51-6 公国屈指の精鋭をかき集めよう 1/2
※申し訳ありません、投稿ミスで1話先の話を投稿していました。
そこで1話前に
51-5 飛空艇、もとい五発式飛竜艇を作ろう を追加しました。ご不便をおかけします。
【ついでに新作宣伝】
読者の皆様、いつも本作を読みに来て下さりありがとうございます、別作品の宣伝です。
先週からこんな新作の連載を始めました。
https://book1.adouzi.eu.org/n9230fc/
【魔界を追放された猫ですが、人類最強の娘拾っちゃいました】 どうぞごひいき下さいませ。
それから俺は船より投下する予定の爆弾、回復剤、食料をアトゥとアインスと共に大量生産していきました。
それと同時にアルハザード王国への特攻に付き合ってくれる命知らず、もとい精鋭をかき集めたのです。
・
・冒険科教官アシュリー
アカシャの家の教員宿舎に押し掛けました。
「悪いけど来てくれる? 冒険者に戦争の片棒担がせるのもどうかと思うんだけどさ」
「水くさいっス! また死にかけて性悪小僧になられても困るっスから、この魔剣アレクサントにかけて先ぱぁぁぃ♪ を守るっスよ」
アシュリーはいつだって俺の味方でいてくれます。
教頭に追われた遠いあの日も、かくまってくれたのはアシュリーでした。
「俺は俺を守るつもりはないが、俺の魂が古なる者を八つ裂きにしろって言ってるらしい。付き合うぜ俺」
「そりゃ助かる。けどホントに良いの? 最近アカシャの家で教師始めたばっかじゃん?」
聞く限りでは魔剣とアシュリーの評判は上々でした。
アシュリーは落ちこぼれの気持ちを知っている分、良い先生になれると思う。
「そこは非常事態っス。それに自分らの公都を陥落寸前まで追い込んだ怪物が、まだのさばってるっていうなら、それを見逃せるわけがないっスよ!」
らしくもない暑苦しいノリでした。
まあ事実、公国に住む者からすればそれくらいのことをされたわけです。
「なあアシュリー、今は別にいいけど、現地で熱くなり過ぎないようにな」
「何言ってるんス、そっくりそのまんま先輩にお返しするっスよ、ソレ」
確かに。そう返されては言い返せませんでした。
・
・アルブネア領主アルフレッド
アルブネア領領館、執務室にアルフレッドの姿を見つけました。
「悪いけど一緒に来て」
「答えるまでもないな、最初からそのつもりだ」
主語をわざと抜いたのに以心伝心、やつはわかってくれちゃいました。
「おー、あっさり受けてくれるのな。もしかしたら死ぬかもしれないけどマジでいいの?」
「俺は貴族だ。いずれアルブネア領に降りかかるであろう火の粉を払うついでに……友人の助けになってやる、ただそれだけのことだ」
書類を片付けながら、ヤツは俺に目もくれずにそう言っていました。
いつものツンデレなのでいいんですけど。
「そうか。じゃあ付き合ってくれ、もし死んだら責任持って俺がお前をホムンクルスとして作り直してやるから。エミリャ・ロマーニュにも、新しいお前にも、俺に騙された偽りの人生をくれてやるよ」
「ふんっ笑わせる。皆が、いや仲間がそうならんように俺は行くのだ。……飛竜艇とやらの乗り心地も気になるしな」
「そこはアストラコンさんがやるって言ってくれたんだ、最高に決まってるだろ」
「ああ……不謹慎かもしれんがな、俺は出陣が楽しみだ。レウラに引かれて船ごと空を飛ぶ、ワクワクして今夜は眠れそうもないな」
アルフレッドの中には少年の心がありました。
めんどくさい精神構造してるのであまり表に出てきませんが、こういう顔をするコイツが俺は嫌いではない。
「俺だって楽しみだよ。竜で海を渡るなんて石油王だって出来ない最高の贅沢だ」
妙な言葉を使い始める俺に、アルフレッドがツッコミを入れることはありませんでした。
・
・モショポー&ヘキサー
その足で温泉街に向かいました。
レウラがいないと不便なものですけど、頼らずにゆっくりと現地農家の荷馬車に乗せてもらうのも乙でした。
「ってことでよろしく」
「何でや?! 女将になるとはゆーたが、傭兵になるとはいっぺんもゆーてへんで! うちは鑑定士や、魔法使いやない!」
いやいやこの土地を守るという契約はしたでしょ。
それを拡大解釈して、自衛のための遠征に参加してもらいます。
「モショポー、オーナーに取引を要求するつもりか? エルフの天敵を滅ぼして下さるとおっしゃっている方に、交換条件を求めるようなクズには……残念ですが再教育が必要です。下を脱いで尻を出しなさい」
「ひっひぇっ、再教育はもういややぁぁー! あの血反吐をまた味わうくらいならっ、特攻の方がまだマシやぁーッ!!」
悪党と鬼教官――いやただのサディスト? この2人は2人で天秤が釣り合ってると思う。
ヘキサー・フレイム元曹長女将はモショポーさんという小悪党のたづなを引けるただ一人の才能でした。
「いいよ、ただ働きするやつは信用できないし、こっちも2人に可能な便宜ははからせてもらいたい」
「ホンマかいなっ?! なら金やっ、それとこの宿に増資してもらうでー!」
「オーナー、あまり甘やかすとつけあがります。この雌豚の本質はクズ、貴方が飴を与えてしまうと、私がその分の鞭を打たなければならなくなります」
ヘキサーさんはその言葉の最後に一瞬だけ愉悦に笑いました。
嗜虐心の凝り固まった凍り付くような笑みが、鞭打てる喜びに歓喜していたようにも見えなくもないので見なかったことにしました。
「そ、そないな言い方、怖いやん……? じょ、冗談でゆーてるんやな、そうやろ? そうやとゆうぅてやぁっ?!」
ヘキサーさんは返事を返しませんでした。
たわわな乳房をたぷんと揺らしつつ、ただコキコキと己の首の間接を鳴らしているだけです。
「なんかグダグダだな。まー、そういうことで2人ともお願い、今回は力を貸してよ。じゃないとこの前宿泊してくれたあの姫さん、ひとりぼっちになっちゃうからさ」
サディスティックで戦慄をともなう空気がそこで変わりました。
彼らはプロです。己の仕事に誇りを持っていました。
「それは……それは良い気分せぇへんな……。ムカつくけど、な~んかほーっとけない姫さんやったし。ま、ええで、今回は特別にがんばったるわ」
「オーナー、ならば私から貴方に依頼しましょう。おつきあいする代わりに報酬として、エルフに勝利を見せて下さいませ」
悪党がたまにやさしくなるとこれだからいけません。
俺としたことがモショポーさんの意外なやさしさに、小さく感動してしまっていました。
・
・アトリエ常連冒険者
公国のとあるSクラス冒険者にも声をかけました。
ついでだからと店に来てくれるそうで、久々に店番でもして彼を待っていたのです。
けど来ない。しょうがないのでギルド本部におもむき、帰ってくるのを待ち伏せしました。
「よう店主、そっちから来てくれるなんて珍しいな。で、話ってのはなんだよ、ひっくっ……」
「何で仕事から戻ってきたところなのにもう酒入ってるんですか……」
えっと、この人で大丈夫なんだろうか……?
ほら、いつもポーションを樽買いしてくれるうちの常連、酒臭くて荒っぽくて豪快なあの人です。
うちのポーションと酒を混ぜて飲んでるとかなんとか、かなり個性的なあのお客だよ。
「ま、消毒みてぇなもんよっ!」
「いえ、言ってる意味がよくわかりません」
「だからよ、ほら見ろ、手すりむいただろ? だから消毒がいるだろ? ならポーションカクテルの出番ってわけよっ!」
ギルドに凄腕を冒険者を紹介して欲しいってお願いしたら、勧められたのがこの男。
ハーヴェスという名の、血液がアルコールで出来てるような人でした。
「ん、どうした?」
「いや、Sクラスともなると次元が違うなって……。それよかお客さんSだったんだね。ごめん、全然そうとは見えなかったから驚いたわ」
「わはははっ、言ってくれやがるな! ま、ホント言うと話はギルドを通じて聞いてるぜ、俺でよかったら付き合ってやるよ、お国からzもたんまり出てるしな!」
「えー、そんなあっさり決めていいの? 命がけの作戦なんだけどコレ」
というか後で念押ししに行かないとな。
酔ってて覚えてませんでした、とか言い出す可能性あるし……。
「別にいいんじゃねぇの。ああ、ならこれからはポーションを半値で売ってくれ、永久にな」
「永久に半値っておい、それふっかけすぎだろ……」
転売で美味しくいただけちゃうコースだし、さすがにそういうのはちょっと困る。
「いやぁ、それくらいでも儲け出てるんだろうなぁ、ってなぁ?」
「いや勝手に半額なんて約束したら怒られるし俺、店主だけど。……2割引きじゃダメ?」
「いいぜ、それで手を打とう。うひゃひゃっ、言ってみるもんだなぁー!」
「まさかのダメ元かよ……」
もうちょっと競り合ってくると思ったらあっさり折れてきました。
永久に2割引か、なんか負けた感あるなこれ……。
「よろしく。とにかく手伝ってくれて助かるよ。頼もしい前衛タイプは何人いても困らないしな」
「なーに、俺らの愛する公国を滅ぼそうとした……ナントカカントカってやつと同じ怪物なんだろ? なら一緒にぶっ潰そうぜ店主!」
Sクラスの酔っぱらい、ハーヴェスさんを味方に引き入れました。




