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6-01 両手杖にオーブはロマンです 1/2

前章のあらすじ


 アトリエに教会からの特使が来訪する。

 要求はエーテルの独占管理。

 貴重なMP回復資源は教会が必要な者へと流通させるので契約を結べ、といったもの。


 破格の条件だったが彼は提案を断る。


 続いてクレイゴーレム作りに着手する。

 アクアトゥスの情報によると、土と、聖銀砂と呼ばれる素材が必要不可欠。


 そこで彼は冒険者ギルドにおもむきその聖銀砂を買い求める。だが断られてしまう。

 何と聖銀砂は教会が独占管理しており取引すれば法で罰せられるのだった。


 ――時を戻して今より三年前のこと。

 彼は冒険科にてマナと呼ばれる教師と知り合った。

 マナ先生は若い男の子が大好き。


 それ以上でもそれ以下でもないやり取りの後に、ついでに(・・・・)彼女は夢を見いだせぬアレクサントを慰めてくれていた。


 ――それから現在。


 アレクサントはマナ先生を頼りアカシャの家を訪れる。

 彼女は彼のお願いを快諾。

 学内の初級実習迷宮最深部にて、秘密の封印区画への道を解放する。


 超高難易度のそのエリアでアレクサントは超一流冒険者の実力というものを見せつけられつつ、ついに聖銀砂を手に入れることになった。


 その後、通常階層に引き返すとダリルとアシュリーに遭遇。

 何をしているのかと問いつめれば、ダリルはアレクサントの新しい杖を作るために素材集めをしてくれていたのだった。

―――――――――――――――――――――――――――

 続・連鎖劇 夢の合作、ダリルと共に最高の杖を作ろう

―――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――


 ダリル様の杖はいつだってアトリエと共にありました。

 本来の役目を終えたそののちも、主人はけしてこれを手離そうとはしませんでした。


 学生時代からの愛着があったのも事実ですが、それは習作ながら杖として軽量でムダのない良品だったのでございます。


 はい。毎日毎日、少しずつ錬金釜の薬液がダリルの杖に染み込んでいきました。

 その恩人の杖は気づかぬほど緩やかに道具として強化されてゆき、やがては錬金術に必要不可欠な商売道具となっていったのです。


 それでは皆様、楽しい楽しい杖作りのはじまりでございます。

 当時の主人は恩師マナ様に圧倒的な力を見せつけられ、ずいぶん力に飢えておりました。


 なにせ趣味人なものでございますから、あくまでそれも一過性の気まぐれでございましたが……。

 ですが少なくとも動機としては十分過ぎるものがあったと言えましょう。


 さあこれより主人とダリル様は最高の杖を仕立て上げます。

 その杖はダリル様のように力強く、しかし主人のように非常識で規格外の一品でございました。


――――――――――――――――――



 ・



6-01 1/2 両手杖にオーブはロマンです


 ダリルには感謝しなきゃいけないです。

 思えば職人科にいたときからそうでした。

 彼女はいつだって俺がアルバイトを受け過ぎると、お節介にも理由を付けて手伝ってくれていました。


 冒険科に入るときには今のダリルの杖まで作ってくれて、これって考えれば考えるほどに、ああ……なんて良いヤツなんでしょう。


 それとはまた話が飛びますが新しい杖が手に入ればもっと強くなれます。

 タイミングからするとマナ先生に無双されたすぐ後で、これまさに渡りに船。

 これでほんの少しだけでもあの人に近づけるのですから、なおさらダリルに感謝しないわけがないです。


 ああ、彼女も17ですし最近どんどん女性らしくなっていっています。

 ただでさえ元から大きな胸がタンクトップいっぱいに、限界知らずの成長を続けておりまして、なかなかそれが……うん……。


 あれ、でもダリルって……こんなにかわいかったっけ……。

 全力で物に釣られてるって自覚はあるんですけど、卒業式のときにあげた香水もあれからちゃんと使ってくれていて、それが俺にはなんか嬉しくて……あれれ……?


 いや、いや認めない!!

 ダリルなんかに萌えてない!!

 これは友情! 変な気持ちなんて持ってないしっ、頼もしい鍛冶師っぷりに憧れとか尊敬を覚えただけ!


 だって素材調達から杖一本仕上げてプレゼントしてくれるだなんて、そんなん魔法使いだったら誰だって惚れるわーっ!!

 いや認めない、惚れてなんていない!!


 ……あ、失礼、俺としたことが我を忘れかけていました。

 こんな些末なことは忘れて楽しい杖作りのことを考えましょう。


 そうです。

 実はダリルと杖を合作することになりました。

 二人の力で、他じゃ手に入らない最高の一本を仕上げてやります。


 それが鍛冶師である彼女に対する、最大限の敬意であり感謝です。

 貸しがまた増えるのが困りものですが、ダリルの夢は確か最強の武器作りだったはずなので、ここは全力を尽くすのが最適解と言えましょう。


 さて。ダリルには強化合成技術について説明しておきました。

 アクアトゥスさんに教わったアレです。

 アイテムに素材を添加して、その性能を強化するって技術です。


 続いてですが、杖の主材料はミスリルに決定しています。

 実は昨日の迷宮探索で良質の霊銀鉱を確保出来ました。


 通常階層ではなく、またあの封印区画に戻るはめになりましたが……マナ先生のおかげで良い採掘ポイントに出会えました。


 今頃ダリルが霊銀鉱を精製してミスリルインゴットに一次加工してくれているはずです。

 彼女がインゴットを届けてくれるまでに、こちらも目当てのものを手配しておかないとです。


 ミスリルって品質ピンキリらしいですけど、どうも迷宮からしか産出されないレア素材だそうです。

 強度と魔力の増幅効率に優れ、術者に多少の魔法耐性も付与してくれるとか。


 ちなみにあえて脱線するけどダリルによると、近接武器に使うなら高品質のミスリルでもないと鉄製品に見劣りする残念スペックになるとか。

 だからミスリルソードみたいなヤツはアシュリーみたいなエンハンサーくらいにしか好まれないみたいです。


 ……すみませんね、こういう話好きなんですよ。

 ならいつか余裕が出来たらアシュリーにも作ってやろうと二人で決めました。

 お互いアイツには世話になっています。


 で、話を戻しますね。

 だから上質なミスリルはそれだけ貴重です。

 俺なんかのためにダリルがここまでしてくれるだなんて、嬉しいですけど反面申し訳ないです。


「アインスさん、ちょっと出かけて来るから店お願い」


 だからこっちだって全力でいこう!


「はい、かしこまり、ました。ちなみに、どちらへ?」

「中心街のカーネリアン商会。うん、友達の実家がやってる店なんだ。あ、それとダリルがもし来たら上客用の高いお茶でも出してやって、今日は特別」


 外出の支度をしながらアインスさんに店番を頼みました。

 カーネリアン商会はお高級な店なので、念のためローブを一度脱いで窓から埃をはたきました。


 主人のだらしない格好より、アインスさんはダリルというワードに反応したみたいです。


「ダリル様が……はい、わかりました。いってらっしゃいませ、ご主人様」

「もし来たら仕事の手を止めて二人でゆっくりしてていいよ。じゃ、お願いしますアインスさん」


 ダリルも職人街の人間なのでちょこちょこ遊びに来ます。

 喜ばしいことに二人はわりと仲良しになってくれて、労働中毒ワーカーホリック気味のアインスさんに休暇とかゆとりってものを提供してくれていたのでした。


 ……ローブを身に付けなおしてさあ、出発です。


 ・


 さてまずはテクテクと中心街を目指します。

 平日だっていうのに公都は相変わらず往来が活発で、進めば進むほど賑やかになっていきました。


 そうそう微妙に話戻しますけど。

 せっかくだし今までの杖、あのダリルの杖について軽く触れておきます。


 あれはスズ合金製の間に合わせです。

 いたってシンプルで飾り気もなにもなく、先端に付ける各オーブも最下級の安物でした。


 はいそうです。

 なら今回の新作には飛びきり上等なヤツを使うしかないですよね。

 今は少しでも強くなりたい気分ですし、半端な物じゃダリルに対して失礼です。


 となればここは全力で、間違いのない買い物をしなくては。


「あ、ここか。うーん……なんか……うーん……」


 そんなに遠くないです。

 目当てのお店、カーネリアン商会の一支店に着きました。


 取り扱いが幅広いので市内でも複数の専門店に分かれているのですが、ここは特に入りにくいです。

 てか入ったことないです、まるで縁がなかったので。

 つかこんなところに入り浸る17歳がいても困ります。


 どちらにしろ宝石店(・・・)の前で突っ立ってたら不審者です。

 覚悟を決めて、ちっちゃな豪邸みたいなそのお店に飛び込みました。


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