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5-04 聖なる銀求めて地下深く 1/3

 アカシャの家におもむきマナ先生を頼りました。

 彼女は教会の人間でもありましたが、知っての通り常識の通じないお人です。

 その彼女に私ことアレッきゅんは願いました。


「ごぶさたしておりますマナ先生。さていきなり本題から入って恐縮ですが……お手持ちの聖銀砂をこちらに横流ししてくれませんか?」


 関係者ならば誰もが苦い顔をしてこう言ったでしょう。

 その願いは叶えられない、残念だが聖銀砂は取引を禁止されているのですよ。……と。


「うん、無理。でもアレッきゅんのお願いならしょうがないなぁ……じゃあ今から採りに行こうか♪」


 でも相手はマナ先生なので俺にすこぶる甘いです。

 その返答もこちらの予想の斜め上を行くバイタリティを発揮していました。


「いやそんな裏山に山菜採りに行くみたいなノリで……あ、本気ですかこれ……」

「ごめんね、だって持ってないもん。でも安心して、アレッきゅんのためならお姉ちゃん一肌脱いじゃうっ!」

「はいストップ、服は脱がなくていいです」


 修道着にかけたその手をガシリと引き留めました。

 全く油断も隙もないです。

 あえて人目を避けて校舎裏を選んだのに、ここで脱がれたら昭和のポルノ映画です。


 さて……先生は何やらご興奮めされていましたので話を要約します。


 聖銀砂は流通が禁じられています。

 だから誰にも知られずに調達する必要があります。

 ならば二人だけで迷宮探索するのが一番手っとり早く安全です。


 しかもマナ先生は聖銀砂が確定産出する迷宮を知っているそうです。

 なら善は急げ、その迷宮へと先生が案内してくれました。


「ここって……」

「まずはエレベーターで一番下まで降りるよ、準備はいー?」

「ええまあ……杖は持ってきてますし行けますけど……。でもここって……」


 最初は当惑しました。

 でもなるほどこれが上手く出来ています。


 マナ先生が案内してくれたのは、昔懐かしきアカシャの家の迷宮でした。

 正式名称は第5号迷宮。つまり当時アシュリーと駆け抜けた、あの初級実習迷宮だったのです。


「わかってるわかってる大丈夫、先生に任せてね。はい下にまいりま~す♪」

「なんスかそのノリ……」


 最下層まで降りるとマナ先生は壁の前まで進みました。

 前からそこには意味深なレリーフが彫られていたのですが、先生が手のひらで触れると壁が幻となって消えてしまったのでした。


 なんとこれ隠し通路です。


「ここから先は危ないから気をつけてね。アレッきゅんの実力なら問題ないけど無理しちゃダメだよ?」

「気をつけます。しかしこんなものがあっただなんて……つくづく変な学校ですね」

「そうね~♪」


 冒険科の生徒たちが知るよしもない秘密の場所。

 そこへ今、俺はマナ先生によって導かれようとしています。


「封印区画って呼ばれてるの♪ 本当はあんまり入っちゃいけないんだけど、アレッきゅんのためなら許されちゃうよねっ♪」

「はいきっと許されますよ。それはそうとなんか興奮してきました、封印区画……なるほどこんなものが初級迷宮地下に……面白いです」


 隠し通路から祭壇付きの階段部屋に入り、俺たちは秘密の階層へと下りていきました。

 急に気温が4、5度は落ちたのではないかと思います。

 階段を下り切ると封印区画第一層は、ピリピリと張り詰めた空気で俺たちを歓迎してくれました。


「えっとねアレッきゅん。大丈夫だと思うけど……本当に気をつけてね♪」

「ハハハ、脅かし文句でもなんでもないんですね。気をつけます、死にたくはないですから」


 明らかにヤバいです、二人だけで攻略するようなエリアじゃないです。

 奥から獰猛な鳴き声がいくつも響いて、今までの迷宮とは別格であると親切にも教えてくれました。


 なのにマナ先生ってば楽しそうなこと……。

 愛する生徒との冒険がご機嫌でたまらないと、鼻歌交じりで歩き出しました。


「いくよ~アレッきゅぅ~んっ♪」

「はい。でも恥を承知で一言断っておきます、絶対に置いてかないで下さいね」


 はぐれたら超ヤバい、絶対ヤバい。

 可能な限り先生から目を離さないようにしないと……。


「はうっ、その言葉……もっと弟っぽく言っていいよっ!」

「イヤです。アイスボルトっ」


 通路を進んで行くと小部屋に中ボス級のモンスターが密集していました。

 バカでかいハイオークにヘルハウンド、蟲系の巨大で気持ち悪いのとか、実体がないのでめんどくさいと定評あるレイスさんらがウジャウジャと。


「上手上手っ、さすがダンプ先生のお気に入り。またちょっと成長したんじゃないかな、うふふ~……」


 俺が詠唱するよりはるか先に、マナ先生が無詠唱で神聖魔法をぶっ放していました。

 光がレイスを焼き、ヘルハウンドを焼き、次々と高レベルモンスターが灰へと変わっていきます。


「アイスボルトアイスボルトアイスボルトッ! くぅぅっ、アーススパイクッ!!」


 俺も負けるわけにはいかないです。

 そりゃもう必死で、突撃してくるハイオークの足を狙って氷弾を撃ち込みます。

 次々と敵が転倒し、何とか足止めに成功したところにアーススパイクをドーンと撃ち込みました。


「つ、強……っ、ぬぁっ?!」


 ……おかしいなぁ?!

 これでいつもなら灰になってるはずなのに、ヤツらってば立ち上がり始めるじゃないですか……。

 そこにレイスの闇魔法が飛んできて、こちらの肌をザクリとかすめます。


「大丈夫大丈夫、リジェネかけてあるからそのくらいじゃ死なないよ。……はいお疲れさまー♪」


 浅く肉が切れたかと思えば、見る見る目の前で傷がふさがり……あ、もう痛くも何ともないです。

 ヒーラーといったところでマナ先生は歴戦の熟練冒険者。その強さったら規格外にもほどがあります。

 あれほどいた強敵モンスターは全て綺麗さっぱり灰に変わっていましたとさ……。


「うわ……。なんですかここ……先生強過ぎだし……帰りたーい……」

「ふふっありがと♪ アレッきゅんもいい筋してるよ、装備は中途半端だけどちゃんと戦えてるね、すごいすごい♪」

「や、すごいのはマナ先生です」


 その先も彼女に付き従って封印区画を進みました。

 絶対これ初級レベルじゃないです。超高難易度です。少なくともペアで攻略するようなバランスじゃないです。難易度ナイトメアですこれ!


 なのに……。

 おかしいなぁ……おかしいなぁ……?


 なんかサクサク進んでます。

 さっきの小部屋が一番の過密地だったみたいで、あとはまばらに現れるモンスターをマナ先生が瞬殺瞬殺です。


 ああなるほど理解しましたよ俺。

 これが強キャラってやつですね。プロ中のプロの実力です。


「その調子その調子、カッコイイよアレッきゅんっ、ハァハァ……♪」

「いえ、どう考えても先生の方がカッコいいです……!」


 自分は井の中の蛙でした。

 せまい冒険科の世界で天狗になっていました。

 それを悟ると、同時に力への渇望が沸き起こり俺を奮い立たせました。


「ライトニングッライトニングッ、ライトニングボルトッッ!!」


 ミソッカスは絶対イヤです。

 なので普段の迷宮探索では絶対に出さないがむしゃらさで、強敵たちを討ち滅ぼして進みました。

 それでも8割方をマナ先生に持ってかれましたけど……ああ悔しい!


 ですけどがんばった分だけ探索も順調に進んでいきました。

 そろそろ目当てのものがドロップしてくれても良いんだけど……いやまだ先なんだろうか……。


「ん~~ところで、アレッきゅんってばちょっと背が伸びた?」

「ふぅ……ふぅ……いえどうでしょう、自分じゃわからないですよ」


 モンスターの波が途絶えました。

 もしかしてフロアのほとんど片付けちゃったんじゃ……今や何の鳴き声も聞こえて来ません。


「はぁぁ……ダメだよ、これ以上成長しちゃダメ……ずっとかわいいショタでいてくれなきゃ、先生悲しいよ……」

「いえ先生、俺もう17です。どうとらえてもショタとは言えないです」

「それは大丈夫っ! アレッきゅんってば童顔だから先生十分いけちゃう! でも、これ以上は……ああ、女神よ……っ」


「どこにいくのか知らないですけど、そっちには女神様も行かないことをオススメしてるんじゃないでしょうかねー」


 緊張感がないです。

 あと言ってることがやっぱり聖職者じゃないです。


 俺もこのまま20代になって老いていくんでしょう。

 そう考えると……うん、先生の気持ちもちょっとわからないでもないです。


「大丈夫です、女神公認の野望ですので♪」


 そんなショタコン丸出しな女神とかやだー。

 うーん、でも……そうか。


「じゃあいっそ、錬金術で不老の薬でも作りますかね」

「……ッ!! その研究……お姉ちゃん応援するからねっ、一時も早く完成させてくれなきゃお姉ちゃん……人生に絶望しちゃうっ!」

「いや大げさ。……先生ってうちの妹と良い勝負ですね」


 アクアトゥスさんが行き過ぎた兄妹愛だとしたら、先生は萌えに全振りって感じだけど。


 それはそうと、不老薬って意外とアリな目標設定なんじゃないでしょうか。

 あとソレ系でいくなら若返りとか……そう、ついでに育毛剤とか作ったら面白いかな?

 そんであのツルピカ教頭にプレゼント……?


 ふっさふさの教頭……教頭……あ、想像つかないけどこれ面白そう! それにこれ金になりそうだ!



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