後に退く気はないです。

 マナ先生に一歩でも近づきたい。

 ……じゃないと貞操の危機みたいなー……あ、ここは考えない方向でいこう……。


「うーん……どっちも綺麗だなぁ……」

「宝飾品としての価値も十二分にございますよ。ポロン公国は冒険者の稼ぎで経済利益を得ていますからね、こういったものが優先的に買えるのも冒険者の特権です」


 へーそうなんだ。

 そりゃ綺麗だからって金持ちが買い占めたら魔法使いもたまったもんじゃない。

 不備もあるんじゃないかとも思うけど、そのへんは助かるシステムです。


 そう考えてみると、あの聖銀砂の独占だって元々は同じような理由だったのかもしれない。


 それはそうと妖魔の瞳なんですけど、森星の宝珠と比べるとなんって不気味なんでしょ。

 石内部の混合物がスターを作っていて、なるほどこれは確かに妖魔の瞳という名称が一番似つかわしいです。


 ぶっちゃけ綺麗だけど不気味、呪われそ。

 うちはただでさえ呪い憑きがいるわけだし、そう考えるとアトリエにこれはちょっと……。


「あの……やはり森星の宝珠にされますか……?」


 おじさんにもそれとなく伝わっちゃったみたいです。

 彼のその問いかけは、どこか意気を落としているようにも聞こえました。


「性能そのものは最上位クラス、10倍の値段のものと比べても何の遜色もないのですが……。なにせ本当にピーキーもピーキーでして……自信を持ってお勧めしているのですが全く売れないのです……」


 そりゃそうです。

 後衛って前衛のフォローが最優先ですから。

 ドカンとぶっ放されて巻き添えなんて目も当てられないです。


 増幅効率が低かろうと高い破壊力が欲しければ、中級以上の魔法をじっくり溜めればいいわけですし。

 なら消去法で森星の宝珠かなー。


「それにこれ、不気味でございますよね……」

「うん、10人に聞けば、そりゃ10人皆が不気味と答えますね。呪われそうです」


 スペックはわかったけど見た目がマイナスです。

 こういうのはほら、こういうのが好きな人が買うべきです。ほらー、ホラーな見た目だけに。うん強引だこれ。


「やっぱりそうですか……。なら他の商品の売れ行きにも影響しますし、ここは一つ一割引でご提供するのもやぶさかではないのですが……」

「え、ホント?」


 一割引と聞いて気が変わった。

 それなら話も変わります。


「あーでも一割引じゃなぁ……。五割引くらいなら買うんだけどなぁ……。いや、でも、うーんでもなぁ……」


 そうかそうか値切れるんだコレ。

 そうなるとなんか欲しくなってきたよ。

 おっかないコイツがかわいくなってきました。


 お手軽割引価格で買えちゃうとなると、なんかもー頬ずりさえしたくなります。


「う~~~ん……ぅぅぅ~~ん……?」


 もっと渋い顔して悩んでみよう。

 チラチラ妖魔の瞳に目を向けながら、ポジションは森星の宝珠の前を維持します。


 うんいい感じ、我ながら名演です。

 おじさんにさえ不都合がなければもうちょっとお値段下げてくれることでしょう。


「……わかりました。それでは……30%OFFの35000zでどうでしょうか」

「うーん……けどやっぱり不気味だしなぁ……」


 はいもう一声!


「そうですか……なら原価に限りなく近づけまして……。30000z……30000zでどうでしょうお客様」


 原価。それはとても良い響きの言葉です。大好きです。

 ギブアンドテイクとはほど遠いですが、あらゆる手間賃をおごってもらったようなものです。


「よし買った」


 気に入ったので買いました。

 こうして俺は極めてピーキーとされる問題ありの宝珠、妖魔の瞳をたずさええ意気揚々とアトリエに凱旋したのでした。



 ・



「あ、来た来た、遅いじゃんアレックスっ!」


 カラーンと玄関扉を開いて鈴を鳴らせば、接客用のテーブルでダリルとアインスさんが楽しげなお茶をしていました。


「ほら言われた通り持ってきたよ。だから見せてよ、例の強化合成ってやつ、早く見せてよっ。私わくわくしちゃってっ、もうこのお茶三杯目なんだからねっ! ふぅ……アイちゃんもう一杯♪」


 我が物顔ってこのことを言うんでしょう。

 アインスさんも嬉しそうに4杯目の準備を始めます。高いお茶なのわかってるなコイツ(ダリル)……。


「あーー……。これ以上テンション上げるのもどうかと思うけど……はい、こんなオーブ買ってみたよ。これがすごいすごい、なんと原価まで値切って……30000z」

「うぉぉっ、こ、これっ、これってもしかしてっ、妖魔の瞳じゃんっ!? って、30000zっ?! え、ええーぇぇーーッッ?!!」


 そのダリルにアメジストカラーの妖しきオーブを見せると、さらにまたキラッキラッと瞳を輝かせるのでした。


【俺だけ超天才錬金術師 迷宮都市でゆる~く冒険+才能チート 旧(異世界で行う傍若無人(ry】

といった名前に改名します。2月25日ほどに変更予定。

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