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3-02 っていうか人間牧場

 奴隷なんてそのへんの朝市で野菜とセットで売られても困ります。

 それに買うならやっぱり専門店でしょ。

 農場長の言葉を要約するとだいたいそんな感じでした。


 さてさて、それで奴隷専門店に到着しました。

 公国より認可された正規のお店だそうで、でもさすがに扱うものがものなので立地は公都の外れも外れになります。


「痛たた……」


 関係ないけど尻が痛いです。

 揺れない大地って最高だと思います。

 結局、農場長と1時間も昔話をするはめになってました。


「こっちだアレクサントくん、ほらおいで」

「あ、はい」


 辺りはのどかな農園風景に変わっています。

 広い広野に小さな平屋がちらほら立ち並んで、そのどれもが必要最低限というか粗末なものでした。

 スラムと説明されたらそのまま信じちゃいそうです。


「売れるまでは畑仕事や紡績業に従事させるのだよ」

「なるほどなるほど」


 そりゃ知りたくもない話ってやつです。

 ともあれ奴隷商人の店に入りました。


 それは石造りの大きな建物なのですが、店主の趣味なのか中は薄暗く昼なのに明かりが灯されています。

 甘ったるい香料の匂いもして、いきなりどこからどこまでも怪しいです。


「しばらくぶりだな店主。早速だが彼はアレクサント、私の大切な友人だ。彼に商品を見せてやってほしい」


 奴隷屋の店主に紹介されちゃいました。

 鷲鼻の痩せ細った老人で、高級なガウンと大きなルビーの指輪が目立ちます。


「ひぇひぇひぇ……よくきなすったなぁ旦那ぁ……良い子がそろっておりますよぉ……」

「そりゃどうも」

「さ、旦那様方、こちらにどうぞ……」


 店の奥に案内されました。

 何かさらに自然の光が遠くなって、その代わりにランプの明かりが増えていきます。

 壁には鮮やかな飾り布がかけられて、なんかこう、すごくいかがわしい。普通じゃない。


「奴隷と申しましても賃金を支払わなければいけません。それが法律でございますから。身よりのない子供や借金で首の回らない者に返済の機会を与える。それが我々の社会的な役割です、後ろ暗い部分はございません」


 そうは言っても人を管理して売り買いしてるわけだから、そこはやっぱりブラックでダークネスだと思います。

 ……とは農場長の隣じゃ言えない。


「契約期間は従事より20年。あるいは本人の借金が返済されるまで続きます。うちは公国公認の正規でございますから、法に抵触することはございませんのでご安心を……」


 あまり深く考えない方がいいのかも……。

 正規ってことは、どこかに非正規の店もあるってことだよね……?

 奴隷オブ奴隷みたいなそういう世界が……うわ怖い。


「さて……それで今日はどういったご要望でしょうか」

「うむ、彼は公都の職人街にて薬屋を経営している。仕事のために店を離れなければならないことも多く、代わりに店番を任す人手を探しているのだ」


 あ、こりゃ代弁どうも農場長。

 この鷲鼻爺ちゃん怖いし、代わりにしゃべってもらえてちょっとホッとしてたり。


「他になにか要望はありますかな、アレクサントくん」

「あーそうですね。自分はまだ17ですし、俺みたいな小僧が年上に指図するのは何かと角が立つと思います。あまり若過ぎても困るけど、出来れば年下が無難かなと」


 一応ちゃんと考えました。

 農場長に流されるだけじゃ良い買い物にならないです。

 なにせ大金を使うんだから、ここはちゃんと自分で考えないと。


「ヒェ、ヒェ、ヒェ……旦那様は賢いですな。ちなみに性別にこだわりはございますかな」

「いえ特には……」


 別にエッチなことするつもりで買うんじゃないし、そんな基準で選んだらすぐ飽きると思います。

 いや、むしろ男がいいかな。

 ロドニーさんはだいぶ年上だし、お節介でうるさいアルフレッドは連邦国に帰ったし。


 うん、そうなると弟みたいにかわいがれそうなヤツが……。


「女で頼む」

 でも農場長が勝手にオーダーしちゃいました。


「えー、えーちょ、農場長~?」

「接客に使うなら女性が一番だよアレクサントくん。男はダメだ、最初は良いが嫁や妹を寝取られる場合もある。その点、女ならば使いようはいくらでもあろう」


 ……なんか深いなぁ。

 深いっていうか、底の方が肥だめ状態になってるっていうか……そんなただれた大人の世界も知りたくなかったよ俺……。


 でも、まあ、うん、そうか。

 うちのアクアトゥスさんをそこいらの男には渡せないな。

 それこそアルフレッドとかロドニーさんみたいな立派な男じゃないと。


 ……ロドニーさんなら既婚者でも全力で許せるかも俺。


「じゃあそうします。予算は100000zっぽっちで申し訳ないですけど、どうかよろしくお願いします」

「ヒェヒェヒェ……これはどうもご丁寧に……ではしばらくお待ち下さいませ、アレクサント様」


 そう言って奴隷商さんは店の奥へ奥へと消えていきました。


 てか……様とか付けないで……。

 何かすご~く悪いことしてるみたいな気分になるから……。


 お、俺は別に……奴隷待遇で人をこき使いたいわけじゃないし……女の子に変なことしたいわけでもないからっ! ないからっ! 大事なことだから二回言いましたっ!



 ・



 で。農場長ってば若い嫁さんが一人増えたそうです。

 とても良い買い物だったとか……やはり10代前半が良いとか……アレクサントくんは童貞かね?とか……。

 時間が空いちゃったので農場長と世間話してたらソレでした。


 いえ農場長、俺まだ17なんですけどその話題のチョイス合ってます?

 てか10代前半と結婚とかなにそれ犯罪なんですけどーーーっっ!!



 ・



「ヒェヒェヒェ……どうされましたかなお客様……?」

「大丈夫です……ちょっと毒気にやられただけっす……」


 奴隷商さんが戻ってきました。

 楽しげな農場長と、ちょっとげんなり気味の俺を見て、ヒヒヒと不気味な笑いで場をなごませてくれました。


「さて、奴隷には鑑定魔法がかけられております」


 鑑定魔法って学園長が俺に使ったアレかな。

 ここでも鑑定、鑑定、鑑定というわけですよ。

 利用する側からすると便利なんだけど、鑑定士モショポーさんのせいで良い印象ないなー。


「これはそのリストでございます。お客様のご要望に合う子たちをそろえてまいりました」

「うむ、拝見しよう」


 農場長がリストを受け取って半分をこちらに回してくれます。

 枚数はたぶん20人分。

 一枚一枚が個人情報の塊も塊って感じで、ステータスがアルファベットでランク分けされています。


 見た感じ、売り子というわけでSTRやVITよりも、DEXとINT寄りのチョイス。

 年齢も11~16歳の間でまとめられていて……ん、んん? なんだこりゃ、変なの混じってるぞ。


「ヒェヒェヒェ……どうなされましたかな……?」

「いえ……特には……」


 能力値が他の子より一回りも二周りも高い子がいる。

 なんだコレ。


 バッドステータス事項に[死の宣告・2]って文字も記されてる。なんかスゲェヤバそう……。


「店主。コレとコレ、それとコレを連れて来てくれ」

「はいかしこまりましたよぉ……」


 農場長と回し読みしてたんだけど、その中から3枚を渡されました。

 それぞれをザッと並べるとこんな感じです。


―――――――――――――――――――――――――

 age12 DEX《器用さ》-B INT《知性》-C VIT-B《体力》 容姿・良

 age11 DEX-A INT-B VIT-C+ 容姿・可 / 元商家

 age13 DEX-B INT-B VIT-B+ 容姿・可 / 陽気饒舌

―――――――――――――――――――――――――


 名前はあえて見ない、見たくない、えげつない世界をなおさら実感しちゃうから見ないっ!

 我慢してそれぞれの書類を入念に確認します。


 他の部分はまあいいとして……11歳、12歳、13歳……。


 え、農場長……?

 なんでこんなお若い子たちを中心に選びましたか?


 そりゃ……ずっと下の方が素直だろうし、指示はしやすいけど……ざ、罪悪感すごくないこれ……っ?


「ヒェヒェ……お好みに合う娘はおりましたかな……? 気になる者がおりましたら連れてまいりましょう」


 はっはっはっ、連れてくるとか……。

 現在進行形で人買ってるって実感がすごいねこれ、競馬ゲームで子馬買うんじゃないんだからさ、そんな気軽に言ってくれちゃってもー、ダークネ~~ス……!


「あーー……じゃあ質問なんだけど。この死の宣告・2ってなんです?」

「アレクサントくん、それは止めておけ」


 彼も気になっていたのか、俺が聞くなり釘を刺してくれちゃいます。

 でもそんなこと言われたら逆に引っかかるじゃないですか。


「ヒヒヒッ……死の宣告とはレアなバッドステータスの一つでございます……。わかりやすく申しますとな、死の宣告・2とは……あと2年で呪いにより何の前触れもなく死亡するということでございますな。いやはや……何があったかは存じませんが哀れなことです」


 なるほどまるで不幸のバーゲンセールです。

 奴隷に身をやつしてる時点で不幸なのに、2年で死ぬとか神も仏もありません。


「二年で壊れる奴隷なんてそれこそ銭失いだ、止めておきなさい」

「まあそうですよね。普通に考えてまあ、そうですよね」


 でもちょっと考えてみる。

 こっちは最初から間に合わせのつもりなのですよ。

 二年以内にホムンクルス製造に成功すれば、これほど都合の良い取引もないかもしれない。


「考えてみなさい。奴隷といえど人の死は重い。こんなものを買えば、自ら不幸を呼び込むようなものだよ」


 それもごもっとも。

 だからペットショップの動物が好まれて買われるわけだし。確かに寿命は大事な要素です。


「……これって感染するの? 病気?」

「いいえ……ただの呪いでございます」


 ただの呪いと言われても、さすがファンタジーっすな~~と言いたくなるけどそこは我慢。

 ……感染らないなら問題ない気がしてきました。


「ですが死に神が自分にまで微笑むのではないかと、購入をためらう方ばかりですな。いずれ死ぬ者と好んで肌を重ねたり、仮初めの愛を語りたがる者などおりはしません。……まあ、なので身体は綺麗なままでございますが」


 そもそもこの店主はなんでこの子をリストに混ぜたんだろう。

 ババ抜きのババを引かされた商人が、ソイツを若造に売りつけようとでもしてるんだろうか。


「じゃあこの子も連れてきて」

「はい、かしこまりましたアレクサント様……ヒェヒェヒェヒェ……」


 なんか嬉しそうです。

 なら俺も嬉しい気分です。


 だってほら、なんか安く買いたたけそうじゃないですか。


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