5-01 ネムラズの後日談
前章のあらすじ
ロドニーより錬金の依頼が舞い込んできた。
市内で若い少女を狙った昏眠強盗が多発しており、その囮捜査のために不眠薬を作って欲しい。
高額の報酬にアレクサントは快諾し、アカシャの家へとおもむきアクアトゥスに薬の製造法を教わる。
キー素材はコピアの実、自力採集は困難。
どうせ経費はあちら持ちなので、彼は冒険者ギルドに調達依頼を出して帰宅する。
それから数日が経ち、ついにコピアの実がアトリエに届けられる。
アシュリーの手によって。
早速アシュリーとアクアトゥスのサポートを受けながら調合を始める。
調合成功、ネムラズの蜜と命名。
アレクサント自ら臨床実験を試みるが、あまりの強烈な作用に眠気と疲労感の全てが消失する。
眠れぬまま一晩を過ごしロドニーへと納品を果たす。
彼は不眠による異様な精神状態のまま公国軍の仕事を手伝い、数多の魔物をほふり[悪鬼の玉鋼]と呼ばれるボス素材を入手するのだった。
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連鎖劇 もう一人の恩師と秘密の階層
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魔法使いとして見た場合、当時の主人は飛び抜けた実力を持っていたわけではございません。
しかしその高い魔力容量《MP》と芸術クラスまでに小器用な詠唱術は、どんな編成に入り込んでも気持ち悪いくらいにしなやかな順応をしたそうです。
アシュリー様が言うのですから間違いはないでしょう。
一方の錬金術師の実力と申しますと、これがまあ生まれながらの天才だったそうです。
アクアトゥス様が言うのですから大げさな評価になりますが、そもそも彼女以外に主人の実力を理解出来る者はございませんでしたから、これも仕方がありません。
さて、前置きが長くなりました。
主人はその希有な才能を買われて何かと人様に目をつけられる宿命にあります。
錬金術とは異質の技であり、不可能を可能にしてしまえる奇跡の力でございました。
いえ大げさに言い切ってしまいましたが、少なくとも主人だけはいつだってそう堅く信じていたのでした。
だから……。
それは免疫作用のようなものなのでございます。
発端が主人を刺激し、かの慎ましやかな趣味人にある拡大欲求を与えていったのです。
それでは第五章、彼の心変わりのエピソードの……はじまりはじまりにございます。
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5-01 ネムラズの後日談
例の昏眠強盗事件ですが、無事囮捜査が成功しまして犯人が現行犯逮捕されました。
当然現行犯となればしらを通すことも出来ません。
だからあっさり余罪を白状してしまい、ロドニーさんらを逆に拍子抜けさせたようです。
あまりに鮮やかなので上層部からの評価も高く、彼の手腕とともにアトリエの評判も良い感じに伸びました。
ああそれでその犯人です。
その犯人、爵位もある金持ち様がなんでこんなセコい犯罪犯していたのかと、俺も不思議に思いました。
するとそれがそれが聞くも涙の物語。
……で、恩赦を狙おうとしてたそうですがロドニーさんにキリッ! っと見破られたそうな。
刑事ロドニー! なんかゴールデンタイムのドラマにも似合いそうな、視聴者受けしそうな画が浮かびました、今。
で、話は戻りますが犯人なのですが。
どうしてこんなことを始めたのか、その動機についてですが……。
あーー。意外とこれがつまらない落ちでガッカリしたんですよね……。
眠っている女の子にイタズラするのが三度の飯より好きだったらしいです。
被害者の金品は偽装のためにだけに盗んで、全部公城の堀に投げ捨ててたそうですよ。大胆にもほどがあります。
うん……なんででしょうかね……?
軍を翻弄するだけの用心深さを持っていたのに、どうしてこの程度の欲望に勝てなかったんでしょうか。
いやどうしても勝てなかったから、この結果となったとも言えるんでしょうか。
好きなことに対するその貪欲さは見習いたいですが……それ=《イコール》犯罪だと救いがないです。
世の中の事件という事件は、元を正せば全て欲望によって成り立っている。そう言っても過言ではないでしょう。
……あ、これ結構名言っぽいですね。チャンスがあったら人前で使ってみたいところです。
出来れば刑事ロドニーさんの前で、シャキーンとカッコ付けて切り返す感じで。
それと例のネムラズの蜜ですが、よくよく考えたらあれ……依存症になりかねないんじゃないでしょうか。
超濃縮したカフェインみたいなものですし、服用した俺もなんか越えちゃいけない壁越えちゃってた気もしますし、そうなると下手に流通させるとヤバ過ぎな感じなので……はい、レシピ封印しました。
お薬求めてジャンキーな行列でも出来たら、どっち方向に転んでもうんざりするような未来しか見えないです。
ともかく、これで再び町も平和になりました。
合計20000z越えの臨時収入に財布もぽかぽか暖かくなった上に、軍にもコネとか貸しも作れたわけです。
そういったわけで……はい、また美味しい話をお待ちしておりますロドニーさん。




